20. The beginning of the end
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今思えばあの時のマリアは、彼女がフォーラに贈ったお手製のドレスに何らかの魔法が宿っていることを理解しているかのようだった。そしてマリア自身の意思で魔法をかけているわけではないような口ぶりでもあった。
仮にマリアが本当に無意識の内にドレスに魔法をかけていたとして、それはきっと『本心からフォーラを褒めたくなる』ような魔法だろうとドラコは思った。現にあのパーティーの日、ドラコはフォーラと言葉を交わす度、自分が彼女を本心から素敵だと思っていることを何度も伝えそうになっては抑え込んでいたのだから。
ドラコは記憶から意識を戻すと、フォーラの方を見た。
「それにしても、君はその」ドラコは少々目を泳がせ、ほんのりと頬を色づかせた。「贈り主を知らないのに、あの花で僕を振り向かせようとか、そんなことを考えていたんだな……」
「ええ、だって、ドラコに避けられたままなんて嫌だったから。貴方に私を見てもらえるのなら、何だってしたわ。」
ドラコはこの約一年弱の間、フォーラに見つめられることが例年よりも随分減っていたせいで、目の前の彼女の眼差しと積極的な言動に狼狽えた。しかし無理矢理気を取り直して言葉を続けた。
「も……もしその魔法が本当だったとしたら、君がクリスマス明けから今まで以上に人気が出た理由に説明がつく。あの他人に関心の少ないセオドール・ノットでさえ、君に気があるように見えたんだから」
「そうね。私も、この花の効果が確かだという自覚はあったわ。みんな、目に見えて私を意識してくれているように見えたから……。
だけどドラコは違ったわ。普段と変わらないように見えた気がする。ドラコの目には、私はどう映っていたの……?」
「それは」
ドラコは手に持っていた花飾りをフォーラの耳の上辺りの髪に挿し、改めて彼女をまじまじと見つめた。フォーラもドラコを見つめ返した。
「やっぱり何時もの君だ。変わらない。何時も通り魅力的で、……愛しいと、思う」
「い、いつものわたしで、いとしい?」
フォーラはぽかんとした表情でドラコの言葉を思わず反芻した。そしてその言葉に、フォーラもドラコもじわじわと羞恥心が湧き上がってくるのを感じた。ドラコがフォーラにこんなにもストレートな甘い言葉をかけたことについて、お互いほぼ初めてと言っても良い程記憶になかったからだ。
フォーラはこの花について二つの可能性が浮かんだ。もしかしてドラコは、この花の魔法がもたらす効果を凌駕するくらい自分を好いてくれていたから、自分が何時も通りに見えたのだろうか。いや、もしくは魔法をかけた張本人であるドラコにはそもそも効果がなくて、周囲の人にだけ影響したのだろうか?
二人とも、まさかドラコが花飾りに無意識にかけた魔法の仕組みとして、誰が見てもドラコの瞳を通して見た時のフォーラが度々映っていたとは知る由もなかった。ドラコ以外の誰もが、花飾りを着けたフォーラに何時も以上に惹きつけられたのはそういう理由だった。
そういうわけでマリア然りドラコ然り、誰においても何かを想う気持ちが強い程、ふとした拍子に特別な力を無意識の内に使うというのは十分にあり得ることだった。
ドラコは先程自分が思いがけずフォーラを愛でる発言をしたことを恥じながらも、気を取り直して話を続けた。
「まあ、この花の魔法の理屈が分からないのは一旦置いておくとして……。
正直、まさかフォーラも僕にクリスマスプレゼントを贈ってくれるとは思っていなかった。クリスマスの朝、君からの贈り物が手元にあると知った時は本当に驚いたんだ。随分遅くなったがどうかお礼を言わせてほしい……あの時僕は相当君に冷たく当たっていたのに、本当にありがとう」
「そんな、私、大したものは贈っていないわ。」
フォーラはドラコの慈悲深い表情を正面から受けて、思わず気恥ずかしさから視線を逸らしそうになるのを堪えた。ドラコが続けた。
「嬉しさと罪悪感でどうにかなりそうだった。君を僕から遠ざける為に色々酷いことをした筈なのに、プレゼントをもらえたことで、君を突き放しきれていなかったことを喜ぶなんて」ドラコが自嘲気味に、後悔の色を強く残した笑いをフォーラに向けた。
「ドラコには、そうせざるを得なかった事情があったんでしょう?」
「……だけど、もしかしたら他にもっとやりようがあったのかもしれない。中途半端に君を傷つけて、結局こうしてフォーラに事情を打ち明けることになるのなら、最初から全部打ち明けていればよかったのかもしれない……」
仮にマリアが本当に無意識の内にドレスに魔法をかけていたとして、それはきっと『本心からフォーラを褒めたくなる』ような魔法だろうとドラコは思った。現にあのパーティーの日、ドラコはフォーラと言葉を交わす度、自分が彼女を本心から素敵だと思っていることを何度も伝えそうになっては抑え込んでいたのだから。
ドラコは記憶から意識を戻すと、フォーラの方を見た。
「それにしても、君はその」ドラコは少々目を泳がせ、ほんのりと頬を色づかせた。「贈り主を知らないのに、あの花で僕を振り向かせようとか、そんなことを考えていたんだな……」
「ええ、だって、ドラコに避けられたままなんて嫌だったから。貴方に私を見てもらえるのなら、何だってしたわ。」
ドラコはこの約一年弱の間、フォーラに見つめられることが例年よりも随分減っていたせいで、目の前の彼女の眼差しと積極的な言動に狼狽えた。しかし無理矢理気を取り直して言葉を続けた。
「も……もしその魔法が本当だったとしたら、君がクリスマス明けから今まで以上に人気が出た理由に説明がつく。あの他人に関心の少ないセオドール・ノットでさえ、君に気があるように見えたんだから」
「そうね。私も、この花の効果が確かだという自覚はあったわ。みんな、目に見えて私を意識してくれているように見えたから……。
だけどドラコは違ったわ。普段と変わらないように見えた気がする。ドラコの目には、私はどう映っていたの……?」
「それは」
ドラコは手に持っていた花飾りをフォーラの耳の上辺りの髪に挿し、改めて彼女をまじまじと見つめた。フォーラもドラコを見つめ返した。
「やっぱり何時もの君だ。変わらない。何時も通り魅力的で、……愛しいと、思う」
「い、いつものわたしで、いとしい?」
フォーラはぽかんとした表情でドラコの言葉を思わず反芻した。そしてその言葉に、フォーラもドラコもじわじわと羞恥心が湧き上がってくるのを感じた。ドラコがフォーラにこんなにもストレートな甘い言葉をかけたことについて、お互いほぼ初めてと言っても良い程記憶になかったからだ。
フォーラはこの花について二つの可能性が浮かんだ。もしかしてドラコは、この花の魔法がもたらす効果を凌駕するくらい自分を好いてくれていたから、自分が何時も通りに見えたのだろうか。いや、もしくは魔法をかけた張本人であるドラコにはそもそも効果がなくて、周囲の人にだけ影響したのだろうか?
二人とも、まさかドラコが花飾りに無意識にかけた魔法の仕組みとして、誰が見てもドラコの瞳を通して見た時のフォーラが度々映っていたとは知る由もなかった。ドラコ以外の誰もが、花飾りを着けたフォーラに何時も以上に惹きつけられたのはそういう理由だった。
そういうわけでマリア然りドラコ然り、誰においても何かを想う気持ちが強い程、ふとした拍子に特別な力を無意識の内に使うというのは十分にあり得ることだった。
ドラコは先程自分が思いがけずフォーラを愛でる発言をしたことを恥じながらも、気を取り直して話を続けた。
「まあ、この花の魔法の理屈が分からないのは一旦置いておくとして……。
正直、まさかフォーラも僕にクリスマスプレゼントを贈ってくれるとは思っていなかった。クリスマスの朝、君からの贈り物が手元にあると知った時は本当に驚いたんだ。随分遅くなったがどうかお礼を言わせてほしい……あの時僕は相当君に冷たく当たっていたのに、本当にありがとう」
「そんな、私、大したものは贈っていないわ。」
フォーラはドラコの慈悲深い表情を正面から受けて、思わず気恥ずかしさから視線を逸らしそうになるのを堪えた。ドラコが続けた。
「嬉しさと罪悪感でどうにかなりそうだった。君を僕から遠ざける為に色々酷いことをした筈なのに、プレゼントをもらえたことで、君を突き放しきれていなかったことを喜ぶなんて」ドラコが自嘲気味に、後悔の色を強く残した笑いをフォーラに向けた。
「ドラコには、そうせざるを得なかった事情があったんでしょう?」
「……だけど、もしかしたら他にもっとやりようがあったのかもしれない。中途半端に君を傷つけて、結局こうしてフォーラに事情を打ち明けることになるのなら、最初から全部打ち明けていればよかったのかもしれない……」