21. Brief Kisses
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すると不意にフォーラが何かを思い出したのか『あっ』と声を上げた。ドラコがそれに反応すると、彼女はズイと彼の方に身を乗り出して期待に満ちた瞳を向けているではないか。
「よくよく思い返してみると、私、確か夢の中で一度だけ貴方に防衛術を教わったわ。しかも、とっても丁寧に優しく。目覚めた時、てっきり私の願望が夢に現れたと思っていたのだけど……。もしかすると、実際に貴方から杖の振り方を教わった時の記憶が、魔法で消しきれていなかったのかもしれないわね。」
ドラコはフォーラの発言に思わずドキリとした。彼女の見た夢は、正しく彼がとった行動そのものだったからだ。防衛術の教室での出来事が生徒たちの記憶から消えるのをいいことに、彼はその時だけフォーラに思う存分優しく接していた。
ドラコは次第に耳の辺りが熱くなっていくのを感じ、自分の方に身を近づけているフォーラの両肩にそっと手を添えた。そしてその肩をゆっくりと元の位置に押し戻しながら視線を外し、彼女に触れていた手を引っ込めると、その場しのぎの回答を並べた。
「……確かに、無意識の内に君の身体が授業中のことを記憶していたのかもしれないが。僕の教え方が丁寧で優しかったかどうかは忘れたよ」
するとフォーラが軽く首を横に振るものだから、ドラコは再び彼女の方を向いた。すると柔らかい笑みを浮かべた彼女と、真正面からばっちり視線が合ってしまった。
「きっと貴方は夢のとおりの教え方をしてくれたんだわ。何となくそう思うの。ドラコ、本当にありがとう。私、貴方のおかげで色んな術が使えるようになったのよ。」
ドラコは思わず『知っている』と言いかけた口を咄嗟に噤んだ。それを言ってしまったが最後、フォーラが呪文を成功させたその時に、ドラコがその様子をすぐ隣で見守っていたことまで彼女に知られてしまうことになる。そうなれば彼女はきっとまた素敵な笑顔で感謝の意を述べてくる筈だ。ドラコはただでさえ彼女の笑顔と真正面から対峙するのが久しぶりで、既に現状で供給過多だった。
ドラコはそのような気恥ずかしさを感じている一方、別の理由においても、これ以上彼女からのお礼の言葉を受け取るべきではないと思った。
「フォーラ、防衛術の実技練習は確かに僕が君のために提案したことだ。だけどそれは、僕が君を突き放した分のお詫びだと考えてもあまりにも足りない」
それを聞いたフォーラは眉をひそめて首を横に振った。
「そんなことないわ。そんな風に考えないで。」
「いいや、僕は他にも君に酷いことをした。忘れたわけじゃない筈だ。
グリフィンドールとのクィディッチの試合前に、ウィーズリーへの悪態を書いたバッジを君に押し付けたこともあった。あの手の物をフォーラが嫌がることは重々承知した上でしたことだった」
フォーラは以前、ドラコから『ウィーズリーは我が王者』と印字されたバッジを手渡された時のことを思い出した。
「だけど、それも本意じゃなかったでしょう?」
「それは……」ドラコはフォーラの優しい声色に一瞬押し黙り、彼女を一瞥した。「まあ、勿論そうだ」そして彼は少しだけ肩を落として続けた。「君にあのバッジを渡したくはなかった」
それを聞いたフォーラは小さく安堵の笑みを浮かべ、続けて質問した。
「ねえドラコ?あれは貴方が提案して主導している様子だったけれど、元々の発案はきっと別の人でしょう?」
「!」ドラコはフォーラが真相を的中させたものだから、面食らったような表情を見せた。
「やっぱり……。ドラコが目の敵にしているのはこれまでずっと基本的にハリーだったから、様子がおかしいと思っていたの。それに今になって思うのは、当時もし私と貴方の関係が良好だったとしたら、私のことを一番に想ってくれている貴方は、きっと私が眉をひそめるような活動を先導すらしなかったんじゃないかしら。」
フォーラがドラコの顔を覗き込むようにしてじっと見た。ドラコは眉間に軽く皺を寄せた―――彼女は傷つけられた側の筈なのに、自分をこんな風に擁護してくれている。彼はそれが嬉しいやら申し訳ないやら、そのような情けない感情を悟られまいとしていた。
「そんな『もしも』の話はしたってしょうがない。それに、今回のことは単に僕の提案じゃなかったというだけの話で、加担した時点で同じだ」
ドラコはそのように自分を否定した。しかしフォーラは納得できない様子でドラコを真っ直ぐ見つめていた。それだから、ドラコは彼女の眼差しにジリジリと身が焦がれるような感覚がして、耐えきれずに思わず小さく一呼吸した。そして彼女の意見に仕方なく同意したのだった。
「……まあ確かに、君に嫌われようとしていなければ、活動の推進はしなかったかもしれない」
それを聞いてフォーラは幾らか満足そうに微笑んだ。そして彼女は少々申し訳なさそうな視線を城の方に向けた。
「私たちの仲が良くなかったばっかりに、ある意味ロンを巻き込んでしまって、彼には迷惑をかけたわね……。」
「正直言って、奴が災難を被ったこと自体は、僕の関心としてはどうでもいいところだ」
「もう、ドラコったら、そういうところは相変わらずだわ……。」
「ふん、いずれにせよ観衆の野次に怯むような奴に、そもそも選手は務まらないさ」
ドラコはそのように悪態をつきながら、今回フォーラの口からロン・ウィーズリーやハリー・ポッターの名前を聞いたのは随分久しぶりだと感じた。この一年弱の間、自分がフォーラから距離を取っていたからだろうか?ドラコは一瞬そのように思ったが、フォーラは廊下でハリーたちグリフィンドール生とすれ違っても、同じクラスの授業を受けていても、言葉を殆ど交わしていなかった筈なのだ。
「フォーラ、そういえば君は五年生になってから、グリフィンドールの奴らとあまり会話していないように思ったんだが」
「!……ええ、そうね。ドラコの言うとおりだわ。」
フォーラが素直に頷くと、ドラコはどこか気を遣うような表情を見せた。
「よくよく思い返してみると、私、確か夢の中で一度だけ貴方に防衛術を教わったわ。しかも、とっても丁寧に優しく。目覚めた時、てっきり私の願望が夢に現れたと思っていたのだけど……。もしかすると、実際に貴方から杖の振り方を教わった時の記憶が、魔法で消しきれていなかったのかもしれないわね。」
ドラコはフォーラの発言に思わずドキリとした。彼女の見た夢は、正しく彼がとった行動そのものだったからだ。防衛術の教室での出来事が生徒たちの記憶から消えるのをいいことに、彼はその時だけフォーラに思う存分優しく接していた。
ドラコは次第に耳の辺りが熱くなっていくのを感じ、自分の方に身を近づけているフォーラの両肩にそっと手を添えた。そしてその肩をゆっくりと元の位置に押し戻しながら視線を外し、彼女に触れていた手を引っ込めると、その場しのぎの回答を並べた。
「……確かに、無意識の内に君の身体が授業中のことを記憶していたのかもしれないが。僕の教え方が丁寧で優しかったかどうかは忘れたよ」
するとフォーラが軽く首を横に振るものだから、ドラコは再び彼女の方を向いた。すると柔らかい笑みを浮かべた彼女と、真正面からばっちり視線が合ってしまった。
「きっと貴方は夢のとおりの教え方をしてくれたんだわ。何となくそう思うの。ドラコ、本当にありがとう。私、貴方のおかげで色んな術が使えるようになったのよ。」
ドラコは思わず『知っている』と言いかけた口を咄嗟に噤んだ。それを言ってしまったが最後、フォーラが呪文を成功させたその時に、ドラコがその様子をすぐ隣で見守っていたことまで彼女に知られてしまうことになる。そうなれば彼女はきっとまた素敵な笑顔で感謝の意を述べてくる筈だ。ドラコはただでさえ彼女の笑顔と真正面から対峙するのが久しぶりで、既に現状で供給過多だった。
ドラコはそのような気恥ずかしさを感じている一方、別の理由においても、これ以上彼女からのお礼の言葉を受け取るべきではないと思った。
「フォーラ、防衛術の実技練習は確かに僕が君のために提案したことだ。だけどそれは、僕が君を突き放した分のお詫びだと考えてもあまりにも足りない」
それを聞いたフォーラは眉をひそめて首を横に振った。
「そんなことないわ。そんな風に考えないで。」
「いいや、僕は他にも君に酷いことをした。忘れたわけじゃない筈だ。
グリフィンドールとのクィディッチの試合前に、ウィーズリーへの悪態を書いたバッジを君に押し付けたこともあった。あの手の物をフォーラが嫌がることは重々承知した上でしたことだった」
フォーラは以前、ドラコから『ウィーズリーは我が王者』と印字されたバッジを手渡された時のことを思い出した。
「だけど、それも本意じゃなかったでしょう?」
「それは……」ドラコはフォーラの優しい声色に一瞬押し黙り、彼女を一瞥した。「まあ、勿論そうだ」そして彼は少しだけ肩を落として続けた。「君にあのバッジを渡したくはなかった」
それを聞いたフォーラは小さく安堵の笑みを浮かべ、続けて質問した。
「ねえドラコ?あれは貴方が提案して主導している様子だったけれど、元々の発案はきっと別の人でしょう?」
「!」ドラコはフォーラが真相を的中させたものだから、面食らったような表情を見せた。
「やっぱり……。ドラコが目の敵にしているのはこれまでずっと基本的にハリーだったから、様子がおかしいと思っていたの。それに今になって思うのは、当時もし私と貴方の関係が良好だったとしたら、私のことを一番に想ってくれている貴方は、きっと私が眉をひそめるような活動を先導すらしなかったんじゃないかしら。」
フォーラがドラコの顔を覗き込むようにしてじっと見た。ドラコは眉間に軽く皺を寄せた―――彼女は傷つけられた側の筈なのに、自分をこんな風に擁護してくれている。彼はそれが嬉しいやら申し訳ないやら、そのような情けない感情を悟られまいとしていた。
「そんな『もしも』の話はしたってしょうがない。それに、今回のことは単に僕の提案じゃなかったというだけの話で、加担した時点で同じだ」
ドラコはそのように自分を否定した。しかしフォーラは納得できない様子でドラコを真っ直ぐ見つめていた。それだから、ドラコは彼女の眼差しにジリジリと身が焦がれるような感覚がして、耐えきれずに思わず小さく一呼吸した。そして彼女の意見に仕方なく同意したのだった。
「……まあ確かに、君に嫌われようとしていなければ、活動の推進はしなかったかもしれない」
それを聞いてフォーラは幾らか満足そうに微笑んだ。そして彼女は少々申し訳なさそうな視線を城の方に向けた。
「私たちの仲が良くなかったばっかりに、ある意味ロンを巻き込んでしまって、彼には迷惑をかけたわね……。」
「正直言って、奴が災難を被ったこと自体は、僕の関心としてはどうでもいいところだ」
「もう、ドラコったら、そういうところは相変わらずだわ……。」
「ふん、いずれにせよ観衆の野次に怯むような奴に、そもそも選手は務まらないさ」
ドラコはそのように悪態をつきながら、今回フォーラの口からロン・ウィーズリーやハリー・ポッターの名前を聞いたのは随分久しぶりだと感じた。この一年弱の間、自分がフォーラから距離を取っていたからだろうか?ドラコは一瞬そのように思ったが、フォーラは廊下でハリーたちグリフィンドール生とすれ違っても、同じクラスの授業を受けていても、言葉を殆ど交わしていなかった筈なのだ。
「フォーラ、そういえば君は五年生になってから、グリフィンドールの奴らとあまり会話していないように思ったんだが」
「!……ええ、そうね。ドラコの言うとおりだわ。」
フォーラが素直に頷くと、ドラコはどこか気を遣うような表情を見せた。