19. 特別な君③
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「!」ドラコたち一行はもれなく全員ピーブズの出現に驚きの眼差しを向けた。しかもピーブズは両腕に下げていた二つの水入りバケツを真下のフォーラに向かって傾けようと弄んでいるではないか。その間髪入れず訪れた光景に、全員が思わずハッと息を呑んだ。フォーラはピーブズの行動にまだ気付いていない。
「―――っフォーラ、あ、あぶな―――」
やっとの思いでパンジーが声を発したその時、隣から何かが物凄い速さで前方へ飛び出した。友人らはあまりの速さに一瞬何が起こったか分からずにいたのだが、ドラコが全速力でフォーラに向かって駆け出したのだと気付くのに、そう時間はかからなかった。
「えっ、ドラコ!?」
ドラコの耳にはルニーの驚きの声など届かなかった。彼は唯々フォーラの方へ廊下をひた走りながら、ズボンのベルトに挿していた杖をサッと抜いてピーブズの方へ向けた。
(盾の呪文 も防水呪文も、ここからだとフォーラの所まで届かない。それなら)
「イモビラス!動くな!」
ドラコが呪文を放った瞬間、フォーラとピーブズは彼がこちらに駆けて来ていることに気付いて驚きの表情を見せた。そしてドラコの呪文の光はピーブズに向かって直進したのだが、残念ながら間一髪のところでひらりと避けられてしまった。それに気を良くしたポルターガイストは、バケツを大きく傾けながらドラコに愉快な笑みを向けたのだった。
フォーラはそれと殆ど同時に、ドラコの呪文が向かった自身の頭上をサッと見上げた。その際、まさか自分の真上でバケツに入った大量の水がもう殆ど落ち始めているとは思いもしなかった。驚きのあまり彼女の目にはその光景がまるでスローモーションのごとく映ったが、もう杖をかまえる暇など残されていなかった。
「フォーラ!」
ドラコは脚を止めることなく名前を叫ぶと共に進行方向へ地面を蹴り、そのままの勢いで彼女を抱きとめ倒れこむように飛んだ。その間ドラコは自身の身体が地面側になるよう仰向けに身体を捻り、一か八かで杖を振っていた。
(プロテゴ!守れ!)
ドラコが無意識に全ての意識を集中させて強い意志で素早く振った杖からは、一瞬にして半透明の盾が現れ、完全に水しぶきを阻害した。彼はフォーラを守ろうとするあまり、知らず知らずのうちに無言呪文を成し遂げていたのだ。そしてそのコンマ数秒後には、彼女を抱えたまま自身の背中を地面にドッと打ちつけてその場に倒れ込んだのだった。
「うっ!」
ドラコのうめく声が聞こえ、ほぼ同時にすぐ近くでバケツの水が全て床に落ちる音も聞こえた。ドラコとフォーラはその場に静止していたが、程なくして彼女がハッと上体を起こすと急いで彼の上から退いた。そして彼の傍らに座り込みながら、焦りと心配を帯びた表情でドラコの顔を覗き込んだ。
「ど、ドラコ……!」
この一連の出来事があまりにも一瞬で、パンジーたちはその場から動けずにいた。そして間もなく我に返った途端、それを皮切りにワッとピーブズの方へ走って数多の呪文で追いたてたり、水たまりを消失させたりした。ピーブズが不機嫌そうに玄関ホールの方向へ消えていったのを確認すると、彼女たちはそのまま急いでドラコとフォーラのそばに駆け寄り、二人の安否を確認したのだった。
「二人とも、大丈夫か?」クラッブが慌てて尋ねると、フォーラが不安を隠しきれないまま彼を見上げた。
「わ、私は大丈夫だけど、ドラコが……」
「……う……、そんなに心配しなくても、僕は大丈夫だ……」
ドラコが軽いうめき声を上げながら何とか上体を起こした。そして自分を囲んでいる友人らを見るでもなく、目の前のフォーラの頭の先から足元まで目を向け、背中の痛みに耐えながら落ち着いた口調で尋ねた。
「どこも何ともないか?濡れたりは?」
フォーラはドラコが優しい瞳でこちらを見ていることや、心の底から心配してくれていると分かる声色に本当に戸惑いを感じていた。目の前のドラコは最近の彼とは全く違っていた。慈愛に満ち、丁重に扱われている感覚。それはフォーラが昔から良く知っているドラコそのものだった。
「え、ええ……本当にどこも大丈夫よ。だって、本当に信じられないけれど……貴方が守ってくれたもの。それに、偶然みんなが居合わせてくれたおかげで、ピーブズを追い払ってもらえたわ。ありがとう……。」
「そうか」ドラコは安堵の言葉をぽつりと呟いた。そして視線を下ろし、何かを思案した後、まるで諦めたように小さくため息を吐いたのだった。
そばにいたパンジーとルニーはドラコの妙に落ち着いた様子がもどかしく、この際、彼を問いただそうと一歩前に詰め寄った。『何をもったいぶっているのか?やはりドラコはフォーラのことが好きなのか?何故今になってこんな態度を見せたのか?』。彼女たちは二人とも、ドラコがこれまでフォーラにしてきた仕打ちや不可解な行動の真相を明らかにし、自分たちの大事な親友を少しでも早く安心させたかったのだ。
そうしてルニーとパンジーが揃って口を開こうとした時、誰かが後ろから彼女らの肩をポンと軽く叩いた。二人して振り返ってみると、背後にいたクラッブとゴイルが揃って首を横に振り、ドラコを責め立てることを制していた。
「マルフォイ、僕らは先に玄関ホールへ行って、ウィーズリーの双子を追いかける。君は身体の痛みが引いてからでも、ゆっくり来るといいよ」
クラッブがそのように伝え、パンジーとルニーに「行こう」と促した。そしてドラコがお礼を言う間もなく、クラッブとゴイルは女性陣二人が後ろ髪を引かれる中、彼女らを大広間の方へ先導したのだった。
その後は四人で廊下を走りながら、パンジーとルニーはやいのやいのとフォーラが心配だ何だと文句を垂れていたのだが、その際ゴイルが笑みを覗かせた。
「マルフォイは……あの二人はもう大丈夫だ、きっとね」
「どうしてよ?」不服そうなパンジーに、今度はクラッブが口角を上げた。
「そんなの、マルフォイの顔を見れば分かるさ」
「―――っフォーラ、あ、あぶな―――」
やっとの思いでパンジーが声を発したその時、隣から何かが物凄い速さで前方へ飛び出した。友人らはあまりの速さに一瞬何が起こったか分からずにいたのだが、ドラコが全速力でフォーラに向かって駆け出したのだと気付くのに、そう時間はかからなかった。
「えっ、ドラコ!?」
ドラコの耳にはルニーの驚きの声など届かなかった。彼は唯々フォーラの方へ廊下をひた走りながら、ズボンのベルトに挿していた杖をサッと抜いてピーブズの方へ向けた。
(
「イモビラス!動くな!」
ドラコが呪文を放った瞬間、フォーラとピーブズは彼がこちらに駆けて来ていることに気付いて驚きの表情を見せた。そしてドラコの呪文の光はピーブズに向かって直進したのだが、残念ながら間一髪のところでひらりと避けられてしまった。それに気を良くしたポルターガイストは、バケツを大きく傾けながらドラコに愉快な笑みを向けたのだった。
フォーラはそれと殆ど同時に、ドラコの呪文が向かった自身の頭上をサッと見上げた。その際、まさか自分の真上でバケツに入った大量の水がもう殆ど落ち始めているとは思いもしなかった。驚きのあまり彼女の目にはその光景がまるでスローモーションのごとく映ったが、もう杖をかまえる暇など残されていなかった。
「フォーラ!」
ドラコは脚を止めることなく名前を叫ぶと共に進行方向へ地面を蹴り、そのままの勢いで彼女を抱きとめ倒れこむように飛んだ。その間ドラコは自身の身体が地面側になるよう仰向けに身体を捻り、一か八かで杖を振っていた。
(プロテゴ!守れ!)
ドラコが無意識に全ての意識を集中させて強い意志で素早く振った杖からは、一瞬にして半透明の盾が現れ、完全に水しぶきを阻害した。彼はフォーラを守ろうとするあまり、知らず知らずのうちに無言呪文を成し遂げていたのだ。そしてそのコンマ数秒後には、彼女を抱えたまま自身の背中を地面にドッと打ちつけてその場に倒れ込んだのだった。
「うっ!」
ドラコのうめく声が聞こえ、ほぼ同時にすぐ近くでバケツの水が全て床に落ちる音も聞こえた。ドラコとフォーラはその場に静止していたが、程なくして彼女がハッと上体を起こすと急いで彼の上から退いた。そして彼の傍らに座り込みながら、焦りと心配を帯びた表情でドラコの顔を覗き込んだ。
「ど、ドラコ……!」
この一連の出来事があまりにも一瞬で、パンジーたちはその場から動けずにいた。そして間もなく我に返った途端、それを皮切りにワッとピーブズの方へ走って数多の呪文で追いたてたり、水たまりを消失させたりした。ピーブズが不機嫌そうに玄関ホールの方向へ消えていったのを確認すると、彼女たちはそのまま急いでドラコとフォーラのそばに駆け寄り、二人の安否を確認したのだった。
「二人とも、大丈夫か?」クラッブが慌てて尋ねると、フォーラが不安を隠しきれないまま彼を見上げた。
「わ、私は大丈夫だけど、ドラコが……」
「……う……、そんなに心配しなくても、僕は大丈夫だ……」
ドラコが軽いうめき声を上げながら何とか上体を起こした。そして自分を囲んでいる友人らを見るでもなく、目の前のフォーラの頭の先から足元まで目を向け、背中の痛みに耐えながら落ち着いた口調で尋ねた。
「どこも何ともないか?濡れたりは?」
フォーラはドラコが優しい瞳でこちらを見ていることや、心の底から心配してくれていると分かる声色に本当に戸惑いを感じていた。目の前のドラコは最近の彼とは全く違っていた。慈愛に満ち、丁重に扱われている感覚。それはフォーラが昔から良く知っているドラコそのものだった。
「え、ええ……本当にどこも大丈夫よ。だって、本当に信じられないけれど……貴方が守ってくれたもの。それに、偶然みんなが居合わせてくれたおかげで、ピーブズを追い払ってもらえたわ。ありがとう……。」
「そうか」ドラコは安堵の言葉をぽつりと呟いた。そして視線を下ろし、何かを思案した後、まるで諦めたように小さくため息を吐いたのだった。
そばにいたパンジーとルニーはドラコの妙に落ち着いた様子がもどかしく、この際、彼を問いただそうと一歩前に詰め寄った。『何をもったいぶっているのか?やはりドラコはフォーラのことが好きなのか?何故今になってこんな態度を見せたのか?』。彼女たちは二人とも、ドラコがこれまでフォーラにしてきた仕打ちや不可解な行動の真相を明らかにし、自分たちの大事な親友を少しでも早く安心させたかったのだ。
そうしてルニーとパンジーが揃って口を開こうとした時、誰かが後ろから彼女らの肩をポンと軽く叩いた。二人して振り返ってみると、背後にいたクラッブとゴイルが揃って首を横に振り、ドラコを責め立てることを制していた。
「マルフォイ、僕らは先に玄関ホールへ行って、ウィーズリーの双子を追いかける。君は身体の痛みが引いてからでも、ゆっくり来るといいよ」
クラッブがそのように伝え、パンジーとルニーに「行こう」と促した。そしてドラコがお礼を言う間もなく、クラッブとゴイルは女性陣二人が後ろ髪を引かれる中、彼女らを大広間の方へ先導したのだった。
その後は四人で廊下を走りながら、パンジーとルニーはやいのやいのとフォーラが心配だ何だと文句を垂れていたのだが、その際ゴイルが笑みを覗かせた。
「マルフォイは……あの二人はもう大丈夫だ、きっとね」
「どうしてよ?」不服そうなパンジーに、今度はクラッブが口角を上げた。
「そんなの、マルフォイの顔を見れば分かるさ」