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スチュワート・アッカリー×ルニー・マッケンジー
(11話の二人のその後)
ウィーズリーの双子がホグワーツを去り、フリージアの赤い花を気になる相手に贈るのがちょっとした流行りになったある日のこと。五年生で金髪のブロンドヘアを持つルニー・マッケンジーという女生徒は、授業終わりに学校の廊下を一人歩いていた。何時も一緒にいる友人二人は別の授業を受けていたからだ。
ルニーは背が高くスラッとしていてクールな印象で、典型的なスリザリン生の外見をしていた。しかし彼女は話してみると案外茶目っ気や抜けているところがあって、他の寮生にはその可愛らしい性格をあまり知られていなかった。
そんな彼女が自分の寮へと向かって生徒の行き交う廊下を進んでいると、進行方向から下級生の男子生徒たちが人の波に乗ってやって来るところだった。ルニーは何やらその生徒の辺りから視線を感じて視線を向けると、青い差し色入りのローブを着た三年生の男子生徒が一人、ルニーを見てその場に立ち止まってしまっていた。彼の後ろの人混みはいきなりその生徒が立ち止まって道の流れを止めたものだから、文句を言いながら彼を避けて通った。
ルニーはそのレイブンクロー寮の男子生徒のことを知っていた。彼女は軽く手を上げて彼に微笑んだ。
「スチュワート!久しぶりね」
「えっ、あ、はい……!こんにちは!」
ルニーと殆ど同じ身長のスチュワート・アッカリーは、ルニーに向けられた笑顔にワッと焦りや嬉しさを混ぜた表情をして、彼女の方へ駆け寄った。彼は薄茶色の髪と同じような色素の薄い瞳でルニーを照れ臭そうに見た。
「こんなところでお会いできるなんて、嬉しいです」
「わあ、ありがとう。確かに中々出会わないものね。ちゃんと話すのはホグズミード以来じゃない?」
ルニーとスチュワートは、以前二人でホグズミードに出掛けたことがあった。そのきっかけは、ルニーと友人のフォーラが学校内で男子生徒に絡まれていたところをスチュワートが助けようとしたことだった。実のところスチュワートはそれ以前から、ルニーに対して憧れのような気持ちを持っていた。そのため彼はルニーからのお礼として一緒にホグズミードに出かけられたことを本当に喜んでいた。
スチュワートがルニーとまともに会話したのはその時が初めてと言っても過言ではなかった。彼はこれまで遠目に見ていたルニーのことを綺麗で格好いい雰囲気の人だと思っていた。彼はそういった自分にはない彼女のクールなところに憧れていたのだ。しかしホグズミードでたった一日とはいえ一緒に過ごす内に、彼は次第にルニーが見た目に反して茶目っ気のある人だと知っていった。彼女に対するイメージが当初と違っても、彼はそのギャップによって、気付けば彼女のことを恋愛感情的な意味で好きになってしまっていた。
「こんな所じゃ何だし、少しそこの中庭で話さない?」
「いいんですか?やった、是非行きます!」スチュワートは満面の笑みをルニーに向けた。
ルニーから見たスチュワートはまるで子犬のようだった。自分のことを先輩として慕ってくれているのが目に見えて分かるし、素直で笑顔が本当に可愛いのだ。何ならピョコピョコ動く犬の耳や尻尾の幻覚すら見える気がする。二人は寮も学年も異なるため殆ど会うことはなかったが、それでも少し離れたところで目が合ったりした際、彼女は軽く手を上げて挨拶する程度には彼に目をかけていた。ただし彼女はスチュワートの好意が恋愛感情であることには全く気付いていなかった。
二人は中庭のベンチに並んで座り、最近お互いがどうしていたか話して聞かせ合った。その内に二人の話は直近に起こった事件の話題に移った。
「それで―――あのウィーズリーの双子の内の一人が、フォーラさんに花を渡して去って行ったのは正直恰好良かったです」
「ああ、あれね!確か赤のフリージアだったわよね?ふふ、フォーラったらあの時の話をすると、本当に真っ赤になっちゃうのよ。それこそあの花と同じくらい赤くなるの。可愛いわよね」
ルニーの屈託のない笑顔を傍で見て、スチュワートは少々心臓をドキドキさせた。
「そ、そうですね」
(僕としては、可愛いのは目の前の貴女の方だけど……)
「そういえば、あの後から男女間でフリージアの花を贈るのが流行ったわよね?」
「ええ、そうみたいです。何でも花言葉が『友情』とか『親愛の情』だとかで、恋人未満の人たちの間で、気軽に好意を伝えるのに使われているらしいです」
「それ、私も聞いたことがあるわ。そんな花を贈り合っている人たちを見たら、なんだかとっても甘酸っぱい気持ちになるわよね。ちょっと憧れちゃうな」
「!」スチュワートはルニーの発言を意外だと思った。彼女は人気がありそうだが、もしかすると花を贈られたことはないのだろうか。
「……ルニーさんは、誰かそういう雰囲気のお相手はいないんですか?花を贈られたことは?」スチュワートは不安を抱えつつもそのように質問した。
「えっ、私?ううん、残念ながらいないわ。それから、花を贈ってくれるような人からは好かれた記憶がないわね?」
「そ、そうですか……。僕も同じです、偶然ですね!」スチュワートはルニーに恋人がいないことの喜びを誤魔化すようにして、その後は別の会話に切り替えたのだった。
その一週間後、ルニーは先週と同じ授業を終えて、先週と同じく一人で寮へ戻ろうと廊下を進んでいた。そうしていつも通り人混みの廊下に差し掛かった時、先週も出会った人物が廊下の隅に立ってキョロキョロと辺りを見渡していることに気が付いた。彼は両手を背に回し隠すようにして鞄を持っていた。
「スチュワート?こんなところでどうしたの?」ルニーが彼に近付いて声をかけた。
「!わっ、ルニーさん!こんにちは……!」スチュワートは突然のことに心臓が大きく跳ねるのを感じた。
「誰か探してるの?一緒に探す?」
「いえ!大丈夫です、でもありがとうございます。実は僕が探していたのは、その……。ルニーさんなんです」
「えっ、私?」ルニーは予想外のことを言われて思わず素っ頓狂な声色になった。
スチュワートは続きの言葉を切り出すのを少々躊躇った。彼の頬には赤みが差していたものだから、てっきりルニーは彼が風邪でも引いているのかと思った。しかし次に彼が背中に隠していた手を見せた時、そうではないのだと気付いた。
スチュワートがルニーに差し出したのは、一輪の赤いバラの花だった。まさか彼がそんな物を持っているとは思わず、これにはルニーも随分驚いてしまった。
「わ!えっ?これ、どうしたの……?」
ルニーが花を受け取りながらそのように尋ねると、スチュワートは先程よりも顔を赤くして、伺うように彼女を見た。スチュワートはこんなにも人通りの多いところで勢い余って目立つことをした自分を恥じた。
「先週、貴女が花を贈られることに憧れている話を聞いて……そうしたら偶然、本当に偶然、さっきフリットウィック先生が一本くださったので!ちょうど貴女に渡せると思って……勿論他意はないんですけど!」
「そ、そうだったのね!わあ、ありがとう」
ルニーはまだ驚いていたが、偶然とはいえ手に入れた花を後輩がわざわざ自分に渡そうとしてくれたことを素直に嬉しいと思った。スチュワートはルニーの笑顔を見て口元が緩みそうになった。そして舞い上がってしまった彼は口が勝手に言葉を紡いでいた。
「流行りはフリージアの花ですけど、同じ赤色でも貴女にはフリージアよりもバラの方がよく似合うと思ったんです。思ったとおり本当によく似合ってます!」
(あら?)
スチュワートが赤みの差した顔でニコニコと発言するのを聞いて、ルニーは彼の言葉に違和感を覚えた。
「スチュワート?もしかするとなんだけど、このお花、先生じゃなくて貴方が選んでくれた物だったりしない?」
「えっ」スチュワートは思わずドキリとしてその場に固まった。
「違ったら自惚れているみたいで恥ずかしいけど、貴方がまるで私のことを考えて花を渡してくれたように聞こえたから、そうだったらいいなって」
ルニーは少々照れ笑いしながらそのように発言した。一方のスチュワートは先程よりも顔や耳まで赤くして視線を泳がせていた。そして彼女の方を見て声を絞り出した。
「~~~あ、貴女の言うとおりです!合ってます!!!……それじゃ僕はこれで!」
スチュワートはその場から逃げるように、あっという間に廊下の人混みに紛れていなくなってしまった。その場に残されたルニーは引き留める間もなく、彼が消えた方を呆気に取られながら眺めた。
「え、ええ……?」
ルニーは視線を手元の赤いバラに移した。そうしていると、つい先程のスチュワートの真っ赤な顔も自然と思い出された。この時彼女は初めてまともに彼のことを可愛い後輩としてではなく、自分を気に掛けている異性だったのかもしれないと思った。
ルニーは困惑こそしていたが、スチュワートのプレゼントを決して嫌だとは思わなかった。すると彼女の顔は自分でも気づかない内に赤みを帯びていったし、何なら呆れと優しさを含んだ笑みを浮かべていた。
(今度会ったら、何かお礼してあげなきゃ。例えば好きなお菓子があるなら贈ってあげたいわ。……ふふ、これから少しずつ、貴方のことを沢山教えてもらわなきゃね)
おわり
(11話の二人のその後)
ウィーズリーの双子がホグワーツを去り、フリージアの赤い花を気になる相手に贈るのがちょっとした流行りになったある日のこと。五年生で金髪のブロンドヘアを持つルニー・マッケンジーという女生徒は、授業終わりに学校の廊下を一人歩いていた。何時も一緒にいる友人二人は別の授業を受けていたからだ。
ルニーは背が高くスラッとしていてクールな印象で、典型的なスリザリン生の外見をしていた。しかし彼女は話してみると案外茶目っ気や抜けているところがあって、他の寮生にはその可愛らしい性格をあまり知られていなかった。
そんな彼女が自分の寮へと向かって生徒の行き交う廊下を進んでいると、進行方向から下級生の男子生徒たちが人の波に乗ってやって来るところだった。ルニーは何やらその生徒の辺りから視線を感じて視線を向けると、青い差し色入りのローブを着た三年生の男子生徒が一人、ルニーを見てその場に立ち止まってしまっていた。彼の後ろの人混みはいきなりその生徒が立ち止まって道の流れを止めたものだから、文句を言いながら彼を避けて通った。
ルニーはそのレイブンクロー寮の男子生徒のことを知っていた。彼女は軽く手を上げて彼に微笑んだ。
「スチュワート!久しぶりね」
「えっ、あ、はい……!こんにちは!」
ルニーと殆ど同じ身長のスチュワート・アッカリーは、ルニーに向けられた笑顔にワッと焦りや嬉しさを混ぜた表情をして、彼女の方へ駆け寄った。彼は薄茶色の髪と同じような色素の薄い瞳でルニーを照れ臭そうに見た。
「こんなところでお会いできるなんて、嬉しいです」
「わあ、ありがとう。確かに中々出会わないものね。ちゃんと話すのはホグズミード以来じゃない?」
ルニーとスチュワートは、以前二人でホグズミードに出掛けたことがあった。そのきっかけは、ルニーと友人のフォーラが学校内で男子生徒に絡まれていたところをスチュワートが助けようとしたことだった。実のところスチュワートはそれ以前から、ルニーに対して憧れのような気持ちを持っていた。そのため彼はルニーからのお礼として一緒にホグズミードに出かけられたことを本当に喜んでいた。
スチュワートがルニーとまともに会話したのはその時が初めてと言っても過言ではなかった。彼はこれまで遠目に見ていたルニーのことを綺麗で格好いい雰囲気の人だと思っていた。彼はそういった自分にはない彼女のクールなところに憧れていたのだ。しかしホグズミードでたった一日とはいえ一緒に過ごす内に、彼は次第にルニーが見た目に反して茶目っ気のある人だと知っていった。彼女に対するイメージが当初と違っても、彼はそのギャップによって、気付けば彼女のことを恋愛感情的な意味で好きになってしまっていた。
「こんな所じゃ何だし、少しそこの中庭で話さない?」
「いいんですか?やった、是非行きます!」スチュワートは満面の笑みをルニーに向けた。
ルニーから見たスチュワートはまるで子犬のようだった。自分のことを先輩として慕ってくれているのが目に見えて分かるし、素直で笑顔が本当に可愛いのだ。何ならピョコピョコ動く犬の耳や尻尾の幻覚すら見える気がする。二人は寮も学年も異なるため殆ど会うことはなかったが、それでも少し離れたところで目が合ったりした際、彼女は軽く手を上げて挨拶する程度には彼に目をかけていた。ただし彼女はスチュワートの好意が恋愛感情であることには全く気付いていなかった。
二人は中庭のベンチに並んで座り、最近お互いがどうしていたか話して聞かせ合った。その内に二人の話は直近に起こった事件の話題に移った。
「それで―――あのウィーズリーの双子の内の一人が、フォーラさんに花を渡して去って行ったのは正直恰好良かったです」
「ああ、あれね!確か赤のフリージアだったわよね?ふふ、フォーラったらあの時の話をすると、本当に真っ赤になっちゃうのよ。それこそあの花と同じくらい赤くなるの。可愛いわよね」
ルニーの屈託のない笑顔を傍で見て、スチュワートは少々心臓をドキドキさせた。
「そ、そうですね」
(僕としては、可愛いのは目の前の貴女の方だけど……)
「そういえば、あの後から男女間でフリージアの花を贈るのが流行ったわよね?」
「ええ、そうみたいです。何でも花言葉が『友情』とか『親愛の情』だとかで、恋人未満の人たちの間で、気軽に好意を伝えるのに使われているらしいです」
「それ、私も聞いたことがあるわ。そんな花を贈り合っている人たちを見たら、なんだかとっても甘酸っぱい気持ちになるわよね。ちょっと憧れちゃうな」
「!」スチュワートはルニーの発言を意外だと思った。彼女は人気がありそうだが、もしかすると花を贈られたことはないのだろうか。
「……ルニーさんは、誰かそういう雰囲気のお相手はいないんですか?花を贈られたことは?」スチュワートは不安を抱えつつもそのように質問した。
「えっ、私?ううん、残念ながらいないわ。それから、花を贈ってくれるような人からは好かれた記憶がないわね?」
「そ、そうですか……。僕も同じです、偶然ですね!」スチュワートはルニーに恋人がいないことの喜びを誤魔化すようにして、その後は別の会話に切り替えたのだった。
その一週間後、ルニーは先週と同じ授業を終えて、先週と同じく一人で寮へ戻ろうと廊下を進んでいた。そうしていつも通り人混みの廊下に差し掛かった時、先週も出会った人物が廊下の隅に立ってキョロキョロと辺りを見渡していることに気が付いた。彼は両手を背に回し隠すようにして鞄を持っていた。
「スチュワート?こんなところでどうしたの?」ルニーが彼に近付いて声をかけた。
「!わっ、ルニーさん!こんにちは……!」スチュワートは突然のことに心臓が大きく跳ねるのを感じた。
「誰か探してるの?一緒に探す?」
「いえ!大丈夫です、でもありがとうございます。実は僕が探していたのは、その……。ルニーさんなんです」
「えっ、私?」ルニーは予想外のことを言われて思わず素っ頓狂な声色になった。
スチュワートは続きの言葉を切り出すのを少々躊躇った。彼の頬には赤みが差していたものだから、てっきりルニーは彼が風邪でも引いているのかと思った。しかし次に彼が背中に隠していた手を見せた時、そうではないのだと気付いた。
スチュワートがルニーに差し出したのは、一輪の赤いバラの花だった。まさか彼がそんな物を持っているとは思わず、これにはルニーも随分驚いてしまった。
「わ!えっ?これ、どうしたの……?」
ルニーが花を受け取りながらそのように尋ねると、スチュワートは先程よりも顔を赤くして、伺うように彼女を見た。スチュワートはこんなにも人通りの多いところで勢い余って目立つことをした自分を恥じた。
「先週、貴女が花を贈られることに憧れている話を聞いて……そうしたら偶然、本当に偶然、さっきフリットウィック先生が一本くださったので!ちょうど貴女に渡せると思って……勿論他意はないんですけど!」
「そ、そうだったのね!わあ、ありがとう」
ルニーはまだ驚いていたが、偶然とはいえ手に入れた花を後輩がわざわざ自分に渡そうとしてくれたことを素直に嬉しいと思った。スチュワートはルニーの笑顔を見て口元が緩みそうになった。そして舞い上がってしまった彼は口が勝手に言葉を紡いでいた。
「流行りはフリージアの花ですけど、同じ赤色でも貴女にはフリージアよりもバラの方がよく似合うと思ったんです。思ったとおり本当によく似合ってます!」
(あら?)
スチュワートが赤みの差した顔でニコニコと発言するのを聞いて、ルニーは彼の言葉に違和感を覚えた。
「スチュワート?もしかするとなんだけど、このお花、先生じゃなくて貴方が選んでくれた物だったりしない?」
「えっ」スチュワートは思わずドキリとしてその場に固まった。
「違ったら自惚れているみたいで恥ずかしいけど、貴方がまるで私のことを考えて花を渡してくれたように聞こえたから、そうだったらいいなって」
ルニーは少々照れ笑いしながらそのように発言した。一方のスチュワートは先程よりも顔や耳まで赤くして視線を泳がせていた。そして彼女の方を見て声を絞り出した。
「~~~あ、貴女の言うとおりです!合ってます!!!……それじゃ僕はこれで!」
スチュワートはその場から逃げるように、あっという間に廊下の人混みに紛れていなくなってしまった。その場に残されたルニーは引き留める間もなく、彼が消えた方を呆気に取られながら眺めた。
「え、ええ……?」
ルニーは視線を手元の赤いバラに移した。そうしていると、つい先程のスチュワートの真っ赤な顔も自然と思い出された。この時彼女は初めてまともに彼のことを可愛い後輩としてではなく、自分を気に掛けている異性だったのかもしれないと思った。
ルニーは困惑こそしていたが、スチュワートのプレゼントを決して嫌だとは思わなかった。すると彼女の顔は自分でも気づかない内に赤みを帯びていったし、何なら呆れと優しさを含んだ笑みを浮かべていた。
(今度会ったら、何かお礼してあげなきゃ。例えば好きなお菓子があるなら贈ってあげたいわ。……ふふ、これから少しずつ、貴方のことを沢山教えてもらわなきゃね)
おわり
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