22.Sweet seduction
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「本当だ。だけど、この状況と一体どういう関係が……」
「今からここを出ても、きっとピーブズに気付かれてしまう。だから、今から私が二人分『目くらまし術』をかけるわ。もしピーブズが扉を開けても、誰もいないように見せるためにね。
……だけど私、まだ自分以外の人にはこの呪文をかけたことがないから、できる限り貴方と私がひと塊になった状態で術をかけたいの。成るべく自分を『目くらまし』する時と同じ感覚になるように……。いきなり抱き着いてしまって、ごめんなさい。」
その時、近くの部屋の扉がバンと開く音とピーブズの高笑いが聞こえた。するとドラコは自分の背中に廻ったフォーラの手が僅かに震えていることに気が付いた。きっとそれは以前、彼女がピーブズに廊下でバケツ一杯の水を突然掛けられそうになった時の恐怖感を思い出してしまったせいかもしれない。ドラコはそのように考えた。
「時間がないわ。少し気持ち悪い感覚かもしれないけれど、我慢してね……。」
そうしてフォーラがドラコに正面からくっついたまま片腕を自由にすると、杖を振って自身の頭頂部に杖先をトンと触れさせた。するとたちまち二人は頭の上から冷たいトロトロとした液体を被ったような感触を覚えた。この感覚はフォーラと真正面からくっ付いているドラコにとって、身をよじりたくなるような刺激だったのだが―――その魔力は上から下まで順に流れていき、仕舞いにはつま先まで到達した。
そうして二人はあっという間に目の前の相手や自身の腕が視界から消えたことを認識した。特にドラコは先程までの光景が心から目に毒だと感じていたため―――何せ薄着のフォーラとこれ以上無いくらい全身が密着していたのだから―――、目の前から彼女が消えたことに内心幾らか安堵した。
しかし、残念ながらそれだけではドラコの焦りを打ち消すことなど到底叶わなかった。何せ彼女の姿が見えなくなってもドラコの背中に廻された腕によって、彼女のその柔らかな胸や腕、太ももがドラコの全身に押し付けられている感覚は健在だったからだ。
それに加え、つい先程は二人で少々息のあがる程度の呪文の掛け合いもした。それによって今の彼女からは普段の甘い香りと、若干汗ばんでいるが故のまるで思考がくらくらするような魅惑的な匂いが混ざって香っているような気がした。
そのためドラコは先程よりも自身の心臓の鼓動が、身体の熱が、随分強く大きくなっていくのを避けられなかった。彼はその動悸につられて荒くなりそうな息を何とか押し殺し、自身の胸や腰を無意識にフォーラの身体から離そうとした。
「あっ、ドラコ!」
フォーラは自身からドラコが僅かに離れるのを感じると共に、彼の身体の一部が薄っすらと可視化しだしたことに気が付いた。そのため彼女は咄嗟に彼を小声で呼び止め、それとほぼ同時に彼の腰に廻している両腕に力を込めて、その身体を自身の方へ引き寄せ直したのだった。
「う、」
ドラコは再び襲ってきた圧迫感に思わず声を漏らし、妙な汗ばみがワッと身体中から噴き出るような感覚に襲われた。
そしてそれとほぼ同じタイミングで、二人のいる部屋の扉がバンと音を立てて勢いよく開かれた。それに驚いて二人共がビクリと身体を跳ねさせた。幸いドラコの身体は術をかけた時と同様、既に背景と同化して見えなくなっていた。
フォーラとドラコが抱き合ったまま入り口の方に視線を向けると、ポルターガイストのピーブズが空中で背泳ぎをして、数個のクソ爆弾をお手玉のように遊ばせながら部屋へ侵入してくるところだった。彼は手元の爆弾を見ずに部屋の中をキョロキョロと見渡していた。
「物音が聞こえたのはこの部屋か?」
ピーブズは浮遊の姿勢を崩さないまま部屋の中を大きくぐるりと旋回した。この時フォーラは先程からのドラコと同様、心臓がバクバクと音を立てていたし身体中が熱を帯びていた。但しそれはピーブズが今同じ空間を漂っていることへの緊張が殆どを占めていた。
そのため彼女にとっては、シャツ越しに感じられるドラコの幾らか男性らしい胸板や腹筋も、彼から香るいつもより甘みの強い匂いも、彼女の恐怖から来る緊張を和らげ安心させるためにすがり付きたくて仕方がない類のものになっていた。
故にフォーラはピーブズへの恐れに何とか耐えようと、ドラコの背中に廻していた腕の力を幾らか強めて彼の首元あたりに顔を埋めた。そして彼女は目に見えないにしろ、ドラコの腕の中にいることの安心感にじっと意識を集中した。そうして幾らか落ち着きを取り戻してしてくると、次第にフォーラは彼の胸板の奥で早鐘を打つ鮮明な心臓の音に気が付いた。そしてその原因が『ドラコもピーブズに存在がばれやしないかと緊張している』からだと思い至ったのだった。
(大丈夫……ドラコも私もこのままじっとしていれば……)
そうして一層長く感じられた数分の時が過ぎ、ようやくピーブズはフォーラたちのいる部屋から出て行った。ピーブズが入って来た時と同じくらい盛大な音を立ててドアが閉まった後で、フォーラはじっと廊下の外に耳をすませた。どうやらあのポルターガイストは階下のより人が多い所へと移動した様子だった。
「今からここを出ても、きっとピーブズに気付かれてしまう。だから、今から私が二人分『目くらまし術』をかけるわ。もしピーブズが扉を開けても、誰もいないように見せるためにね。
……だけど私、まだ自分以外の人にはこの呪文をかけたことがないから、できる限り貴方と私がひと塊になった状態で術をかけたいの。成るべく自分を『目くらまし』する時と同じ感覚になるように……。いきなり抱き着いてしまって、ごめんなさい。」
その時、近くの部屋の扉がバンと開く音とピーブズの高笑いが聞こえた。するとドラコは自分の背中に廻ったフォーラの手が僅かに震えていることに気が付いた。きっとそれは以前、彼女がピーブズに廊下でバケツ一杯の水を突然掛けられそうになった時の恐怖感を思い出してしまったせいかもしれない。ドラコはそのように考えた。
「時間がないわ。少し気持ち悪い感覚かもしれないけれど、我慢してね……。」
そうしてフォーラがドラコに正面からくっついたまま片腕を自由にすると、杖を振って自身の頭頂部に杖先をトンと触れさせた。するとたちまち二人は頭の上から冷たいトロトロとした液体を被ったような感触を覚えた。この感覚はフォーラと真正面からくっ付いているドラコにとって、身をよじりたくなるような刺激だったのだが―――その魔力は上から下まで順に流れていき、仕舞いにはつま先まで到達した。
そうして二人はあっという間に目の前の相手や自身の腕が視界から消えたことを認識した。特にドラコは先程までの光景が心から目に毒だと感じていたため―――何せ薄着のフォーラとこれ以上無いくらい全身が密着していたのだから―――、目の前から彼女が消えたことに内心幾らか安堵した。
しかし、残念ながらそれだけではドラコの焦りを打ち消すことなど到底叶わなかった。何せ彼女の姿が見えなくなってもドラコの背中に廻された腕によって、彼女のその柔らかな胸や腕、太ももがドラコの全身に押し付けられている感覚は健在だったからだ。
それに加え、つい先程は二人で少々息のあがる程度の呪文の掛け合いもした。それによって今の彼女からは普段の甘い香りと、若干汗ばんでいるが故のまるで思考がくらくらするような魅惑的な匂いが混ざって香っているような気がした。
そのためドラコは先程よりも自身の心臓の鼓動が、身体の熱が、随分強く大きくなっていくのを避けられなかった。彼はその動悸につられて荒くなりそうな息を何とか押し殺し、自身の胸や腰を無意識にフォーラの身体から離そうとした。
「あっ、ドラコ!」
フォーラは自身からドラコが僅かに離れるのを感じると共に、彼の身体の一部が薄っすらと可視化しだしたことに気が付いた。そのため彼女は咄嗟に彼を小声で呼び止め、それとほぼ同時に彼の腰に廻している両腕に力を込めて、その身体を自身の方へ引き寄せ直したのだった。
「う、」
ドラコは再び襲ってきた圧迫感に思わず声を漏らし、妙な汗ばみがワッと身体中から噴き出るような感覚に襲われた。
そしてそれとほぼ同じタイミングで、二人のいる部屋の扉がバンと音を立てて勢いよく開かれた。それに驚いて二人共がビクリと身体を跳ねさせた。幸いドラコの身体は術をかけた時と同様、既に背景と同化して見えなくなっていた。
フォーラとドラコが抱き合ったまま入り口の方に視線を向けると、ポルターガイストのピーブズが空中で背泳ぎをして、数個のクソ爆弾をお手玉のように遊ばせながら部屋へ侵入してくるところだった。彼は手元の爆弾を見ずに部屋の中をキョロキョロと見渡していた。
「物音が聞こえたのはこの部屋か?」
ピーブズは浮遊の姿勢を崩さないまま部屋の中を大きくぐるりと旋回した。この時フォーラは先程からのドラコと同様、心臓がバクバクと音を立てていたし身体中が熱を帯びていた。但しそれはピーブズが今同じ空間を漂っていることへの緊張が殆どを占めていた。
そのため彼女にとっては、シャツ越しに感じられるドラコの幾らか男性らしい胸板や腹筋も、彼から香るいつもより甘みの強い匂いも、彼女の恐怖から来る緊張を和らげ安心させるためにすがり付きたくて仕方がない類のものになっていた。
故にフォーラはピーブズへの恐れに何とか耐えようと、ドラコの背中に廻していた腕の力を幾らか強めて彼の首元あたりに顔を埋めた。そして彼女は目に見えないにしろ、ドラコの腕の中にいることの安心感にじっと意識を集中した。そうして幾らか落ち着きを取り戻してしてくると、次第にフォーラは彼の胸板の奥で早鐘を打つ鮮明な心臓の音に気が付いた。そしてその原因が『ドラコもピーブズに存在がばれやしないかと緊張している』からだと思い至ったのだった。
(大丈夫……ドラコも私もこのままじっとしていれば……)
そうして一層長く感じられた数分の時が過ぎ、ようやくピーブズはフォーラたちのいる部屋から出て行った。ピーブズが入って来た時と同じくらい盛大な音を立ててドアが閉まった後で、フォーラはじっと廊下の外に耳をすませた。どうやらあのポルターガイストは階下のより人が多い所へと移動した様子だった。