20. The beginning of the end
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「フォーラ……」
ドラコはそのように呟くと、今度ばかりは彼の意志が赴くままにフォーラを抱きしめた。先程手を握られた時よりもよっぽど力強くて、フォーラは胸の辺りが苦しかった。けして平気で嘘を吐ける自分に心苦しさを感じたわけではない筈だ。自分があたかもドラコと将来一緒になる気でいることを伝えたり、純血として振舞ったりすることは、必要な嘘なのだから。
それに、何も嘘ばかりを伝えたわけではない。彼女の幸せは間違いなくドラコと一緒に並んで歩くことだ。そうする意思があるかは別としても。そして、彼に何でも話してほしいと言ったのは本当にそう思ったからだ。それで闇の陣営側の情報を少しでも手に入れられるのなら……。
ドラコはフォーラのそのような思惑を知ることのないまま、彼女を自分の腕の中に抱き留めていた。
「ありがとう」ドラコの絞り出すような声に応えるように、フォーラも彼をきつく抱き締め返した。
ドラコもフォーラも、一番近くにいたかった人がとうとう互いの腕の中にいることに喜びを感じていた。ただし二人とも、本当は自身が抱える複雑な事情無しにこうしていられたら、どれだけ良かっただろうと思わずにはいられなかった。
特にフォーラはドラコと違い、彼に対して多くの隠しごとを抱えたままだった。その分、何も知らなかった頃にドラコと想いを通わせたかったという気持ちを一層強く抱えていた。そんな彼女の瞳から零れた涙がドラコの首筋にポタリと落ちたものだから、ドラコはそれに気が付いてゆっくりと抱擁を解いた。
「フォーラ?……」
ドラコが心配そうにフォーラの顔を覗き見て、彼女の瞳に溜まった涙を親指の腹で優しく拭った。そして彼には一抹の不安が過った。
「……もし、僕と一緒にいることが辛くて泣いているのなら―――」
ドラコはフォーラの涙を見て、彼女が心変わりしてやっぱり自分に嫌気がさしてしまったのではと思った。しかし彼女は首を横に小さく振ると、出来うる限り優しく微笑み、心の内に涙の理由を仕舞い込んだのだった。
「違うの。私、ドラコとこうしていられることが、本当に嬉しくて……。それだけなの。」
フォーラの言葉にドラコはほんの少し安堵の表情を浮かべた。そしてそれと同時に、ふと改めて自分と彼女の距離感を認識してみると、互いの顔が、身体が、本当に近いところにあると改めて気付かされた。そして彼女の潤んだ瞳から視線を逸らすことができないということも。
ドラコはフォーラの涙を拭った片手を彼女の頬にそっと沿わせた。すると、フォーラはその手のひらに頬を軽くもたせ掛けてきたものだから、それが彼女からの愛情表現であると気付くのに殆ど時間はかからなかった。すると今度はドラコのもう一方の空いた腕の袖がクイと摘まれる感覚がして、彼はそちらを見なくともフォーラが手を繋ぎたがっているのだと自然と理解した。そのためドラコは彼女の瞳から目を離さないまま、自分の膝の上で彼女の指に自分の指を不揃いに軽く絡めた。
ドラコは次第に早く強くなっていく自分の心臓の鼓動や、身体を勢いよく巡る熱い血の温度、それらから来る焦りが、自分の指を伝ってフォーラに伝わってしまうかもしれないと思った。本当に、彼女と距離を置くなら今このタイミングしかない。ドラコは脳内でそのように理解しながらも、目の前の長く焦がれてきた存在が、今間違いなく自分に甘えており、愛しさを溢れさせるような瞳をこちらに向けていることに目が眩んだ。それに彼女の瞳に映る自分の顔が随分情けない表情をしていても、それを整えることもできない程に切羽詰まっていた。
そして、フォーラがドラコの絡めた指をきゅっと握り返したのを皮切りに、ドラコとフォーラはどちらからでもなくゆっくりと互いの顔を近づけ、唇を優しく触れ合わせた。その間、二人とも初めて感じる柔らかい感触に大層緊張した。また、その近さから二人は相手の心臓の鼓動がより大きく早鐘を打っていることを容易に知ることができた。どちらも初めてのことで、それに身体が強張っているのも相まって、本当に唇を触れ合わせただけだった。学校の何組かのカップルがキスしている場面を稀に見かけることはあったが、その恋人たちが交わす熱く糊付けするようなキスなど到底できる余裕はなかった。
その唇を静かに離してドラコがフォーラを見た時、彼女はほんのり頬を色付かせており、空いている方の手で胸の辺りを抑えて少々気恥ずかしそうに視線を外した。ドラコも心臓の煩さと頬の熱さを感じていたが、彼は恥じらうフォーラと瞳を合わせたいという気持ちになり、静かに彼女の名前を呼んだ。
ドラコはそのように呟くと、今度ばかりは彼の意志が赴くままにフォーラを抱きしめた。先程手を握られた時よりもよっぽど力強くて、フォーラは胸の辺りが苦しかった。けして平気で嘘を吐ける自分に心苦しさを感じたわけではない筈だ。自分があたかもドラコと将来一緒になる気でいることを伝えたり、純血として振舞ったりすることは、必要な嘘なのだから。
それに、何も嘘ばかりを伝えたわけではない。彼女の幸せは間違いなくドラコと一緒に並んで歩くことだ。そうする意思があるかは別としても。そして、彼に何でも話してほしいと言ったのは本当にそう思ったからだ。それで闇の陣営側の情報を少しでも手に入れられるのなら……。
ドラコはフォーラのそのような思惑を知ることのないまま、彼女を自分の腕の中に抱き留めていた。
「ありがとう」ドラコの絞り出すような声に応えるように、フォーラも彼をきつく抱き締め返した。
ドラコもフォーラも、一番近くにいたかった人がとうとう互いの腕の中にいることに喜びを感じていた。ただし二人とも、本当は自身が抱える複雑な事情無しにこうしていられたら、どれだけ良かっただろうと思わずにはいられなかった。
特にフォーラはドラコと違い、彼に対して多くの隠しごとを抱えたままだった。その分、何も知らなかった頃にドラコと想いを通わせたかったという気持ちを一層強く抱えていた。そんな彼女の瞳から零れた涙がドラコの首筋にポタリと落ちたものだから、ドラコはそれに気が付いてゆっくりと抱擁を解いた。
「フォーラ?……」
ドラコが心配そうにフォーラの顔を覗き見て、彼女の瞳に溜まった涙を親指の腹で優しく拭った。そして彼には一抹の不安が過った。
「……もし、僕と一緒にいることが辛くて泣いているのなら―――」
ドラコはフォーラの涙を見て、彼女が心変わりしてやっぱり自分に嫌気がさしてしまったのではと思った。しかし彼女は首を横に小さく振ると、出来うる限り優しく微笑み、心の内に涙の理由を仕舞い込んだのだった。
「違うの。私、ドラコとこうしていられることが、本当に嬉しくて……。それだけなの。」
フォーラの言葉にドラコはほんの少し安堵の表情を浮かべた。そしてそれと同時に、ふと改めて自分と彼女の距離感を認識してみると、互いの顔が、身体が、本当に近いところにあると改めて気付かされた。そして彼女の潤んだ瞳から視線を逸らすことができないということも。
ドラコはフォーラの涙を拭った片手を彼女の頬にそっと沿わせた。すると、フォーラはその手のひらに頬を軽くもたせ掛けてきたものだから、それが彼女からの愛情表現であると気付くのに殆ど時間はかからなかった。すると今度はドラコのもう一方の空いた腕の袖がクイと摘まれる感覚がして、彼はそちらを見なくともフォーラが手を繋ぎたがっているのだと自然と理解した。そのためドラコは彼女の瞳から目を離さないまま、自分の膝の上で彼女の指に自分の指を不揃いに軽く絡めた。
ドラコは次第に早く強くなっていく自分の心臓の鼓動や、身体を勢いよく巡る熱い血の温度、それらから来る焦りが、自分の指を伝ってフォーラに伝わってしまうかもしれないと思った。本当に、彼女と距離を置くなら今このタイミングしかない。ドラコは脳内でそのように理解しながらも、目の前の長く焦がれてきた存在が、今間違いなく自分に甘えており、愛しさを溢れさせるような瞳をこちらに向けていることに目が眩んだ。それに彼女の瞳に映る自分の顔が随分情けない表情をしていても、それを整えることもできない程に切羽詰まっていた。
そして、フォーラがドラコの絡めた指をきゅっと握り返したのを皮切りに、ドラコとフォーラはどちらからでもなくゆっくりと互いの顔を近づけ、唇を優しく触れ合わせた。その間、二人とも初めて感じる柔らかい感触に大層緊張した。また、その近さから二人は相手の心臓の鼓動がより大きく早鐘を打っていることを容易に知ることができた。どちらも初めてのことで、それに身体が強張っているのも相まって、本当に唇を触れ合わせただけだった。学校の何組かのカップルがキスしている場面を稀に見かけることはあったが、その恋人たちが交わす熱く糊付けするようなキスなど到底できる余裕はなかった。
その唇を静かに離してドラコがフォーラを見た時、彼女はほんのり頬を色付かせており、空いている方の手で胸の辺りを抑えて少々気恥ずかしそうに視線を外した。ドラコも心臓の煩さと頬の熱さを感じていたが、彼は恥じらうフォーラと瞳を合わせたいという気持ちになり、静かに彼女の名前を呼んだ。