21. Brief Kisses
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「一瞬だったのに、変身術だったとよく分かったわね?」
フォーラにはドラコを問い詰める意図はなかったし、彼が部屋をどれだけ覗いていようがいまいが何でもよかった。彼女の声色は、純粋にドラコが自分を心配してくれていたであろうことを喜ぶものだったのだ。しかし、ドラコは墓穴を掘って狼狽えていたのもあって、彼女の問いかけが自分に対する不信感から来るものかもしれないと思った。
ドラコはこれ以上言い訳を並べるのは良くないと感じ、何度か躊躇った後で、彼女の問いに正直に回答したのだった。
「……最初に部屋を覗いた時、君が杖を振っているのを見たのは本当だ。だけど一瞬のことで、君が何の術を練習していたかまでは分からなかった。
その後、僕がその場を立ち去る前にもう一度だけ部屋の中を確認したら―――どういうわけか、今度は君が倒れていた。それで君を介抱するために中に入ってみたら、高学年の変身術の教科書が開かれているのが目に入ったんだ」
すると、不意にフォーラの表情が何かを理解したようなものに変わった。
「それってつまり……私の知らない間に、ドラコが私を助けてくれていたということ?セブルスさんではなくて、貴方が?」
フォーラはあの部屋で倒れていた自分を見つけてくれたのは、スネイプだと本人から聞いていた。しかし彼女の質問にドラコは観念したように彼女と瞳を合わせ、静かに頷いた。
ドラコはスネイプに『貴方がフォーラを助けたことにしてほしい』と嘘をつくよう頼んだ。その手前、ドラコは話の流れでたった今フォーラ本人に真実を明かしたことについて、嘘に協力してもらったスネイプと、その嘘で距離を取っていたフォーラに酷く申し訳なさを感じた。
ドラコがフォーラに『黙っていて悪かった』と謝罪しようとした時、徐にフォーラの両手がドラコの首の後ろ側に向かって伸びてきた。そしてドラコは自身のその首根を包んだ彼女の両手のひらにぐいと引かれ、上半身を彼女の方に傾斜させた。
ドラコは突然のことに何が起こったのかと一瞬慌てたが、フォーラの綻んだ表情が目と鼻の先にあることを認識するや否や、次の瞬間には彼女が愛おしさを満たしたようなその瞳を閉じ、彼の唇を塞いだのだった。
「!」
ドラコは驚きのあまり身体がその場に根を張ったように動けなかったし、中途半端に行き場のない手も固まってしまっていた。そうして彼がこの状況に呆然としている間に、フォーラに優しく押し付けられた唇は離れた。
「ドラコ……私のこと、本当に沢山助けに来てくれて、ありがとう……。」フォーラがドラコの首の後ろ側に両手を回したまま、ほんのりと頬を色付かせ、照れた笑みを向けて言った。
ドラコはフォーラの一連の行動に、心の準備など全くできている筈がなかった。そのせいで、彼の心臓は途端にバクバクと煩く音を立て、その上ギュッと強く鷲掴みされているような感覚すらした。更には顔を含め、全身が熱く火照っていくのも容易に感じられた。
ドラコはその全ての感覚を無視して余裕そうな笑みで取り繕うことを試みたが、如何せん緊張が勝って上手くいかなかった。最早自分の顔が本当に見るに堪えない状態でどうしようもないことを感じ、彼は何とか片手で自身の顔を半分覆い隠した。そして気を落ち着かせるため長く静かに息を吐いた後で、ようやく彼もフォーラの方にそっと視線を向け、力なく笑みを返したのだった。
こんなにも自身の心を搔き乱し、幸福感を与えてくれる人を避け続けていたなんて。事情があったにしろ、こうして自分の側で幸せそうにしている彼女を見ていると、ドラコは過去の自分が本当に愚かで間違った選択をしていたと思わずにはいられなかった。
これまでしてきたように、これからも彼女のことは自分が守ればいい。そうすれば、今後死喰い人になった自分と彼女が関わりを持っていたって、きっと彼女は何かに脅かされることもない。そしてきっと、ずっと互いが側にいられることだろう。ドラコはフォーラから勇気をもらうことで、そのように確信できたのだった。
さて、それからの二人はスリザリン寮に戻るため、並んでホグワーツ城の中へ足を踏み入れた。城から脱走したウィーズリーの双子を追いかけて正面扉から外へ出た生徒たちも、既に疎らに城の中に戻っていた。すると、まだ幾らか賑わいを見せる生徒たちの声に混ざって、フォーラとドラコから少し離れた場所で二人の名前を呼ぶ声が聞こえた。
声のした方を二人が振り返ってみると、地下に続く廊下の方からパンジーとルニーが一目散に駆け付けてくるところだった。彼女たちは間もなくしてドラコとフォーラの傍まで来ると、息を切らしながらフォーラの両手を片方ずつ勢いよく取った。
「フォーラ!もしかして、もしかしなくても、ドラコと仲直りできたの……!?」ルニーが切迫した様子で尋ねた。
「私たち、貴女がドラコとどうしていたのか、ずっと心配してて……!」パンジーもフォーラに詰め寄る勢いだった。
「ふ、二人とも、落ち着いて……!あの、心配してくれて本当にありがとう。私……。見てのとおりドラコとはもう大丈夫。ちゃんと和解できたの!」
フォーラはパンジーとルニーへの心からの感謝の気持ちと喜びを声に乗せた。
それを聞くや否や、友人二人はパッと互いに顔を見合わせ、ドラコとフォーラを交互に見た。そして何かに耐え忍ぶような表情をした次の瞬間には、パンジーはフォーラに抱きつき、ルニーはフォーラの手を両手で握ったまま涙を流した。
「ああもう、よかったあああ」感極まったルニーがワッと声を上げた。
「ありがとう、本当に……。」フォーラは二人を抱きしめて宥めながら、彼女たちがこんなにも自分のことを心配してくれていたことに涙が零れた。「二人がずっと応援してくれていたおかげだわ……。」
フォーラにはドラコを問い詰める意図はなかったし、彼が部屋をどれだけ覗いていようがいまいが何でもよかった。彼女の声色は、純粋にドラコが自分を心配してくれていたであろうことを喜ぶものだったのだ。しかし、ドラコは墓穴を掘って狼狽えていたのもあって、彼女の問いかけが自分に対する不信感から来るものかもしれないと思った。
ドラコはこれ以上言い訳を並べるのは良くないと感じ、何度か躊躇った後で、彼女の問いに正直に回答したのだった。
「……最初に部屋を覗いた時、君が杖を振っているのを見たのは本当だ。だけど一瞬のことで、君が何の術を練習していたかまでは分からなかった。
その後、僕がその場を立ち去る前にもう一度だけ部屋の中を確認したら―――どういうわけか、今度は君が倒れていた。それで君を介抱するために中に入ってみたら、高学年の変身術の教科書が開かれているのが目に入ったんだ」
すると、不意にフォーラの表情が何かを理解したようなものに変わった。
「それってつまり……私の知らない間に、ドラコが私を助けてくれていたということ?セブルスさんではなくて、貴方が?」
フォーラはあの部屋で倒れていた自分を見つけてくれたのは、スネイプだと本人から聞いていた。しかし彼女の質問にドラコは観念したように彼女と瞳を合わせ、静かに頷いた。
ドラコはスネイプに『貴方がフォーラを助けたことにしてほしい』と嘘をつくよう頼んだ。その手前、ドラコは話の流れでたった今フォーラ本人に真実を明かしたことについて、嘘に協力してもらったスネイプと、その嘘で距離を取っていたフォーラに酷く申し訳なさを感じた。
ドラコがフォーラに『黙っていて悪かった』と謝罪しようとした時、徐にフォーラの両手がドラコの首の後ろ側に向かって伸びてきた。そしてドラコは自身のその首根を包んだ彼女の両手のひらにぐいと引かれ、上半身を彼女の方に傾斜させた。
ドラコは突然のことに何が起こったのかと一瞬慌てたが、フォーラの綻んだ表情が目と鼻の先にあることを認識するや否や、次の瞬間には彼女が愛おしさを満たしたようなその瞳を閉じ、彼の唇を塞いだのだった。
「!」
ドラコは驚きのあまり身体がその場に根を張ったように動けなかったし、中途半端に行き場のない手も固まってしまっていた。そうして彼がこの状況に呆然としている間に、フォーラに優しく押し付けられた唇は離れた。
「ドラコ……私のこと、本当に沢山助けに来てくれて、ありがとう……。」フォーラがドラコの首の後ろ側に両手を回したまま、ほんのりと頬を色付かせ、照れた笑みを向けて言った。
ドラコはフォーラの一連の行動に、心の準備など全くできている筈がなかった。そのせいで、彼の心臓は途端にバクバクと煩く音を立て、その上ギュッと強く鷲掴みされているような感覚すらした。更には顔を含め、全身が熱く火照っていくのも容易に感じられた。
ドラコはその全ての感覚を無視して余裕そうな笑みで取り繕うことを試みたが、如何せん緊張が勝って上手くいかなかった。最早自分の顔が本当に見るに堪えない状態でどうしようもないことを感じ、彼は何とか片手で自身の顔を半分覆い隠した。そして気を落ち着かせるため長く静かに息を吐いた後で、ようやく彼もフォーラの方にそっと視線を向け、力なく笑みを返したのだった。
こんなにも自身の心を搔き乱し、幸福感を与えてくれる人を避け続けていたなんて。事情があったにしろ、こうして自分の側で幸せそうにしている彼女を見ていると、ドラコは過去の自分が本当に愚かで間違った選択をしていたと思わずにはいられなかった。
これまでしてきたように、これからも彼女のことは自分が守ればいい。そうすれば、今後死喰い人になった自分と彼女が関わりを持っていたって、きっと彼女は何かに脅かされることもない。そしてきっと、ずっと互いが側にいられることだろう。ドラコはフォーラから勇気をもらうことで、そのように確信できたのだった。
さて、それからの二人はスリザリン寮に戻るため、並んでホグワーツ城の中へ足を踏み入れた。城から脱走したウィーズリーの双子を追いかけて正面扉から外へ出た生徒たちも、既に疎らに城の中に戻っていた。すると、まだ幾らか賑わいを見せる生徒たちの声に混ざって、フォーラとドラコから少し離れた場所で二人の名前を呼ぶ声が聞こえた。
声のした方を二人が振り返ってみると、地下に続く廊下の方からパンジーとルニーが一目散に駆け付けてくるところだった。彼女たちは間もなくしてドラコとフォーラの傍まで来ると、息を切らしながらフォーラの両手を片方ずつ勢いよく取った。
「フォーラ!もしかして、もしかしなくても、ドラコと仲直りできたの……!?」ルニーが切迫した様子で尋ねた。
「私たち、貴女がドラコとどうしていたのか、ずっと心配してて……!」パンジーもフォーラに詰め寄る勢いだった。
「ふ、二人とも、落ち着いて……!あの、心配してくれて本当にありがとう。私……。見てのとおりドラコとはもう大丈夫。ちゃんと和解できたの!」
フォーラはパンジーとルニーへの心からの感謝の気持ちと喜びを声に乗せた。
それを聞くや否や、友人二人はパッと互いに顔を見合わせ、ドラコとフォーラを交互に見た。そして何かに耐え忍ぶような表情をした次の瞬間には、パンジーはフォーラに抱きつき、ルニーはフォーラの手を両手で握ったまま涙を流した。
「ああもう、よかったあああ」感極まったルニーがワッと声を上げた。
「ありがとう、本当に……。」フォーラは二人を抱きしめて宥めながら、彼女たちがこんなにも自分のことを心配してくれていたことに涙が零れた。「二人がずっと応援してくれていたおかげだわ……。」