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プロローグ

プロローグ:
 私は、怯えていたのか。
 もしかしたら、『愛される』という行為によって自分が駄目になってしまうかもしれないことを危惧していたのかもしれない。
 私はもう駄目駄目やったのに、何を恐れることがあるねんやろ?
 つまらない、可愛げがない、中身がない。そう言って十年連れ添った元旦那はどっかの女のもんになった。そんなバツイチ四十代女。子はいない。まあ、救いはない。

 私が、離婚後知り合った、甲斐甲斐しく私の世話をしてくる十五も年下の男に髪を梳かれ、『愛』を囁かれた時、第一に感じたのは何故か恐怖やった。

 嗚呼。嗚呼。嗚呼。

 どうせあんたも元旦那のように、他の女にも『愛』を囁いてんやろ?
 どうせ私なんか暇つぶしのお遊びやんな?

「好きです、先生」

 やめて。
 可愛いと思ってるあんたの雄じみたそんな顔なんか、見たくない。
 やめて。
 私の心の奥深くに仕舞い込んだ雌が息を吹き返して芽吹いてしまうから。

「もう失いたくない」

「俺はあんたから離れない」

 だから、お願い。
 ホンマの名前で呼ばんといて。

「……愛香さん」

 嫌や。
 艶めいた声で、吐息交じりの声で、優しく荒々しい声で、私を呼ばないで。


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