第1章 旅立ち
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陽菜「………さ、寒い。………うぅ………さむさむさむさむ………っ」
一樹兄と口論して家を飛び出したはいいものの、街路樹 に出てきて一番最初に私は後悔した。
もう12月真っ只中なのに、なぜ、上着だけで来てしまったのだろう。喧嘩して、咄嗟につかんだのがこれだけだったとしても、もうちょっと良いものがあった筈なのに。
ぶるりと震える私に、リッキーが心配そうに鳴くので、私は苦笑しながら頭を撫でてやる。
陽菜「………さて、この後どうしようか………」
喧嘩した手前、家に帰りたくないし、かといって友達の家に上がり込もうにもそれほど仲の良い子もいない。
公園に行くか、近くの森に行くかのどちらかしかないのだが、ここ最近ずっとそればかりな気がする。
行く宛もないまま飛び出してきたのが祟ったのか、容赦なく吹き荒れる風に身をすぼめながら、かじかむ手に吐息をかける。
そんな時、リッキーが急に立ち止まった。
陽菜「?、どうかしたの、リッキー」
リッキー「……………」
私が問いかけても、彼は何も話さないで、ある一点だけを見つめていた。
これでも幼い頃、リッキーに色々と教わったから、犬語だとか動物の言葉なんてもんは赤ちゃんのうちに英語を覚えさせられたとの同じぐらいに分かる。
というか、そんな頃から英語とかを覚えさせたら、日本語が話せなくなるから、平等に覚えさせているって話だけど、本当かどうかはわからない。
陽菜(………意志疎通が完全にできるってことでもないんだよなぁ。
人と同じで言っている言葉はわかるけど、ある程度のことがわかるっていうだけだし、彼らが考えているところまではわかんないんだよね~)
リッキー『………お嬢』
不思議に思った私が、リッキーが見つめている方向を見ていると、突然、彼が話しかけてきた。
陽菜「んー?どうしたの、リッキー」
リッキー『………ちょっと今日は、違うところへ行ってもいいか?』
陽菜「え?別にいいけど。………なんかあった?」
彼の様子がおかしい。
物心着いたときからずっと兄弟同然に育ってきた彼は、どこへ行くにも何をするにも私の後をついてきてくれる。兄のような心配心もあるのか、呆れながら私と共に居てくれ、ほとんど彼が自分の意思で行動する、ということがなかった。
家を出てからも何か張り詰めたような雰囲気を出していたから、何かあったことは確かなのだが、それが何なのかはわからない。
陽菜(いつもなら、そんな事を言わないんだけど………)
まあでも、毎回毎回公園だとか森だとかしか行っていないから、段々飽きてきたんだろうな。
私ですら毎度行っているところに足が向かない。新天地へ行くにしても、勇気がなくて結局いつも通りになってしまう。
たまには、彼が望むところへ行ってみてもいいかも知れない。
そんな事を考えていた私は、リッキーに「今日は何処へ行くの?」と話しかけた。
リッキー『………それは、行ってみてからの楽しみってヤツだよ』
陽菜「えー?それって教えてくんないってことじゃん」
ぶぅと頬を膨らます私に、リッキーは軽く笑って『わりぃな、お嬢』と言ってきたので「まあ、いいよ」と返す。
陽菜「ちょこっとばかり、知らないところへ行ってみたかったトコだしね。今日はリッキーに任せるよ」
リッキー『………そうか』
「ただ、面白くないところへ連れてったら、容赦しないんだからね?」というと『大丈夫。そんなとこじゃねえから』と言ってきた。
リッキー『………てゆーか、もし面白くもねぇとこだったらどうするんだ?』
陽菜「リッキーだけ、ご飯無し」
リッキー『うわ………それだけは勘弁だ。』
彼の背に乗ってから幾分か経った頃、気を張っていたせいか眠気に襲われ、思わず船をこいでいると歩みを止めたリッキーが声をかける。
リッキー『………着いたぜ、お嬢』
陽菜「………ん、?」
今の時刻は3時半ぐらいで、まだ4時を回っていない。
目を擦りながら眠気眼のまま、着いたその場所を見て、私は目を見張った。
陽菜「……………。………ここって………」
そんな時間帯にリッキーが私を連れ出したのは、とある空き地だった。とは言っても、ただの空き地じゃない。
全体的に焼けただれた家、至るところに穴が空いていて、手の施しようもなく、そのまま放ったらかしにされていた。廃墟にはびこる蔦も雑草も、何年も人の手が届いていなかったからか、無造作に生い茂っていた。
黙る私をよそに、彼はずんずんと中へと進む。
ここに何があるのだろう。
ふとそんな事を考えていると、あの時の忌々しい記憶が蘇ってしまった。
陽菜「父さんッ、母さん!!」
火事が起こる前までは、まだ………至って普通に暮らしていた。
天気の良い日には花見やキャンプしたり、雨や雪の日には全員でゲームなんかしたりして………当たり前の一日常が、そこにあったはずなのに。
リッキーもラッドも近所に住んでた一樹兄も、父さんも母さんもみんな………ごく当たり前の暮らしをしていたはずなのに、一夜にしてそれが奪われた。
そこから、私たちの日常が、人生が大きく変わってしまった。
──────── チリン ────────
ふと、鈴のような音が聞こえてくる。澄んでいて、それでいてなんだか哀しそうな音色が、何かを呼んでいるかのように小さく鳴っていた。
リッキーもそれに気付いたようで、ゆっくりと私の足を気遣って歩いていたのが、段々早歩きになっていつの間にか走っていく。
陽菜「………ッ、リッキー!?」
リッキー『………お嬢、目を瞑れッ!!
絶対に離すんじゃねぇぞ………!』
陽菜「え、あ………!?ちょ………」
──────── チリン、チリン ────────
鈴の音に合わせて、段々速く走っていくリッキーに、私は言われたように目をかたくなに瞑りながら彼にしがみつく。
リッキー『………っ、間に合えッ』
陽菜「────っ!?きゃあああっ!!」
するとまばゆい緑色の光が私達を包み込んだのが分かった。
まるで、何処かへ連れて行こうとするかのような、そんな光が私とリッキーを捕らえた。
─────その光が消えた途端、さっきまでいたはずの犬と少女は、もう何処にも無かった。
一樹兄と口論して家を飛び出したはいいものの、
もう12月真っ只中なのに、なぜ、上着だけで来てしまったのだろう。喧嘩して、咄嗟につかんだのがこれだけだったとしても、もうちょっと良いものがあった筈なのに。
ぶるりと震える私に、リッキーが心配そうに鳴くので、私は苦笑しながら頭を撫でてやる。
陽菜「………さて、この後どうしようか………」
喧嘩した手前、家に帰りたくないし、かといって友達の家に上がり込もうにもそれほど仲の良い子もいない。
公園に行くか、近くの森に行くかのどちらかしかないのだが、ここ最近ずっとそればかりな気がする。
行く宛もないまま飛び出してきたのが祟ったのか、容赦なく吹き荒れる風に身をすぼめながら、かじかむ手に吐息をかける。
そんな時、リッキーが急に立ち止まった。
陽菜「?、どうかしたの、リッキー」
リッキー「……………」
私が問いかけても、彼は何も話さないで、ある一点だけを見つめていた。
これでも幼い頃、リッキーに色々と教わったから、犬語だとか動物の言葉なんてもんは赤ちゃんのうちに英語を覚えさせられたとの同じぐらいに分かる。
というか、そんな頃から英語とかを覚えさせたら、日本語が話せなくなるから、平等に覚えさせているって話だけど、本当かどうかはわからない。
陽菜(………意志疎通が完全にできるってことでもないんだよなぁ。
人と同じで言っている言葉はわかるけど、ある程度のことがわかるっていうだけだし、彼らが考えているところまではわかんないんだよね~)
リッキー『………お嬢』
不思議に思った私が、リッキーが見つめている方向を見ていると、突然、彼が話しかけてきた。
陽菜「んー?どうしたの、リッキー」
リッキー『………ちょっと今日は、違うところへ行ってもいいか?』
陽菜「え?別にいいけど。………なんかあった?」
彼の様子がおかしい。
物心着いたときからずっと兄弟同然に育ってきた彼は、どこへ行くにも何をするにも私の後をついてきてくれる。兄のような心配心もあるのか、呆れながら私と共に居てくれ、ほとんど彼が自分の意思で行動する、ということがなかった。
家を出てからも何か張り詰めたような雰囲気を出していたから、何かあったことは確かなのだが、それが何なのかはわからない。
陽菜(いつもなら、そんな事を言わないんだけど………)
まあでも、毎回毎回公園だとか森だとかしか行っていないから、段々飽きてきたんだろうな。
私ですら毎度行っているところに足が向かない。新天地へ行くにしても、勇気がなくて結局いつも通りになってしまう。
たまには、彼が望むところへ行ってみてもいいかも知れない。
そんな事を考えていた私は、リッキーに「今日は何処へ行くの?」と話しかけた。
リッキー『………それは、行ってみてからの楽しみってヤツだよ』
陽菜「えー?それって教えてくんないってことじゃん」
ぶぅと頬を膨らます私に、リッキーは軽く笑って『わりぃな、お嬢』と言ってきたので「まあ、いいよ」と返す。
陽菜「ちょこっとばかり、知らないところへ行ってみたかったトコだしね。今日はリッキーに任せるよ」
リッキー『………そうか』
「ただ、面白くないところへ連れてったら、容赦しないんだからね?」というと『大丈夫。そんなとこじゃねえから』と言ってきた。
リッキー『………てゆーか、もし面白くもねぇとこだったらどうするんだ?』
陽菜「リッキーだけ、ご飯無し」
リッキー『うわ………それだけは勘弁だ。』
彼の背に乗ってから幾分か経った頃、気を張っていたせいか眠気に襲われ、思わず船をこいでいると歩みを止めたリッキーが声をかける。
リッキー『………着いたぜ、お嬢』
陽菜「………ん、?」
今の時刻は3時半ぐらいで、まだ4時を回っていない。
目を擦りながら眠気眼のまま、着いたその場所を見て、私は目を見張った。
陽菜「……………。………ここって………」
そんな時間帯にリッキーが私を連れ出したのは、とある空き地だった。とは言っても、ただの空き地じゃない。
全体的に焼けただれた家、至るところに穴が空いていて、手の施しようもなく、そのまま放ったらかしにされていた。廃墟にはびこる蔦も雑草も、何年も人の手が届いていなかったからか、無造作に生い茂っていた。
黙る私をよそに、彼はずんずんと中へと進む。
ここに何があるのだろう。
ふとそんな事を考えていると、あの時の忌々しい記憶が蘇ってしまった。
陽菜「父さんッ、母さん!!」
火事が起こる前までは、まだ………至って普通に暮らしていた。
天気の良い日には花見やキャンプしたり、雨や雪の日には全員でゲームなんかしたりして………当たり前の一日常が、そこにあったはずなのに。
リッキーもラッドも近所に住んでた一樹兄も、父さんも母さんもみんな………ごく当たり前の暮らしをしていたはずなのに、一夜にしてそれが奪われた。
そこから、私たちの日常が、人生が大きく変わってしまった。
──────── チリン ────────
ふと、鈴のような音が聞こえてくる。澄んでいて、それでいてなんだか哀しそうな音色が、何かを呼んでいるかのように小さく鳴っていた。
リッキーもそれに気付いたようで、ゆっくりと私の足を気遣って歩いていたのが、段々早歩きになっていつの間にか走っていく。
陽菜「………ッ、リッキー!?」
リッキー『………お嬢、目を瞑れッ!!
絶対に離すんじゃねぇぞ………!』
陽菜「え、あ………!?ちょ………」
──────── チリン、チリン ────────
鈴の音に合わせて、段々速く走っていくリッキーに、私は言われたように目をかたくなに瞑りながら彼にしがみつく。
リッキー『………っ、間に合えッ』
陽菜「────っ!?きゃあああっ!!」
するとまばゆい緑色の光が私達を包み込んだのが分かった。
まるで、何処かへ連れて行こうとするかのような、そんな光が私とリッキーを捕らえた。
─────その光が消えた途端、さっきまでいたはずの犬と少女は、もう何処にも無かった。