20. The beginning of the end
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二人の間に沈黙が流れた。フォーラはドラコが自ら進んで死喰い人になりたがっていることを聞かされて、何と返せばいいか言葉が詰まった。ただしドラコの様子を見るに、彼は自らが死喰い人になることを望む一方、それが世間的には後ろめたいということや、それによってフォーラに反対されたり巻き込んでしまったりすることを随分気にしている様子だった。
「……―――ドラコは、『例のあの人』が過去にどんなことをしたのか、知らない筈はないわよね?」
ドラコはフォーラにそのように問われ、諭されているような気がしてならなかったし、死喰い人になることを確実に反対されているのだと思った。
「ああ……過去にあの方が多くの闇の魔術を行使したことは僕も知っている。だけど、そういった理想を求める中で起こる争いではどの時代でも血が流れた。僕らが生まれる前、あの方が取った行動だって、魔法界をマグルから守るという使命の元には仕方がないことだったと、父上は仰っていた」
フォーラはドラコの話を否定することはなかった。ルシウスの吹聴によって形成された考えを持っていることは残念でならないが、その一方で、誰が何と言おうとフォーラにとってドラコが大切な人であることは変わらない。
そんなフォーラがドラコにするべきことは、彼の考えを否定して正そうとすることではかった。彼に寄り添い、これから起こることを一番近くで見守り―――いや、監視し、知り得た情報を不死鳥の騎士団に提供する。フォーラが純血でないことに悩んでいた頃、彼女が立ち直った暁にはドラコに手を差しのべて見守るようダンブルドアから頼まれていた。フォーラは今、その手段としてドラコに害のない存在として振舞うことを選んだのだ。
当然フォーラは死喰い人や闇の帝王を自分の力でどうにかできるとは到底思っていない。そのため少しでもドラコから情報を仕入れることができたなら、それこそ二重スパイをしているスネイプも知り得なかったような情報が、万が一にでも自分の手元に零れる可能性があるのなら。それを騎士団に伝えることで、彼らの助けによってドラコが危険な目に遭う前に『例のあの人』から引き離すのだ。それさえできれば、生きてさえいてくれれば、彼の純血主義の考え方が変わらなくたってそれでいい。例え将来一緒にいられなくたって。
ドラコはひとしきり話した後、大層不安な様子でフォーラの表情を伺った。
「フォーラは僕の話を聞いて、それでも僕の傍にいたいと思うか……?いや、そんな筈ないだろう」
その質問に返す言葉など、フォーラの中ではとっくのとうに決まりきったことだ。
「ピープズから救ってくれた時に伝えたとおり、私は貴方の傍にいたいわ。それに私は貴方の主義を否定しない。一度、貴方と純血主義の考えを分かち合えないと思って告白を断ったけれど、今はそうじゃないもの。まさかドラコが『例のあの人』の下に付くことまで考えているとは、思いもしなかったけれど……。
そのことを聞いても私は、貴方の考えを全部ひっくるめて受け止めたいと思っているわ。そうでなかったらどうして私は、雑誌で貴方のお父様が死喰い人かもしれないと知ってもなお、貴方を振り向かせようと頑張れたというの?」
「フォーラ」ドラコは尚も不安な表情でそれ以上言うなと言わんばかりにフォーラの名前を呼んだが、彼女はそれを無視して言葉を続けた。
「私は、ドラコがやりたいことをして、その結果幸せになってくれればそれでいいのよ。そのために私が必要だと貴方が望んでくれるなら……私をどうかドラコの傍にいさせてもらえない?」
(そして私は貴方の幸せのために、平気で嘘をついてでも貴方に取り入るわ)
ドラコはフォーラの言葉に涙を堪えるような表情になって俯き、隣に座るフォーラの手を静かに握った。ドラコの手から彼の身体が微かに震えているのが伝わってきた。フォーラがその手を握り返すと、彼はゆっくりと彼女の方に顔を上げた。その表情は困惑しているように見え、目元が僅かに光っていた。
「本当は、僕の事情に少しもフォーラを巻き込んだり悩ませたりしたくなかった。四年生の終わりに君に告白したのだって、気の迷いだった。結局父上の言葉に逆らって、君に本当の気持ちを伝えないままは嫌だと思ってしまうなんて、矛盾していたんだ。君が争いとは無縁の場所にいるには、僕と関わり合いにならないことが一番で、君への好意は僕の中にだけ仕舞っておけばよかったのに」
「ドラコ」
フォーラは、ドラコが今になってフォーラを手に入れることを恐れているのを察した。それだから、彼女は彼の言葉を制するようにして名前を呼んだ。
「それ以上自分を責めないで。貴方は少し勘違いしているところがあるから言うけれど、私自身は、貴方と無縁のところで過ごすことが幸せだとは思わないわ。私の幸せは、ドラコと一緒に並んで歩くことなのよ。
だからもし今後、貴方の中で悩みや葛藤があったとしたら……その時は遠慮なく相談してほしいわ。例えどんなに重く苦しいことでも、一緒に乗り越えていきましょう。私だって貴方と同じ、純血なんだから。」
「……―――ドラコは、『例のあの人』が過去にどんなことをしたのか、知らない筈はないわよね?」
ドラコはフォーラにそのように問われ、諭されているような気がしてならなかったし、死喰い人になることを確実に反対されているのだと思った。
「ああ……過去にあの方が多くの闇の魔術を行使したことは僕も知っている。だけど、そういった理想を求める中で起こる争いではどの時代でも血が流れた。僕らが生まれる前、あの方が取った行動だって、魔法界をマグルから守るという使命の元には仕方がないことだったと、父上は仰っていた」
フォーラはドラコの話を否定することはなかった。ルシウスの吹聴によって形成された考えを持っていることは残念でならないが、その一方で、誰が何と言おうとフォーラにとってドラコが大切な人であることは変わらない。
そんなフォーラがドラコにするべきことは、彼の考えを否定して正そうとすることではかった。彼に寄り添い、これから起こることを一番近くで見守り―――いや、監視し、知り得た情報を不死鳥の騎士団に提供する。フォーラが純血でないことに悩んでいた頃、彼女が立ち直った暁にはドラコに手を差しのべて見守るようダンブルドアから頼まれていた。フォーラは今、その手段としてドラコに害のない存在として振舞うことを選んだのだ。
当然フォーラは死喰い人や闇の帝王を自分の力でどうにかできるとは到底思っていない。そのため少しでもドラコから情報を仕入れることができたなら、それこそ二重スパイをしているスネイプも知り得なかったような情報が、万が一にでも自分の手元に零れる可能性があるのなら。それを騎士団に伝えることで、彼らの助けによってドラコが危険な目に遭う前に『例のあの人』から引き離すのだ。それさえできれば、生きてさえいてくれれば、彼の純血主義の考え方が変わらなくたってそれでいい。例え将来一緒にいられなくたって。
ドラコはひとしきり話した後、大層不安な様子でフォーラの表情を伺った。
「フォーラは僕の話を聞いて、それでも僕の傍にいたいと思うか……?いや、そんな筈ないだろう」
その質問に返す言葉など、フォーラの中ではとっくのとうに決まりきったことだ。
「ピープズから救ってくれた時に伝えたとおり、私は貴方の傍にいたいわ。それに私は貴方の主義を否定しない。一度、貴方と純血主義の考えを分かち合えないと思って告白を断ったけれど、今はそうじゃないもの。まさかドラコが『例のあの人』の下に付くことまで考えているとは、思いもしなかったけれど……。
そのことを聞いても私は、貴方の考えを全部ひっくるめて受け止めたいと思っているわ。そうでなかったらどうして私は、雑誌で貴方のお父様が死喰い人かもしれないと知ってもなお、貴方を振り向かせようと頑張れたというの?」
「フォーラ」ドラコは尚も不安な表情でそれ以上言うなと言わんばかりにフォーラの名前を呼んだが、彼女はそれを無視して言葉を続けた。
「私は、ドラコがやりたいことをして、その結果幸せになってくれればそれでいいのよ。そのために私が必要だと貴方が望んでくれるなら……私をどうかドラコの傍にいさせてもらえない?」
(そして私は貴方の幸せのために、平気で嘘をついてでも貴方に取り入るわ)
ドラコはフォーラの言葉に涙を堪えるような表情になって俯き、隣に座るフォーラの手を静かに握った。ドラコの手から彼の身体が微かに震えているのが伝わってきた。フォーラがその手を握り返すと、彼はゆっくりと彼女の方に顔を上げた。その表情は困惑しているように見え、目元が僅かに光っていた。
「本当は、僕の事情に少しもフォーラを巻き込んだり悩ませたりしたくなかった。四年生の終わりに君に告白したのだって、気の迷いだった。結局父上の言葉に逆らって、君に本当の気持ちを伝えないままは嫌だと思ってしまうなんて、矛盾していたんだ。君が争いとは無縁の場所にいるには、僕と関わり合いにならないことが一番で、君への好意は僕の中にだけ仕舞っておけばよかったのに」
「ドラコ」
フォーラは、ドラコが今になってフォーラを手に入れることを恐れているのを察した。それだから、彼女は彼の言葉を制するようにして名前を呼んだ。
「それ以上自分を責めないで。貴方は少し勘違いしているところがあるから言うけれど、私自身は、貴方と無縁のところで過ごすことが幸せだとは思わないわ。私の幸せは、ドラコと一緒に並んで歩くことなのよ。
だからもし今後、貴方の中で悩みや葛藤があったとしたら……その時は遠慮なく相談してほしいわ。例えどんなに重く苦しいことでも、一緒に乗り越えていきましょう。私だって貴方と同じ、純血なんだから。」