23.Snape's blood
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「まさか、そんな馬鹿なことが……?いや、仮にナルシッサがそういったことを進めていたとして、我輩に連絡がなかったのは当然かもしれん。何せ我輩はダンブルドアの側にいる分、まだ闇の陣営に十分信頼されてはいないのだから……」
そしてスネイプはサッと衣服のポケットから手のひらサイズの四角い鏡を取り出し、自身の口元に指を当ててフォーラの方を見た。
「少しの間静かにしているように。これは本来、騎士団員しか知ってはいけない連絡手段なのでな」
フォーラは最初スネイプが何を言っているのか理解できなかったが、次に彼はフォーラが鏡に映り込まないように注意して自身の顔を映すと、鏡に向かって『シリウス・ブラック』と呼びかけた。すると程なくして鏡の向こうに、ロンドンにいる筈のシリウスが映り込んだではないか。
「!」フォーラは反射的に驚きの声が漏れそうになったが、慌てて口元を両手で抑えた。
『……何だねスネイプ。君が私を呼び出すとは、随分珍しいこともあったものだ』
鏡の中から随分と不機嫌そうなシリウスの声が聞こえた。彼は何処かリビングでも厨房でもない一室にいるようだった。
「急用だ。無駄口を叩く暇があるのなら、今直ぐ屋敷の中にクリーチャーがいるか確認しろ」
『何だ?クリーチャーならいつもどおり屋敷の何処かにいる筈だが?』
「聞こえなかったのか!無駄口を叩くな。さっさと奴をその場に呼びつけて問いただせ。奴がその屋敷から出て、ナルシッサ・ブラックの元を訪れていた可能性がある」
『!?どういうことだ?俄かには信じられないが』
状況を直ぐには呑み込めていないシリウスに、スネイプは元々彼に抱いている嫌悪感に加えて余計にイライラを募らせた。
「兎に角呼びつけてみろ!」
シリウスはスネイプのいつも以上の剣幕に未だ疑り深い視線を向けた後で『クリーチャー!』と叫んだ。すると程なくしてクリーチャーがシリウスの足元に現れたような音が鏡の向こうから聞こえた。シリウスが鏡にクリーチャーを映したのだが、フォーラには何だかクリーチャーが何時に無く上機嫌で嬉しそうな笑みを浮かべているように見えた。まるで、たった今何かが上手くいったとでもいうような……。いや、流石にそれは考え過ぎだろう。クリーチャーが喜ぶことで思い浮かぶのは、シリウスにとって都合の悪いことが起こった時ではあるのだが。
クリーチャーがシリウスに嫌々挨拶するのを遮って、シリウスが尋ねた。
『今までお前は何処かに行っていたのか?』
『つい先程まで、厨房の暖炉の前で火の番をしておりました』
『違う、私が言いたいのは今日に限った話じゃない。まさかとは思いたいが……お前は最近、……私の従姉妹のところへ行ったのか?』
シリウスの言葉に対し、クリーチャーは直ぐには返答しなかった。そして口を開いたかと思えば、何やら湾曲的で言い訳がましい言葉をごたごたと並べたではないか。そうして質問の答えを明確に話さないクリーチャーにとうとうシリウスが痺れを切らした。彼が怒声と共に再び問いただすと、クリーチャーは静かに声を震わせながらようやくはっきりと回答したのだった。
『さようでございます……。クリーチャーは……ナルシッサお嬢様のところへ行きました』
「!」それを聞いた三人は一瞬驚きでその場に固まってしまった。しかもクリーチャーの震える声色は罰を受ける恐怖によるものだけでなく、まるでシリウスを出し抜いていたことを喜ぶような意味合いも含まれているように思えた。
『こいつ!!!!!』
シリウスの怒声が再び聞こえ、彼の持っていた鏡がブラック邸の壁をぐるっと映したかと思うと、カンッという音と共に今度は天井を映して静止した。どうやらシリウスが怒りで鏡を放り出したようだ。スネイプは鏡の景色をブラック邸から断ち切って自身の暗い顔が映ったのを確認すると、暫くその場を動かなかった。ただ、何かを深く考えるような様子だったのは間違いない。スネイプはようやくフォーラの方を振り返った。
「フォーラ、礼を言う。……残念ながらお前の話は真実だった」
「私の勘違いなら、どれだけ良かったか……。セブルスさんはこれから騎士団員にこのことを連絡して廻るのですよね?その鏡を使って?」
フォーラがスネイプの手元の鏡をチラと見て尋ねた。しかしスネイプは直ぐには頷かなかった。
「セブルスさん?」
スネイプは額に片手をあてがい、何やら深く考えを巡らせているようだった。そして眉間に深く皺を刻んだまま、フォーラの質問にようやく答えた。
「いや……情報共有するにしても、今回のことはこの鏡を使う域を超えている。今後の方針を含め騎士団員と慎重に協議せねばなるまい。クリーチャーを尋問する必要もあるだろう。それに我輩からもフォーラの聞いた話を皆に伝えねば」
スネイプは深い呼吸をした後で、今度は何か意を決した様子になって言った。
「つまり……グリモールドプレイスのブラック邸に、我輩含め、団員を招集して議論するのが最も効率的だと、そう考える。せめて二時間は欲しい」
「だけど、アンブリッジ先生に外出が知られてしまったら―――?」
「その通りだ。あの女は最近よく我輩を尋ねて魔法薬を要求しに来るのだ。
だが……もし間違いでなければ……できれば避けたいことだったが―――フォーラ、お前は誰かの血を使えば、もしかするとその人物に自由に変身できるかもしれんと、そう思うのだな?」
「!」
フォーラはスネイプが何を言っているのか即座に理解した。
「だけどセブルスさん、それならポリジュース薬を使った方が確実です―――」
「完成した薬が手元にあれば、真っ先に提案している」
「でも、セブルスさんは『エメリア・スイッチ』の本に書かれていたあの方法に否定的だったのに―――」
「ああ、お前にこの本を借りてからというもの、穴が開くほど何度も読み返した。血を使う魔法は大概が闇の魔術で間違いなかったからだ」
そしてスネイプはサッと衣服のポケットから手のひらサイズの四角い鏡を取り出し、自身の口元に指を当ててフォーラの方を見た。
「少しの間静かにしているように。これは本来、騎士団員しか知ってはいけない連絡手段なのでな」
フォーラは最初スネイプが何を言っているのか理解できなかったが、次に彼はフォーラが鏡に映り込まないように注意して自身の顔を映すと、鏡に向かって『シリウス・ブラック』と呼びかけた。すると程なくして鏡の向こうに、ロンドンにいる筈のシリウスが映り込んだではないか。
「!」フォーラは反射的に驚きの声が漏れそうになったが、慌てて口元を両手で抑えた。
『……何だねスネイプ。君が私を呼び出すとは、随分珍しいこともあったものだ』
鏡の中から随分と不機嫌そうなシリウスの声が聞こえた。彼は何処かリビングでも厨房でもない一室にいるようだった。
「急用だ。無駄口を叩く暇があるのなら、今直ぐ屋敷の中にクリーチャーがいるか確認しろ」
『何だ?クリーチャーならいつもどおり屋敷の何処かにいる筈だが?』
「聞こえなかったのか!無駄口を叩くな。さっさと奴をその場に呼びつけて問いただせ。奴がその屋敷から出て、ナルシッサ・ブラックの元を訪れていた可能性がある」
『!?どういうことだ?俄かには信じられないが』
状況を直ぐには呑み込めていないシリウスに、スネイプは元々彼に抱いている嫌悪感に加えて余計にイライラを募らせた。
「兎に角呼びつけてみろ!」
シリウスはスネイプのいつも以上の剣幕に未だ疑り深い視線を向けた後で『クリーチャー!』と叫んだ。すると程なくしてクリーチャーがシリウスの足元に現れたような音が鏡の向こうから聞こえた。シリウスが鏡にクリーチャーを映したのだが、フォーラには何だかクリーチャーが何時に無く上機嫌で嬉しそうな笑みを浮かべているように見えた。まるで、たった今何かが上手くいったとでもいうような……。いや、流石にそれは考え過ぎだろう。クリーチャーが喜ぶことで思い浮かぶのは、シリウスにとって都合の悪いことが起こった時ではあるのだが。
クリーチャーがシリウスに嫌々挨拶するのを遮って、シリウスが尋ねた。
『今までお前は何処かに行っていたのか?』
『つい先程まで、厨房の暖炉の前で火の番をしておりました』
『違う、私が言いたいのは今日に限った話じゃない。まさかとは思いたいが……お前は最近、……私の従姉妹のところへ行ったのか?』
シリウスの言葉に対し、クリーチャーは直ぐには返答しなかった。そして口を開いたかと思えば、何やら湾曲的で言い訳がましい言葉をごたごたと並べたではないか。そうして質問の答えを明確に話さないクリーチャーにとうとうシリウスが痺れを切らした。彼が怒声と共に再び問いただすと、クリーチャーは静かに声を震わせながらようやくはっきりと回答したのだった。
『さようでございます……。クリーチャーは……ナルシッサお嬢様のところへ行きました』
「!」それを聞いた三人は一瞬驚きでその場に固まってしまった。しかもクリーチャーの震える声色は罰を受ける恐怖によるものだけでなく、まるでシリウスを出し抜いていたことを喜ぶような意味合いも含まれているように思えた。
『こいつ!!!!!』
シリウスの怒声が再び聞こえ、彼の持っていた鏡がブラック邸の壁をぐるっと映したかと思うと、カンッという音と共に今度は天井を映して静止した。どうやらシリウスが怒りで鏡を放り出したようだ。スネイプは鏡の景色をブラック邸から断ち切って自身の暗い顔が映ったのを確認すると、暫くその場を動かなかった。ただ、何かを深く考えるような様子だったのは間違いない。スネイプはようやくフォーラの方を振り返った。
「フォーラ、礼を言う。……残念ながらお前の話は真実だった」
「私の勘違いなら、どれだけ良かったか……。セブルスさんはこれから騎士団員にこのことを連絡して廻るのですよね?その鏡を使って?」
フォーラがスネイプの手元の鏡をチラと見て尋ねた。しかしスネイプは直ぐには頷かなかった。
「セブルスさん?」
スネイプは額に片手をあてがい、何やら深く考えを巡らせているようだった。そして眉間に深く皺を刻んだまま、フォーラの質問にようやく答えた。
「いや……情報共有するにしても、今回のことはこの鏡を使う域を超えている。今後の方針を含め騎士団員と慎重に協議せねばなるまい。クリーチャーを尋問する必要もあるだろう。それに我輩からもフォーラの聞いた話を皆に伝えねば」
スネイプは深い呼吸をした後で、今度は何か意を決した様子になって言った。
「つまり……グリモールドプレイスのブラック邸に、我輩含め、団員を招集して議論するのが最も効率的だと、そう考える。せめて二時間は欲しい」
「だけど、アンブリッジ先生に外出が知られてしまったら―――?」
「その通りだ。あの女は最近よく我輩を尋ねて魔法薬を要求しに来るのだ。
だが……もし間違いでなければ……できれば避けたいことだったが―――フォーラ、お前は誰かの血を使えば、もしかするとその人物に自由に変身できるかもしれんと、そう思うのだな?」
「!」
フォーラはスネイプが何を言っているのか即座に理解した。
「だけどセブルスさん、それならポリジュース薬を使った方が確実です―――」
「完成した薬が手元にあれば、真っ先に提案している」
「でも、セブルスさんは『エメリア・スイッチ』の本に書かれていたあの方法に否定的だったのに―――」
「ああ、お前にこの本を借りてからというもの、穴が開くほど何度も読み返した。血を使う魔法は大概が闇の魔術で間違いなかったからだ」