21. Brief Kisses
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さて、それからの日々はこれまでと随分違っていた。それはフォーラとドラコの関係もそうだったが、どちらかというとホグワーツ中で『ウィーズリー旋風』が巻き起こっていたのが大きかった。フレッドとジョージの自由への逃走は、あの日以来何度も繰り返し語られた。その勢いは、この話がいつかホグワーツの伝説になるかもしれないと誰もが思った程だ。
ところで生徒たちの間で語られる武勇伝の内、フォーラにとって全くの予想外だった話題も含まれていた。それはジョージがホグワーツを去る時、フォーラにフリージアの赤い花を渡したことと、彼女の頬にキスを一つ落としていったことだった。なんとこの一連の行動は、恋に恋するお年頃の生徒たちの間で密かに流行した。
というのも、傍から見ればジョージがフォーラに恋愛的な好意を伝えたと捉えるのが普通だが、フリージアの花言葉が『親愛』とか『友情』であることに何人かの生徒が気付いたのだ。生徒たちにはジョージの真意ははっきりと分からなかったものの、間違いなくジョージがフォーラのことを『人として大切に思っている』ことは理解できた。
そこから生徒たちはジョージの右に習い、気軽に好意を伝えるのにちょうどいい花言葉のフリージアを、意中の相手に贈ることがちょっとしたブームになったのだ。頬へのキスについては、互いに意識し合う中であれば相手に当然受け入れられたが、そうでない場合においては、フリージアの花はまるでクリスマスのヤドリギのように警戒する対象となっていた。
双子はそれらの伝説を残しただけでなく、誰もがそう簡単に二人を忘れられないように置き土産も残していた。例えば東棟の六階の廊下に広がる沼地だ。アンブリッジとフィルチはその沼地を消す術が分からず、様々な方法を試しては失敗していた。ついにその区域には縄が張り巡らされ、フィルチは怒りにギリギリ歯軋りしながら、渡し舟で生徒を教室まで運ぶ仕事をさせられた。マクゴナガルやフリットウィックなら簡単に沼地を消せただろうが、先生方にとってはアンブリッジに格闘させて眺めるほうがよかったらしい。
今やホグワーツ中、ウィーズリーの双子の後釜の地位を狙っている生徒だらけだったし、生徒たちは双子の意志を継いでアンブリッジに全面的に反抗の姿勢を見せていた。例えば、双子がまだ学校にいた時、いかに多くの生徒に『ずる休みスナックボックス』を売っていたことか。アンブリッジが教室に入ると、双子のアイテムをあえて食べた生徒たちは気絶したり吐いたり、高熱を出したり、挙句鼻血が大量に出る生徒が続出したのだ。それらの症状を引き起こしたアイテムの一部は、フォーラが前回の夏休みに双子と手を加えて完成させた物だった。そして、今後双子がダイアゴン横丁で開店する『悪戯専門店』でも販売するアイテムだ。
しかしそのスナック愛用者でさえ、フレッドの別れの言葉を深く胸に刻んだピーブズには敵わなかった。彼は学校中を飛び回り、テーブルや花瓶はひっくり返すわ、ランプは壊すわ、朝食時の大広間に毒蜘蛛のタランチュラを一袋分落としたりした。そして一休みしたいときには、アンブリッジの上にプカプカ浮いて付きまとい、彼女が一言発する度に「べーッ」と舌を出した。
そういう経緯でパンジーとドラコを含む尋問官親衛隊は、城中の至る所で起こる騒動を鎮めるべく、フィルチを手伝う羽目になってしまった。しかもどこから手をつければよいか分からない程忙しいのに加え、ピーブズは頻繁に尋問官親衛隊にも目を付け、度を超えた悪戯を仕掛けてきたのだ。
フォーラは先日、湖の畔でドラコとなるべく共に過ごすことを約束した。しかし実際はそういった事情や、他にもドラコがクィディッチ練習に駆り出されたりするが故に、残念ながらそこまで頻繁に肩を並べられたわけではなかった。
とはいえ五年生と七年生は試験前なのもあり、他の学年に比べれば何とかそういった拘束から解放され易くはあった。そのタイミングでドラコとフォーラは友人たちと談話室の机を囲んだり、図書室で二人揃って椅子を並べたりして試験勉強に励んだ。
二人の詳細な事情を知っている友人たち以外のスリザリン生や、他寮の同学年の生徒たちは、ドラコとフォーラの仲が戻っていることに一体何があったのかと少々驚いていた。ドラコが本当に忙しくしているせいで二人がそこまで恋人らしい様子でないのも相まって、二人が交際を始めたことまでは多く広まらなかった。しかしブレ―ズ・ザビニ含めフォーラに幾らか好意を抱いていた何人かの生徒にとっては、二人が距離を置く前、つまり四年生の頃にも増してどこか互いに特別感のある様子なのを察していた。
二人の交際を知った生徒の中には、ドラコへの嫉妬心から彼の印象を少しでも下げようと、彼のいないところでフォーラに聞こえるように『死喰い人の子は恋人に選ぶべきではない』と口にする者もいた。他にも『あんな死喰い人もどきを選んだフォーラ・ファントムはセンスがない』と言う声も聞こえた。しかしそんなことを耳にしても、フォーラは気に留めなかった。自分がドラコの一番の味方でいなくては。そして彼から得られる情報は何でも手に入れなくては。それで結果的に自分がドラコを裏切ることになったとしても、彼がヴォルデモートと関わらずに済む未来があるのなら。
ところで生徒たちの間で語られる武勇伝の内、フォーラにとって全くの予想外だった話題も含まれていた。それはジョージがホグワーツを去る時、フォーラにフリージアの赤い花を渡したことと、彼女の頬にキスを一つ落としていったことだった。なんとこの一連の行動は、恋に恋するお年頃の生徒たちの間で密かに流行した。
というのも、傍から見ればジョージがフォーラに恋愛的な好意を伝えたと捉えるのが普通だが、フリージアの花言葉が『親愛』とか『友情』であることに何人かの生徒が気付いたのだ。生徒たちにはジョージの真意ははっきりと分からなかったものの、間違いなくジョージがフォーラのことを『人として大切に思っている』ことは理解できた。
そこから生徒たちはジョージの右に習い、気軽に好意を伝えるのにちょうどいい花言葉のフリージアを、意中の相手に贈ることがちょっとしたブームになったのだ。頬へのキスについては、互いに意識し合う中であれば相手に当然受け入れられたが、そうでない場合においては、フリージアの花はまるでクリスマスのヤドリギのように警戒する対象となっていた。
双子はそれらの伝説を残しただけでなく、誰もがそう簡単に二人を忘れられないように置き土産も残していた。例えば東棟の六階の廊下に広がる沼地だ。アンブリッジとフィルチはその沼地を消す術が分からず、様々な方法を試しては失敗していた。ついにその区域には縄が張り巡らされ、フィルチは怒りにギリギリ歯軋りしながら、渡し舟で生徒を教室まで運ぶ仕事をさせられた。マクゴナガルやフリットウィックなら簡単に沼地を消せただろうが、先生方にとってはアンブリッジに格闘させて眺めるほうがよかったらしい。
今やホグワーツ中、ウィーズリーの双子の後釜の地位を狙っている生徒だらけだったし、生徒たちは双子の意志を継いでアンブリッジに全面的に反抗の姿勢を見せていた。例えば、双子がまだ学校にいた時、いかに多くの生徒に『ずる休みスナックボックス』を売っていたことか。アンブリッジが教室に入ると、双子のアイテムをあえて食べた生徒たちは気絶したり吐いたり、高熱を出したり、挙句鼻血が大量に出る生徒が続出したのだ。それらの症状を引き起こしたアイテムの一部は、フォーラが前回の夏休みに双子と手を加えて完成させた物だった。そして、今後双子がダイアゴン横丁で開店する『悪戯専門店』でも販売するアイテムだ。
しかしそのスナック愛用者でさえ、フレッドの別れの言葉を深く胸に刻んだピーブズには敵わなかった。彼は学校中を飛び回り、テーブルや花瓶はひっくり返すわ、ランプは壊すわ、朝食時の大広間に毒蜘蛛のタランチュラを一袋分落としたりした。そして一休みしたいときには、アンブリッジの上にプカプカ浮いて付きまとい、彼女が一言発する度に「べーッ」と舌を出した。
そういう経緯でパンジーとドラコを含む尋問官親衛隊は、城中の至る所で起こる騒動を鎮めるべく、フィルチを手伝う羽目になってしまった。しかもどこから手をつければよいか分からない程忙しいのに加え、ピーブズは頻繁に尋問官親衛隊にも目を付け、度を超えた悪戯を仕掛けてきたのだ。
フォーラは先日、湖の畔でドラコとなるべく共に過ごすことを約束した。しかし実際はそういった事情や、他にもドラコがクィディッチ練習に駆り出されたりするが故に、残念ながらそこまで頻繁に肩を並べられたわけではなかった。
とはいえ五年生と七年生は試験前なのもあり、他の学年に比べれば何とかそういった拘束から解放され易くはあった。そのタイミングでドラコとフォーラは友人たちと談話室の机を囲んだり、図書室で二人揃って椅子を並べたりして試験勉強に励んだ。
二人の詳細な事情を知っている友人たち以外のスリザリン生や、他寮の同学年の生徒たちは、ドラコとフォーラの仲が戻っていることに一体何があったのかと少々驚いていた。ドラコが本当に忙しくしているせいで二人がそこまで恋人らしい様子でないのも相まって、二人が交際を始めたことまでは多く広まらなかった。しかしブレ―ズ・ザビニ含めフォーラに幾らか好意を抱いていた何人かの生徒にとっては、二人が距離を置く前、つまり四年生の頃にも増してどこか互いに特別感のある様子なのを察していた。
二人の交際を知った生徒の中には、ドラコへの嫉妬心から彼の印象を少しでも下げようと、彼のいないところでフォーラに聞こえるように『死喰い人の子は恋人に選ぶべきではない』と口にする者もいた。他にも『あんな死喰い人もどきを選んだフォーラ・ファントムはセンスがない』と言う声も聞こえた。しかしそんなことを耳にしても、フォーラは気に留めなかった。自分がドラコの一番の味方でいなくては。そして彼から得られる情報は何でも手に入れなくては。それで結果的に自分がドラコを裏切ることになったとしても、彼がヴォルデモートと関わらずに済む未来があるのなら。