23.Snape's blood
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「どうしたの?」
「ああ。アンブリッジに呼ばれた。緊急招集がかかったんだ。……何か急ぎらしい。もしかすると、ピーブズでも暴れているのかもしれないな」
「そうなの、それは残念だわ……。」
「本当にそう思うよ。……兎に角、僕は今から城に向かわないと。フォーラ、折角の時間を一緒に過ごせなくなってしまって、本当にすまない」
落胆するドラコを憐れんで、フォーラは隣に座っている彼の頭をそっと撫でた。
「いいのよ、仕方がないことだもの……。私はもう少しここに残るから、気にしないで早く先生のところへ行ってあげて?」
するとドラコは物寂しそうにフォーラをじっと見つめた。フォーラにはそれが何を求めている合図か理解できた。そのため彼女は彼の方に身体を傾け、彼の頬や唇に軽くキスを落とした。ドラコはフォーラに元気付けてもらいたくて先程のとおり視線で口付けを催促したのだが、そのキスが随分久しぶりで、しかも彼女の方から落としてもらっただけあって、何だか余計にその場を離れがたい気持ちになってしまった。
「……ん、……ありがとう。その……後で談話室に戻ったら、夏休みをどう過ごすか話の続きをしよう。休みの間も少しでも君に会いたい」
「ええ、分かったわ。楽しみにしているわね。」
フォーラの笑顔にドラコは後ろ髪を引かれながらも駆け足でその場を後にした。彼女はそんな彼の後ろ姿が小さくなるまで見送り、湖の方に向き直って座り直した。そして先程の彼とのやり取りについてぼんやりと考えを巡らせていった。その内に彼女の頭の中で、先程ドラコの発した言葉が何度か繰り返された。
『どうやら奴は主人に『出ていけ』と言われたのが引き金になって、マルフォイ家にやって来たらしい』
(さっきの話……。妙に引っかかるわ。本当に何処かでそんな話を聞いたような気がするもの。ナルシッサさんの親戚の屋敷しもべ妖精……。確かナルシッサさんのいとこのお家に務めていると言っていたわよね。純血のいとこ……)
フォーラはナルシッサの親戚関係を思い出すため、一先ず彼女の旧姓が何だったか思案した。純血の家系に属していれば、親しい間柄なら大体は誰が誰と血縁で、旧姓が何かなども認識しているものだ。そのため本来はマグル生まれのフォーラであっても、流石に純血たちの中に長く身を置いていただけあってナルシッサの旧姓は比較的容易に浮かんできた。
「確か……ブラック……ナルシッサ・ブラック」
(ブラック家の人といえば……。……えっ?)
フォーラがそこまで考えた時、突然彼女の頭の中で走馬灯のようにとある記憶が蘇った。それは彼女がクリスマスをブラック家で過ごした時のことだった。シリウスがイライラした様子でダイニングに荒っぽくやって来て、その苛立ちの理由を周りの人々がフォーラに説明してくれたのだ。
『クリーチャーの相手をしに、屋根裏部屋にいたんじゃない?』
『この間、シリウスがクリーチャーの目に余る行動にとうとう怒って、『出て行け』と言って声を荒げたんだ。勿論、部屋から出ろという意味だよ。クリーチャーは暫く姿を見せなかったんだが、まさか屋敷から出て行ったのではと心配になって探してみると、屋根裏に隠れていたそうだ』
『出て行けなんて、本当に命令に従ってどこかへ出て行ってしまったらと思うと……。クリーチャーは不死鳥の騎士団の秘密を沢山持っているでしょうに。』
『きっと大丈夫。仮に出て行ったとしても屋敷しもべ妖精には主人との縛りがあるから、秘密や大切なことを他人に明かすことが出来ないもの。それに屋根裏に居たんだし何の問題もないわよ』
フォーラはそのようなクリスマス休暇での一場面を思い出すと共に、心臓がドクンドクンと奇妙に力強く脈打つのを感じた。
(まさか……)
ドラコの話を聞いた今となっては、フォーラはクリーチャーがブラック邸の屋根裏部屋で大人しくしておらず、助けを求めてナルシッサ・ブラックを頼った可能性を否定できなかった。しかし当時のルーピン含む騎士団の大人たちの様子からして、彼らはクリーチャーがブラック邸から外出していないと結論付けたのだろう。
フォーラは急いで立ち上がると、先程ドラコが去って行った道のりを黒猫の姿で駆け出した。
(ドラコの家に来たのがクリーチャーでなかったとしても……。それとも本当にクリーチャーがドラコの家に行っていて、そこで騎士団の秘密を明かせなかったとしても……。万が一のこともあり得るわ。一刻も早く、騎士団の誰かに伝えなきゃ)
フォーラの脳内に一番に浮かんだのはセブルス・スネイプだった。何よりマクゴナガルが倒れた今、このホグワーツで騎士団をしているのは彼しかいなかった。彼女は急いで城の中に飛び込むと、そのまま地下牢へ続く階段を駆け下りた。そして人の姿に戻るや否や、素早くスネイプの部屋のドアをノックした。
程なくして扉が開くと、スネイプが突然の来客に怪訝な表情をして立っていた。そしてその客がフォーラだと分かるや否や、その眉間の皺は幾らか緩和された。
「こんな天気のいい日にどうしたのかね」
「セブルスさん、急ぎでお伝えしたいことがあるんです。中でお話できませんか。」
フォーラが珍しく焦りの表情と額に汗を浮かべていることに、スネイプは何かただ事ではない様子を感じ取った。そのため彼は困惑と神妙さを混ぜたような表情で彼女を部屋に通したのだった。
それからのフォーラは、先程自身が湖でドラコから聞いた話や、彼女が思い至った可能性についてスネイプに話して聞かせた。フォーラはスネイプが死喰い人と騎士団の二重スパイをしていることを知っていたため、既にスネイプがマルフォイ邸での事を認識している可能性もあり得ると思った。それであればフォーラが無駄足を踏んだだけで済むし、彼女としてはそれが一番望ましいことだった。
しかし、スネイプからの反応は疑念と焦りの色が伺えた。
「ああ。アンブリッジに呼ばれた。緊急招集がかかったんだ。……何か急ぎらしい。もしかすると、ピーブズでも暴れているのかもしれないな」
「そうなの、それは残念だわ……。」
「本当にそう思うよ。……兎に角、僕は今から城に向かわないと。フォーラ、折角の時間を一緒に過ごせなくなってしまって、本当にすまない」
落胆するドラコを憐れんで、フォーラは隣に座っている彼の頭をそっと撫でた。
「いいのよ、仕方がないことだもの……。私はもう少しここに残るから、気にしないで早く先生のところへ行ってあげて?」
するとドラコは物寂しそうにフォーラをじっと見つめた。フォーラにはそれが何を求めている合図か理解できた。そのため彼女は彼の方に身体を傾け、彼の頬や唇に軽くキスを落とした。ドラコはフォーラに元気付けてもらいたくて先程のとおり視線で口付けを催促したのだが、そのキスが随分久しぶりで、しかも彼女の方から落としてもらっただけあって、何だか余計にその場を離れがたい気持ちになってしまった。
「……ん、……ありがとう。その……後で談話室に戻ったら、夏休みをどう過ごすか話の続きをしよう。休みの間も少しでも君に会いたい」
「ええ、分かったわ。楽しみにしているわね。」
フォーラの笑顔にドラコは後ろ髪を引かれながらも駆け足でその場を後にした。彼女はそんな彼の後ろ姿が小さくなるまで見送り、湖の方に向き直って座り直した。そして先程の彼とのやり取りについてぼんやりと考えを巡らせていった。その内に彼女の頭の中で、先程ドラコの発した言葉が何度か繰り返された。
『どうやら奴は主人に『出ていけ』と言われたのが引き金になって、マルフォイ家にやって来たらしい』
(さっきの話……。妙に引っかかるわ。本当に何処かでそんな話を聞いたような気がするもの。ナルシッサさんの親戚の屋敷しもべ妖精……。確かナルシッサさんのいとこのお家に務めていると言っていたわよね。純血のいとこ……)
フォーラはナルシッサの親戚関係を思い出すため、一先ず彼女の旧姓が何だったか思案した。純血の家系に属していれば、親しい間柄なら大体は誰が誰と血縁で、旧姓が何かなども認識しているものだ。そのため本来はマグル生まれのフォーラであっても、流石に純血たちの中に長く身を置いていただけあってナルシッサの旧姓は比較的容易に浮かんできた。
「確か……ブラック……ナルシッサ・ブラック」
(ブラック家の人といえば……。……えっ?)
フォーラがそこまで考えた時、突然彼女の頭の中で走馬灯のようにとある記憶が蘇った。それは彼女がクリスマスをブラック家で過ごした時のことだった。シリウスがイライラした様子でダイニングに荒っぽくやって来て、その苛立ちの理由を周りの人々がフォーラに説明してくれたのだ。
『クリーチャーの相手をしに、屋根裏部屋にいたんじゃない?』
『この間、シリウスがクリーチャーの目に余る行動にとうとう怒って、『出て行け』と言って声を荒げたんだ。勿論、部屋から出ろという意味だよ。クリーチャーは暫く姿を見せなかったんだが、まさか屋敷から出て行ったのではと心配になって探してみると、屋根裏に隠れていたそうだ』
『出て行けなんて、本当に命令に従ってどこかへ出て行ってしまったらと思うと……。クリーチャーは不死鳥の騎士団の秘密を沢山持っているでしょうに。』
『きっと大丈夫。仮に出て行ったとしても屋敷しもべ妖精には主人との縛りがあるから、秘密や大切なことを他人に明かすことが出来ないもの。それに屋根裏に居たんだし何の問題もないわよ』
フォーラはそのようなクリスマス休暇での一場面を思い出すと共に、心臓がドクンドクンと奇妙に力強く脈打つのを感じた。
(まさか……)
ドラコの話を聞いた今となっては、フォーラはクリーチャーがブラック邸の屋根裏部屋で大人しくしておらず、助けを求めてナルシッサ・ブラックを頼った可能性を否定できなかった。しかし当時のルーピン含む騎士団の大人たちの様子からして、彼らはクリーチャーがブラック邸から外出していないと結論付けたのだろう。
フォーラは急いで立ち上がると、先程ドラコが去って行った道のりを黒猫の姿で駆け出した。
(ドラコの家に来たのがクリーチャーでなかったとしても……。それとも本当にクリーチャーがドラコの家に行っていて、そこで騎士団の秘密を明かせなかったとしても……。万が一のこともあり得るわ。一刻も早く、騎士団の誰かに伝えなきゃ)
フォーラの脳内に一番に浮かんだのはセブルス・スネイプだった。何よりマクゴナガルが倒れた今、このホグワーツで騎士団をしているのは彼しかいなかった。彼女は急いで城の中に飛び込むと、そのまま地下牢へ続く階段を駆け下りた。そして人の姿に戻るや否や、素早くスネイプの部屋のドアをノックした。
程なくして扉が開くと、スネイプが突然の来客に怪訝な表情をして立っていた。そしてその客がフォーラだと分かるや否や、その眉間の皺は幾らか緩和された。
「こんな天気のいい日にどうしたのかね」
「セブルスさん、急ぎでお伝えしたいことがあるんです。中でお話できませんか。」
フォーラが珍しく焦りの表情と額に汗を浮かべていることに、スネイプは何かただ事ではない様子を感じ取った。そのため彼は困惑と神妙さを混ぜたような表情で彼女を部屋に通したのだった。
それからのフォーラは、先程自身が湖でドラコから聞いた話や、彼女が思い至った可能性についてスネイプに話して聞かせた。フォーラはスネイプが死喰い人と騎士団の二重スパイをしていることを知っていたため、既にスネイプがマルフォイ邸での事を認識している可能性もあり得ると思った。それであればフォーラが無駄足を踏んだだけで済むし、彼女としてはそれが一番望ましいことだった。
しかし、スネイプからの反応は疑念と焦りの色が伺えた。