22.Sweet seduction
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※こちらはR-15版です。ぬるい表現ではありますが15歳未満の方の閲覧は推奨しておりません。一般的に、小説にR-15表記は求められていないため読み手様のご判断にお任せいたしますが、全年齢版をご希望の場合は用意がありますのでそちらを閲覧ください。話の大筋はR-15版も全年齢版も全く同じです。
マグルの民家から少し離れたとある丘の上に、木々で覆われた館があった。その建物は窓が多く設けられており、全体は白を基調として、窓枠や柱は若草色の装飾が所々に施されていた。木々の緑が良く似合う館の周囲には広大な庭があり、広めの温室や、丘の傾斜に沿って並ぶ茶畑が備わっていた。
温室の中では、魔法薬の原料となる様々な薬草が育てられていて、中には入手困難とされるような物珍しいものまで見受けられた。それらを育てているのはこの館の婦人と、庭師の少々老いた男性で、たった今二人は植物の世話をしながら、時折心配そうに互いに顔を見合わせていた。
二人が気にかけていた視線先は、館の客間の方向だった。その客間の中では二人の男性が対面して座っており、その内の一人はこの館の主人だった。彼は、テーブルを挟んで反対側のソファに座っているプラチナロングヘアーの男性に、幾つかの粉袋や液体の入った試験管をテーブルに並べて見せているところだった。館の主人であるシェード・ファントムが言った。
「―――これらが君の要望に応えた魔法薬だ。幾らか改良してあるが安全性は保障する。
今回の君の依頼は相当堪えた。それぞれ調合に手間がかかるし、材料の薬草は手に入りにくい。妻の温室で育てている薬草が役に立ったのが救いだった」
すると、シェードが並べた薬品の一つを持ち上げて眺めながら、ロングヘアーの持ち主であるルシウス・マルフォイが口を開いた。
「そして何より、君の調合の腕の賜物だろう。学生時代から君は本当に魔法薬学の技量が飛びぬけていたし、それをずっと横で見ていた身からすれば、今更驚きはしないがね。これを私の顧客に献上して信頼を勝ち取ることが出来た暁には、追々魔法省が君の勤め先に、大量の注文を入れることになるだろう。特に真実薬の類の物を」
「そうか、それは有難いことだ。それにしても、君の顧客の詳しいことはまだ何も存じ上げないが、魔法省と随分強いパイプがあるのだな」
「ああ。最近世間は随分物騒になっていて、犯罪者の数も随分増えているようだから。私のお客様は、魔法省からその手の魔法薬の注文を相談されたらしい」
シェードは今回、ルシウスが魔法薬を依頼してきた本当の目的が、死喰い人側がシェードの薬を信用に足るか見定めることだと知っていた。それは死喰い人のスパイをしているスネイプから得た情報だった。但しスネイプはホグワーツにいることもあり、未だ死喰い人から十分な信頼を得ているわけではなかったため、それ以上のことは分からなかった。
しかし今回ルシウスの口から『魔法省』という言葉が出たことで、恐らく死喰い人が魔法省の陥落を目的としていることが予想できた。それはダンブルドアの予想と一致していた。そして恐らく、ルシウスの言う『顧客』とは『例のあの人』か、死喰い人であるルシウス自身のことだろう。
今後何処かのタイミングで真実薬の注文が多く入るだろうことから察するに、死喰い人は敵視しているマグル生まれに制裁を行う準備をしていると考えるのが妥当だろうと判断できた。ルシウスが魔法省から魔法薬の依頼を受けたのではなく、死喰い人自身が誰かに使うために用意を始めたのだと。
シェードの狙いは死喰い人側の信頼を得ることで、いつでも最善のタイミングで彼らに薬害を起こせる立場となることだった。それこそ今回の依頼品の中には魔力増強剤の類も含まれている。それを飲むのは死喰い人の勢力だろうし、上手く行けばそれを毒にすり替えることなど手のひらの上で行えるようになるかもしれない。そのためシェードは、世間がルシウスに死喰い人の疑いをかけていることを直接訪ねるような、自ら敬遠されるようなことはしなかった。
それから二人はその他の魔法薬についても円滑に話を進めた。そうして一息ついた頃に、おもむろにルシウスが切り出した。
「ところでシェード。もう数か月で子供たちがホグワーツから帰ってくる時期だ」
「ああ、そうだとも。いきなりどうしたんだ?」
「ドラコとフォーラ嬢が揃ってホグワーツ特急から降りて、私たちの元に向かってくる姿を見るのが待ち遠しいと思っていたのでね」
ルシウスはそのように零すと、改まって椅子に座り直し、少々前のめりになった。
「ここから先の話は商談とは全く関係のないことなのだが。……君は今後、今の情勢が落ち着いた時に、あの二人が並んで過ごす姿を見たいと思ったことはあるかね?」
「?つまり、どういうことかな?」シェードが軽く首を傾げた。
「ああ、つまり……将来的に二人が同じ姓となることについて、どう思うか?ということだ」
その問いかけに、シェードは幾らか驚いた表情を見せた。
ルシウスはいつか死喰い人が勝利を収め、それによってドラコの身の安全がある程度確保できれば、ドラコに純血の血を守る存在となってほしいと考えていた。とはいえルシウスは以前、ドラコに『心から大切な人を作ってはいけない』と念を押した。それを思うとフォーラとの婚約は一見矛盾するだろう。しかし彼がドラコにした要求は、将来の妻に対しても例外ではなかった。
マグルの民家から少し離れたとある丘の上に、木々で覆われた館があった。その建物は窓が多く設けられており、全体は白を基調として、窓枠や柱は若草色の装飾が所々に施されていた。木々の緑が良く似合う館の周囲には広大な庭があり、広めの温室や、丘の傾斜に沿って並ぶ茶畑が備わっていた。
温室の中では、魔法薬の原料となる様々な薬草が育てられていて、中には入手困難とされるような物珍しいものまで見受けられた。それらを育てているのはこの館の婦人と、庭師の少々老いた男性で、たった今二人は植物の世話をしながら、時折心配そうに互いに顔を見合わせていた。
二人が気にかけていた視線先は、館の客間の方向だった。その客間の中では二人の男性が対面して座っており、その内の一人はこの館の主人だった。彼は、テーブルを挟んで反対側のソファに座っているプラチナロングヘアーの男性に、幾つかの粉袋や液体の入った試験管をテーブルに並べて見せているところだった。館の主人であるシェード・ファントムが言った。
「―――これらが君の要望に応えた魔法薬だ。幾らか改良してあるが安全性は保障する。
今回の君の依頼は相当堪えた。それぞれ調合に手間がかかるし、材料の薬草は手に入りにくい。妻の温室で育てている薬草が役に立ったのが救いだった」
すると、シェードが並べた薬品の一つを持ち上げて眺めながら、ロングヘアーの持ち主であるルシウス・マルフォイが口を開いた。
「そして何より、君の調合の腕の賜物だろう。学生時代から君は本当に魔法薬学の技量が飛びぬけていたし、それをずっと横で見ていた身からすれば、今更驚きはしないがね。これを私の顧客に献上して信頼を勝ち取ることが出来た暁には、追々魔法省が君の勤め先に、大量の注文を入れることになるだろう。特に真実薬の類の物を」
「そうか、それは有難いことだ。それにしても、君の顧客の詳しいことはまだ何も存じ上げないが、魔法省と随分強いパイプがあるのだな」
「ああ。最近世間は随分物騒になっていて、犯罪者の数も随分増えているようだから。私のお客様は、魔法省からその手の魔法薬の注文を相談されたらしい」
シェードは今回、ルシウスが魔法薬を依頼してきた本当の目的が、死喰い人側がシェードの薬を信用に足るか見定めることだと知っていた。それは死喰い人のスパイをしているスネイプから得た情報だった。但しスネイプはホグワーツにいることもあり、未だ死喰い人から十分な信頼を得ているわけではなかったため、それ以上のことは分からなかった。
しかし今回ルシウスの口から『魔法省』という言葉が出たことで、恐らく死喰い人が魔法省の陥落を目的としていることが予想できた。それはダンブルドアの予想と一致していた。そして恐らく、ルシウスの言う『顧客』とは『例のあの人』か、死喰い人であるルシウス自身のことだろう。
今後何処かのタイミングで真実薬の注文が多く入るだろうことから察するに、死喰い人は敵視しているマグル生まれに制裁を行う準備をしていると考えるのが妥当だろうと判断できた。ルシウスが魔法省から魔法薬の依頼を受けたのではなく、死喰い人自身が誰かに使うために用意を始めたのだと。
シェードの狙いは死喰い人側の信頼を得ることで、いつでも最善のタイミングで彼らに薬害を起こせる立場となることだった。それこそ今回の依頼品の中には魔力増強剤の類も含まれている。それを飲むのは死喰い人の勢力だろうし、上手く行けばそれを毒にすり替えることなど手のひらの上で行えるようになるかもしれない。そのためシェードは、世間がルシウスに死喰い人の疑いをかけていることを直接訪ねるような、自ら敬遠されるようなことはしなかった。
それから二人はその他の魔法薬についても円滑に話を進めた。そうして一息ついた頃に、おもむろにルシウスが切り出した。
「ところでシェード。もう数か月で子供たちがホグワーツから帰ってくる時期だ」
「ああ、そうだとも。いきなりどうしたんだ?」
「ドラコとフォーラ嬢が揃ってホグワーツ特急から降りて、私たちの元に向かってくる姿を見るのが待ち遠しいと思っていたのでね」
ルシウスはそのように零すと、改まって椅子に座り直し、少々前のめりになった。
「ここから先の話は商談とは全く関係のないことなのだが。……君は今後、今の情勢が落ち着いた時に、あの二人が並んで過ごす姿を見たいと思ったことはあるかね?」
「?つまり、どういうことかな?」シェードが軽く首を傾げた。
「ああ、つまり……将来的に二人が同じ姓となることについて、どう思うか?ということだ」
その問いかけに、シェードは幾らか驚いた表情を見せた。
ルシウスはいつか死喰い人が勝利を収め、それによってドラコの身の安全がある程度確保できれば、ドラコに純血の血を守る存在となってほしいと考えていた。とはいえルシウスは以前、ドラコに『心から大切な人を作ってはいけない』と念を押した。それを思うとフォーラとの婚約は一見矛盾するだろう。しかし彼がドラコにした要求は、将来の妻に対しても例外ではなかった。