序章
ここは、誰も知らない。誰もが、知るはずのない島
古の神ノ島
それは特別な力によって栄え、大いなる獣と共に歩む不思議な島は半閉鎖的なところだったのもあり、神秘や財宝などを求めて冒険者やハンター達ばかりがこぞって訪ねたが誰一人として辿り着くことが出来なかった。
そんな島に、ある一人の男が地を踏みしめる。
男「……………ここが、古の神ノ島か」
男はニヤリとおくそ微笑む。
彼もまた、謎多きこの島に眠る秘宝を求め、欲望に満ちた目で数キロ先に見える神殿を睨み付ける。
男「20年だ。
この島に眠る、かの秘宝を………この島を守り続けてきた奴を手に入れる為だけに、島の在処を探り当ててから、およそ20年……………ふ、ふふふ………くははははッ」
男から溢れ出る気で、ざわざわと鳥肌が立つがごとく、辺りにある木々がざわめいていた。
男「………さあ、どこにいるんだ。この俺様が貴様を手に入れてやる………。逃がしはしない、女王・セレシア」
村娘「………い、急いで知らせなきゃ」
鬼気迫るかのような狂気に満ちた笑みで、島にたたずむ神殿へ通じる森に向かっていく。
丁度野草を摘みに出ていたのだろうか、その様子を村の娘が息を殺すように茂みの中で動けずにいた。
青ざめながら事の重大さに気づいた娘は、急いで神殿の裏道に位置する森へと駆け出す。
村の中央に位置する神殿の最奥では、流れ出る湖で祈りを捧げている女王とその臣下達がいた。祈りも終盤に差し掛かっていたところで、先程の娘が息を切らし転げ落ちるように彼女らの元へと駆け寄る。
臣下「無礼者ッ、ここをどこだと………!」
村娘「放してくださいっ!!大変なんです、この島に、よそ者がっ!!」
臣下「よ、よそ者だと………?」
不審を抱いた彼らは娘の話を聞いてざわめき出す。
にわかに信じられないその話を静かに聞いている上品な佇まいをした女性は、ゆっくりと何かを考えるように瞼を閉じた。
村娘「よそ者の狙いはセレシア様です。さっき、こちらへ向かって森に入るのを見たんです!」
臣下「!?、なんだと!?」
「そんな、まさか………セレシア様を狙うだなんて。そもそもどうやってこの土地に踏み入れたのだ」
彼らの話を静かに聞いていたセレシアは、一つ息をついている間にも、大慌てでここから彼女を逃がそうとする彼らに呼び掛ける。
セレシア「……………私に、考えがあります。この場で脱麟 の儀を致しましょう」
村娘「だ、脱麟の儀………?」
臣下「そ………っ、それではセレシア様が………!
確かに今の時期が好ましいではありますが………」
セレシア「ええ。脱麟の儀をすれば、私は2つに別れた存在となり、再びこの地に戻る準備をします。それらに鍵の封印を素早く施し、時実の洞 へ、私とは色の違う子をいれるのです」
村娘「そ、それって………セレシア様ではなくなる、ということですか?」
不安げに見つめる娘に、優しく微笑むセレシアは白くも美しい長い大蛇の姿へと変える。
大蛇「遅かれ早かれ、いずれはこうなっていたのです。今は時間が惜しい………娘よ、伝令役を頼めますか?」
村娘「で、伝令役を………承ります、セレシア様」
大蛇「村の皆に伝えなさい。“この地での安寧は今、崩れることでしょう。それでも皆の力を合わせ、新たな安寧を築き、生き延びるのです。”
………それが、この地の最後の女王としての言葉です」
村娘「……………っ!!」
大粒の涙をこぼしながら、彼女の言葉を聞いた娘は、深々と頭を下げ、村へと駆け出していく。
そして彼女がまとう光も徐々に増していくのを見た臣下達は、数人を彼女の側に残し、他は儀式の邪魔をされまいと、よそ者へと走り去る。
臣下「………本当に、いかれるのですね」
大蛇「………長い間、世話になりましたね。あとの事は頼みましたよ」
まるでダイアモンドダストの如く、光の柱が立ち上がると同時に大蛇の姿も消えていく。
(ああ………長かった………)
島と、人間と共に過ごしてきた日々の記憶が走馬灯のように流れ込んでくる。
懐かしい記憶も、すべて光となっていく。自身が望んだことであるのにも関わらず、喪っていく己に僅かながら恐怖した。
女王としての役目。
始祖の隷属 としての役目。
人間と関わりながら、人魔戦争という悲しい争いから守るように見つからぬように閉ざした結界も力及ばず崩れ去ってしまった。
────この島を守るために、後に危機に瀕するであろうこの世界を救うために。“アレ”だけは守り抜かねばならない。
セレシア(……………もし、私が消えてしまっても、きっと……………きっと、だいじょうぶ)
大蛇が完全に消え去り、その場に残された二つの存在。それらは彼女の遺言通り執り行われた後、男が神殿に足を踏み入れる。狂乱する男に成す術もなく倒れていく臣下達。二つに別れた存在のうち、ひとつは辺境の地へと逃れ、もうひとつは語られることなく………姿を消した。
それは特別な力によって栄え、大いなる獣と共に歩む不思議な島は半閉鎖的なところだったのもあり、神秘や財宝などを求めて冒険者やハンター達ばかりがこぞって訪ねたが誰一人として辿り着くことが出来なかった。
そんな島に、ある一人の男が地を踏みしめる。
男「……………ここが、古の神ノ島か」
男はニヤリとおくそ微笑む。
彼もまた、謎多きこの島に眠る秘宝を求め、欲望に満ちた目で数キロ先に見える神殿を睨み付ける。
男「20年だ。
この島に眠る、かの秘宝を………この島を守り続けてきた奴を手に入れる為だけに、島の在処を探り当ててから、およそ20年……………ふ、ふふふ………くははははッ」
男から溢れ出る気で、ざわざわと鳥肌が立つがごとく、辺りにある木々がざわめいていた。
男「………さあ、どこにいるんだ。この俺様が貴様を手に入れてやる………。逃がしはしない、女王・セレシア」
村娘「………い、急いで知らせなきゃ」
鬼気迫るかのような狂気に満ちた笑みで、島にたたずむ神殿へ通じる森に向かっていく。
丁度野草を摘みに出ていたのだろうか、その様子を村の娘が息を殺すように茂みの中で動けずにいた。
青ざめながら事の重大さに気づいた娘は、急いで神殿の裏道に位置する森へと駆け出す。
村の中央に位置する神殿の最奥では、流れ出る湖で祈りを捧げている女王とその臣下達がいた。祈りも終盤に差し掛かっていたところで、先程の娘が息を切らし転げ落ちるように彼女らの元へと駆け寄る。
臣下「無礼者ッ、ここをどこだと………!」
村娘「放してくださいっ!!大変なんです、この島に、よそ者がっ!!」
臣下「よ、よそ者だと………?」
不審を抱いた彼らは娘の話を聞いてざわめき出す。
にわかに信じられないその話を静かに聞いている上品な佇まいをした女性は、ゆっくりと何かを考えるように瞼を閉じた。
村娘「よそ者の狙いはセレシア様です。さっき、こちらへ向かって森に入るのを見たんです!」
臣下「!?、なんだと!?」
「そんな、まさか………セレシア様を狙うだなんて。そもそもどうやってこの土地に踏み入れたのだ」
彼らの話を静かに聞いていたセレシアは、一つ息をついている間にも、大慌てでここから彼女を逃がそうとする彼らに呼び掛ける。
セレシア「……………私に、考えがあります。この場で
村娘「だ、脱麟の儀………?」
臣下「そ………っ、それではセレシア様が………!
確かに今の時期が好ましいではありますが………」
セレシア「ええ。脱麟の儀をすれば、私は2つに別れた存在となり、再びこの地に戻る準備をします。それらに鍵の封印を素早く施し、
村娘「そ、それって………セレシア様ではなくなる、ということですか?」
不安げに見つめる娘に、優しく微笑むセレシアは白くも美しい長い大蛇の姿へと変える。
大蛇「遅かれ早かれ、いずれはこうなっていたのです。今は時間が惜しい………娘よ、伝令役を頼めますか?」
村娘「で、伝令役を………承ります、セレシア様」
大蛇「村の皆に伝えなさい。“この地での安寧は今、崩れることでしょう。それでも皆の力を合わせ、新たな安寧を築き、生き延びるのです。”
………それが、この地の最後の女王としての言葉です」
村娘「……………っ!!」
大粒の涙をこぼしながら、彼女の言葉を聞いた娘は、深々と頭を下げ、村へと駆け出していく。
そして彼女がまとう光も徐々に増していくのを見た臣下達は、数人を彼女の側に残し、他は儀式の邪魔をされまいと、よそ者へと走り去る。
臣下「………本当に、いかれるのですね」
大蛇「………長い間、世話になりましたね。あとの事は頼みましたよ」
まるでダイアモンドダストの如く、光の柱が立ち上がると同時に大蛇の姿も消えていく。
(ああ………長かった………)
島と、人間と共に過ごしてきた日々の記憶が走馬灯のように流れ込んでくる。
懐かしい記憶も、すべて光となっていく。自身が望んだことであるのにも関わらず、喪っていく己に僅かながら恐怖した。
女王としての役目。
人間と関わりながら、人魔戦争という悲しい争いから守るように見つからぬように閉ざした結界も力及ばず崩れ去ってしまった。
────この島を守るために、後に危機に瀕するであろうこの世界を救うために。“アレ”だけは守り抜かねばならない。
セレシア(……………もし、私が消えてしまっても、きっと……………きっと、だいじょうぶ)
大蛇が完全に消え去り、その場に残された二つの存在。それらは彼女の遺言通り執り行われた後、男が神殿に足を踏み入れる。狂乱する男に成す術もなく倒れていく臣下達。二つに別れた存在のうち、ひとつは辺境の地へと逃れ、もうひとつは語られることなく………姿を消した。