23.Snape's blood
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日の試験終了後、フォーラは友人たちと夕食を共にしながら今日の試験の出来を耳に入れていた。
「変身術はフォーラに手直ししてもらっていたお陰で、私なりに良くできた方だと思うわ!」ルニーが満面の笑みで言った。
「僕も同じだ」ドラコも微笑んだ。
「ファントムは、試験官からアニメ―ガスの能力を見せるよう言われてたな」ゴイルが試験の時の様子を思い出しながら言った。
「ええ、そうなの。とっても褒めていただけたわ。」
フォーラは自分の得意なことが友人らの役に立ったことや、彼や彼女がその長けた能力を褒めてくれることを大変嬉しく思った。
(少しでも私のしたことが、みんなの助けになったのなら本当に良かった。私だってまだまだ未熟だけれど、何だか以前ドラコやセオドールが言ってくれていた、変身術の教師という道が少しリアルに感じられたかも)
さて、翌日の水曜日は薬草学、木曜日には闇の魔術に対する防衛術の試験があった。フォーラは防衛術が最も苦手で緊張したのだが、ドラコに練習に付き合ってもらったことや、彼からある程度のお墨付きをもらったことを糧にして試験に臨んだ。
防衛術の筆記試験はある程度問題なく回答できたように思ったし、実技試験も試験官の要求する逆呪いや防衛呪文をそれなりにこなすことができた。しかしその内一つだけフォーラの脚が竦む出来事があった。それは、まね妖怪のボガートと対峙するテストの最中のことだった。ボガートといえば目の前の人物の苦手な物に変身する妖怪なのだが、それはフォーラの目の前で漏れなく変身した。
フォーラが対峙したのは何と彼女自身だった。表情は陰っていて見えなかったが、それは確実に自分だと思った。彼女の姿をしたボガートは水をすくうように両手を胸の前あたりで掲げていた。そしてその両手には真っ赤な血が溜まっており、漏れ出た血が床に止めどなくポタポタと零れ落ちていた。
フォーラはまさかこんなに人のいる場所で、こんなものと対峙することになるとは思わなかった。それだけにボガートを退却させる呪文が遅れたのだが―――何とか彼女は冷静さを取り戻し、『リディクラス』と唱えた。それはたちまち宙に浮かぶ泡に姿を変えたのだった。
「大丈夫だったかね?」試験官のトフティ教授が随分心配そうに言った。「しかし血が苦手とは。君は釣られて貧血になってしまっているようだ。顔色が良くない。可能ならそのまま医務室に向かいなさい」
「は、はい。ありがとうございました。」
フォーラは青い顔をしたまま、試験会場の大広間を後にした。彼女は名前順の関係で試験を終えたタイミングが友人らの誰とも被らなかった。そのため彼女は誰にも体調のことを伝えられないまま医務室への道を進んだ。彼女はその道中、何故あのような姿のボガートが恐怖の対象として現れたのか考えを巡らせていた。しかしその理由は直ぐに察することができた。彼女は確かに血が怖かった。そしてその恐れた血は、『マグル生まれの』自分の血だった。
まさか自分が無意識に目を逸らしていたことをこんな風に暴かれ、目の前に突きつけられてしまうとは。フォーラは過去、彼女の両親と血が繋がっていないことを真正面から理解し、受け止めた。そしてこれまで兎に角、自身が純血でなくともせめて自分がドラコを闇の陣営から遠ざけ守るのだと、その一心で過ごして来たのだ。例え、最終的に安寧を手に入れた純血のドラコから自身が身を引くことになると分かっていても。
しかし実のところ、その本心は先程のボガートが物語っていた。フォーラは心の何処かで今も尚、純血とマグル生まれの血の違いに苦しめられていた。純血主義者の幸せは純血の者と一緒になることであって、マグル生まれとは相容れない。彼女は心の底では自分の血が憎く、受け入れたくない程恐ろしかったのだ。
さて、フォーラはその後の夕食以降、友人らの前ではすっかり普段どおりの元気を取り戻していた。きっと医務室でもらった薬が効果絶大だったのだろう。そのため彼女は『友人たちからは』特段顔色のことを心配されることはなかった。
そうして談話室でのまどろみの時間が訪れたのだが、フォーラもドラコも翌日の金曜日に試験がなかった。二人とも勉強は一時休憩と称してチェスに興じた。その際フォーラは劣勢だったこともあり百面相をしながら駒を動かしていたのだが、そんな彼女を見てドラコが何処かホッとしたような声色を向けてきた。
「すっかり元気になったみたいで良かった」
「えっ?何の話……?」
「ゴイルが実技試験の順番待ちをしていた時に、君の様子がおかしかったのを見たそうだ。そのことを試験の後で教えられた」
「あ……。」
フォーラはゴイルが自分を知らずの内に気にかけてくれていたことや、ドラコがそっとフォーラの体調を見守っていてくれたことを申し訳なく思った。
「君が怖いのは血だったんだな?てっきりもっと別なものかと思ったが……。君は父親を手伝って魔法薬の材料を用意する時に、魔法生物の血から血清を何度も作ったことがあるだろう」
「そ、そうなの。やっぱり材料として血を見るのと、自分が怪我をして血を流すのを見るのとでは違うから。分かるでしょう?」
フォーラは怪我で流す血にショックを受けるようなタイプではなかった。彼女は何だか自然と心臓が妙な動悸をし始めたのを抑えようと、何でもない風で取り繕った。するとドラコは彼女の話に納得したようで、それ以上その話題を掘り下げることはなかったのだった。
「変身術はフォーラに手直ししてもらっていたお陰で、私なりに良くできた方だと思うわ!」ルニーが満面の笑みで言った。
「僕も同じだ」ドラコも微笑んだ。
「ファントムは、試験官からアニメ―ガスの能力を見せるよう言われてたな」ゴイルが試験の時の様子を思い出しながら言った。
「ええ、そうなの。とっても褒めていただけたわ。」
フォーラは自分の得意なことが友人らの役に立ったことや、彼や彼女がその長けた能力を褒めてくれることを大変嬉しく思った。
(少しでも私のしたことが、みんなの助けになったのなら本当に良かった。私だってまだまだ未熟だけれど、何だか以前ドラコやセオドールが言ってくれていた、変身術の教師という道が少しリアルに感じられたかも)
さて、翌日の水曜日は薬草学、木曜日には闇の魔術に対する防衛術の試験があった。フォーラは防衛術が最も苦手で緊張したのだが、ドラコに練習に付き合ってもらったことや、彼からある程度のお墨付きをもらったことを糧にして試験に臨んだ。
防衛術の筆記試験はある程度問題なく回答できたように思ったし、実技試験も試験官の要求する逆呪いや防衛呪文をそれなりにこなすことができた。しかしその内一つだけフォーラの脚が竦む出来事があった。それは、まね妖怪のボガートと対峙するテストの最中のことだった。ボガートといえば目の前の人物の苦手な物に変身する妖怪なのだが、それはフォーラの目の前で漏れなく変身した。
フォーラが対峙したのは何と彼女自身だった。表情は陰っていて見えなかったが、それは確実に自分だと思った。彼女の姿をしたボガートは水をすくうように両手を胸の前あたりで掲げていた。そしてその両手には真っ赤な血が溜まっており、漏れ出た血が床に止めどなくポタポタと零れ落ちていた。
フォーラはまさかこんなに人のいる場所で、こんなものと対峙することになるとは思わなかった。それだけにボガートを退却させる呪文が遅れたのだが―――何とか彼女は冷静さを取り戻し、『リディクラス』と唱えた。それはたちまち宙に浮かぶ泡に姿を変えたのだった。
「大丈夫だったかね?」試験官のトフティ教授が随分心配そうに言った。「しかし血が苦手とは。君は釣られて貧血になってしまっているようだ。顔色が良くない。可能ならそのまま医務室に向かいなさい」
「は、はい。ありがとうございました。」
フォーラは青い顔をしたまま、試験会場の大広間を後にした。彼女は名前順の関係で試験を終えたタイミングが友人らの誰とも被らなかった。そのため彼女は誰にも体調のことを伝えられないまま医務室への道を進んだ。彼女はその道中、何故あのような姿のボガートが恐怖の対象として現れたのか考えを巡らせていた。しかしその理由は直ぐに察することができた。彼女は確かに血が怖かった。そしてその恐れた血は、『マグル生まれの』自分の血だった。
まさか自分が無意識に目を逸らしていたことをこんな風に暴かれ、目の前に突きつけられてしまうとは。フォーラは過去、彼女の両親と血が繋がっていないことを真正面から理解し、受け止めた。そしてこれまで兎に角、自身が純血でなくともせめて自分がドラコを闇の陣営から遠ざけ守るのだと、その一心で過ごして来たのだ。例え、最終的に安寧を手に入れた純血のドラコから自身が身を引くことになると分かっていても。
しかし実のところ、その本心は先程のボガートが物語っていた。フォーラは心の何処かで今も尚、純血とマグル生まれの血の違いに苦しめられていた。純血主義者の幸せは純血の者と一緒になることであって、マグル生まれとは相容れない。彼女は心の底では自分の血が憎く、受け入れたくない程恐ろしかったのだ。
さて、フォーラはその後の夕食以降、友人らの前ではすっかり普段どおりの元気を取り戻していた。きっと医務室でもらった薬が効果絶大だったのだろう。そのため彼女は『友人たちからは』特段顔色のことを心配されることはなかった。
そうして談話室でのまどろみの時間が訪れたのだが、フォーラもドラコも翌日の金曜日に試験がなかった。二人とも勉強は一時休憩と称してチェスに興じた。その際フォーラは劣勢だったこともあり百面相をしながら駒を動かしていたのだが、そんな彼女を見てドラコが何処かホッとしたような声色を向けてきた。
「すっかり元気になったみたいで良かった」
「えっ?何の話……?」
「ゴイルが実技試験の順番待ちをしていた時に、君の様子がおかしかったのを見たそうだ。そのことを試験の後で教えられた」
「あ……。」
フォーラはゴイルが自分を知らずの内に気にかけてくれていたことや、ドラコがそっとフォーラの体調を見守っていてくれたことを申し訳なく思った。
「君が怖いのは血だったんだな?てっきりもっと別なものかと思ったが……。君は父親を手伝って魔法薬の材料を用意する時に、魔法生物の血から血清を何度も作ったことがあるだろう」
「そ、そうなの。やっぱり材料として血を見るのと、自分が怪我をして血を流すのを見るのとでは違うから。分かるでしょう?」
フォーラは怪我で流す血にショックを受けるようなタイプではなかった。彼女は何だか自然と心臓が妙な動悸をし始めたのを抑えようと、何でもない風で取り繕った。するとドラコは彼女の話に納得したようで、それ以上その話題を掘り下げることはなかったのだった。