22.Sweet seduction
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さて、その日の午前中の授業の合間、ドラコは内心落ち着きがなく悶々とした状態で授業をこなさなければならなかった。というのも、午前中はいつもより冷え込んでいてローブを羽織る必要のある気温だった。そのため彼はその間全身にフォーラの僅かな香りを纏っていて、まるで彼女に抱き締められているような気にさせられたのだ。
とはいえ正午になる頃には流石にその香りも随分薄れてしまった。そして外の気温がぐっと上がったことで、ドラコはそのローブやセーターすらも脱いでようやく香りを気にせず落ち着くことができたのだった。
そうして昼食を終えたドラコとフォーラは午後からの授業がないこともあり、かつてフォーラが変身術の練習に使っていた四階の空き部屋に二人揃って足を踏み入れた。フォーラは出現呪文を使い、小さな背の高い円形テーブルと、椅子を二脚ほど部屋の中心に設置した。
「変身術の方から練習を始めるのはどうかしら?」
フォーラがそのように切り出したのを皮切りに、二人は主にドラコが苦手な術を幾つか練習することになった。変身術の教科書を机に開き、互いに杖の振り方と呪文の発音などを確認し合った。フォーラの方が変身術全般に長けているのもあって、ドラコが上手くいかない時は彼女が手本を見せたり、彼の杖を振る手を少々整えたりした。
その際、フォーラとドラコは当然ながら互いが至近距離になる瞬間が何度もあった。その度にフォーラからいつもの甘いバニラのような香りが感じられて、ドラコは午前中耐えていた彼女への燻る気持ちが再燃しかけるのを何度も抑え込んだ。
そうしてドラコの苦手な術を何度か練習した結果、彼は自身の自制心とフォーラの分かり易い指導のお陰もあって、その苦手な術を克服していた。呪文が成功した時には、二人は驚きと喜びの混じった表情をパッと咲かせ、同時に互いの顔を見合わせたのだった。
「凄いわドラコ!」フォーラがドラコの両手をキュッと握った。
「ああ、君にアドバイスをもらったお陰だ」
ドラコは喜びでフォーラの手を握り返しながら言葉を続けた。
「ありがとう。今までで一番上手くいったよ」
「ふふ、それは良かったわ。」
フォーラが喜ぶ姿を見たドラコは、何だか再び彼女に心臓を擽られるような感覚になりかけた。そのため彼は心を落ち着かせようと、術をかけて変身させていた対象物を元の姿に戻すべく、彼女からそっと両手を離して杖を振った。
「それにしても、君は教え方が上手いな。きっと君の伝え方が理解しやすかったから、比較的早く術が成功したんだと思う」
「そうかしら……。何だか照れるわね。」
「僕と離れている間、君が友人らに術のアドバイスをして、その後に彼女らが呪文を成功させる姿も何度か見かけた。君はきっと、イメージや感覚を言葉にして伝えるのが上手いんだな」
ドラコがフォーラの方に微笑みかけて言葉を続けた。
「君は少しおどおどするところがあるけど、もしかしたら、意外に教師とかの職が向いているのかもしれないな」
フォーラはドラコの話を聞いて、ふと以前にも誰かに同じようなことを言われた気がした。彼女がそのように思案していると、ドラコが声を掛けた。
「どうしたんだ?」
「あ、ううん。大したことじゃないの。……以前、セオドールにも同じことを言われたのを思い出して。彼にも、私が教師に向いているかもしれないって言われたわ。私、人の前に立つ仕事なんて考えていなかったから、自分の将来に思いもいなかった選択肢があるかもしれないと思うと、少し嬉しかったわ。」
「ふうん……」
ドラコは言葉少なく返答したのだが、その時の声のトーンがやや落ちたような気がして、フォーラはじっと彼の方を見た。ドラコの方はそんな彼女の視線に気付いたようで、何度か視線を彼女と合わせては逸らした。
「な、何だよ」
「ドラコ、もしかして……私がセオドールの話をしたから、嫉妬してくれているの?」
「そんなわけないだろう」
ドラコが眉間に軽く皺を寄せてフォーラの方をチラと見ると、彼女はニコニコとした笑みを向けていた。その表情に根負けしたドラコは、ぽつりと言葉を零した。
「まあ……僕の方が先に、君の良いところを伝えてあげたかった。それだけだ」
「!ごめんなさいドラコ。私の配慮が足りなかったわね。でも安心して。私が褒められて一番嬉しいと感じる人は、ドラコなんだから。」
フォーラはドラコの目にかかった前髪にそっと触れ、彼をこちらに向かせるようにしてその髪を軽く彼の耳に掛けた。ドラコから見たフォーラは相変わらず何だか幸せそうな様子だった。彼はそんな彼女を少々意地悪だと思いつつも、一方で彼女の手のひらで転がされていることを喜んでいる自分がいることに、思わずため息交じりの笑みを零したのだった。
とはいえ正午になる頃には流石にその香りも随分薄れてしまった。そして外の気温がぐっと上がったことで、ドラコはそのローブやセーターすらも脱いでようやく香りを気にせず落ち着くことができたのだった。
そうして昼食を終えたドラコとフォーラは午後からの授業がないこともあり、かつてフォーラが変身術の練習に使っていた四階の空き部屋に二人揃って足を踏み入れた。フォーラは出現呪文を使い、小さな背の高い円形テーブルと、椅子を二脚ほど部屋の中心に設置した。
「変身術の方から練習を始めるのはどうかしら?」
フォーラがそのように切り出したのを皮切りに、二人は主にドラコが苦手な術を幾つか練習することになった。変身術の教科書を机に開き、互いに杖の振り方と呪文の発音などを確認し合った。フォーラの方が変身術全般に長けているのもあって、ドラコが上手くいかない時は彼女が手本を見せたり、彼の杖を振る手を少々整えたりした。
その際、フォーラとドラコは当然ながら互いが至近距離になる瞬間が何度もあった。その度にフォーラからいつもの甘いバニラのような香りが感じられて、ドラコは午前中耐えていた彼女への燻る気持ちが再燃しかけるのを何度も抑え込んだ。
そうしてドラコの苦手な術を何度か練習した結果、彼は自身の自制心とフォーラの分かり易い指導のお陰もあって、その苦手な術を克服していた。呪文が成功した時には、二人は驚きと喜びの混じった表情をパッと咲かせ、同時に互いの顔を見合わせたのだった。
「凄いわドラコ!」フォーラがドラコの両手をキュッと握った。
「ああ、君にアドバイスをもらったお陰だ」
ドラコは喜びでフォーラの手を握り返しながら言葉を続けた。
「ありがとう。今までで一番上手くいったよ」
「ふふ、それは良かったわ。」
フォーラが喜ぶ姿を見たドラコは、何だか再び彼女に心臓を擽られるような感覚になりかけた。そのため彼は心を落ち着かせようと、術をかけて変身させていた対象物を元の姿に戻すべく、彼女からそっと両手を離して杖を振った。
「それにしても、君は教え方が上手いな。きっと君の伝え方が理解しやすかったから、比較的早く術が成功したんだと思う」
「そうかしら……。何だか照れるわね。」
「僕と離れている間、君が友人らに術のアドバイスをして、その後に彼女らが呪文を成功させる姿も何度か見かけた。君はきっと、イメージや感覚を言葉にして伝えるのが上手いんだな」
ドラコがフォーラの方に微笑みかけて言葉を続けた。
「君は少しおどおどするところがあるけど、もしかしたら、意外に教師とかの職が向いているのかもしれないな」
フォーラはドラコの話を聞いて、ふと以前にも誰かに同じようなことを言われた気がした。彼女がそのように思案していると、ドラコが声を掛けた。
「どうしたんだ?」
「あ、ううん。大したことじゃないの。……以前、セオドールにも同じことを言われたのを思い出して。彼にも、私が教師に向いているかもしれないって言われたわ。私、人の前に立つ仕事なんて考えていなかったから、自分の将来に思いもいなかった選択肢があるかもしれないと思うと、少し嬉しかったわ。」
「ふうん……」
ドラコは言葉少なく返答したのだが、その時の声のトーンがやや落ちたような気がして、フォーラはじっと彼の方を見た。ドラコの方はそんな彼女の視線に気付いたようで、何度か視線を彼女と合わせては逸らした。
「な、何だよ」
「ドラコ、もしかして……私がセオドールの話をしたから、嫉妬してくれているの?」
「そんなわけないだろう」
ドラコが眉間に軽く皺を寄せてフォーラの方をチラと見ると、彼女はニコニコとした笑みを向けていた。その表情に根負けしたドラコは、ぽつりと言葉を零した。
「まあ……僕の方が先に、君の良いところを伝えてあげたかった。それだけだ」
「!ごめんなさいドラコ。私の配慮が足りなかったわね。でも安心して。私が褒められて一番嬉しいと感じる人は、ドラコなんだから。」
フォーラはドラコの目にかかった前髪にそっと触れ、彼をこちらに向かせるようにしてその髪を軽く彼の耳に掛けた。ドラコから見たフォーラは相変わらず何だか幸せそうな様子だった。彼はそんな彼女を少々意地悪だと思いつつも、一方で彼女の手のひらで転がされていることを喜んでいる自分がいることに、思わずため息交じりの笑みを零したのだった。