24. I hope you are safe. (完)
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(それにハリーが嘘の情報に騙されなければ……。ハリーがアンブリッジ先生の尋問の後に、スネイプ先生の部屋に来てくれてさえいれば……。何よりハリーが魔法省に行かなければ、ルシウスさんが捕まることはなかったのに。ドラコが、こんなにも早く自ら危険に飛び込むことを決意しなかったかもしれないのに!)フォーラの足音が石畳の下り階段に響いた。
(試験前のドラコは私の説得で、将来死喰い人になる道を考え直す素振りを見せていたのに!もし今回の事件がなければ、ドラコはこの夏を私の家で安全に過ごす筈だったのに!それに父様の計画だって無駄にならなかったかもしれないのに……!)フォーラは松明の灯る地下廊下をずんずんと進んだ。感情の高ぶりと共に目頭に涙が溜まったが、彼女はそんなことなど気にせず歩み続けた。
(今回、死喰い人が一網打尽になったのに加えて『例のあの人』の復活が世間に認知された……。それがハリーの功績によるところが大きいのは理解するわ。
だけど私は……新聞も学校の人たちも、不死鳥の騎士団も、みんながハリーを褒めているこの風潮が心底嫌いだわ。だって、彼の身勝手な行動が父様の計画を邪魔したのよ……。しかも死喰い人は投獄されても直ぐに出て来られるだなんて、その方が余計にルシウスさんを危険に晒してしまいかねない。『例のあの人』からどんな仕打ちを受けるか分からないと、ナルシッサさんも手紙でそう書いていた……)
フォーラは本来、怒りの矛先をヴォルデモートに向けるべきことくらい良く分かっていた。しかし『例のあの人』の存在は直ぐにどうこうできる筈もなく強靭だ。そのためフォーラは粛々と自分が協力できる範囲のことに取り組んできた。ヴォルデモートから大切な人を守るために。
(だけどハリーの取った行動によって、私の大切な人たちが危険な目に遭う可能性が高まってしまった。今回のことでマルフォイ家が死喰い人や『例のあの人』から虐げられてしまったら、本当に命そのものが危ぶまれていくことになるかもしれない……)
フォーラは殆ど人気のない談話室を横切り、誰もいない女子寮の自分のベッドにドサッと横たわった。そして彼女の大切な存在の一人を思い浮かべた。
(ナルシッサさんはクリーチャーを使ってハリーをおびき寄せるきっかけを作った。それは本当に残念でならないわ。……だけど、彼女は絶対的存在に命令されて、そうするしか選択肢がなかったのかもしれない。だって純血優位の世界を取り戻すための活動と、ハリーの殺害は本来関係ない筈だもの)
フォーラはベッドの上で寝返りを打ち、ベッドの天蓋を見上げた。
(ナルシッサさんを責める前に、不死鳥の騎士団はそもそもクリーチャーを本部の外に出さなければ良かった筈。だけど、それを許してしまったのは誰の責任なの?
クリーチャーのご主人様以外あり得ないでしょう?そのご主人様はいくら自分の家系が嫌いだからって、自分に仕える屋敷しもべ妖精に心から味方になってもらう努力を怠った。本来、しもべ妖精の献身的な心を得るために、相応の気持ちを返してあげるのが主人の責務の筈なのに。……これをシリウスさんの責任と言わず何と言うの?)
フォーラはそのような考えに至ったことを当然だと思うと同時に、亡くなったシリウスを責めている自分に強い罪悪感も覚えていた。それでもやはりフォーラの正直な気持ちは、マルフォイ家の身の安全を妨げた者を許さないということだった。
フォーラは、マグル生まれの自分を受け入れてくれている不死鳥の騎士団よりも、騎士団に味方している彼女の同級生よりも……。幼少期から大変良くしてくれた、もう殆ど家族のような人たちの方が心の底から大切だった。フォーラが騎士団の力になりたいがために新たな変身術を習得したのだって、結果としてフォーラにとって大切な存在を守ることに繋がると考えたからだ。
フォーラはハリーやシリウスへの恨みを強く感じつつ、それに対する自己嫌悪に潰されそうになりながら、行き場のない気持ちを抱えて両手で顔を覆ったのだった。
その日の夕方、フォーラはスネイプの部屋へ向かった。騎士団が魔法省へ向かったあの日にフォーラが使った魔法について、改めて確認するためだ。フォーラはスネイプの部屋で以前のようにもう一度彼の姿に変身してみせた。彼女はあの時同様、ポリジュース薬がない状態で難なく変身術を成功させた。そしてやはりあの時と同じく、フォーラがスネイプに変身する時は数秒間だけスネイプの視界にフォーラの視界が映し出された。一つ違うことがあるとすれば、今回のフォーラはスネイプの血を呑んでいないということだった。何度か変身を試した後、二人共自身の身体にそれ以上の異変がないことを十分に確認した。
フォーラはスネイプと約束を一つ交わした。それは今後スネイプの許可なくこの変身術を使わないということだった。とはいえフォーラが約束を破って秘密裏に力を使ったとしても、この魔法は使った瞬間、強制的にスネイプの脳裏や視界に彼女の見ている景色が伝わってしまう。フォーラからすれば、約束せずともこの力を安易に使うことはできなかった。
(試験前のドラコは私の説得で、将来死喰い人になる道を考え直す素振りを見せていたのに!もし今回の事件がなければ、ドラコはこの夏を私の家で安全に過ごす筈だったのに!それに父様の計画だって無駄にならなかったかもしれないのに……!)フォーラは松明の灯る地下廊下をずんずんと進んだ。感情の高ぶりと共に目頭に涙が溜まったが、彼女はそんなことなど気にせず歩み続けた。
(今回、死喰い人が一網打尽になったのに加えて『例のあの人』の復活が世間に認知された……。それがハリーの功績によるところが大きいのは理解するわ。
だけど私は……新聞も学校の人たちも、不死鳥の騎士団も、みんながハリーを褒めているこの風潮が心底嫌いだわ。だって、彼の身勝手な行動が父様の計画を邪魔したのよ……。しかも死喰い人は投獄されても直ぐに出て来られるだなんて、その方が余計にルシウスさんを危険に晒してしまいかねない。『例のあの人』からどんな仕打ちを受けるか分からないと、ナルシッサさんも手紙でそう書いていた……)
フォーラは本来、怒りの矛先をヴォルデモートに向けるべきことくらい良く分かっていた。しかし『例のあの人』の存在は直ぐにどうこうできる筈もなく強靭だ。そのためフォーラは粛々と自分が協力できる範囲のことに取り組んできた。ヴォルデモートから大切な人を守るために。
(だけどハリーの取った行動によって、私の大切な人たちが危険な目に遭う可能性が高まってしまった。今回のことでマルフォイ家が死喰い人や『例のあの人』から虐げられてしまったら、本当に命そのものが危ぶまれていくことになるかもしれない……)
フォーラは殆ど人気のない談話室を横切り、誰もいない女子寮の自分のベッドにドサッと横たわった。そして彼女の大切な存在の一人を思い浮かべた。
(ナルシッサさんはクリーチャーを使ってハリーをおびき寄せるきっかけを作った。それは本当に残念でならないわ。……だけど、彼女は絶対的存在に命令されて、そうするしか選択肢がなかったのかもしれない。だって純血優位の世界を取り戻すための活動と、ハリーの殺害は本来関係ない筈だもの)
フォーラはベッドの上で寝返りを打ち、ベッドの天蓋を見上げた。
(ナルシッサさんを責める前に、不死鳥の騎士団はそもそもクリーチャーを本部の外に出さなければ良かった筈。だけど、それを許してしまったのは誰の責任なの?
クリーチャーのご主人様以外あり得ないでしょう?そのご主人様はいくら自分の家系が嫌いだからって、自分に仕える屋敷しもべ妖精に心から味方になってもらう努力を怠った。本来、しもべ妖精の献身的な心を得るために、相応の気持ちを返してあげるのが主人の責務の筈なのに。……これをシリウスさんの責任と言わず何と言うの?)
フォーラはそのような考えに至ったことを当然だと思うと同時に、亡くなったシリウスを責めている自分に強い罪悪感も覚えていた。それでもやはりフォーラの正直な気持ちは、マルフォイ家の身の安全を妨げた者を許さないということだった。
フォーラは、マグル生まれの自分を受け入れてくれている不死鳥の騎士団よりも、騎士団に味方している彼女の同級生よりも……。幼少期から大変良くしてくれた、もう殆ど家族のような人たちの方が心の底から大切だった。フォーラが騎士団の力になりたいがために新たな変身術を習得したのだって、結果としてフォーラにとって大切な存在を守ることに繋がると考えたからだ。
フォーラはハリーやシリウスへの恨みを強く感じつつ、それに対する自己嫌悪に潰されそうになりながら、行き場のない気持ちを抱えて両手で顔を覆ったのだった。
その日の夕方、フォーラはスネイプの部屋へ向かった。騎士団が魔法省へ向かったあの日にフォーラが使った魔法について、改めて確認するためだ。フォーラはスネイプの部屋で以前のようにもう一度彼の姿に変身してみせた。彼女はあの時同様、ポリジュース薬がない状態で難なく変身術を成功させた。そしてやはりあの時と同じく、フォーラがスネイプに変身する時は数秒間だけスネイプの視界にフォーラの視界が映し出された。一つ違うことがあるとすれば、今回のフォーラはスネイプの血を呑んでいないということだった。何度か変身を試した後、二人共自身の身体にそれ以上の異変がないことを十分に確認した。
フォーラはスネイプと約束を一つ交わした。それは今後スネイプの許可なくこの変身術を使わないということだった。とはいえフォーラが約束を破って秘密裏に力を使ったとしても、この魔法は使った瞬間、強制的にスネイプの脳裏や視界に彼女の見ている景色が伝わってしまう。フォーラからすれば、約束せずともこの力を安易に使うことはできなかった。