22.Sweet seduction
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「よ……よかったあ。」フォーラが安堵の声を漏らした。「ドラコ、直ぐに術を解くわね……!」
フォーラは呪文を唱え、自身の頭頂部に杖先を触れさせた。すると今度は先程とは異なり、熱い空気に身体が包まれるような感覚がした。そうして二人の姿が元通り視覚化されたことで、彼女らは先程からずっと互いにくっ付いていたことを一層顕著に認識した。
フォーラの方は先程までピーブズに気を取られていたあまり、そのことを強くは意識していなかった。しかし、今こうしてドラコと酷く密着している状況を改めて目で見て理解するや否や、じわじわと気恥ずかしさが襲ってくるのを感じていた。そしてこの状況が自分の咄嗟の判断によって自ら作ったものだと思うと、自分は何て大胆なことをしてしまったのかという焦りで全身が熱かった。
「えっと、ドラコ……。こんな隠れ方しか提案できなくて、私……。」
フォーラがそのような羞恥心を含んだ瞳でドラコを見上げた時、彼はどういうわけか驚きや焦燥感、そして我慢を混ぜたような言い表しにくい表情で彼女を見つめていた。
というのもドラコは目くらまし術にかかっていた間、フォーラが目に見えなかったからこそ何とかその感触や香りにギリギリ耐えられていた。しかしこうして突然彼女が見えるようになったことで、彼は自分の置かれた状況が如何に毒であるかを再認識した。何せ視界には間近に彼女の赤らんだ顔があり、その首元のボタンが一つとはいえ外れていて鎖骨がチラと覗いているし、シャツで隠れた彼女の胸はドラコ自身の胸板と合わさって柔らかく押しつぶされていた。
色々と我慢の限界だったというのに、今やドラコの心臓は先程よりも本当に煩く脈打っていたし、身体の色んなところが―――本当に色んなところが一層強く熱を帯び始めていた。後者についてはきっと、彼女が術を解除した時に感じた熱気すらも誘発要因の一つとなったに違いない。
ドラコは視線を伏せると、これ以上フォーラに身体中の熱や心臓の暴れる音を悟られないよう、彼女に触れない程度までそっと身体を離した。その際、彼は何とかこれ以上醜態を晒さずに済む安堵から小さなため息を吐いたのだが、ふと改めてフォーラの方に目を向けると、彼女は何処か物寂しそうにドラコの方を見ていたのだ。それはまるで、ドラコが自分から離れてしまったことに対する感情が表れているようだった。
ドラコはそんなフォーラを見た瞬間、扇情的な感覚に襲われた。そしてつい先程自らフォーラと物理的な距離を置いた筈だったのに、彼は気付いた時にはもう彼女に唇を重ねていた。
「!」
フォーラは驚いて少々目を見開いたのだが、何度か唇を押し付けられる高揚感に彼女もドラコ同様、瞳を閉じて彼の求めに応えた。彼女はドラコが先程とは違って自分を抱き締めてはおらず、身体が触れるか触れないかの程度を保っていることを少々疑問に思った。しかしそんなことよりも、触れては離れる短いキスを何度か繰り返す中、フォーラはふと初めてドラコとキスした時のことを思い出していた。何だか今の方が、あの時よりも彼の唇が押してくる力が幾らか強いように感じる。それに、彼は先程から段々とフォーラの唇を柔く喰み始めたのだが、それが以前よりも随分……欲情的とでもいうのか、動悸が強まるようなキスだった。
しかしフォーラは先程のピーブズの侵入があったせいで、緊張故に自身の唇が酷く乾燥していることを気にしていた。そのカサカサとした感触がドラコに伝わっていると思うと何だか気が引けたのだ。そのため彼女は一瞬ドラコと唇が僅かに離れた隙に、無意識に自分の下唇を舌で軽く舐めた。
ところがフォーラがタイミングを見誤った結果、彼女がそのようにした時にドラコの唇に舌先が触れてしまっていた。
「……!?」
ドラコは何が起こったか理解が追い付かず、ワンテンポ遅れて状況を把握するや否や、バッとフォーラから顔を離した。するとそこには顔を真っ赤にして眉を八の字にし、両手で口を覆って慌てている彼女の姿があった。
「ご……ごめんなさい!私……自分の唇が渇いていて、上手くキスできていないような気がして、だから……ドラコの唇を、その、濡らすつもりはなかったの……!」
フォーラの羞恥的な表情でそんな言葉を口にされたものだから、ドラコは相変わらず身体の色んなところが余計にブワ~ッと熱を帯びていた。
「あー……。フォーラ、謝らなくても大丈夫だ。……ただ、その」
ドラコはそのように躊躇いつつも、そっと彼女の手首に触れた。そして何とか続きの言葉を口にした。
「代わりに、僕が……舐めても?」
「……え!?」
フォーラはドラコが言っていることの意味を理解はしたが、両手で口を覆ったまま咄嗟にブンブンと首を横に振った。
(ドラコったら何てことを提案しているの!?)
しかしドラコが熱っぽい視線でじっと訴えかけるように見つめてくるものだから、フォーラは恐らく自分が頷くまで彼は食い下がり続けるような気がした。それを思うと、長く抗うのはあまり意味のないことのような気がした。
フォーラは呪文を唱え、自身の頭頂部に杖先を触れさせた。すると今度は先程とは異なり、熱い空気に身体が包まれるような感覚がした。そうして二人の姿が元通り視覚化されたことで、彼女らは先程からずっと互いにくっ付いていたことを一層顕著に認識した。
フォーラの方は先程までピーブズに気を取られていたあまり、そのことを強くは意識していなかった。しかし、今こうしてドラコと酷く密着している状況を改めて目で見て理解するや否や、じわじわと気恥ずかしさが襲ってくるのを感じていた。そしてこの状況が自分の咄嗟の判断によって自ら作ったものだと思うと、自分は何て大胆なことをしてしまったのかという焦りで全身が熱かった。
「えっと、ドラコ……。こんな隠れ方しか提案できなくて、私……。」
フォーラがそのような羞恥心を含んだ瞳でドラコを見上げた時、彼はどういうわけか驚きや焦燥感、そして我慢を混ぜたような言い表しにくい表情で彼女を見つめていた。
というのもドラコは目くらまし術にかかっていた間、フォーラが目に見えなかったからこそ何とかその感触や香りにギリギリ耐えられていた。しかしこうして突然彼女が見えるようになったことで、彼は自分の置かれた状況が如何に毒であるかを再認識した。何せ視界には間近に彼女の赤らんだ顔があり、その首元のボタンが一つとはいえ外れていて鎖骨がチラと覗いているし、シャツで隠れた彼女の胸はドラコ自身の胸板と合わさって柔らかく押しつぶされていた。
色々と我慢の限界だったというのに、今やドラコの心臓は先程よりも本当に煩く脈打っていたし、身体の色んなところが―――本当に色んなところが一層強く熱を帯び始めていた。後者についてはきっと、彼女が術を解除した時に感じた熱気すらも誘発要因の一つとなったに違いない。
ドラコは視線を伏せると、これ以上フォーラに身体中の熱や心臓の暴れる音を悟られないよう、彼女に触れない程度までそっと身体を離した。その際、彼は何とかこれ以上醜態を晒さずに済む安堵から小さなため息を吐いたのだが、ふと改めてフォーラの方に目を向けると、彼女は何処か物寂しそうにドラコの方を見ていたのだ。それはまるで、ドラコが自分から離れてしまったことに対する感情が表れているようだった。
ドラコはそんなフォーラを見た瞬間、扇情的な感覚に襲われた。そしてつい先程自らフォーラと物理的な距離を置いた筈だったのに、彼は気付いた時にはもう彼女に唇を重ねていた。
「!」
フォーラは驚いて少々目を見開いたのだが、何度か唇を押し付けられる高揚感に彼女もドラコ同様、瞳を閉じて彼の求めに応えた。彼女はドラコが先程とは違って自分を抱き締めてはおらず、身体が触れるか触れないかの程度を保っていることを少々疑問に思った。しかしそんなことよりも、触れては離れる短いキスを何度か繰り返す中、フォーラはふと初めてドラコとキスした時のことを思い出していた。何だか今の方が、あの時よりも彼の唇が押してくる力が幾らか強いように感じる。それに、彼は先程から段々とフォーラの唇を柔く喰み始めたのだが、それが以前よりも随分……欲情的とでもいうのか、動悸が強まるようなキスだった。
しかしフォーラは先程のピーブズの侵入があったせいで、緊張故に自身の唇が酷く乾燥していることを気にしていた。そのカサカサとした感触がドラコに伝わっていると思うと何だか気が引けたのだ。そのため彼女は一瞬ドラコと唇が僅かに離れた隙に、無意識に自分の下唇を舌で軽く舐めた。
ところがフォーラがタイミングを見誤った結果、彼女がそのようにした時にドラコの唇に舌先が触れてしまっていた。
「……!?」
ドラコは何が起こったか理解が追い付かず、ワンテンポ遅れて状況を把握するや否や、バッとフォーラから顔を離した。するとそこには顔を真っ赤にして眉を八の字にし、両手で口を覆って慌てている彼女の姿があった。
「ご……ごめんなさい!私……自分の唇が渇いていて、上手くキスできていないような気がして、だから……ドラコの唇を、その、濡らすつもりはなかったの……!」
フォーラの羞恥的な表情でそんな言葉を口にされたものだから、ドラコは相変わらず身体の色んなところが余計にブワ~ッと熱を帯びていた。
「あー……。フォーラ、謝らなくても大丈夫だ。……ただ、その」
ドラコはそのように躊躇いつつも、そっと彼女の手首に触れた。そして何とか続きの言葉を口にした。
「代わりに、僕が……舐めても?」
「……え!?」
フォーラはドラコが言っていることの意味を理解はしたが、両手で口を覆ったまま咄嗟にブンブンと首を横に振った。
(ドラコったら何てことを提案しているの!?)
しかしドラコが熱っぽい視線でじっと訴えかけるように見つめてくるものだから、フォーラは恐らく自分が頷くまで彼は食い下がり続けるような気がした。それを思うと、長く抗うのはあまり意味のないことのような気がした。