23.Snape's blood
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
嵐のような時が過ぎて部屋に一人残ったスネイプ姿のフォーラは、そわそわとした不安な気持ちを抱えてその場を何度も往復するようにうろついた。その度に彼女の長く黒いマントが衣擦れする音が部屋に響いた。彼女はその間多くのことに考えを巡らせていたのだが、その時突如として部屋のドアをノックする音が響いた。
「スネイプ先生、いらっしゃいますか?アンブリッジ先生が急ぎでお呼びなんです」
「!」フォーラはドアの向こうから聞こえた声に思わずビクリと肩を跳ねさせた。
(ついさっきセブルスさんがここを出て行ったばかりなのに、もう?)
彼女はドクドクと心臓の鼓動が早まるのを感じつつ、恐る恐るその聞き覚えがある声がしたドアの方に近付いた。そして彼女はそっとドアノブを押し開けたのだった。
さて、突然だがここで時を遡り、場面は最終試験が終わった直後の人気のない廊下にまで移ることにする。その頃のハリーは、何故自身が魔法史の筆記試験中に倒れてしまったかをハーマイオニーとロンに説明していた。
ハリーは試験中に居眠りして夢を見たのだが、その内容は正に今この瞬間、シリウスがヴォルデモートに捕まっているというものだった。ハリーは夢の中でヴォルデモートの高揚ぶりを感知し、その瞬間ハリーの額にある稲妻型の傷が非常に強く痛みを帯びた。そのせいでハリーは試験中に倒れてしまったのだった。
ハリーはその痛みやこれまでの経験から、それが単なる夢ではなく、現実に起こっていることなのだとハーマイオニーとロンに話した。
「魔法省の神秘部で、あいつは何か手に入れたいものをシリウスに取らせようとしていたんだ。あいつがシリウスを拷問してる……最後には殺すって言ってるんだ!僕たち、どうやったらそこへ行けるかな」
「そこへ、―――い、行くって?」ロンが狼狽えた様子で質問を返した。
「神秘部に行くんだ。シリウスを助けに!」
ハリーは勿論のこと、ロンもハーマイオニーも、これまでのハリーとヴォルデモートの戦いや経験則から、ハリーが見る夢や頭に流れ込んでくる映像は、時にヴォルデモートの見ている実際の景色を共有しているという理解だった。そして魔法省の最下層、魔法に関して様々な研究が行われている神秘部には、どうやらヴォルデモートが欲している『何か』が存在することもハリーはこれまでの夢を通じて把握していた。
しかし今回のシリウスの件ばかりは、ロンもハーマイオニーも幾らか信じがたい様子だった。ハーマイオニーが恐々と尋ねた。
「でも……ちょっと考えてみて。今、夕方の五時よ……魔法省には大勢の人が働いているわ。ヴォルデモートもシリウスも、どうやって誰にも見られずに魔法省の最下層に入れたの?二人とも世界一のお尋ね者なのよ?」
それを聞いてもハリーはこれまでの経験があったが故に、自身が見た夢が真実だと疑わなかった。しかしハーマイオニーは現実的に考えてあり得ないと言ってハリーと対立した。ロンは二人の議論が続くに連れ、ハリーの話に傾倒していっているようだった。
「ハリー、私たち、本当にシリウスに何かあったのか確認しなきゃ―――」
「シリウスが拷問されているのは、今なんだぞ!」
そうこうしている内に、三人のところにジニーとネビル、レイブンクロー生のルーナ・ラブグッドが偶然合流した。ジニーたちは今年度にハリーが開いた防衛術教室の受講者だった。彼女らはハリーたちが何やら相当深刻な状況にある様子だったため、手助けをしたいと申し出たのだ。するとハーマイオニーが提案した。
「ハリー、私たち、この人たちに手伝ってもらえるわ。アンブリッジの暖炉が唯一ホグワーツの外に繋がってる。それを使ってブラック邸の誰かと連絡を取るのよ。そこにシリウスがいるか確認できるわ。暖炉を使うためにはあの女の部屋に忍び込まなきゃ。その間、ジニーたちには部屋に人が近付かないようにしてもらえれば……」
「分かったわ。兎に角急ぎなのよね。それなら役に立てるわよ」ジニーが言った。
そうして一行はアンブリッジの部屋へと向かったのだった。
それからのことはあっと言う間だった。ジニーたちがアンブリッジの部屋の近くの廊下で人払いをし、その間にハリーとロン、ハーマイオニーがアンブリッジの部屋の中に入った。そしてハリーが部屋の暖炉に顔を突っ込み、ブラック邸の暖炉に顔を覗かせたのだ。
ハリーが観た景色は、ブラック邸の暖炉から見上げた厨房だった。そこには屋敷しもべ妖精のクリーチャーしかいなかった。
「ポッター坊主の頭が暖炉にあります」クリーチャーが空っぽの厨房に向かって告げた。「この子はなんでやって来たのだろう?クリーチャーは考えます」
「クリーチャー、シリウスはどこだ?」ハリーが問いただした。するとしもべ妖精はゼイゼイ声で含み笑いをした。
「ご主人様はお出かけです。ハリー・ポッター」
「何処へ出かけたんだ?クリーチャー、何処へ行ったんだ?」
ハリーが幾ら問いただしても、誰か他にいないか聞いても、クリーチャーはハリーを嘲笑うばかりだった。そしてクリーチャーがハリーを置いて厨房の外へ出ようとした時、暖炉からハリーが叫んだ。
「シリウスは何処に行ったんだ?クリーチャー、神秘部に行ったのか?」
その言葉にクリーチャーは足を止めると、沈黙の後で高笑いした。
「ご主人様は神秘部から戻ってこない!」そうしてクリーチャーは厨房の外へ掛けて行ってしまった。
「こいつ―――!!!」
しかしハリーが悪態も呪いも一言も言わない内に、頭のてっぺんに鋭い痛みを感じた。ハリーは灰を吸い込んでむせ込み、炎の中をぐいぐいと引き戻されていくのを感じた。そしてぎょっとするほど唐突に、ハリーはアンブリッジの青ざめた顔を見上げていた。ハリーの髪はアンブリッジのずんぐりした手に引っ掴まれて、暖炉から引き剥がされていたのだった。
「スネイプ先生、いらっしゃいますか?アンブリッジ先生が急ぎでお呼びなんです」
「!」フォーラはドアの向こうから聞こえた声に思わずビクリと肩を跳ねさせた。
(ついさっきセブルスさんがここを出て行ったばかりなのに、もう?)
彼女はドクドクと心臓の鼓動が早まるのを感じつつ、恐る恐るその聞き覚えがある声がしたドアの方に近付いた。そして彼女はそっとドアノブを押し開けたのだった。
さて、突然だがここで時を遡り、場面は最終試験が終わった直後の人気のない廊下にまで移ることにする。その頃のハリーは、何故自身が魔法史の筆記試験中に倒れてしまったかをハーマイオニーとロンに説明していた。
ハリーは試験中に居眠りして夢を見たのだが、その内容は正に今この瞬間、シリウスがヴォルデモートに捕まっているというものだった。ハリーは夢の中でヴォルデモートの高揚ぶりを感知し、その瞬間ハリーの額にある稲妻型の傷が非常に強く痛みを帯びた。そのせいでハリーは試験中に倒れてしまったのだった。
ハリーはその痛みやこれまでの経験から、それが単なる夢ではなく、現実に起こっていることなのだとハーマイオニーとロンに話した。
「魔法省の神秘部で、あいつは何か手に入れたいものをシリウスに取らせようとしていたんだ。あいつがシリウスを拷問してる……最後には殺すって言ってるんだ!僕たち、どうやったらそこへ行けるかな」
「そこへ、―――い、行くって?」ロンが狼狽えた様子で質問を返した。
「神秘部に行くんだ。シリウスを助けに!」
ハリーは勿論のこと、ロンもハーマイオニーも、これまでのハリーとヴォルデモートの戦いや経験則から、ハリーが見る夢や頭に流れ込んでくる映像は、時にヴォルデモートの見ている実際の景色を共有しているという理解だった。そして魔法省の最下層、魔法に関して様々な研究が行われている神秘部には、どうやらヴォルデモートが欲している『何か』が存在することもハリーはこれまでの夢を通じて把握していた。
しかし今回のシリウスの件ばかりは、ロンもハーマイオニーも幾らか信じがたい様子だった。ハーマイオニーが恐々と尋ねた。
「でも……ちょっと考えてみて。今、夕方の五時よ……魔法省には大勢の人が働いているわ。ヴォルデモートもシリウスも、どうやって誰にも見られずに魔法省の最下層に入れたの?二人とも世界一のお尋ね者なのよ?」
それを聞いてもハリーはこれまでの経験があったが故に、自身が見た夢が真実だと疑わなかった。しかしハーマイオニーは現実的に考えてあり得ないと言ってハリーと対立した。ロンは二人の議論が続くに連れ、ハリーの話に傾倒していっているようだった。
「ハリー、私たち、本当にシリウスに何かあったのか確認しなきゃ―――」
「シリウスが拷問されているのは、今なんだぞ!」
そうこうしている内に、三人のところにジニーとネビル、レイブンクロー生のルーナ・ラブグッドが偶然合流した。ジニーたちは今年度にハリーが開いた防衛術教室の受講者だった。彼女らはハリーたちが何やら相当深刻な状況にある様子だったため、手助けをしたいと申し出たのだ。するとハーマイオニーが提案した。
「ハリー、私たち、この人たちに手伝ってもらえるわ。アンブリッジの暖炉が唯一ホグワーツの外に繋がってる。それを使ってブラック邸の誰かと連絡を取るのよ。そこにシリウスがいるか確認できるわ。暖炉を使うためにはあの女の部屋に忍び込まなきゃ。その間、ジニーたちには部屋に人が近付かないようにしてもらえれば……」
「分かったわ。兎に角急ぎなのよね。それなら役に立てるわよ」ジニーが言った。
そうして一行はアンブリッジの部屋へと向かったのだった。
それからのことはあっと言う間だった。ジニーたちがアンブリッジの部屋の近くの廊下で人払いをし、その間にハリーとロン、ハーマイオニーがアンブリッジの部屋の中に入った。そしてハリーが部屋の暖炉に顔を突っ込み、ブラック邸の暖炉に顔を覗かせたのだ。
ハリーが観た景色は、ブラック邸の暖炉から見上げた厨房だった。そこには屋敷しもべ妖精のクリーチャーしかいなかった。
「ポッター坊主の頭が暖炉にあります」クリーチャーが空っぽの厨房に向かって告げた。「この子はなんでやって来たのだろう?クリーチャーは考えます」
「クリーチャー、シリウスはどこだ?」ハリーが問いただした。するとしもべ妖精はゼイゼイ声で含み笑いをした。
「ご主人様はお出かけです。ハリー・ポッター」
「何処へ出かけたんだ?クリーチャー、何処へ行ったんだ?」
ハリーが幾ら問いただしても、誰か他にいないか聞いても、クリーチャーはハリーを嘲笑うばかりだった。そしてクリーチャーがハリーを置いて厨房の外へ出ようとした時、暖炉からハリーが叫んだ。
「シリウスは何処に行ったんだ?クリーチャー、神秘部に行ったのか?」
その言葉にクリーチャーは足を止めると、沈黙の後で高笑いした。
「ご主人様は神秘部から戻ってこない!」そうしてクリーチャーは厨房の外へ掛けて行ってしまった。
「こいつ―――!!!」
しかしハリーが悪態も呪いも一言も言わない内に、頭のてっぺんに鋭い痛みを感じた。ハリーは灰を吸い込んでむせ込み、炎の中をぐいぐいと引き戻されていくのを感じた。そしてぎょっとするほど唐突に、ハリーはアンブリッジの青ざめた顔を見上げていた。ハリーの髪はアンブリッジのずんぐりした手に引っ掴まれて、暖炉から引き剥がされていたのだった。