22.Sweet seduction
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それからの二人は、今度はフォーラの苦手な『闇の魔術に対する防衛術』の実技を練習した。中でも注力したのは妨害呪文の類だ。フォーラはドラコの簡単な攻撃を呪文で妨害することで、彼の動きを遅らせたり止めたりする練習を行った。しかし彼女は中々思ったとおりの術の効果を発揮することができずにいた。
「フォーラはきっと、優しすぎるのかもしれない。僕を攻撃するのを迷っているだろう」
「う……。優しすぎるかどうかは別としても、多分迷っているのはそうだと思うわ……。」
「君は、保護呪文なんかの身を護る術は上手くできている方なんだから、防衛術全般が苦手なわけじゃないと思う。特にプロテゴ(盾の呪文)なんて、難しい類に入るのに、形になっているじゃないか」
フォーラは呪文が上手くいかない中、ドラコがそのように彼女を励ます姿に有難さと申し訳なさを感じた。
「私の術でドラコを傷つけるかもしれないと思うなんて、防衛術の得意な貴方に失礼なのかもしれないけど……。どうしてもドラコ含め、人を攻撃するために杖を向けるのが怖くって。」
「うーん……。だが、時には見知った相手に杖を振り下ろす覚悟だって必要だと、僕はそう思う。妨害や攻撃系の呪文は確かに相手を傷つけるものだ。だけど裏を返せば、そういう術を使う時っていうのは、君に守りたい誰かがいるからだと思わないか? 」
フォーラはドラコの話を聞いて、彼の言うように心構えを持っておけば幾らか今練習している術をかけることの戸惑いが軽減されるような気がした。その守る対象は自分自身かもしれないし、ドラコや友人たちかもしれない。もっと言えば、いつかドラコが死喰い人として行うことをフォーラ自身が止めなければいけない状況になったとしたら?そうなれば、彼女は必ず術を成功させる必要があるだろう。
その後のフォーラはそれまでと打って変わり、妨害・攻撃系の術を一通り練習した。そうして『インペディメンタ、妨害せよ』を筆頭とした幾つかの術が随分マシな仕上がりになる頃には、フォーラもドラコも少しばかり汗ばんでいた。それは午後の気温が上がったことと、二人が絶え間なく杖を振っては立て続けに回避の動きをしていたせいだった。
「まだ手直しするところは多いが、試験に支障がない程度には良くなったじゃないか」
「本当?良かった……。ふう、」
ドラコから少し離れたところに立っていたフォーラは、自身の手で首元の汗をサッと払うように拭った。そして身体の熱を逃がす為、軽くネクタイを下げて自身の纏っているYシャツの一番上のボタンを外したのだった。
その珍しい仕草に、ドラコは視線が反射的に彼女の胸元の方へ向くのを避けられなかった。そしてそれまではどこか頭の外へやっていた筈の、身体が燻るような感覚を自然と思い出していった。
「ここまでできるようになったのも、ドラコのお陰ね。練習に付き合ってくれて本当にありがとう。お互いに少し動き過ぎたと思うし、そろそろ休憩でも―――」
フォーラはそのように話しつつ笑顔でドラコの方を見やった。しかし彼女はふと、彼と目が合った途端に言葉をつぐんでしまった。それだけでなく、彼女は何かに気が付いたかのようにその表情から笑みを消し、じっとドラコを見てその場に固まったではないか。
ドラコはフォーラの反応からして、もしかすると彼の視線がフォーラの少々はだけた首元の方を向いていたことを悟られたのではと思った。そしてそれを彼女はきっと快く思っていないのだろうと感じた。現に彼女は、先程『休憩しよう』と提案しかけていた筈なのに、テーブルや椅子、教科書の類をさっさと『消失』させ始めていた。そのためドラコは咄嗟に何か彼女に弁明しなくてはと焦った。
「フォーラ、」
ドラコが兎に角彼女の名を呼んで続きの言葉を選ぼうとしていた時、仕舞い作業を終えた彼女はどういうわけか緊迫した表情になっていて、急いでこちらの方に駆けて来たではないか。そしてドラコの目と鼻の先に立った彼女は、何とドラコの胴に彼女の両手をサッと廻し、互いの全身をくっつけるようにしてきつく抱擁したのだった。
「えっ、!?」
「シッ!静かにして……!ドラコ、どうか何も言わずそのまま私の背中に腕を廻してほしいの。お願いよ。」
フォーラの声がドラコの耳に幾らか近いところで囁かれた。ドラコは本当に突然のことにわけが分からなかったし、彼女の身体のやわらかな感触や香りのせいで頭が沸騰しそうだった。それでも彼は何とか彼女の言うとおりにした。そうして彼が緊張気味にその細い腰に両腕を廻すと、フォーラが小声で続けた。
「廊下の向こうの方で、ピーブズが暴れる音が聞こえるでしょう。こっちに向かって来ているみたい……。」
フォーラに言われて初めて、ドラコは部屋の扉の向こうの廊下から聞こえる音に気が付いた。それは何かが壊れたり、聞き慣れたポルターガイストの声が混ざったりしたもので、まだ小さな音だったが確実にこちらに近付いているように思えた。順番に扉を開け放つような音も聞こえる。
「フォーラはきっと、優しすぎるのかもしれない。僕を攻撃するのを迷っているだろう」
「う……。優しすぎるかどうかは別としても、多分迷っているのはそうだと思うわ……。」
「君は、保護呪文なんかの身を護る術は上手くできている方なんだから、防衛術全般が苦手なわけじゃないと思う。特にプロテゴ(盾の呪文)なんて、難しい類に入るのに、形になっているじゃないか」
フォーラは呪文が上手くいかない中、ドラコがそのように彼女を励ます姿に有難さと申し訳なさを感じた。
「私の術でドラコを傷つけるかもしれないと思うなんて、防衛術の得意な貴方に失礼なのかもしれないけど……。どうしてもドラコ含め、人を攻撃するために杖を向けるのが怖くって。」
「うーん……。だが、時には見知った相手に杖を振り下ろす覚悟だって必要だと、僕はそう思う。妨害や攻撃系の呪文は確かに相手を傷つけるものだ。だけど裏を返せば、そういう術を使う時っていうのは、君に守りたい誰かがいるからだと思わないか? 」
フォーラはドラコの話を聞いて、彼の言うように心構えを持っておけば幾らか今練習している術をかけることの戸惑いが軽減されるような気がした。その守る対象は自分自身かもしれないし、ドラコや友人たちかもしれない。もっと言えば、いつかドラコが死喰い人として行うことをフォーラ自身が止めなければいけない状況になったとしたら?そうなれば、彼女は必ず術を成功させる必要があるだろう。
その後のフォーラはそれまでと打って変わり、妨害・攻撃系の術を一通り練習した。そうして『インペディメンタ、妨害せよ』を筆頭とした幾つかの術が随分マシな仕上がりになる頃には、フォーラもドラコも少しばかり汗ばんでいた。それは午後の気温が上がったことと、二人が絶え間なく杖を振っては立て続けに回避の動きをしていたせいだった。
「まだ手直しするところは多いが、試験に支障がない程度には良くなったじゃないか」
「本当?良かった……。ふう、」
ドラコから少し離れたところに立っていたフォーラは、自身の手で首元の汗をサッと払うように拭った。そして身体の熱を逃がす為、軽くネクタイを下げて自身の纏っているYシャツの一番上のボタンを外したのだった。
その珍しい仕草に、ドラコは視線が反射的に彼女の胸元の方へ向くのを避けられなかった。そしてそれまではどこか頭の外へやっていた筈の、身体が燻るような感覚を自然と思い出していった。
「ここまでできるようになったのも、ドラコのお陰ね。練習に付き合ってくれて本当にありがとう。お互いに少し動き過ぎたと思うし、そろそろ休憩でも―――」
フォーラはそのように話しつつ笑顔でドラコの方を見やった。しかし彼女はふと、彼と目が合った途端に言葉をつぐんでしまった。それだけでなく、彼女は何かに気が付いたかのようにその表情から笑みを消し、じっとドラコを見てその場に固まったではないか。
ドラコはフォーラの反応からして、もしかすると彼の視線がフォーラの少々はだけた首元の方を向いていたことを悟られたのではと思った。そしてそれを彼女はきっと快く思っていないのだろうと感じた。現に彼女は、先程『休憩しよう』と提案しかけていた筈なのに、テーブルや椅子、教科書の類をさっさと『消失』させ始めていた。そのためドラコは咄嗟に何か彼女に弁明しなくてはと焦った。
「フォーラ、」
ドラコが兎に角彼女の名を呼んで続きの言葉を選ぼうとしていた時、仕舞い作業を終えた彼女はどういうわけか緊迫した表情になっていて、急いでこちらの方に駆けて来たではないか。そしてドラコの目と鼻の先に立った彼女は、何とドラコの胴に彼女の両手をサッと廻し、互いの全身をくっつけるようにしてきつく抱擁したのだった。
「えっ、!?」
「シッ!静かにして……!ドラコ、どうか何も言わずそのまま私の背中に腕を廻してほしいの。お願いよ。」
フォーラの声がドラコの耳に幾らか近いところで囁かれた。ドラコは本当に突然のことにわけが分からなかったし、彼女の身体のやわらかな感触や香りのせいで頭が沸騰しそうだった。それでも彼は何とか彼女の言うとおりにした。そうして彼が緊張気味にその細い腰に両腕を廻すと、フォーラが小声で続けた。
「廊下の向こうの方で、ピーブズが暴れる音が聞こえるでしょう。こっちに向かって来ているみたい……。」
フォーラに言われて初めて、ドラコは部屋の扉の向こうの廊下から聞こえる音に気が付いた。それは何かが壊れたり、聞き慣れたポルターガイストの声が混ざったりしたもので、まだ小さな音だったが確実にこちらに近付いているように思えた。順番に扉を開け放つような音も聞こえる。