23.Snape's blood
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌週の月曜日は魔法薬学のテストがあり、これについてはフォーラもドラコも十分満足な点が得られたように感じた。火曜日は魔法生物飼育学があり、翌日の水曜日には夜に天文学の実技テストを行った。
天文学のテストでは、生徒たちは実際に晴れた月夜の下で望遠鏡を設置して、配布された星座図に天体の位置を書き込んでいた。しかしその最中、天文学塔から見える暗い校庭に佇むハグリッドの小屋の方から、何かが吼える声が聞こえてきたのだ。フォーラを含む生徒たち数人がその闇に響く声に気付き、望遠鏡から目を離して小屋の方を見た。
「みなさん、気を集中するんじゃよ。あと二十分」試験の巡回をしていたトフティ教授がやさしく言った。
大多数の生徒が望遠鏡に視線を戻そうとしたのだが、その時校庭にバーンと大音響がした。ハグリッドの小屋の戸が勢いよく開き、中から溢れ出る光線でハグリッドの姿がはっきりと見えた。小屋の前で五人の人影が杖を構えており、その内の一人はアンブリッジの姿によく似ていた。五人は一斉に赤い光線をハグリッドに放ったのだが、それはハグリッドの飼っている犬のファングに当たり、バタリと失神してしまったのだった。
最早もう誰も星座図を見ていなかった。ハグリッドの小屋の周りで赤い光線が飛び交っていたのだが、どうやら半巨人のハグリッドの身体はその魔法光線をはじいている様子だった。ハグリッドは雄叫びを上げて両拳を魔法使いに向かって振り回し抵抗していた。そして次に聞こえてきたのは、城の一階の大扉が開く音と、マクゴナガルが小屋の方に向かって駆けながら叫ぶ声だった。
「おやめなさい!やめるんです!何の理由があって攻撃するのです?何もしていないのに。こんな仕打ちを―――」
そして女子生徒の何人かが悲鳴をあげ、男子生徒たちは息を呑んだ。マクゴナガルが城と小屋のちょうど半ばまで来た時、四本もの失神光線が彼女の身体を突き刺したのだ。その身体は一瞬不気味な赤い光を発して撥ね上がり、仰向けにドサッと落下してそのまま動かなくなってしまった。
「不意打ちだ!けしからん仕業だ!」トフティ教授もすっかり試験のことを忘れてしまったように叫んだ。
「卑怯者!」ハグリッドの雄叫びで、城の窓明かりがあちこちで点き始めた。
「とんでもねえ卑怯者め!これでも食らえ―――これでもか―――」
その後は壮絶だった。ハグリッドが大声で叫び、魔法使い二人に思い切りパンチを食らわせ気絶させた。アンブリッジはハグリッドを捕まえるよう叫び、残りの魔法使いが怯んだその隙にハグリッドはファングを担いで全速力で遠くの校門へと走り出した。アンブリッジが追い打ちの失神光線を放ったが外れた。そしてとうとうハグリッドは校門の外で闇に消えていったのだった。
静寂に震えが走り、長い一瞬が続いた。全員が口を開けたまま校庭を見つめていた。やがてトフティ教授が弱弱しい声で言った。
「うむ……みなさん、あと五分ですぞ」
その後フォーラも他の生徒たちも、天文塔から談話室に戻るまで、そして談話室に戻ってからも先程見た光景について話題が尽きなかった。アンブリッジは半人間を憎んで毛嫌いしているということや、だからこそ半巨人のハグリッドをいつかホグワーツから追い出そうと目論んでいたこと。そして先日、誰かがアンブリッジの部屋にニフラーという小型の魔法生物を侵入させ、部屋を滅茶苦茶にした犯人をアンブリッジはハグリッドだとして今回の奇襲に臨んだのだろうという推察が立った。
「今回アンブリッジがやったことは流石に卑怯としか言えないわね……」ルニーが一連の出来事を思い出しながら言った。
「ハグリッドはダンブルドアを追いかけたと思う?」パンジーがドラコに尋ねた。
「さあ、どうだろうな。可能性は高いかもしれない」
「それにしても、マクゴナガル先生が無事だといいのだけれど……。」フォーラが涙声で言った。
「医務室に運び込まれたらしい。さっき別の生徒が話しているのを聞いた」珍しく会話に参加していたセオドールが言った。「ただし、あんまり容態は良くないみたいだ」
「大丈夫、きっとマダム・ポンフリーが治す筈よ」パンジーが強く望むようにフォーラに声を掛けたのだった。
話が終わる頃にはもうすっかり日付が変わっていたものだから、五年生の大半はひと眠りしたとはいえ、次の午前中に行われた最後の筆記試験を眠い眼を擦って挑まなければならなかった。
しかし魔法史の試験ももう殆ど終わりを迎える頃になって、その眠気も飛ぶような出来事があった。ハリーが突然叫び声と共に椅子から転げ落ち、額の稲妻型の傷痕を抑えて苦しんでいたのだ。
ハリーはトフティ教授の問いかけで次第に落ち着きを取り戻したようだった。ハリーは他の生徒より一足先に試験会場を後にしたので、その後彼がどうしたのか誰も知るところではなかった。恐らく叫び声の原因は試験からくるプレッシャーのせいで、きっと彼はあのまま医務室に向かったのだろうと試験会場の誰もが思ったのだった。
ようやく二週間に渡る長き試験期間が終わった。生徒たちは陽の光が溢れる校庭の芝生の上で脚を伸ばしたり、中庭でお喋りを楽しんだり、談話室で夏休みの予定について共有し合ったりした。ところでフォーラはパンジーやルニーと試験会場である大広間を出た時、後ろからドラコに声を掛けられていた。
「フォーラ、よかったら……、湖の方まで歩きに行かないか」
「!」それを聞いたフォーラが思わずパンジーとルニーの方を見ると、二人はニコニコとしていて、ドラコに付いて行くよう視線で促してきた。そのためフォーラは二人に笑顔で頷いてお礼を言うと、ドラコの手を引いて校庭へと足取り軽く繰り出した。ドラコは彼女が人前で少々大胆になっている理由について、恐らく試験から解放された影響なのだろうと予想した。
天文学のテストでは、生徒たちは実際に晴れた月夜の下で望遠鏡を設置して、配布された星座図に天体の位置を書き込んでいた。しかしその最中、天文学塔から見える暗い校庭に佇むハグリッドの小屋の方から、何かが吼える声が聞こえてきたのだ。フォーラを含む生徒たち数人がその闇に響く声に気付き、望遠鏡から目を離して小屋の方を見た。
「みなさん、気を集中するんじゃよ。あと二十分」試験の巡回をしていたトフティ教授がやさしく言った。
大多数の生徒が望遠鏡に視線を戻そうとしたのだが、その時校庭にバーンと大音響がした。ハグリッドの小屋の戸が勢いよく開き、中から溢れ出る光線でハグリッドの姿がはっきりと見えた。小屋の前で五人の人影が杖を構えており、その内の一人はアンブリッジの姿によく似ていた。五人は一斉に赤い光線をハグリッドに放ったのだが、それはハグリッドの飼っている犬のファングに当たり、バタリと失神してしまったのだった。
最早もう誰も星座図を見ていなかった。ハグリッドの小屋の周りで赤い光線が飛び交っていたのだが、どうやら半巨人のハグリッドの身体はその魔法光線をはじいている様子だった。ハグリッドは雄叫びを上げて両拳を魔法使いに向かって振り回し抵抗していた。そして次に聞こえてきたのは、城の一階の大扉が開く音と、マクゴナガルが小屋の方に向かって駆けながら叫ぶ声だった。
「おやめなさい!やめるんです!何の理由があって攻撃するのです?何もしていないのに。こんな仕打ちを―――」
そして女子生徒の何人かが悲鳴をあげ、男子生徒たちは息を呑んだ。マクゴナガルが城と小屋のちょうど半ばまで来た時、四本もの失神光線が彼女の身体を突き刺したのだ。その身体は一瞬不気味な赤い光を発して撥ね上がり、仰向けにドサッと落下してそのまま動かなくなってしまった。
「不意打ちだ!けしからん仕業だ!」トフティ教授もすっかり試験のことを忘れてしまったように叫んだ。
「卑怯者!」ハグリッドの雄叫びで、城の窓明かりがあちこちで点き始めた。
「とんでもねえ卑怯者め!これでも食らえ―――これでもか―――」
その後は壮絶だった。ハグリッドが大声で叫び、魔法使い二人に思い切りパンチを食らわせ気絶させた。アンブリッジはハグリッドを捕まえるよう叫び、残りの魔法使いが怯んだその隙にハグリッドはファングを担いで全速力で遠くの校門へと走り出した。アンブリッジが追い打ちの失神光線を放ったが外れた。そしてとうとうハグリッドは校門の外で闇に消えていったのだった。
静寂に震えが走り、長い一瞬が続いた。全員が口を開けたまま校庭を見つめていた。やがてトフティ教授が弱弱しい声で言った。
「うむ……みなさん、あと五分ですぞ」
その後フォーラも他の生徒たちも、天文塔から談話室に戻るまで、そして談話室に戻ってからも先程見た光景について話題が尽きなかった。アンブリッジは半人間を憎んで毛嫌いしているということや、だからこそ半巨人のハグリッドをいつかホグワーツから追い出そうと目論んでいたこと。そして先日、誰かがアンブリッジの部屋にニフラーという小型の魔法生物を侵入させ、部屋を滅茶苦茶にした犯人をアンブリッジはハグリッドだとして今回の奇襲に臨んだのだろうという推察が立った。
「今回アンブリッジがやったことは流石に卑怯としか言えないわね……」ルニーが一連の出来事を思い出しながら言った。
「ハグリッドはダンブルドアを追いかけたと思う?」パンジーがドラコに尋ねた。
「さあ、どうだろうな。可能性は高いかもしれない」
「それにしても、マクゴナガル先生が無事だといいのだけれど……。」フォーラが涙声で言った。
「医務室に運び込まれたらしい。さっき別の生徒が話しているのを聞いた」珍しく会話に参加していたセオドールが言った。「ただし、あんまり容態は良くないみたいだ」
「大丈夫、きっとマダム・ポンフリーが治す筈よ」パンジーが強く望むようにフォーラに声を掛けたのだった。
話が終わる頃にはもうすっかり日付が変わっていたものだから、五年生の大半はひと眠りしたとはいえ、次の午前中に行われた最後の筆記試験を眠い眼を擦って挑まなければならなかった。
しかし魔法史の試験ももう殆ど終わりを迎える頃になって、その眠気も飛ぶような出来事があった。ハリーが突然叫び声と共に椅子から転げ落ち、額の稲妻型の傷痕を抑えて苦しんでいたのだ。
ハリーはトフティ教授の問いかけで次第に落ち着きを取り戻したようだった。ハリーは他の生徒より一足先に試験会場を後にしたので、その後彼がどうしたのか誰も知るところではなかった。恐らく叫び声の原因は試験からくるプレッシャーのせいで、きっと彼はあのまま医務室に向かったのだろうと試験会場の誰もが思ったのだった。
ようやく二週間に渡る長き試験期間が終わった。生徒たちは陽の光が溢れる校庭の芝生の上で脚を伸ばしたり、中庭でお喋りを楽しんだり、談話室で夏休みの予定について共有し合ったりした。ところでフォーラはパンジーやルニーと試験会場である大広間を出た時、後ろからドラコに声を掛けられていた。
「フォーラ、よかったら……、湖の方まで歩きに行かないか」
「!」それを聞いたフォーラが思わずパンジーとルニーの方を見ると、二人はニコニコとしていて、ドラコに付いて行くよう視線で促してきた。そのためフォーラは二人に笑顔で頷いてお礼を言うと、ドラコの手を引いて校庭へと足取り軽く繰り出した。ドラコは彼女が人前で少々大胆になっている理由について、恐らく試験から解放された影響なのだろうと予想した。