21. Brief Kisses
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「もう本当に、どれ程フォーラとドラコが並んで歩く日を望んだか!」
パンジーがフォーラを一層きつく抱き締めながら、フォーラのローブに顔を埋めて言った。そしてルニー同様、パンジーまでもそのままグスグスと泣き出してしまった。
「ど、ドラコがフォーラを避けるなんて―――」ルニーが嗚咽しながら続けた。「何か、事情を隠している気はしたけど―――わ、私たちにはどうしようも無いんだって、沢山諦めたから。たった今二人が並んでいるのを見かけて、本当にびっくりして、私もパンジーもいてもたってもいられなくて」
すると今度はパンジーがルニーの言葉を引き継いだ。「本当に、どんな理由があれば、大事な幼馴染を邪見にし続けられたっていうのよ?」
その言葉を皮切りに、パンジーとルニーは鼻を啜りながらドラコの方を振り返った。ドラコとしては、二人のその目が怒りと哀しみの感情を露わにしているように思えてならなかった。しかも彼はこれまでの経験上、涙でぐしょぐしょになった女子三名の視線を一手に引き受けたことなど一度もなかった。そのため彼女たちをこんな状態にさせた張本人が自分なのも相まって、彼の胸の辺りにグサグサと罪悪感の矢が刺さった。
するとちょうどそのタイミングで、クラッブとゴイルもドラコたちを見つけて駆け付けた。その結果、クラッブたちはたった今ドラコがパンジーとルニーに泣きはらした目で睨まれ、かつその視線に幾らか狼狽えている、そんな物珍しい状況に居合わせたのだった。
ドラコはこのどうしようもない状況を終息させる方法を一つしか思いつかなかった。
「と、兎に角、みんな落ち着いてくれ。事情は説明するから、一先ず人目のないところに行こう」
それから一行はフォーラがよく使っていた四階の空き部屋に移動した。そしてドラコは先刻フォーラに説明した内容のとおり、一年前に彼が父親から受け取った手紙を皮切りに、どのような思いでフォーラを避けることになったか説明した。
話を進める内、ドラコとフォーラ以外のメンバーは―――特に親が死喰い人ではないパンジーとルニーは、彼の置かれた状況に驚き、混乱していった。
「じゃあつまり、ザ・クィブラーに書かれていたとおり、『例のあの人』は本当に復活していて、ドラコは魔法族の血を野蛮なマグルたちから守るために、お父様と同じ道を歩もうとしているってこと?」パンジーが尋ねると、続いてルニーも質問した。
「フォーラを自分の弱点にしないために距離を置こうとしたって言っていたけど、それって本当に、近々ドラコは戦いか何かに参加する可能性が高いということ?」
彼女たちは小一時間前にフォーラがドラコに尋ねたことと同じ内容をなぞるように、ドラコに質問を投げかけていった。
クラッブとゴイルはドラコが死喰い人や父親の活動に関心を抱いているのは知っていた。しかしドラコがそれと引き換えに、一番想っている人への気持ちを捨てようとしていたなんて思いもしなかった。クラッブたちはドラコが一年前にフォーラに告白していたことを彼から聞かされていなかっただけに、てっきりドラコとフォーラが喧嘩か何かをした末、気まずい関係になったのだろうと考えていたのだ。
ドラコは友人たちのあらゆる質問に可能な限り丁寧に回答した。それはこの度の騒動に彼や彼女を巻き込んでしまった申し訳なさによるものだった。そうしてようやくパンジーたちがドラコの取った態度の理由を把握した頃、ルニーが盛大な安堵のため息とともに、フォーラの方に倒れ込むように抱き着いた。
「ど、どうしたの?沢山話を聞いて、疲れてしまったかしら……。」
フォーラが心配の声をかけてルニーの頭を撫でてやると、ルニーは軽く首を横に振った。
「違うの、そうじゃないのよ。……ドラコがフォーラを避けていた理由が、告白を断られた腹いせだとかそんなしょうのないものじゃなくて、本当に良かったと思ったの。ドラコの態度に訳が分からなくて翻弄されたのは確かだけど、でも、同時にドラコがどれだけフォーラのことをずっと好きだったかも分かったから、安心して力が抜けちゃったのかも」
ルニーはそう言って力なくフォーラに笑いかけたが、一方でパンジーの方は深く腕組みをし、渋い顔でドラコをじっと見つめていた。
「ドラコ、もう分かっていると思うけど、貴方はきっと他にもっとやりようがあったと思うわ。デリケートな内容だし、私たちや、貴方と一層距離の近いクラッブとゴイルにすら多くを話せなかったことは理解するけど」
「ああ……本当にすまなかった。―――君たちには沢山気を遣わせてしまった」
パンジーはドラコが心から申し訳なさそうな様子なのを見て、昔からこの人の元気のない姿には敵わないと思った。すると彼女は一つ短いため息を吐いた。
「もう、貴方の申し訳ない気持ちは十分伝わったわよ。私が言いたいのは一つ。もう今後、これ以上フォーラのことを突き放したりしないで。……大事にしてあげて」
パンジーの言葉にドラコとフォーラは互いを見つめた。そして彼はパンジーに頷いて見せたのだった。
「ああ、勿論だ」
するとそれを聞いたパンジーはにっこり笑い返した。
「ええ!……本当は私もルニーも、貴方に魔法の一発や二発お見舞いしたいくらいなのよ。だって私たち、貴方のことは勿論大事なクラスメイトだと思っているけど、それ以上にフォーラが大切なんだもの。事情があったとはいえ、私たちの大事な人を傷つけられたんだから。
それに、特に私に至っては貴方と監督生として行動する中で、貴方との話題にどれ程の気を遣ったか分かる?」
その後のドラコは、パンジーやルニーからこれまでの日々に関するお小言を沢山頂戴した。しかし彼女たちがそんな風に怒りのつぶてをぶつけても、どこかみんな、いつかの日々に戻ったような安心感を得ていたのは間違いなかった。心の内に大きな秘密を抱えているフォーラですら、そのように感じて多くの笑顔を見せたのだった。
パンジーがフォーラを一層きつく抱き締めながら、フォーラのローブに顔を埋めて言った。そしてルニー同様、パンジーまでもそのままグスグスと泣き出してしまった。
「ど、ドラコがフォーラを避けるなんて―――」ルニーが嗚咽しながら続けた。「何か、事情を隠している気はしたけど―――わ、私たちにはどうしようも無いんだって、沢山諦めたから。たった今二人が並んでいるのを見かけて、本当にびっくりして、私もパンジーもいてもたってもいられなくて」
すると今度はパンジーがルニーの言葉を引き継いだ。「本当に、どんな理由があれば、大事な幼馴染を邪見にし続けられたっていうのよ?」
その言葉を皮切りに、パンジーとルニーは鼻を啜りながらドラコの方を振り返った。ドラコとしては、二人のその目が怒りと哀しみの感情を露わにしているように思えてならなかった。しかも彼はこれまでの経験上、涙でぐしょぐしょになった女子三名の視線を一手に引き受けたことなど一度もなかった。そのため彼女たちをこんな状態にさせた張本人が自分なのも相まって、彼の胸の辺りにグサグサと罪悪感の矢が刺さった。
するとちょうどそのタイミングで、クラッブとゴイルもドラコたちを見つけて駆け付けた。その結果、クラッブたちはたった今ドラコがパンジーとルニーに泣きはらした目で睨まれ、かつその視線に幾らか狼狽えている、そんな物珍しい状況に居合わせたのだった。
ドラコはこのどうしようもない状況を終息させる方法を一つしか思いつかなかった。
「と、兎に角、みんな落ち着いてくれ。事情は説明するから、一先ず人目のないところに行こう」
それから一行はフォーラがよく使っていた四階の空き部屋に移動した。そしてドラコは先刻フォーラに説明した内容のとおり、一年前に彼が父親から受け取った手紙を皮切りに、どのような思いでフォーラを避けることになったか説明した。
話を進める内、ドラコとフォーラ以外のメンバーは―――特に親が死喰い人ではないパンジーとルニーは、彼の置かれた状況に驚き、混乱していった。
「じゃあつまり、ザ・クィブラーに書かれていたとおり、『例のあの人』は本当に復活していて、ドラコは魔法族の血を野蛮なマグルたちから守るために、お父様と同じ道を歩もうとしているってこと?」パンジーが尋ねると、続いてルニーも質問した。
「フォーラを自分の弱点にしないために距離を置こうとしたって言っていたけど、それって本当に、近々ドラコは戦いか何かに参加する可能性が高いということ?」
彼女たちは小一時間前にフォーラがドラコに尋ねたことと同じ内容をなぞるように、ドラコに質問を投げかけていった。
クラッブとゴイルはドラコが死喰い人や父親の活動に関心を抱いているのは知っていた。しかしドラコがそれと引き換えに、一番想っている人への気持ちを捨てようとしていたなんて思いもしなかった。クラッブたちはドラコが一年前にフォーラに告白していたことを彼から聞かされていなかっただけに、てっきりドラコとフォーラが喧嘩か何かをした末、気まずい関係になったのだろうと考えていたのだ。
ドラコは友人たちのあらゆる質問に可能な限り丁寧に回答した。それはこの度の騒動に彼や彼女を巻き込んでしまった申し訳なさによるものだった。そうしてようやくパンジーたちがドラコの取った態度の理由を把握した頃、ルニーが盛大な安堵のため息とともに、フォーラの方に倒れ込むように抱き着いた。
「ど、どうしたの?沢山話を聞いて、疲れてしまったかしら……。」
フォーラが心配の声をかけてルニーの頭を撫でてやると、ルニーは軽く首を横に振った。
「違うの、そうじゃないのよ。……ドラコがフォーラを避けていた理由が、告白を断られた腹いせだとかそんなしょうのないものじゃなくて、本当に良かったと思ったの。ドラコの態度に訳が分からなくて翻弄されたのは確かだけど、でも、同時にドラコがどれだけフォーラのことをずっと好きだったかも分かったから、安心して力が抜けちゃったのかも」
ルニーはそう言って力なくフォーラに笑いかけたが、一方でパンジーの方は深く腕組みをし、渋い顔でドラコをじっと見つめていた。
「ドラコ、もう分かっていると思うけど、貴方はきっと他にもっとやりようがあったと思うわ。デリケートな内容だし、私たちや、貴方と一層距離の近いクラッブとゴイルにすら多くを話せなかったことは理解するけど」
「ああ……本当にすまなかった。―――君たちには沢山気を遣わせてしまった」
パンジーはドラコが心から申し訳なさそうな様子なのを見て、昔からこの人の元気のない姿には敵わないと思った。すると彼女は一つ短いため息を吐いた。
「もう、貴方の申し訳ない気持ちは十分伝わったわよ。私が言いたいのは一つ。もう今後、これ以上フォーラのことを突き放したりしないで。……大事にしてあげて」
パンジーの言葉にドラコとフォーラは互いを見つめた。そして彼はパンジーに頷いて見せたのだった。
「ああ、勿論だ」
するとそれを聞いたパンジーはにっこり笑い返した。
「ええ!……本当は私もルニーも、貴方に魔法の一発や二発お見舞いしたいくらいなのよ。だって私たち、貴方のことは勿論大事なクラスメイトだと思っているけど、それ以上にフォーラが大切なんだもの。事情があったとはいえ、私たちの大事な人を傷つけられたんだから。
それに、特に私に至っては貴方と監督生として行動する中で、貴方との話題にどれ程の気を遣ったか分かる?」
その後のドラコは、パンジーやルニーからこれまでの日々に関するお小言を沢山頂戴した。しかし彼女たちがそんな風に怒りのつぶてをぶつけても、どこかみんな、いつかの日々に戻ったような安心感を得ていたのは間違いなかった。心の内に大きな秘密を抱えているフォーラですら、そのように感じて多くの笑顔を見せたのだった。