21. Brief Kisses
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「……彼女の無防備な表情を、周りの誰にも見せたくなかったのと」ドラコは羞恥心に耐えようと、眉間に皺を寄せて言葉をまごつかせた。「僕の表情筋が、多分、……誰にも見せられない状態になっていると思うから」
目の前の二人がキャアッという黄色い悲鳴と共に湧き立つ声を聞いて、ドラコは随分恥ずかしい話を自ら友人に打ち明けている状況に耐え切れず、少々赤い顔でとうとうその場に立ち上がった。彼はフォーラが授業から帰ってくるまでこの場で待つつもりだったが、杖を振って卓上の勉強道具を鞄に仕舞い込んだ。そしてようやく二人の方に視線を向けたのだった。
「兎に角、君たちに心配をかけたのは申し訳なく思うが、だからって君たちが僕らの進捗をそこまで細かく心配する必要はない。それにそもそも僕は……別にそういうスキンシップを目的にしてフォーラの恋人になったわけじゃない。僕としては、一度彼女の隣に立つことを諦めた分、仲違いしていた彼女の側にいられるだけで今は十分幸せ過ぎるくらいだ。
……まあ、君たちが心配しているようなことについては、彼女がどう考えているか、どういうペースで歩んでいきたいか、これから二人で少しずつ話し合っていければいいと思っている。そういうことだから、これでこの話は終わりだ。僕はもう行く」
「じゃあ、手っ取り早く今聞いてみたら?」
パンジーが口元を緩ませてそのように尋ねてきたものだから、ドラコは『たった今話を打ち切ったのに!』と不機嫌に眉間に皺を寄せた。それに『今聞いてみたら』と言われたって、当のフォーラはここにいないというのに、目の前の彼女は何を言っているのだろう?
ドラコがそのように考えを巡らせた時、ふと彼はパンジーとルニーがドラコの後ろ向こうに笑顔を溢れさせていることに気が付いた。そして彼が振り返ってみると、そこにはドラコたちからほんの少しだけ離れた場所で、授業終わりのフォーラらしき人物が顔の前にサッと鞄を掲げて表情を隠している姿が目に入った。そしてほんの少ししてから彼女はそろそろと鞄を下げ、そっとドラコと瞳を合わせた。彼女の顔が随分真っ赤になっていたものだから、ドラコは状況が整理しきれず、軽く開いた口から声にならない声が漏れた。
ドラコはフォーラの様子から、彼女が自分の話をきっとある程度聞いていたのだと理解した時、彼の顔は彼女と同じくらい熱を帯びていた。
「ええと、フォーラ、……一体いつから?」
ドラコは自分が色々と気恥ずかしいことを言った自覚があっただけに、妙な汗が止まらなかった。彼としては本人に聞かれていると分かって話すのとそうでないのとでは、心構えが全く違ったのだ。
「その……」フォーラはドラコの方に近付きながら、羞恥心に耐えるように鞄を胸の辺りで抱えた。「ドラコが、人前で私と恋人らしいことをするのは避けたくて、その理由を話していたあたりから……。」
ドラコはフォーラへの好意で一杯の、一番恥ずかしい部分をしっかり聞かれていたのだと理解した。彼がパンジーとルニーの方を見やると、彼女たちは相変わらずニコニコとこの状況を楽しんでいる様子だ。まったくこの女子二人に関しては、フォーラの存在を認識していたのなら早々に教えて欲しかった。
「盗み聞きするつもりじゃなかったの、ごめんなさい。授業が早めに終わって、残りの時間は試験の自習に充てるよう先生に言われて……。それでここへ戻って来たの。」
フォーラがまだ熱の引かない表情で言った。するとドラコがフォーラの謝罪を制した。
「いや、何も君は謝る必要なんてない。……あー、その」
ドラコは兎に角この状況から抜け出したくて仕方がなかった。何せパンジーとルニーの好奇心旺盛な視線が痛くて堪らない。
「フォーラ、僕は今からクィディッチの練習のために校庭まで行くんだ。だから、もし君がこの後図書室に行く用事があるなら―――その途中の玄関ホールまで一緒に行かないか。勿論、君に用事があればでいい」
「!ええ、勿論行くわ。ちょうど借りないといけない本があるの」
フォーラが教室から談話室に直接戻って来た時点で、図書室に行く予定がなかったのは考えずとも分かることだった。しかしドラコはできることなら、先程の話題について一応何かしらの誤解が生じていないか彼女に確認しておきたかった。それに先程パンジーが言ったとおり、フォーラが自分とどの程度の距離感を望んでいるかなど、この機会に軽く話しておいた方がいいだろうと思ったのだ。
そうして二人はそそくさと談話室から廊下に出た。そして度々何人かの生徒とすれ違いながら、二人は並んで地下の少々薄暗い道を歩いた。
「談話室に戻って来て早々、連れ出して悪かった。試験勉強をしている筈の時間なのに」
「ううん、大丈夫よ。少しは息抜きしなきゃ。寧ろ、忙しい時間を縫って、こうして少しの時間でも一緒にいようとしてくれてありがとう。」
フォーラはそう言って微笑んだ。そして廊下を照らす松明の灯りを受けながら、そのおかげで赤らみが強調された頬の辺りを両手で抑えた。
「それに、さっき談話室でドラコたちが話していたことも……。私、貴方に大事にされているんだなって思えて、とっても嬉しかったわ。……あっ、でも、大事にされているのはもう随分前からだったわね。」
フォーラが照れ隠しをするように、少々冗談めかして笑いかけてきた。それだからドラコは、内心その可愛く膨らんだ頬にキスを落としたくて仕方がなかった。しかし談話室に向かうスリザリン生とのすれ違い様、彼は自身の表情と姿勢を正したのだった。
目の前の二人がキャアッという黄色い悲鳴と共に湧き立つ声を聞いて、ドラコは随分恥ずかしい話を自ら友人に打ち明けている状況に耐え切れず、少々赤い顔でとうとうその場に立ち上がった。彼はフォーラが授業から帰ってくるまでこの場で待つつもりだったが、杖を振って卓上の勉強道具を鞄に仕舞い込んだ。そしてようやく二人の方に視線を向けたのだった。
「兎に角、君たちに心配をかけたのは申し訳なく思うが、だからって君たちが僕らの進捗をそこまで細かく心配する必要はない。それにそもそも僕は……別にそういうスキンシップを目的にしてフォーラの恋人になったわけじゃない。僕としては、一度彼女の隣に立つことを諦めた分、仲違いしていた彼女の側にいられるだけで今は十分幸せ過ぎるくらいだ。
……まあ、君たちが心配しているようなことについては、彼女がどう考えているか、どういうペースで歩んでいきたいか、これから二人で少しずつ話し合っていければいいと思っている。そういうことだから、これでこの話は終わりだ。僕はもう行く」
「じゃあ、手っ取り早く今聞いてみたら?」
パンジーが口元を緩ませてそのように尋ねてきたものだから、ドラコは『たった今話を打ち切ったのに!』と不機嫌に眉間に皺を寄せた。それに『今聞いてみたら』と言われたって、当のフォーラはここにいないというのに、目の前の彼女は何を言っているのだろう?
ドラコがそのように考えを巡らせた時、ふと彼はパンジーとルニーがドラコの後ろ向こうに笑顔を溢れさせていることに気が付いた。そして彼が振り返ってみると、そこにはドラコたちからほんの少しだけ離れた場所で、授業終わりのフォーラらしき人物が顔の前にサッと鞄を掲げて表情を隠している姿が目に入った。そしてほんの少ししてから彼女はそろそろと鞄を下げ、そっとドラコと瞳を合わせた。彼女の顔が随分真っ赤になっていたものだから、ドラコは状況が整理しきれず、軽く開いた口から声にならない声が漏れた。
ドラコはフォーラの様子から、彼女が自分の話をきっとある程度聞いていたのだと理解した時、彼の顔は彼女と同じくらい熱を帯びていた。
「ええと、フォーラ、……一体いつから?」
ドラコは自分が色々と気恥ずかしいことを言った自覚があっただけに、妙な汗が止まらなかった。彼としては本人に聞かれていると分かって話すのとそうでないのとでは、心構えが全く違ったのだ。
「その……」フォーラはドラコの方に近付きながら、羞恥心に耐えるように鞄を胸の辺りで抱えた。「ドラコが、人前で私と恋人らしいことをするのは避けたくて、その理由を話していたあたりから……。」
ドラコはフォーラへの好意で一杯の、一番恥ずかしい部分をしっかり聞かれていたのだと理解した。彼がパンジーとルニーの方を見やると、彼女たちは相変わらずニコニコとこの状況を楽しんでいる様子だ。まったくこの女子二人に関しては、フォーラの存在を認識していたのなら早々に教えて欲しかった。
「盗み聞きするつもりじゃなかったの、ごめんなさい。授業が早めに終わって、残りの時間は試験の自習に充てるよう先生に言われて……。それでここへ戻って来たの。」
フォーラがまだ熱の引かない表情で言った。するとドラコがフォーラの謝罪を制した。
「いや、何も君は謝る必要なんてない。……あー、その」
ドラコは兎に角この状況から抜け出したくて仕方がなかった。何せパンジーとルニーの好奇心旺盛な視線が痛くて堪らない。
「フォーラ、僕は今からクィディッチの練習のために校庭まで行くんだ。だから、もし君がこの後図書室に行く用事があるなら―――その途中の玄関ホールまで一緒に行かないか。勿論、君に用事があればでいい」
「!ええ、勿論行くわ。ちょうど借りないといけない本があるの」
フォーラが教室から談話室に直接戻って来た時点で、図書室に行く予定がなかったのは考えずとも分かることだった。しかしドラコはできることなら、先程の話題について一応何かしらの誤解が生じていないか彼女に確認しておきたかった。それに先程パンジーが言ったとおり、フォーラが自分とどの程度の距離感を望んでいるかなど、この機会に軽く話しておいた方がいいだろうと思ったのだ。
そうして二人はそそくさと談話室から廊下に出た。そして度々何人かの生徒とすれ違いながら、二人は並んで地下の少々薄暗い道を歩いた。
「談話室に戻って来て早々、連れ出して悪かった。試験勉強をしている筈の時間なのに」
「ううん、大丈夫よ。少しは息抜きしなきゃ。寧ろ、忙しい時間を縫って、こうして少しの時間でも一緒にいようとしてくれてありがとう。」
フォーラはそう言って微笑んだ。そして廊下を照らす松明の灯りを受けながら、そのおかげで赤らみが強調された頬の辺りを両手で抑えた。
「それに、さっき談話室でドラコたちが話していたことも……。私、貴方に大事にされているんだなって思えて、とっても嬉しかったわ。……あっ、でも、大事にされているのはもう随分前からだったわね。」
フォーラが照れ隠しをするように、少々冗談めかして笑いかけてきた。それだからドラコは、内心その可愛く膨らんだ頬にキスを落としたくて仕方がなかった。しかし談話室に向かうスリザリン生とのすれ違い様、彼は自身の表情と姿勢を正したのだった。