23.Snape's blood
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すると、フォーラは全身がまるで捩れて溶けるような感覚に襲われた。それはどこかの本で見た、ポリジュース薬を呑んだ時の症状と酷似しているようだった。そうして彼女の身体は背が伸び、肩が張り、ありとあらゆる箇所が変化した。そしてポリジュース薬では変化しない服までも、彼女がイメージしたそのものに変化していったのだった。
身体の違和感が落ち着くと、フォーラはその瞳を恐る恐る開けた。すると彼女は視界が普段より随分高い位置にあることに直ぐ気が付いた。そして自身の腕や脚元を眺めてみると、その見た目が普段と全く違っていた。彼女は見覚えのある黒装束を纏っていて、そこから垣間見えた手の甲は普段の自分のものより骨ばっていた。髪に触れてみても髪質が全く違う。
フォーラは自分の身体や服が、まぎれもなくセブルス・スネイプその人になっていることを理解した。
「!セブルスさん、私……」フォーラは自分の喉からスネイプの声が響いたものだから、驚いて思わず自身の口を反射的に両手で覆った。そしてその手を退けると再び低音の声で尋ねた。
「私、もしかして本当に成功したのですね!?わあ、本当に……信じられない。」
そうしてフォーラはようやく視線を自分の身体から外し、正面に立つスネイプの方を見やった。すると、目の前の彼は片手を自身の頭に当てていた。彼は突如訪れた違和感に耐えているように見えた。
「セブルスさん?大丈夫ですか?体調が優れませんか?」
「いや……大丈夫だ」
それ程経たずして、スネイプの頭からは違和感が消えたようだった。彼は瞳を伏せたまま言葉を続けた。
「……フォーラが変身する直前から直後のほんの僅かな間、お前が見ている景色が我輩にも見えたのだ」
それはこの魔法の制約だった。血を呑んだ術者が変身すれば、そのことを血の提供者も視覚的・感覚的に把握するという仕掛けだ。恐らくエメリアはこの変身術を作った際、術者が悪さ出来ないようにするために、血の提供者に変身したことを知らせる機能を付けたのだろう。
「本に書かれているとおりですね……。」
フォーラもスネイプも、エメリアの著書にその制約が記されているのを把握はしていた。しかし実際に本に記載のとおりの体験をしてみると、これまで誰も成功しなかった筈の術が成功していることをじわじわと実感していった。
スネイプは軽く頭を振るとようやくフォーラの方を見た。彼の表情は、まるで信じられない物を見ているようだった。
「……まさかほんの僅かな期待だったとはいえ、本当に成功させてしまうとは……」
スネイプは杖を振って隣の部屋から全身鏡を呼び寄せすると、フォーラの前までそれを動かした。フォーラは鏡に映る自分の姿を食い入るように見つめた。
「フォーラ、体調はどうだ」
「身体が違う違和感はありますが、身体の何処かが痛いとか、そういったことは全くありません。『人の変身』の術を自分に掛けている時と、殆ど変わりません……」
フォーラは鏡を見ながらそのように回答した後で、直ぐにハッと我に返ると視線をスネイプの方に戻した。今はこの変身術について議論するのは後回しにすべきだろう。
「セブルスさん、今直ぐロンドンのブラック邸に向かってください。何か良くないことが起こる前に、対策を立てないと。」
「あ、ああ。だが、お前は本当に大丈夫か?もう少し様子を見たほうが」
「私は本当に大丈夫です!身体の何処も悪くはありません。それよりも今はクリーチャーの行動について騎士団員と話し合わないと」
フォーラを心配して後ろ髪を引かれている様子のスネイプに、フォーラは何とか彼を急き立てた。
「……分かった、そうしよう」
スネイプもフォーラの変身に動揺していたが、一先ず今は騎士団本部に向かうことを優先しなくては。スネイプは杖を振って外出の身支度をしながらフォーラに話しかけた。
「その変身術のことは、我輩が帰宅してから詳しく話し合おう。……恐らくあと一時間後にアンブリッジ女史が魔法薬を預かりにここへやって来る可能性が高い。その時は、そこの机の上にある薬を渡すように。中身は各瓶のラベルに記載してある。我輩が戻るまでの二時間程はそれ以外の予定がない。だから教職員室に向かう必要もないが……万が一、アンブリッジ女史が気まぐれに我輩を呼びつけるかも分からん。そう言ったことが無い限りは、できる限りこの部屋で大人しくしていなさい。誰かに何か言われて回答できないことは、この際『うっかり失念した』と回答して誤魔化しておけばいい」
「分かりました。」フォーラがスネイプの声で返答した。
「それから最も注意すべき点だが……受け答えは我輩の口調を真似しなさい。くれぐれも普段のお前の口調になってしまわないよう」
「あ……。オホン、ああ、我輩に任せておけばいい。これまで我輩が貴殿の話し口調をどれだけ聞いてきたと思うのだね」
フォーラがスネイプを真似してそのように返答すると、スネイプは少々不快そうな表情を浮かべて軽く眉間に皺を寄せた。
「まあ、癇に障るのは間違いないがそれでいいだろう。あとは……杖を我輩の物と同じ形にしておくことだな」
「!そうですね、ありがとうございます。」
フォーラは手元の杖だけは、失念していてその見た目を変化させられていなかった。彼女は一般的な変身術で自身の杖をスネイプの杖の形に変化させた。
「それでいい。……ではフォーラ。……すまないが、後は任せた」
スネイプはまだ心配そうにしながらも、身支度を終えると杖を取り出した。そして自身のマントに『目くらまし術』をかけるとマントを背景と同化させた。そして彼はそのマントを頭の上からすっぽり被り直し、そのコウモリのような黒装束姿を第三者に視認できないようにした。そうして間もなく城の廊下に繋がるドアが独りでに開いて閉じた。スネイプが部屋から出て行った証拠だ。
身体の違和感が落ち着くと、フォーラはその瞳を恐る恐る開けた。すると彼女は視界が普段より随分高い位置にあることに直ぐ気が付いた。そして自身の腕や脚元を眺めてみると、その見た目が普段と全く違っていた。彼女は見覚えのある黒装束を纏っていて、そこから垣間見えた手の甲は普段の自分のものより骨ばっていた。髪に触れてみても髪質が全く違う。
フォーラは自分の身体や服が、まぎれもなくセブルス・スネイプその人になっていることを理解した。
「!セブルスさん、私……」フォーラは自分の喉からスネイプの声が響いたものだから、驚いて思わず自身の口を反射的に両手で覆った。そしてその手を退けると再び低音の声で尋ねた。
「私、もしかして本当に成功したのですね!?わあ、本当に……信じられない。」
そうしてフォーラはようやく視線を自分の身体から外し、正面に立つスネイプの方を見やった。すると、目の前の彼は片手を自身の頭に当てていた。彼は突如訪れた違和感に耐えているように見えた。
「セブルスさん?大丈夫ですか?体調が優れませんか?」
「いや……大丈夫だ」
それ程経たずして、スネイプの頭からは違和感が消えたようだった。彼は瞳を伏せたまま言葉を続けた。
「……フォーラが変身する直前から直後のほんの僅かな間、お前が見ている景色が我輩にも見えたのだ」
それはこの魔法の制約だった。血を呑んだ術者が変身すれば、そのことを血の提供者も視覚的・感覚的に把握するという仕掛けだ。恐らくエメリアはこの変身術を作った際、術者が悪さ出来ないようにするために、血の提供者に変身したことを知らせる機能を付けたのだろう。
「本に書かれているとおりですね……。」
フォーラもスネイプも、エメリアの著書にその制約が記されているのを把握はしていた。しかし実際に本に記載のとおりの体験をしてみると、これまで誰も成功しなかった筈の術が成功していることをじわじわと実感していった。
スネイプは軽く頭を振るとようやくフォーラの方を見た。彼の表情は、まるで信じられない物を見ているようだった。
「……まさかほんの僅かな期待だったとはいえ、本当に成功させてしまうとは……」
スネイプは杖を振って隣の部屋から全身鏡を呼び寄せすると、フォーラの前までそれを動かした。フォーラは鏡に映る自分の姿を食い入るように見つめた。
「フォーラ、体調はどうだ」
「身体が違う違和感はありますが、身体の何処かが痛いとか、そういったことは全くありません。『人の変身』の術を自分に掛けている時と、殆ど変わりません……」
フォーラは鏡を見ながらそのように回答した後で、直ぐにハッと我に返ると視線をスネイプの方に戻した。今はこの変身術について議論するのは後回しにすべきだろう。
「セブルスさん、今直ぐロンドンのブラック邸に向かってください。何か良くないことが起こる前に、対策を立てないと。」
「あ、ああ。だが、お前は本当に大丈夫か?もう少し様子を見たほうが」
「私は本当に大丈夫です!身体の何処も悪くはありません。それよりも今はクリーチャーの行動について騎士団員と話し合わないと」
フォーラを心配して後ろ髪を引かれている様子のスネイプに、フォーラは何とか彼を急き立てた。
「……分かった、そうしよう」
スネイプもフォーラの変身に動揺していたが、一先ず今は騎士団本部に向かうことを優先しなくては。スネイプは杖を振って外出の身支度をしながらフォーラに話しかけた。
「その変身術のことは、我輩が帰宅してから詳しく話し合おう。……恐らくあと一時間後にアンブリッジ女史が魔法薬を預かりにここへやって来る可能性が高い。その時は、そこの机の上にある薬を渡すように。中身は各瓶のラベルに記載してある。我輩が戻るまでの二時間程はそれ以外の予定がない。だから教職員室に向かう必要もないが……万が一、アンブリッジ女史が気まぐれに我輩を呼びつけるかも分からん。そう言ったことが無い限りは、できる限りこの部屋で大人しくしていなさい。誰かに何か言われて回答できないことは、この際『うっかり失念した』と回答して誤魔化しておけばいい」
「分かりました。」フォーラがスネイプの声で返答した。
「それから最も注意すべき点だが……受け答えは我輩の口調を真似しなさい。くれぐれも普段のお前の口調になってしまわないよう」
「あ……。オホン、ああ、我輩に任せておけばいい。これまで我輩が貴殿の話し口調をどれだけ聞いてきたと思うのだね」
フォーラがスネイプを真似してそのように返答すると、スネイプは少々不快そうな表情を浮かべて軽く眉間に皺を寄せた。
「まあ、癇に障るのは間違いないがそれでいいだろう。あとは……杖を我輩の物と同じ形にしておくことだな」
「!そうですね、ありがとうございます。」
フォーラは手元の杖だけは、失念していてその見た目を変化させられていなかった。彼女は一般的な変身術で自身の杖をスネイプの杖の形に変化させた。
「それでいい。……ではフォーラ。……すまないが、後は任せた」
スネイプはまだ心配そうにしながらも、身支度を終えると杖を取り出した。そして自身のマントに『目くらまし術』をかけるとマントを背景と同化させた。そして彼はそのマントを頭の上からすっぽり被り直し、そのコウモリのような黒装束姿を第三者に視認できないようにした。そうして間もなく城の廊下に繋がるドアが独りでに開いて閉じた。スネイプが部屋から出て行った証拠だ。