24. I hope you are safe. (完)
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すると、隣を歩くフォーラが不意にドラコの手をぎゅっと握ったものだから、彼はそれに気付いてハッと我に返った。
(いけない、あいつの顔を見るとついカッとなってしまう。明日にはホグワーツを離れるし、せめてフォーラの前では少しでも穏やかでいたいのに)
それにしても、何だか普段よりもフォーラが手を握ってくる力が強い気がする。そう思ってドラコが彼女の方に視線を向けると、彼女はじっと真正面を見つめたまま、何かに耐えるように眉間に軽く皺を寄せて歩を進めていた。ハリーたちの姿がすっかり見えなくなって、二人が中庭を見渡せる人気の少ない開放廊下に差し掛かっても、中庭から心地よい風が抜けて陽に照らされた綺麗な緑色の芝生が揺れても、彼女はそれらに気付いていない様子だった。
「フォーラ?」
ドラコの呼ぶ声にフォーラは直ぐに反応できなかった。そのためドラコは彼女の手を引いて開放廊下の片隅に据え付けられている石造りのベンチの前で立ち止まり、もう一方の手で彼女の頬に触れて視線をこちらに向けさせた。
「フォーラ、大丈夫か」
ドラコがフォーラに振れる手をそっと彼女の眉間の辺りに移し、皺を取り除くように何度か撫でた。すると彼女の表情は次第に和らいでいった。
「えっ、ええドラコ、大丈夫よ……。ありがとう。」
「急に黙ってどうしたんだ?ポッターたちとすれ違ってから様子が変だ」
ドラコは立ったまま、フォーラをベンチに座らせながら尋ねた。フォーラはその問いかけに回答すべきか躊躇いつつも、言葉を発した。
「私……さっきハリーを目にした時、改めて貴方の心境を思うと辛くなってしまって。それで少し顔が険しくなってしまったみたい。辛いのはドラコの方で、私が宥めてもらっている場合じゃないのに。ごめんなさい。」
「そうだったのか。いや、何も君が謝ることじゃないさ」
「ありがとう。……だけど私ね、貴方が苦しい時はどうしても貴方と同じくらい心を痛めてしまうわ。だって、そのくらい貴方のことを大切に想っているから。」
「!フォーラ……」
ドラコの心は先程までハリーのせいで荒んでいた筈だった。しかしそれはフォーラの想いによってあっという間に潤いを取り戻し、何なら温かい熱で満たされていった。
ドラコはフォーラの隣に座りながら、幾らか照れを感じてほんの少しだけ視線を中庭の青々とした芝生に移した。大半の生徒は校庭で陽気を堪能しており中庭は人気が少なかった。随分向こうの方で何人かの生徒が芝生の上で寝そべって、気持ちよさそうに談笑しているのが目に入る程度だ。
それにしても本当に今日は心地良い日和だ。ドラコは先程まで自分がハリーのことで苛立っていたことも、何なら自分の家族が置かれた厳しい状況すらも一瞬忘れてしまいそうになる程だった。ドラコにとってフォーラに向けられた気持ちはこの陽気そのものだったのだ。自分は彼女にこんなにも想われている。ドラコはその事実だけで十分に勇気付けられていた。彼は視線を彼女に向けた。
「フォーラ、ありがとう。……僕はこうして君に想われていることが何よりも励みになっているし、幾ら苦しいことがあっても、君の存在が僕を何より安心させてくれているんだ」
ドラコはそう言って素直な微笑みをフォーラに向けた。フォーラが見たドラコのその瞳は、確かにハリーと対峙した時の苛立った様子とは打って変わっていた。落ち着きや感謝、そして慈愛に満ちた色をした彼の瞳から、フォーラは自分に向けられている様々な気持ちを感じ取った。彼女はそれを素直に嬉しいと思ったし、何なら強く愛しいとすら思った。
そうしてフォーラがドラコの吸い込まれるようなアイスブルーの瞳を見つめ返していると、彼は心が満たされたことで自然とフォーラの額にそっと口付けを落としてきた。
「!ドラコ、」
いつものドラコなら周囲の目を気にする筈だが、今の彼は最早そんなことはどうでもいいくらいフォーラに温かい気持ちを伝えたくて仕方なくなっていた。それと同時に、彼は自身の選択が―――死喰い人という道を選ぶことが、きっと彼女を心の奥底で哀しませていることへの申し訳なさも強く感じていた。
ドラコはフォーラの頬に掛かった髪を片手で軽く梳くようにそっと払うと、彼女の唇に優しくキスを落とした。その随分甘く丁寧な口付けに応えるように、フォーラも恐る恐るドラコの唇に何度も優しく触れ返した。万が一人目に触れてもおかしくない場所だというのに、彼が随分懇切丁寧に自分を愛でてくる様子から、フォーラは動悸がしつつもその心地よさに身体がとろけてしまいそうだった。彼女はそのようにドラコの好意を嬉しく思う一方で、何だか彼の丁寧すぎるキスが自分に許しを請うているようだとも思った。
(いけない、あいつの顔を見るとついカッとなってしまう。明日にはホグワーツを離れるし、せめてフォーラの前では少しでも穏やかでいたいのに)
それにしても、何だか普段よりもフォーラが手を握ってくる力が強い気がする。そう思ってドラコが彼女の方に視線を向けると、彼女はじっと真正面を見つめたまま、何かに耐えるように眉間に軽く皺を寄せて歩を進めていた。ハリーたちの姿がすっかり見えなくなって、二人が中庭を見渡せる人気の少ない開放廊下に差し掛かっても、中庭から心地よい風が抜けて陽に照らされた綺麗な緑色の芝生が揺れても、彼女はそれらに気付いていない様子だった。
「フォーラ?」
ドラコの呼ぶ声にフォーラは直ぐに反応できなかった。そのためドラコは彼女の手を引いて開放廊下の片隅に据え付けられている石造りのベンチの前で立ち止まり、もう一方の手で彼女の頬に触れて視線をこちらに向けさせた。
「フォーラ、大丈夫か」
ドラコがフォーラに振れる手をそっと彼女の眉間の辺りに移し、皺を取り除くように何度か撫でた。すると彼女の表情は次第に和らいでいった。
「えっ、ええドラコ、大丈夫よ……。ありがとう。」
「急に黙ってどうしたんだ?ポッターたちとすれ違ってから様子が変だ」
ドラコは立ったまま、フォーラをベンチに座らせながら尋ねた。フォーラはその問いかけに回答すべきか躊躇いつつも、言葉を発した。
「私……さっきハリーを目にした時、改めて貴方の心境を思うと辛くなってしまって。それで少し顔が険しくなってしまったみたい。辛いのはドラコの方で、私が宥めてもらっている場合じゃないのに。ごめんなさい。」
「そうだったのか。いや、何も君が謝ることじゃないさ」
「ありがとう。……だけど私ね、貴方が苦しい時はどうしても貴方と同じくらい心を痛めてしまうわ。だって、そのくらい貴方のことを大切に想っているから。」
「!フォーラ……」
ドラコの心は先程までハリーのせいで荒んでいた筈だった。しかしそれはフォーラの想いによってあっという間に潤いを取り戻し、何なら温かい熱で満たされていった。
ドラコはフォーラの隣に座りながら、幾らか照れを感じてほんの少しだけ視線を中庭の青々とした芝生に移した。大半の生徒は校庭で陽気を堪能しており中庭は人気が少なかった。随分向こうの方で何人かの生徒が芝生の上で寝そべって、気持ちよさそうに談笑しているのが目に入る程度だ。
それにしても本当に今日は心地良い日和だ。ドラコは先程まで自分がハリーのことで苛立っていたことも、何なら自分の家族が置かれた厳しい状況すらも一瞬忘れてしまいそうになる程だった。ドラコにとってフォーラに向けられた気持ちはこの陽気そのものだったのだ。自分は彼女にこんなにも想われている。ドラコはその事実だけで十分に勇気付けられていた。彼は視線を彼女に向けた。
「フォーラ、ありがとう。……僕はこうして君に想われていることが何よりも励みになっているし、幾ら苦しいことがあっても、君の存在が僕を何より安心させてくれているんだ」
ドラコはそう言って素直な微笑みをフォーラに向けた。フォーラが見たドラコのその瞳は、確かにハリーと対峙した時の苛立った様子とは打って変わっていた。落ち着きや感謝、そして慈愛に満ちた色をした彼の瞳から、フォーラは自分に向けられている様々な気持ちを感じ取った。彼女はそれを素直に嬉しいと思ったし、何なら強く愛しいとすら思った。
そうしてフォーラがドラコの吸い込まれるようなアイスブルーの瞳を見つめ返していると、彼は心が満たされたことで自然とフォーラの額にそっと口付けを落としてきた。
「!ドラコ、」
いつものドラコなら周囲の目を気にする筈だが、今の彼は最早そんなことはどうでもいいくらいフォーラに温かい気持ちを伝えたくて仕方なくなっていた。それと同時に、彼は自身の選択が―――死喰い人という道を選ぶことが、きっと彼女を心の奥底で哀しませていることへの申し訳なさも強く感じていた。
ドラコはフォーラの頬に掛かった髪を片手で軽く梳くようにそっと払うと、彼女の唇に優しくキスを落とした。その随分甘く丁寧な口付けに応えるように、フォーラも恐る恐るドラコの唇に何度も優しく触れ返した。万が一人目に触れてもおかしくない場所だというのに、彼が随分懇切丁寧に自分を愛でてくる様子から、フォーラは動悸がしつつもその心地よさに身体がとろけてしまいそうだった。彼女はそのようにドラコの好意を嬉しく思う一方で、何だか彼の丁寧すぎるキスが自分に許しを請うているようだとも思った。