23.Snape's blood
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ドラコは先程パンジーとルニーに微笑みを含んだ視線を向けられて気恥ずかしさこそ感じたが、彼はこの半月程の間、フォーラと指一つ触れ合うことすら耐えてきたのだ。そのため彼はフォーラの方から手を繋いでくれたことを素直に嬉しいと思ったし、最早、友人たちのそのような視線はドラコにとって大した問題ではなかった。
二人は手を繋いだまま、校庭の明るい色の芝生を踏みしめながら湖の方に向かって並んで歩いた。話題は試験の出来がどうだったかという内容から始まり、次第に夏休みはどう過ごすかという内容に移っていった。
「今年の夏休みは、ドラコと会えるかしら?去年の夏は会えなかったものね。」
フォーラはドラコが夏休みの間に父親のルシウス・マルフォイに影響を受けて、死喰い人への道を決意してしまうのを少しでも防ぎたかった。可能ならば、表向きはドラコと一緒に休暇を過ごすことを目的にして、できるだけ長く彼をファントム邸に滞在させてしまいたかった。とはいえドラコも彼の両親も互いを随分大切にしているだけに、その提案をドラコが受け入れる可能性は低いだろうとフォーラは思った。
「今年はどうしても君に会いたい。それに本音を言うと……夏休みの数日間、できるだけ長く君の家にお邪魔して過ごしたいくらいだ」
「えっ?」
ドラコが予想外の言葉を発したものだから、フォーラは思わず驚きの声を漏らした。歩調を揃えて歩く二人の側で、湖岸に水面が優しく打ち上げる音が響いた。
「ああ、いいんだ。あまり本気に捉えなくていい……。突然のことだし、きっと君の家に迷惑がかかるのは分かっているから」
「ううん!そんなことはないと思うわ!だって、私の両親は貴方のことを本当によく知っているじゃない。きっと歓迎してくれる筈だわ!」
フォーラは前のめりになって頷いた。そして次第にゆっくりとその歩みを止めると、心配そうにドラコを見つめた。
「だけど、それにしてもどうしたの?ドラコはきっと、ご両親と過ごす時間を大切にしたいだろうと思ったのだけど……。」
それはフォーラにとって本当に純粋な疑問だった。するとドラコは少々憂鬱そうな表情を見せた。
「家にはもしかすると、僕の親戚に仕える屋敷しもべ妖精が家に滞在しているかもしれないんだ。僕はあいつにあまり会いたくない」
「えっ、屋敷しもべ妖精?」
数年前、マルフォイ家に仕えていた屋敷しもべ妖精のドビーが解雇となったことをフォーラは思い出した。それ以来、マルフォイ家は現在も屋敷しもべ妖精を迎えていなかった。
「ドラコのお家は、とうとう新しい子を迎えるの?あっ、でもその子は他のお家に仕えているのよね?」
フォーラは少々混乱しつつ尋ねた。
「奴がうちに仕えるのかどうかは、正直よく分からない」
ドラコは湖の方を向いて芝生の上に腰を下ろした。フォーラがそれにならって彼の隣に腰掛けると、彼は話を続けた。晴れた良い天気に比べ、ドラコの表情は浮かない様子だった。
「実はこの間のクリスマス休暇の時、奴は突然僕の家に姿を見せに来た。僕はその屋敷しもべ妖精を今回初めて見たんだが、奴は母上のいとこの家に長い間仕えている奴らしくて、随分老いていた。それで、そいつはどういうわけか母上を見るなり泣き出したんだ」
「一体、その妖精さんに何があったの?」
フォーラの質問にドラコは少々思考を巡らせた。そして言葉を選ぶようにして話を続けた。
「……どうやら、そいつは今の主人に日頃から相当きつく当たられているようだ。それで、そいつの主人と血の繋がっている母上を頼って、家にやって来たらしい」
「そうだったの……。その妖精さんがクリスマス休暇の間にやって来たのは、一日だけだったの?」
「いいや、違うんだ。……僕が奴の何を気に入らないって、本来の主人に仕えることを放棄して、母上に甘えるために何日も家にやって来ていたことだ。
それに僕としては、母上が奴を随分丁重に、まるで客人のように扱う姿もあまり見たくないものだった」
(母上が幾ら奴に優しくしたって、主人のシリウス・ブラックの居場所や不死鳥の騎士団の情報、そういう重要なことを屋敷しもべ妖精は口外禁止にされているだろうに。なんたって屋敷しもべ妖精は主人からの拘束力に絶対服従だ。だから正直言って、僕からすれば母上のしていることは時間の無駄のように思うが……)
少々苦い表情で黙ってしまったドラコを見て、フォーラは再び質問を投げかけた。
「それにしても、屋敷しもべ妖精がご主人の元を一時的にでも離れるなんて。その妖精さんはご主人様に一体どんな酷いことを言われたり、されてきたりしたのかしらね……。話を聞く限りでは、ご主人様から衣服を贈られて解雇になったわけではないのでしょう?」
「ああ、別に解雇にはなっていないみたいだ。僕も詳細は分からないが、どうやら奴は主人に『出ていけ』と言われたのが引き金になって、マルフォイ家にやって来たらしい」
「そう、そんなことが……。」
(あら?)
一連の話を聞いたフォーラは不意に胸の辺りがざわざわとする感覚に襲われた。今のドラコの話について、彼女は過去に何処かで絶対に同じような話を聞いたことがある気がした。ただ、それが何処でのことだったか直ぐには思い出せなかった。
「ねえドラコ?因みに、その妖精さんはどこのお家に仕えているの?」
ドラコはその質問に一瞬躊躇いを見せ、思案した。
(あの家の最後の生き残り―――シリウス・ブラックは指名手配中だし、フォーラを不安にさせてしまうんじゃないか?それに例えフォーラやファントム家が不死鳥の騎士団と何の関りがないにしても……。ここは誤魔化しておいた方がいいだろう)
「さあ、僕は詳しく知らないんだ。……ん?」
その時、ドラコは城の方からこちらに向かって一機の紙飛行機が飛んで来ていることに気が付いた。そうして間もなくすると、どういうわけかそれは自らドラコの手元に納まったではないか。彼がその紙を開いてみると、彼の表情は随分怪訝なものに変わっていった。
二人は手を繋いだまま、校庭の明るい色の芝生を踏みしめながら湖の方に向かって並んで歩いた。話題は試験の出来がどうだったかという内容から始まり、次第に夏休みはどう過ごすかという内容に移っていった。
「今年の夏休みは、ドラコと会えるかしら?去年の夏は会えなかったものね。」
フォーラはドラコが夏休みの間に父親のルシウス・マルフォイに影響を受けて、死喰い人への道を決意してしまうのを少しでも防ぎたかった。可能ならば、表向きはドラコと一緒に休暇を過ごすことを目的にして、できるだけ長く彼をファントム邸に滞在させてしまいたかった。とはいえドラコも彼の両親も互いを随分大切にしているだけに、その提案をドラコが受け入れる可能性は低いだろうとフォーラは思った。
「今年はどうしても君に会いたい。それに本音を言うと……夏休みの数日間、できるだけ長く君の家にお邪魔して過ごしたいくらいだ」
「えっ?」
ドラコが予想外の言葉を発したものだから、フォーラは思わず驚きの声を漏らした。歩調を揃えて歩く二人の側で、湖岸に水面が優しく打ち上げる音が響いた。
「ああ、いいんだ。あまり本気に捉えなくていい……。突然のことだし、きっと君の家に迷惑がかかるのは分かっているから」
「ううん!そんなことはないと思うわ!だって、私の両親は貴方のことを本当によく知っているじゃない。きっと歓迎してくれる筈だわ!」
フォーラは前のめりになって頷いた。そして次第にゆっくりとその歩みを止めると、心配そうにドラコを見つめた。
「だけど、それにしてもどうしたの?ドラコはきっと、ご両親と過ごす時間を大切にしたいだろうと思ったのだけど……。」
それはフォーラにとって本当に純粋な疑問だった。するとドラコは少々憂鬱そうな表情を見せた。
「家にはもしかすると、僕の親戚に仕える屋敷しもべ妖精が家に滞在しているかもしれないんだ。僕はあいつにあまり会いたくない」
「えっ、屋敷しもべ妖精?」
数年前、マルフォイ家に仕えていた屋敷しもべ妖精のドビーが解雇となったことをフォーラは思い出した。それ以来、マルフォイ家は現在も屋敷しもべ妖精を迎えていなかった。
「ドラコのお家は、とうとう新しい子を迎えるの?あっ、でもその子は他のお家に仕えているのよね?」
フォーラは少々混乱しつつ尋ねた。
「奴がうちに仕えるのかどうかは、正直よく分からない」
ドラコは湖の方を向いて芝生の上に腰を下ろした。フォーラがそれにならって彼の隣に腰掛けると、彼は話を続けた。晴れた良い天気に比べ、ドラコの表情は浮かない様子だった。
「実はこの間のクリスマス休暇の時、奴は突然僕の家に姿を見せに来た。僕はその屋敷しもべ妖精を今回初めて見たんだが、奴は母上のいとこの家に長い間仕えている奴らしくて、随分老いていた。それで、そいつはどういうわけか母上を見るなり泣き出したんだ」
「一体、その妖精さんに何があったの?」
フォーラの質問にドラコは少々思考を巡らせた。そして言葉を選ぶようにして話を続けた。
「……どうやら、そいつは今の主人に日頃から相当きつく当たられているようだ。それで、そいつの主人と血の繋がっている母上を頼って、家にやって来たらしい」
「そうだったの……。その妖精さんがクリスマス休暇の間にやって来たのは、一日だけだったの?」
「いいや、違うんだ。……僕が奴の何を気に入らないって、本来の主人に仕えることを放棄して、母上に甘えるために何日も家にやって来ていたことだ。
それに僕としては、母上が奴を随分丁重に、まるで客人のように扱う姿もあまり見たくないものだった」
(母上が幾ら奴に優しくしたって、主人のシリウス・ブラックの居場所や不死鳥の騎士団の情報、そういう重要なことを屋敷しもべ妖精は口外禁止にされているだろうに。なんたって屋敷しもべ妖精は主人からの拘束力に絶対服従だ。だから正直言って、僕からすれば母上のしていることは時間の無駄のように思うが……)
少々苦い表情で黙ってしまったドラコを見て、フォーラは再び質問を投げかけた。
「それにしても、屋敷しもべ妖精がご主人の元を一時的にでも離れるなんて。その妖精さんはご主人様に一体どんな酷いことを言われたり、されてきたりしたのかしらね……。話を聞く限りでは、ご主人様から衣服を贈られて解雇になったわけではないのでしょう?」
「ああ、別に解雇にはなっていないみたいだ。僕も詳細は分からないが、どうやら奴は主人に『出ていけ』と言われたのが引き金になって、マルフォイ家にやって来たらしい」
「そう、そんなことが……。」
(あら?)
一連の話を聞いたフォーラは不意に胸の辺りがざわざわとする感覚に襲われた。今のドラコの話について、彼女は過去に何処かで絶対に同じような話を聞いたことがある気がした。ただ、それが何処でのことだったか直ぐには思い出せなかった。
「ねえドラコ?因みに、その妖精さんはどこのお家に仕えているの?」
ドラコはその質問に一瞬躊躇いを見せ、思案した。
(あの家の最後の生き残り―――シリウス・ブラックは指名手配中だし、フォーラを不安にさせてしまうんじゃないか?それに例えフォーラやファントム家が不死鳥の騎士団と何の関りがないにしても……。ここは誤魔化しておいた方がいいだろう)
「さあ、僕は詳しく知らないんだ。……ん?」
その時、ドラコは城の方からこちらに向かって一機の紙飛行機が飛んで来ていることに気が付いた。そうして間もなくすると、どういうわけかそれは自らドラコの手元に納まったではないか。彼がその紙を開いてみると、彼の表情は随分怪訝なものに変わっていった。