21. Brief Kisses
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「もしかしなくても、その理由には僕が関係しているんじゃないか?」
「うーん……」フォーラは少々考えこんでから、彼を安心させるような笑顔を見せて続けた。
「全部が全部というわけじゃないわ。……私ね、貴方と離れたことをきっかけに、自分が純血としてどう振舞うべきか、考えを改める必要があると思ったの。それまで私は、貴方が敵視しているような人にも特段気にせず普通に接してきたでしょう?
だけど、『純血を重んじる貴族』の貴方の隣にいつか立ちたいと思うなら、私も『純血の貴族』に生まれた自覚を、このあたりでしっかり持っておかなければと思ったわ。純血主義を強く否定してこなかった私は、反純血主義者やマグル生まれとは、多く関わるべきではないということをね……。」
ドラコはフォーラの話を聞いて、どこか心配しているような顔色を浮かべた。彼女の交友関係に、ドラコ自身が深い亀裂を作ってしまったのではないかと思ったのだ。幾らドラコがハリーたちを毛嫌いしていても、彼はフォーラにも同じようにしてほしいと感じたことは一度もなかった。
「それは……僕としては有難い反面、君が本当にしたいようにしてくれるのが一番嬉しい。つまり僕にそこまで配慮する必要はない。僕は何も、君にあいつらと関わらないことを強要したいわけじゃないんだから」
フォーラは彼女自身をドラコが尊重してくれているのが十分に伝わってきた。彼はいつか死喰い人になろうとしている筈なのに、懇意にしている彼女には反純血主義者との交流を絶たなくていいと言う。今後万が一、フォーラがドラコから得た死喰い人の情報をハリーたちにうっかり流してしまうリスクもあるというのに。ドラコの中では、フォーラに対する評価がそのリスクを大きく上回る程、信頼に値しているということなのだろうか。
フォーラはその信頼に嬉しさを感じずにはいられなかった。それと同時に、彼女が誠意を示すことで一層その信頼が厚くなることを利用しなくてはと思った。
「確かに私は、他のスリザリン生と比べれば、マグル生まれの人たちや、反純血主義者の人たちとは話す方だったと思うわ。だけど、別に元から私とハーマイオニーたちは、そこまで特別積極的に話していたわけじゃないもの。だってそもそも寮が違うし……今まで以上に距離を取ったところで、殆ど何も変わらないわ。
きっかけはドラコだったかもしれないけれど、私は自分の意志でそういう振る舞いをしようと決めたの。ドラコは気にする必要ないのよ。私にとっては、貴方が安心して私の隣にいてくれることの方が、よっぽど重要なんだから……。」
「そうか……」ドラコは幾らか考え込んだ後でようやく頷いた。「分かった、君がそう言うのなら。その……ありがとう」
フォーラが微笑むと、ドラコはその眩しさに幾らか目を細めた。それと同時に、彼女がどれだけ自分を尊重し、尽くそうとしてくれているかをも感じ取っていた。彼はそっと彼女の片手を取ると、その手の甲に敬愛の意味を込めて軽く口付けした。
「これからは、可能な限り君と一緒にいられたら僕としては嬉しい」
フォーラはドラコの随分紳士的で甘い愛情表現によって、彼がキスを落とした辺りからじわじわと熱が全身に広がっていくような感覚がした。フォーラから見たドラコという人は、彼自身の行いを褒められると随分照れて、それを隠そうとしてしまう。しかしお互いの気持ちが同じだと分かった今、彼自らの気持ちを伝えることに至っては、全く照れなどないように感じられた。だからこそ彼は、フォーラのためなら手の甲へのキスも容易にできてしまうのかもしれなかった。
ドラコはフォーラが少々気恥ずかしそうにしているのを見て、優しく微笑んだ。そしてその表情を幾らか真剣なものに変えた。
「それに……僕がいつか父上を追いかけて死喰い人になって、万が一君と一時的に離れるようなことがあったとしても、成るべく早く君を迎えにいくと約束する」
「ドラコ……」
フォーラは彼が自分と一緒にいることを望んでくれて喜ばしいと思う反面、彼の根底に『死喰い人になる』という意志が固く存在していることを理解して、僅かに喉を詰まらせた。しかし彼女はそれを悟られぬよう柔らかな笑みを見せた。
「……ええ、ありがとう。」
フォーラは自身の落ち込んだ気分を晴らすため、気を取り直して言葉を続けた。
「私たち、今年度一緒にいられなかった分も取り戻さなくちゃね。私も、勿論ドラコと一緒に過ごせたら嬉しいと思っているわ。……だけどもうあと一か月半程で、ふくろう試験が始まってしまうわね。私たち、それが終わるまでは勉強をしながら一緒に過ごすことになりそうだわ。」
「確かにそうだな」ドラコはそのように頷くと、ふと彼女の『勉強』という言葉をきっかけに、一つ思い出した。「……だけどフォーラ、君は頻繁に四階の空き部屋で変身術の練習をしているだろう。てっきり、試験勉強は一人で専念したいのかと思ったんだが」
「えっ、ドラコ、どうしてそのことを……?」
「それは」その時ドラコは要らぬことを口走ってしまったと思った。「……当然僕らは同じ寮なんだから、君が定期的に談話室からいなくなることは知っていたし、それに……。知ってのとおり僕は尋問官親衛隊の定期パトロールをする立場だ。四階のとある部屋の前を通った時に、偶然扉が少し開いていたんだ。そこでは君が杖を振っていて」
ドラコは一先ず途中で言葉を切った。偶然とはいえ、部屋の中のフォーラを覗き見たことを自白している状況に、何だかとてつもなく弁解したい気持ちで一杯になったのだ。
「別に長い間覗いていたわけじゃない。ほんの一瞬中を見ただけだった」ドラコは真実を伝えていたが、自分で言っていてあまりにも嘘臭く聞こえることに、内心頭を抱えた。
「うーん……」フォーラは少々考えこんでから、彼を安心させるような笑顔を見せて続けた。
「全部が全部というわけじゃないわ。……私ね、貴方と離れたことをきっかけに、自分が純血としてどう振舞うべきか、考えを改める必要があると思ったの。それまで私は、貴方が敵視しているような人にも特段気にせず普通に接してきたでしょう?
だけど、『純血を重んじる貴族』の貴方の隣にいつか立ちたいと思うなら、私も『純血の貴族』に生まれた自覚を、このあたりでしっかり持っておかなければと思ったわ。純血主義を強く否定してこなかった私は、反純血主義者やマグル生まれとは、多く関わるべきではないということをね……。」
ドラコはフォーラの話を聞いて、どこか心配しているような顔色を浮かべた。彼女の交友関係に、ドラコ自身が深い亀裂を作ってしまったのではないかと思ったのだ。幾らドラコがハリーたちを毛嫌いしていても、彼はフォーラにも同じようにしてほしいと感じたことは一度もなかった。
「それは……僕としては有難い反面、君が本当にしたいようにしてくれるのが一番嬉しい。つまり僕にそこまで配慮する必要はない。僕は何も、君にあいつらと関わらないことを強要したいわけじゃないんだから」
フォーラは彼女自身をドラコが尊重してくれているのが十分に伝わってきた。彼はいつか死喰い人になろうとしている筈なのに、懇意にしている彼女には反純血主義者との交流を絶たなくていいと言う。今後万が一、フォーラがドラコから得た死喰い人の情報をハリーたちにうっかり流してしまうリスクもあるというのに。ドラコの中では、フォーラに対する評価がそのリスクを大きく上回る程、信頼に値しているということなのだろうか。
フォーラはその信頼に嬉しさを感じずにはいられなかった。それと同時に、彼女が誠意を示すことで一層その信頼が厚くなることを利用しなくてはと思った。
「確かに私は、他のスリザリン生と比べれば、マグル生まれの人たちや、反純血主義者の人たちとは話す方だったと思うわ。だけど、別に元から私とハーマイオニーたちは、そこまで特別積極的に話していたわけじゃないもの。だってそもそも寮が違うし……今まで以上に距離を取ったところで、殆ど何も変わらないわ。
きっかけはドラコだったかもしれないけれど、私は自分の意志でそういう振る舞いをしようと決めたの。ドラコは気にする必要ないのよ。私にとっては、貴方が安心して私の隣にいてくれることの方が、よっぽど重要なんだから……。」
「そうか……」ドラコは幾らか考え込んだ後でようやく頷いた。「分かった、君がそう言うのなら。その……ありがとう」
フォーラが微笑むと、ドラコはその眩しさに幾らか目を細めた。それと同時に、彼女がどれだけ自分を尊重し、尽くそうとしてくれているかをも感じ取っていた。彼はそっと彼女の片手を取ると、その手の甲に敬愛の意味を込めて軽く口付けした。
「これからは、可能な限り君と一緒にいられたら僕としては嬉しい」
フォーラはドラコの随分紳士的で甘い愛情表現によって、彼がキスを落とした辺りからじわじわと熱が全身に広がっていくような感覚がした。フォーラから見たドラコという人は、彼自身の行いを褒められると随分照れて、それを隠そうとしてしまう。しかしお互いの気持ちが同じだと分かった今、彼自らの気持ちを伝えることに至っては、全く照れなどないように感じられた。だからこそ彼は、フォーラのためなら手の甲へのキスも容易にできてしまうのかもしれなかった。
ドラコはフォーラが少々気恥ずかしそうにしているのを見て、優しく微笑んだ。そしてその表情を幾らか真剣なものに変えた。
「それに……僕がいつか父上を追いかけて死喰い人になって、万が一君と一時的に離れるようなことがあったとしても、成るべく早く君を迎えにいくと約束する」
「ドラコ……」
フォーラは彼が自分と一緒にいることを望んでくれて喜ばしいと思う反面、彼の根底に『死喰い人になる』という意志が固く存在していることを理解して、僅かに喉を詰まらせた。しかし彼女はそれを悟られぬよう柔らかな笑みを見せた。
「……ええ、ありがとう。」
フォーラは自身の落ち込んだ気分を晴らすため、気を取り直して言葉を続けた。
「私たち、今年度一緒にいられなかった分も取り戻さなくちゃね。私も、勿論ドラコと一緒に過ごせたら嬉しいと思っているわ。……だけどもうあと一か月半程で、ふくろう試験が始まってしまうわね。私たち、それが終わるまでは勉強をしながら一緒に過ごすことになりそうだわ。」
「確かにそうだな」ドラコはそのように頷くと、ふと彼女の『勉強』という言葉をきっかけに、一つ思い出した。「……だけどフォーラ、君は頻繁に四階の空き部屋で変身術の練習をしているだろう。てっきり、試験勉強は一人で専念したいのかと思ったんだが」
「えっ、ドラコ、どうしてそのことを……?」
「それは」その時ドラコは要らぬことを口走ってしまったと思った。「……当然僕らは同じ寮なんだから、君が定期的に談話室からいなくなることは知っていたし、それに……。知ってのとおり僕は尋問官親衛隊の定期パトロールをする立場だ。四階のとある部屋の前を通った時に、偶然扉が少し開いていたんだ。そこでは君が杖を振っていて」
ドラコは一先ず途中で言葉を切った。偶然とはいえ、部屋の中のフォーラを覗き見たことを自白している状況に、何だかとてつもなく弁解したい気持ちで一杯になったのだ。
「別に長い間覗いていたわけじゃない。ほんの一瞬中を見ただけだった」ドラコは真実を伝えていたが、自分で言っていてあまりにも嘘臭く聞こえることに、内心頭を抱えた。