24. I hope you are safe. (完)
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「だから君は気に病む必要はないんだ。……僕はそもそも、アンブリッジの部屋の暖炉を使う以外にシリウスの安否を確認する手段を持っていた。僕はそれをすっかり忘れていたんだ」ハリーは自責の念に駆られる苦痛に耐えるように続けた。「それに、僕は『シリウスが脅されている』というねじ曲げられた情報を受け取らないために、やれることが幾つもあった筈なんだ。それなのに、そうしなかった」
「ハリー、大変な時なのに、気遣ってくれてどうもありがとう……。……あのね、今は沢山の後悔があり過ぎて、きっと頭が落ち着かないと思う。私も今回のことは後悔だらけだわ……。もっと早くに貴方たちに連絡できていたらって、何度思ったか分からない。
だけど貴方も私も、沢山後悔しきったら前を向かなきゃね。その時には貴方を責めていない人が周りに沢山いることに、きっと気付けるわ。」
ハリーはフォーラの瞳に後悔と慈悲深さが混ざっているのを見て、自身の瞳が涙で揺らぐのを感じた。フォーラはハリーが何も返答できずにこちらをぼんやりと見ている姿に、これ以上彼に伝える事はないと感じ取った。そして彼女はその場に立ち上がった。
「私はそろそろセブルスさんのところに行く予定だから、よかったらこの場所を使って。多分、ここなら誰にも一人の時間を邪魔されないわ。一時間程いても、誰も来なかったから。」フォーラは夕方までスネイプの元へ向かう予定はなかったが、ハリーを気遣ってそのように提案した。
「ありがとう。助かるよ」
そうしてフォーラはハリーと別れてその場を立ち去った。その足取りは速く、陽の光の下で戯れる学生たちが何人か目で追う程だった。彼女はその誰にも目もくれずに城の方へと向かった。
フォーラはハリーが現れる一時間程前からあの場所にいて、自身の纏まらない考えを落ち着けようとしていた。その際彼女の元に一通のふくろう便が届いたのだが、それは彼女の両親からのものだった。そこに綴られていたのは、今回のフォーラの素早い行動への賛辞とルシウス・マルフォイが捕まったことについてだった。手紙は何時誰に盗まれても良いよう本文中の名前や固有名称は伏せられていた。
内容は次のとおりだ。今回のフォーラの初動により諸々の対応を早めることができた。それを彼女の両親や騎士団員は皆褒めていた。そしてタイミングを同じくして、ハリーの早とちりがきっかけとはいえ死喰い人を捕まえられたことを不死鳥の騎士団は喜んだ。
しかしフォーラの両親は後者については喜んでいなかった。両親はマルフォイ家の人たちがいつかヴォルデモートに苦しめられることがないよう、彼らを死喰い人から脱却させて保護するタイミングを探っていた。長丁場になるため、そのカモフラージュも含めてフォーラの父シェードはルシウスが持ち掛けてきた魔法薬提供の取引に協力的な素振りを見せていた。
ただ、ルシウスが捕まった今となってはその取引もすっかり無駄になってしまった。そして何より、今後マルフォイ家がヴォルデモートによって虐げられ、身の安全を脅かされる可能性が強まってしまった。それをフォーラの両親は何より心配していた。
フォーラは手紙の入ったポケットに無意識に手を触れながら、城に向かう早足を止めることなく地面の芝生をずんずんと踏み締めて進んだ。その際彼女の脳裏をいつだったか父親が放った言葉が過った。
『必ずみんなで生き抜こう。私たちは勿論、我が家のみんなも、騎士団員も、それにドラコや、ルシウスたちもだ。誰も欠けさせない』
フォーラは俯いて樫の大扉に続く石段を強く踏んで駆け上がった。彼女の少々荒っぽい様子に、すれ違った何人かの生徒が何となく彼女の方を振り向いた。
フォーラはこの数日、心臓が燻るような感覚を何度も覚えていた。そしてその正体が何なのか彼女はあえて理解しようとしていなかった。理解してしまったが最後、自分が行き場のない気持ちで一杯になってしまうと分かっていたからだ。
しかしフォーラは先程ハリーと直接話したことで、とうとう自身の気持ちから目を背けられなくなってしまった。数日前のあの日……ドラコが早朝の談話室で一人涙を流し、憎しみに後押しされて死喰い人になることを決意したあの日から、フォーラはこれまでに無い程の煮えるような怒りと苛立ちを自身の中に閉じ込めていた。それがつい先程、とうとう弾けて露呈してしまったのだ。
(私はハリーがシリウスさんを助けようとしていた事を最後の最後まで知らなかった。だけどもっと早くハリーにクリーチャーの外出を伝えられていたら……。そうすればハリーのとんでもない勘違いを正せていたかもしれなかった)フォーラはスリザリンの談話室に向かって玄関ホールを早足で横切った。
「ハリー、大変な時なのに、気遣ってくれてどうもありがとう……。……あのね、今は沢山の後悔があり過ぎて、きっと頭が落ち着かないと思う。私も今回のことは後悔だらけだわ……。もっと早くに貴方たちに連絡できていたらって、何度思ったか分からない。
だけど貴方も私も、沢山後悔しきったら前を向かなきゃね。その時には貴方を責めていない人が周りに沢山いることに、きっと気付けるわ。」
ハリーはフォーラの瞳に後悔と慈悲深さが混ざっているのを見て、自身の瞳が涙で揺らぐのを感じた。フォーラはハリーが何も返答できずにこちらをぼんやりと見ている姿に、これ以上彼に伝える事はないと感じ取った。そして彼女はその場に立ち上がった。
「私はそろそろセブルスさんのところに行く予定だから、よかったらこの場所を使って。多分、ここなら誰にも一人の時間を邪魔されないわ。一時間程いても、誰も来なかったから。」フォーラは夕方までスネイプの元へ向かう予定はなかったが、ハリーを気遣ってそのように提案した。
「ありがとう。助かるよ」
そうしてフォーラはハリーと別れてその場を立ち去った。その足取りは速く、陽の光の下で戯れる学生たちが何人か目で追う程だった。彼女はその誰にも目もくれずに城の方へと向かった。
フォーラはハリーが現れる一時間程前からあの場所にいて、自身の纏まらない考えを落ち着けようとしていた。その際彼女の元に一通のふくろう便が届いたのだが、それは彼女の両親からのものだった。そこに綴られていたのは、今回のフォーラの素早い行動への賛辞とルシウス・マルフォイが捕まったことについてだった。手紙は何時誰に盗まれても良いよう本文中の名前や固有名称は伏せられていた。
内容は次のとおりだ。今回のフォーラの初動により諸々の対応を早めることができた。それを彼女の両親や騎士団員は皆褒めていた。そしてタイミングを同じくして、ハリーの早とちりがきっかけとはいえ死喰い人を捕まえられたことを不死鳥の騎士団は喜んだ。
しかしフォーラの両親は後者については喜んでいなかった。両親はマルフォイ家の人たちがいつかヴォルデモートに苦しめられることがないよう、彼らを死喰い人から脱却させて保護するタイミングを探っていた。長丁場になるため、そのカモフラージュも含めてフォーラの父シェードはルシウスが持ち掛けてきた魔法薬提供の取引に協力的な素振りを見せていた。
ただ、ルシウスが捕まった今となってはその取引もすっかり無駄になってしまった。そして何より、今後マルフォイ家がヴォルデモートによって虐げられ、身の安全を脅かされる可能性が強まってしまった。それをフォーラの両親は何より心配していた。
フォーラは手紙の入ったポケットに無意識に手を触れながら、城に向かう早足を止めることなく地面の芝生をずんずんと踏み締めて進んだ。その際彼女の脳裏をいつだったか父親が放った言葉が過った。
『必ずみんなで生き抜こう。私たちは勿論、我が家のみんなも、騎士団員も、それにドラコや、ルシウスたちもだ。誰も欠けさせない』
フォーラは俯いて樫の大扉に続く石段を強く踏んで駆け上がった。彼女の少々荒っぽい様子に、すれ違った何人かの生徒が何となく彼女の方を振り向いた。
フォーラはこの数日、心臓が燻るような感覚を何度も覚えていた。そしてその正体が何なのか彼女はあえて理解しようとしていなかった。理解してしまったが最後、自分が行き場のない気持ちで一杯になってしまうと分かっていたからだ。
しかしフォーラは先程ハリーと直接話したことで、とうとう自身の気持ちから目を背けられなくなってしまった。数日前のあの日……ドラコが早朝の談話室で一人涙を流し、憎しみに後押しされて死喰い人になることを決意したあの日から、フォーラはこれまでに無い程の煮えるような怒りと苛立ちを自身の中に閉じ込めていた。それがつい先程、とうとう弾けて露呈してしまったのだ。
(私はハリーがシリウスさんを助けようとしていた事を最後の最後まで知らなかった。だけどもっと早くハリーにクリーチャーの外出を伝えられていたら……。そうすればハリーのとんでもない勘違いを正せていたかもしれなかった)フォーラはスリザリンの談話室に向かって玄関ホールを早足で横切った。