23.Snape's blood
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フォーラとドラコが今までで一番熱いキスを交わしてから幾日かが経った。あの日以来、二人はあえて唇を重ねていなかった。というのも、彼女らは現在試験前で勉強に最も集中すべきだった。それなのに先日のキスが二人にとって心から幸せなものだったばっかりに、また互いを求めたくなってしまうのはあまりよろしくないと判断してのことだった。
「試験が終わるまでは、その……こういうことは我慢するよ。多分、僕の方は勉強どころじゃなくなってしまうから」
「ふふ、そうね。私もきっと同じだわ。」
あの日、ドラコのそのような提案をフォーラは受け入れた。それでも互いにふとした瞬間にあの時のことを思い出したり、相手に触れたくなったりして気持ちが高ぶるのは避けられなかった。それでも二人はその度に目の前のことに意識を集中し、友人たちと共に、あと数日に迫った試験の追い込みに掛かったのだった。
そんなある日のこと、スリザリンのクィディッチ・チームのキャプテンであるモンタギューがとうとう医務室で目を覚ました。ドラコを含むチームメンバーが報告を受けて見舞いに駆け付けると、モンタギューは一体自分に何が起こって今に至るのかを話して聞かせてくれた。
「あのウィーズリーの双子が校内を魔法の花火で騒がせていた日―――俺は突然誰かに蹴っ飛ばされて、傍にあったキャビネットに放り込まれたんだ。そしたら扉が閉まって、中は真っ暗で。直ぐに外に出ようと思って起き上がろうとしたんだ。だけど身体が全然思うように動かなかった。何かの間に挟まったみたいな感覚だった気がする」
モンタギューは何とか記憶を辿りながら話を続けた。
「それで確か……そうだ、キャビネットの奥の方から、誰か老いた男の声が聞こえた。闇の品がどうとか、値段が幾らだとか、珍しい商品だとか…そんな会話もあった気がする。もしかすると何処かの店の音が聞こえるようになってたのかもしれない。まあそんな魔法が掛かってたとして、何の意味があるかさっぱりだけどな。兎に角、俺はどうにも動きようがなかったんで、駄目元で『姿くらまし』をしたんだ。そこからはさっぱり意識がない」
「トイレに詰まってたところを発見されたって聞いたぞ」チームメンバーの一人が言った。
「それにしても、ホグワーツでは姿くらましはできないようになっているだろう。まさかそれが本当に成功したとは到底思えないな」
チームメンバーはそのこともあって、きっとモンタギューの記憶がまだ曖昧なのだろうと疑わなかった。彼の言っていることがどこまで本当か判断するのも難しいとすら思った。
「爺さんの声が聞こえたっていうのも、記憶違いかなんかじゃないか?」
その後、一行はモンタギューの見舞いを終えて医務室から退散した。しかしドラコだけはその場に留まった。
「モンタギュー、さっきの話だが。キャビネットは何処にあったんだ?」
「何だ、笑いのネタにでもする気か?」
モンタギューはつい先程チームメンバーからの揶揄いもあって、ドラコが詳細を聞こうとしたことに少々怪訝そうな表情を見せた。
「違う、少し興味があるだけだ」
「確か、上の階の廊下の突き当りの隅っこだ」
それからドラコは一人、モンタギューの言っていた場所へ向かった。その道中彼が考えていたのは、モンタギューが聞いた『声』についてだった。
(老いた男性、闇の品、値段のことと、珍しい商品……何処かの店)
チームメンバーの誰も関心を持たなかったにも関わらず、ドラコだけが興味を示したのには理由があった。確かにモンタギューの口から発された単語を集めたような店など、魔法界の何処にでもありふれていそうだとは思った。しかしドラコの頭の中には、一軒の店が浮かんでいたのだ。
そうしてドラコが目的の場所に到着してみると、確かにそこには古ぼけた背の高いキャビネット棚があった。じっと見ていると、ドラコは先程まで思い浮かべていた店に、目の前のキャビネットとそっくりな物が置かれていたような気がした。
(ボージンアンドバークスの店主は老いているし、あそこは闇の品を扱っている。それに、このキャビネットのような物も見たかもしれない……。だけど本当にこの中から城の外の音が聞こえるのか?ホグワーツは外界との繋がりを完全に管理している筈だろうに)
ドラコはキャビネットを警戒しつつ少し距離を取ると、半信半疑ながらも杖を振って呪文を唱え、その扉をそっと開かせた。しかし中は背板が見えるだけの空っぽだった。彼はてっきりキャビネットの中で何かが巻き起こっているのではと想像していただけに、これには拍子抜けだった。
(何だ……。やっぱりモンタギューの話はただの記憶違いか何かだったのか?)
そもそもこのキャビネットに外と何らかの繋がりがあったとしたら、とっくに学校の教職員が撤去するなり隠すなりしている筈だ。ドラコはそのように結論付けて、その場にはそれきり向かわなかったのだった。
それから幾らか時が過ぎ、城の庭はペンキを塗ったばかりのように陽の光に輝いていた。雲一つない空がキラキラ光る滑らかな湖に映り、艶やかな緑の芝生がやさしいそよ風に時折さざなみを立てた。もう六月となり、とうとう『ふくろう試験』の月を迎えたのだ。
試験の日までに五年生たちが先生から受けていた説明は次のとおりだ。試験は二週間に渡って行われる。午前中は理論に関する筆記試験、午後は実技試験となっていた。天文学の実技は当然夜に実施する。試験の結果は七月の夏休み中に、ふくろう便で各家庭に送られるということだった。
そして先生は生徒たちに警告として、カンニングの類は最も厳しい防止呪文で防がれ、自動で回答したり修正したりする筆記用具の使用も禁止されていることを伝えた。
「毎年少なくとも一人は、魔法試験局の決めたルールをごまかせると考える生徒がいるようだ。そのような愚か者がこの場にいないことを祈るばかりだが」
試験前最後の魔法薬学の授業で、スネイプは生徒らにそのように話した。
「我が校の新しい女校長が―――」スネイプは呆れを含んだ表情をしていた。「カンニングは厳罰に処すと寮生に伝えるよう、寮監に要請した。その理由は、お前たちの成績次第で、本校における新校長体制の評価が決まってくるからだ」
「試験が終わるまでは、その……こういうことは我慢するよ。多分、僕の方は勉強どころじゃなくなってしまうから」
「ふふ、そうね。私もきっと同じだわ。」
あの日、ドラコのそのような提案をフォーラは受け入れた。それでも互いにふとした瞬間にあの時のことを思い出したり、相手に触れたくなったりして気持ちが高ぶるのは避けられなかった。それでも二人はその度に目の前のことに意識を集中し、友人たちと共に、あと数日に迫った試験の追い込みに掛かったのだった。
そんなある日のこと、スリザリンのクィディッチ・チームのキャプテンであるモンタギューがとうとう医務室で目を覚ました。ドラコを含むチームメンバーが報告を受けて見舞いに駆け付けると、モンタギューは一体自分に何が起こって今に至るのかを話して聞かせてくれた。
「あのウィーズリーの双子が校内を魔法の花火で騒がせていた日―――俺は突然誰かに蹴っ飛ばされて、傍にあったキャビネットに放り込まれたんだ。そしたら扉が閉まって、中は真っ暗で。直ぐに外に出ようと思って起き上がろうとしたんだ。だけど身体が全然思うように動かなかった。何かの間に挟まったみたいな感覚だった気がする」
モンタギューは何とか記憶を辿りながら話を続けた。
「それで確か……そうだ、キャビネットの奥の方から、誰か老いた男の声が聞こえた。闇の品がどうとか、値段が幾らだとか、珍しい商品だとか…そんな会話もあった気がする。もしかすると何処かの店の音が聞こえるようになってたのかもしれない。まあそんな魔法が掛かってたとして、何の意味があるかさっぱりだけどな。兎に角、俺はどうにも動きようがなかったんで、駄目元で『姿くらまし』をしたんだ。そこからはさっぱり意識がない」
「トイレに詰まってたところを発見されたって聞いたぞ」チームメンバーの一人が言った。
「それにしても、ホグワーツでは姿くらましはできないようになっているだろう。まさかそれが本当に成功したとは到底思えないな」
チームメンバーはそのこともあって、きっとモンタギューの記憶がまだ曖昧なのだろうと疑わなかった。彼の言っていることがどこまで本当か判断するのも難しいとすら思った。
「爺さんの声が聞こえたっていうのも、記憶違いかなんかじゃないか?」
その後、一行はモンタギューの見舞いを終えて医務室から退散した。しかしドラコだけはその場に留まった。
「モンタギュー、さっきの話だが。キャビネットは何処にあったんだ?」
「何だ、笑いのネタにでもする気か?」
モンタギューはつい先程チームメンバーからの揶揄いもあって、ドラコが詳細を聞こうとしたことに少々怪訝そうな表情を見せた。
「違う、少し興味があるだけだ」
「確か、上の階の廊下の突き当りの隅っこだ」
それからドラコは一人、モンタギューの言っていた場所へ向かった。その道中彼が考えていたのは、モンタギューが聞いた『声』についてだった。
(老いた男性、闇の品、値段のことと、珍しい商品……何処かの店)
チームメンバーの誰も関心を持たなかったにも関わらず、ドラコだけが興味を示したのには理由があった。確かにモンタギューの口から発された単語を集めたような店など、魔法界の何処にでもありふれていそうだとは思った。しかしドラコの頭の中には、一軒の店が浮かんでいたのだ。
そうしてドラコが目的の場所に到着してみると、確かにそこには古ぼけた背の高いキャビネット棚があった。じっと見ていると、ドラコは先程まで思い浮かべていた店に、目の前のキャビネットとそっくりな物が置かれていたような気がした。
(ボージンアンドバークスの店主は老いているし、あそこは闇の品を扱っている。それに、このキャビネットのような物も見たかもしれない……。だけど本当にこの中から城の外の音が聞こえるのか?ホグワーツは外界との繋がりを完全に管理している筈だろうに)
ドラコはキャビネットを警戒しつつ少し距離を取ると、半信半疑ながらも杖を振って呪文を唱え、その扉をそっと開かせた。しかし中は背板が見えるだけの空っぽだった。彼はてっきりキャビネットの中で何かが巻き起こっているのではと想像していただけに、これには拍子抜けだった。
(何だ……。やっぱりモンタギューの話はただの記憶違いか何かだったのか?)
そもそもこのキャビネットに外と何らかの繋がりがあったとしたら、とっくに学校の教職員が撤去するなり隠すなりしている筈だ。ドラコはそのように結論付けて、その場にはそれきり向かわなかったのだった。
それから幾らか時が過ぎ、城の庭はペンキを塗ったばかりのように陽の光に輝いていた。雲一つない空がキラキラ光る滑らかな湖に映り、艶やかな緑の芝生がやさしいそよ風に時折さざなみを立てた。もう六月となり、とうとう『ふくろう試験』の月を迎えたのだ。
試験の日までに五年生たちが先生から受けていた説明は次のとおりだ。試験は二週間に渡って行われる。午前中は理論に関する筆記試験、午後は実技試験となっていた。天文学の実技は当然夜に実施する。試験の結果は七月の夏休み中に、ふくろう便で各家庭に送られるということだった。
そして先生は生徒たちに警告として、カンニングの類は最も厳しい防止呪文で防がれ、自動で回答したり修正したりする筆記用具の使用も禁止されていることを伝えた。
「毎年少なくとも一人は、魔法試験局の決めたルールをごまかせると考える生徒がいるようだ。そのような愚か者がこの場にいないことを祈るばかりだが」
試験前最後の魔法薬学の授業で、スネイプは生徒らにそのように話した。
「我が校の新しい女校長が―――」スネイプは呆れを含んだ表情をしていた。「カンニングは厳罰に処すと寮生に伝えるよう、寮監に要請した。その理由は、お前たちの成績次第で、本校における新校長体制の評価が決まってくるからだ」