21. Brief Kisses
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「やっぱりあの噂は本当だったんだわ」
玄関ホールの階段の陰から女子生徒の声がした。彼女がそこから出て明るい場所に姿を現すと、続けざまに二人の男子生徒も屈めていた身を伸ばすように立ち上がった。次第に行き交う生徒が増えた玄関ホールを横切って、三人はグリフィンドールの談話室に続く階段を上りながら言葉を交わした。
「噂って、マルフォイとフォーラが付き合い始めたっていう、あれのこと?」
ハリーが尋ねると、ハーマイオニーは勿論だと頷いた。
「まさかあんな場面を見ちゃうなんてね」ロンが肩眉を吊り上げながらハリーとハーマイオニーに言った。
三人は温室に試験で出題されそうな植物の特徴を復習しに行った帰り道、偶然ドラコとフォーラが一緒にいる場面に遭遇した。まさか声をかけるわけにもいかず、一先ず物陰に隠れてその場をやり過ごそうとしていたところ、三人はドラコとフォーラが軽いキスを交わすところを目撃してしまったのだった。
「ということはつまり、あれだけマルフォイはフォーラを嫌っていそうだったけど、結局そうじゃなかったってことになる。一体二人に何があったんだろう。フォーラは僕らに羊皮紙で特に事情を書いて寄こしていないんだよね?」
ハリーの言うとおり、フォーラはドラコと仲が戻った一連の出来事について、例の秘密裏に連絡を取り合うことのできる羊皮紙を使ってこなかった。ドラコがどういった思惑で気を変えたのか、ハーマイオニーは推測を述べた。
「多分だけど……マルフォイはフォーラを嫌っていたんじゃなくて、わざと嫌われようとしていたのかもしれない。彼は絶対に『例のあの人』の復活を知っている筈だし、フォーラが騎士団と何の関係もないと思っている筈だから。関わらせたくなくて遠ざけようとしたけれど、フォーラのアプローチに負けたんだったとすれば、辻褄が合うかもしれないわ」
「それじゃあ彼女から僕らに連絡がないのは?」ハリーが尋ねた。
ハーマイオニーはブラック邸でのクリスマスの時、フォーラが話していた言葉を思い出していた。
『私、今は未だ彼に随分嫌われているわ。だけどもし彼の行動や思惑を知る仲になれれば、こちらの提案一つで彼を上手く都合の良い方向へ誘導することだって出来るかもしれない。それこそ『例のあの人』の側につく考えを改めさせることだって……。だからね、私が今後、ドラコの懐に入るようなことがあっても……例えば以前より彼との距離が近くなっても、咎めずにそっとしておいてほしいの。』
ハーマイオニーはその時のことをハリーとロンに思い出させた。
「―――そういうことを彼女は話していたし、それにあの二人が一緒になった噂は少しずつ広まっているから……。わざわざ言わなくても、私たちもそのことを知るだろうと思ったんじゃないかしら」
ハーマイオニーはそのように話しつつも、再び推測した。
「でも、一番の理由は……。私だったら、自分が好きになった人を騙す準備が整ったことを手紙にしたためるのは、できればしたくない。彼女も、もしかしたらそういう心境だったかもしれないわ」
「まあ確かに。本当は目を背けたいようなことなのに、改めて自分の状況を目の当たりにするようなものだしね」
ロンが神妙な表情で頷いた。一方のハリーは何も言わなかったが、フォーラの状況を自身に置き換え、もし今一緒にいる友人を裏切らなければならない状況だったとしたら……そのように考えていた。
「一先ず今は急がなくても、試験期間が終わればあっという間に夏休みでしょ?その時に彼女から詳しい話が幾らでも聞ける筈よ」
「そうだね」ロンが言った。「兎に角、相手がマルフォイなのはやっぱり理解に苦しむけどさ。少なくともフォーラがああして幸せそうにしている姿を見られたことは、良かったと思うよ」
ハリーとハーマイオニーはロンの発言に互いに目を見交わせた。二人はロンがフォーラに特別な感情を持っていたのを知っていたからだ。彼からそういう発言が出たということは、幾らかフォーラに対する気持ちに区切りをつけられたということなのかもしれない……二人はそのように考えた。そして特にハーマイオニーはロンの心境の変化に、慰めや安堵のような気持ちを感じていた。
ハーマイオニーはロンにホッとした笑みを向けた後で、ふとフォーラが消えていった方向を心配そうに見やった。というのも、ハーマイオニーは先程のロンの発言―――フォーラはドラコの前で『幸せそうにしている』ということ―――について、正に彼の言うとおりだと思った。
そう、例えドラコとフォーラの気持ちが通じ合っていても、傍からすればフォーラの方はあくまで『幸せそう』に見えるだけなのだ。ハーマイオニーは気付いてしまった。先程のフォーラはドラコを幸福な表情で見送ってから彼に背を向けていた。しかしその拍子に彼女の顔からは、その笑顔や、瞳に反射していた光すらも失われていたということを。
……イチャイチャ展開、次回も続きます!
玄関ホールの階段の陰から女子生徒の声がした。彼女がそこから出て明るい場所に姿を現すと、続けざまに二人の男子生徒も屈めていた身を伸ばすように立ち上がった。次第に行き交う生徒が増えた玄関ホールを横切って、三人はグリフィンドールの談話室に続く階段を上りながら言葉を交わした。
「噂って、マルフォイとフォーラが付き合い始めたっていう、あれのこと?」
ハリーが尋ねると、ハーマイオニーは勿論だと頷いた。
「まさかあんな場面を見ちゃうなんてね」ロンが肩眉を吊り上げながらハリーとハーマイオニーに言った。
三人は温室に試験で出題されそうな植物の特徴を復習しに行った帰り道、偶然ドラコとフォーラが一緒にいる場面に遭遇した。まさか声をかけるわけにもいかず、一先ず物陰に隠れてその場をやり過ごそうとしていたところ、三人はドラコとフォーラが軽いキスを交わすところを目撃してしまったのだった。
「ということはつまり、あれだけマルフォイはフォーラを嫌っていそうだったけど、結局そうじゃなかったってことになる。一体二人に何があったんだろう。フォーラは僕らに羊皮紙で特に事情を書いて寄こしていないんだよね?」
ハリーの言うとおり、フォーラはドラコと仲が戻った一連の出来事について、例の秘密裏に連絡を取り合うことのできる羊皮紙を使ってこなかった。ドラコがどういった思惑で気を変えたのか、ハーマイオニーは推測を述べた。
「多分だけど……マルフォイはフォーラを嫌っていたんじゃなくて、わざと嫌われようとしていたのかもしれない。彼は絶対に『例のあの人』の復活を知っている筈だし、フォーラが騎士団と何の関係もないと思っている筈だから。関わらせたくなくて遠ざけようとしたけれど、フォーラのアプローチに負けたんだったとすれば、辻褄が合うかもしれないわ」
「それじゃあ彼女から僕らに連絡がないのは?」ハリーが尋ねた。
ハーマイオニーはブラック邸でのクリスマスの時、フォーラが話していた言葉を思い出していた。
『私、今は未だ彼に随分嫌われているわ。だけどもし彼の行動や思惑を知る仲になれれば、こちらの提案一つで彼を上手く都合の良い方向へ誘導することだって出来るかもしれない。それこそ『例のあの人』の側につく考えを改めさせることだって……。だからね、私が今後、ドラコの懐に入るようなことがあっても……例えば以前より彼との距離が近くなっても、咎めずにそっとしておいてほしいの。』
ハーマイオニーはその時のことをハリーとロンに思い出させた。
「―――そういうことを彼女は話していたし、それにあの二人が一緒になった噂は少しずつ広まっているから……。わざわざ言わなくても、私たちもそのことを知るだろうと思ったんじゃないかしら」
ハーマイオニーはそのように話しつつも、再び推測した。
「でも、一番の理由は……。私だったら、自分が好きになった人を騙す準備が整ったことを手紙にしたためるのは、できればしたくない。彼女も、もしかしたらそういう心境だったかもしれないわ」
「まあ確かに。本当は目を背けたいようなことなのに、改めて自分の状況を目の当たりにするようなものだしね」
ロンが神妙な表情で頷いた。一方のハリーは何も言わなかったが、フォーラの状況を自身に置き換え、もし今一緒にいる友人を裏切らなければならない状況だったとしたら……そのように考えていた。
「一先ず今は急がなくても、試験期間が終わればあっという間に夏休みでしょ?その時に彼女から詳しい話が幾らでも聞ける筈よ」
「そうだね」ロンが言った。「兎に角、相手がマルフォイなのはやっぱり理解に苦しむけどさ。少なくともフォーラがああして幸せそうにしている姿を見られたことは、良かったと思うよ」
ハリーとハーマイオニーはロンの発言に互いに目を見交わせた。二人はロンがフォーラに特別な感情を持っていたのを知っていたからだ。彼からそういう発言が出たということは、幾らかフォーラに対する気持ちに区切りをつけられたということなのかもしれない……二人はそのように考えた。そして特にハーマイオニーはロンの心境の変化に、慰めや安堵のような気持ちを感じていた。
ハーマイオニーはロンにホッとした笑みを向けた後で、ふとフォーラが消えていった方向を心配そうに見やった。というのも、ハーマイオニーは先程のロンの発言―――フォーラはドラコの前で『幸せそうにしている』ということ―――について、正に彼の言うとおりだと思った。
そう、例えドラコとフォーラの気持ちが通じ合っていても、傍からすればフォーラの方はあくまで『幸せそう』に見えるだけなのだ。ハーマイオニーは気付いてしまった。先程のフォーラはドラコを幸福な表情で見送ってから彼に背を向けていた。しかしその拍子に彼女の顔からは、その笑顔や、瞳に反射していた光すらも失われていたということを。
……イチャイチャ展開、次回も続きます!