第3章 ハルルの樹
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ガルシア「俺は………」
彼が口を開いたのとほぼ同時に、爆発音と共に建物が大きく揺れた。
地震だろうか、と一瞬だけ不安になったがしばらくして揺れも収まる。
陽菜「カナ、今のは………?」
ガルシア「………っ、ヒナはここにいて。」
カナが部屋から飛び出していく。私もすぐさま後を追いかけるも、案の定………足の筋力がごっそりと落ちているせいで上手く走れず、壁づたいにゆっくりと歩いていく。
陽菜(………嫌だ………)
胸の奥底からざわざわと気持ちが悪い。また、誰かがいなくなる。あの時のように、私の目の前から誰もがいなくなる。一人になりたくない、寂しいのは嫌だ。
いずれの別れがあるのは重々承知だ。
けれど………それでも─────。
陽菜「いや、だ……………置いて、いかないで……………」
───── 館・玄関内 ─────
ユーリ「……………ふぅ。やけにすげぇのもってんのな、リッキー」
リッキー『お嬢ッ!お嬢はどこだ!!』
ラピード「!、グルル………」
ガルシア「……………お前ら。まさか、ここまで追いかけてくるとは、思いも寄らなかったよ」
両端にある階段の頂上にいるガルシアは、彼らを冷ややかに見下ろしながら、攻撃を仕掛けていく。
3対1と、明らかにユーリ達が優位にあるものの、ガルシアの攻撃力も防御力も圧倒的に彼らより上回っていた。
ユーリ「………ヒナはどこにいる?」
ガルシア「なぜ人間ごときに教えなければならない?あの子が赦しても、俺はお前ら人間に受けた屈辱を忘れはしない………!」
「そーかい」と睨み付けるユーリも、鍔迫 り合いになりながら何度も何度も彼と打ち合う。
ギン、ギン、ギンと鈍い音が建物内に響く。その音を頼りにようやっと辿り着いた私は、戦闘に入ってしまった両者に声を張り上げる。
陽菜「カナ!!ユーリ!!お願いだから、もうやめて!!」
ユーリ「!、ヒナ………!」
ガルシア「ヒナ、なんで来た。部屋にいてろって言っただろ!」
陽菜「嫌だ!!一人にしないでよ、バカ!」
ゆっくりと階段を降りて二人の元へ行こうとすると、リッキーが駆け上ってきてくれた。
本当に久しぶりに歩いたものだから、息が上がってたしこれ以上にないくらい長い距離を歩いたように思う。
部屋から玄関先までいくのに、そうもかからない距離のはずなのに。
いつものように彼に跨がれば、彼らの元へ連れていってくれる。
陽菜「ユーリ、リッキーもラピードも………来てくれたんだ。」
ユーリ「おー、どっかの姫が無抵抗で連れ去られたもんでな」
棘を含まれたその言葉の裏に、心配してくれたことがわかって、思わず笑みを浮かべてしまう。
だが、そんな私達を引き裂くように、カナが間に入って牽制をして来た。
ガルシア「それ以上、この子に近づくな」
ユーリ「………おい、あんた………」
陽菜「……………。カナ、言ってたよね?カナが渡してくれた地図の場所に行けば、私の知りたがっていることがわかるって」
ガルシア「っ、それは………」
相変わらず睨み付けている彼に、ユーリが呆れながらため息づく。私を守ろうとしてくれたのはすごく嬉しい。
私の話を真剣に聞いて、その事に怒ってくれた。
でも、私は……………私の意思を聞いてほしい。
陽菜「カナ。私、この人達と共に旅に出るわ。私の知りたいことを探しに。」
ユーリ「?」
ガルシア「……………駄目だ」
陽菜「だってカナは、私と一緒にいけない理由があるんでしょう?
これは、私が初めて言う我が儘だから、カナが責任を持って決めなくていいんだよ。」
ハッと息を呑む彼に、私はふわりと微笑む。彼には彼なりの理由があるのと同じで、私には私なりの理由がある。自分の意思を曲げ続ければ、いつか私も彼も壊れてしまう気がする。
陽菜「大丈夫だよ、カナ。
ちゃんと戻ってくるって約束するから。カナが心配するようなことは起こさないって誓うから。」
ユーリ「ヒナ………」
陽菜「………だから、行ってきます。ガルシアお兄ちゃん」
精一杯の笑顔を、心からのハグを彼に贈る。私の片割れで、私を一番に考えてくれるたった一人の理解者。
今まで会いに来れなかったのも、離ればなれになってしまった理由も、知りたいことはたくさんあるけれど彼の口からは聞かない。
話せば話すほど、聞けば聞くほど、彼に悲しくて辛い思いをさせたくないから。
ガルシア「おまえには敵わないな。
………ヒナ、もし、ある男に出会ったらすぐさま逃げろ。」
陽菜「?、ある男………?」
ガルシア「………銀色の髪に眼帯をつけた隻眼の男だ。名前は“ゼノ”。
俺達の力を………特にヒナ、お前を狙っている。」
陽菜・ユーリ「!?」
ぎゅっと私を抱き締める力がこもる。
彼が過剰なまでに私を守ろうとしたのは、幼い頃からずっと狙われ続けていたから。
人間を恨んでいるのも、殺されかけていた日々が続いたせいで、人間不信になってしまったのだと思う。
陽菜「……………わかった。気を付ける」
ガルシア「………本当に、ちゃんと帰ってくるんだな?」
陽菜「うん、約束する。
あー………でも、私がもしつまずきそうなことがあったら、助けを求めに戻っちゃうかも」
ガルシア「………ははっ、それはいいな。その時は、俺もヒナと共に行きたいよ」
陽菜「私もだよ、カナと旅が出来るのを心待ちにしてるから」
寂しそうな顔をして私達を見送る彼に、大きく手を振りながら館を後にする。
どうして彼はあそこから出られないのか、色々疑問は残るけれど、今は彼が教えてくれた場所に行って、少しでもこの力や私達の出生なんかを知るために、前に進むしかない。
もしかしたら、あの人が言っていた“大切なもの”というのも、そこにヒントがあるのかも知れないから。
陽菜「助けに来てくれてありがとね、ユーリ」
「リッキーも、ラピードもありがと」と言うと2匹は嬉しそうにすり寄ってきた。
館の外に出た私達だったけど、真っ暗な森の中だったもんだから、とにかく、何も見えやしない。
ユーリ「ま。仲間として、当然の事をしたまでだしな」
陽菜「ふふ、本当にありがとね。いつまでも、あんなところに閉じ込められると、嫌なこと思い出しそうだったんだよね」
ユーリ「……………そっか」
聞きたいことは山ほどあるのに、なにも聞かないでいてくれるユーリに、私は心から感謝すると共に何も言えない申し訳なさに苦笑いをするしかなかった。
陽菜「そんなことよりも、よくわかったね?私がここにいるって………」
「ていうか、怪我とかは大丈夫だったの?」と聞くと「大丈夫って訳でもなかったけどな」と言う声が聞こえてきた。
陽菜「え?ちょっと診せて」
ユーリ「大丈夫だって。そんなに大したことじゃ………」
陽菜「絶対に大丈夫じゃないでしょ、ほら………ちゃんと診せて。リッキー達も」
そう言って私は、ユーリ達の傷を癒してあげる。
陽菜〈聖なる力よ、癒しを授け!ラ・ティアラ!!〉
キラン
治癒術で治すと、ユーリ達は思いっきり腕などを回し始めた。
ユーリ「サンキュ、ヒナ」
陽菜「どういたしまして。んで、さっきの話だけど」
ユーリは「ああ」と言って、リッキーに視線を送る。
ユーリ「なんつーか、いきなりリッキーの声が聞こえてさ。鈴の音が、あの館から聞こえるっていうもんだから実際に行ってみたら、ビンゴだったって訳だ。」
陽菜「………鈴の音が………?」
ユーリ「ああ。………さて、さっさと帰るか」
陽菜「うん。エステル達に心配かけちゃったしね」
*
陽菜達と別れたあと、ガルシアは館の中で外の景色をただ一人、見つめていた。彼女が笑ったその顔を刻むようにゆっくり目を閉じてから、誰もいないはずの部屋に振り返ることもなく、言葉を吐き捨てた。
ガルシア「………いつまで、アンタはそこにいるつもりだ。滞在する許可を出した覚えはないんだが?」
ガルシアの後ろから歩いてくる男が不敵に笑い出す。
仮面を顔半分につけた男は、彼の側へ行き、窓から見下ろすと興味深そうに浮かべた笑みを更に深める。
?「あの少女が、貴方様の妹君であり、あの『夕星の子』ですか」
ガルシア「………俺は今でもアンタ達を信用しないし、あの子は誰にも渡しはしない。
もし、あの子に何か良からぬ事をしようとするならば、俺が容赦しない」
?「ご安心を、そのようなことは一切しませんよ………『明星の子』様?」
ギリ、と奥歯を噛み締めるガルシアを横目に、私達がいないところで、とんでもない計画があっただなんて、知るよしもなかった。
彼が口を開いたのとほぼ同時に、爆発音と共に建物が大きく揺れた。
地震だろうか、と一瞬だけ不安になったがしばらくして揺れも収まる。
陽菜「カナ、今のは………?」
ガルシア「………っ、ヒナはここにいて。」
カナが部屋から飛び出していく。私もすぐさま後を追いかけるも、案の定………足の筋力がごっそりと落ちているせいで上手く走れず、壁づたいにゆっくりと歩いていく。
陽菜(………嫌だ………)
胸の奥底からざわざわと気持ちが悪い。また、誰かがいなくなる。あの時のように、私の目の前から誰もがいなくなる。一人になりたくない、寂しいのは嫌だ。
いずれの別れがあるのは重々承知だ。
けれど………それでも─────。
陽菜「いや、だ……………置いて、いかないで……………」
───── 館・玄関内 ─────
ユーリ「……………ふぅ。やけにすげぇのもってんのな、リッキー」
リッキー『お嬢ッ!お嬢はどこだ!!』
ラピード「!、グルル………」
ガルシア「……………お前ら。まさか、ここまで追いかけてくるとは、思いも寄らなかったよ」
両端にある階段の頂上にいるガルシアは、彼らを冷ややかに見下ろしながら、攻撃を仕掛けていく。
3対1と、明らかにユーリ達が優位にあるものの、ガルシアの攻撃力も防御力も圧倒的に彼らより上回っていた。
ユーリ「………ヒナはどこにいる?」
ガルシア「なぜ人間ごときに教えなければならない?あの子が赦しても、俺はお前ら人間に受けた屈辱を忘れはしない………!」
「そーかい」と睨み付けるユーリも、
ギン、ギン、ギンと鈍い音が建物内に響く。その音を頼りにようやっと辿り着いた私は、戦闘に入ってしまった両者に声を張り上げる。
陽菜「カナ!!ユーリ!!お願いだから、もうやめて!!」
ユーリ「!、ヒナ………!」
ガルシア「ヒナ、なんで来た。部屋にいてろって言っただろ!」
陽菜「嫌だ!!一人にしないでよ、バカ!」
ゆっくりと階段を降りて二人の元へ行こうとすると、リッキーが駆け上ってきてくれた。
本当に久しぶりに歩いたものだから、息が上がってたしこれ以上にないくらい長い距離を歩いたように思う。
部屋から玄関先までいくのに、そうもかからない距離のはずなのに。
いつものように彼に跨がれば、彼らの元へ連れていってくれる。
陽菜「ユーリ、リッキーもラピードも………来てくれたんだ。」
ユーリ「おー、どっかの姫が無抵抗で連れ去られたもんでな」
棘を含まれたその言葉の裏に、心配してくれたことがわかって、思わず笑みを浮かべてしまう。
だが、そんな私達を引き裂くように、カナが間に入って牽制をして来た。
ガルシア「それ以上、この子に近づくな」
ユーリ「………おい、あんた………」
陽菜「……………。カナ、言ってたよね?カナが渡してくれた地図の場所に行けば、私の知りたがっていることがわかるって」
ガルシア「っ、それは………」
相変わらず睨み付けている彼に、ユーリが呆れながらため息づく。私を守ろうとしてくれたのはすごく嬉しい。
私の話を真剣に聞いて、その事に怒ってくれた。
でも、私は……………私の意思を聞いてほしい。
陽菜「カナ。私、この人達と共に旅に出るわ。私の知りたいことを探しに。」
ユーリ「?」
ガルシア「……………駄目だ」
陽菜「だってカナは、私と一緒にいけない理由があるんでしょう?
これは、私が初めて言う我が儘だから、カナが責任を持って決めなくていいんだよ。」
ハッと息を呑む彼に、私はふわりと微笑む。彼には彼なりの理由があるのと同じで、私には私なりの理由がある。自分の意思を曲げ続ければ、いつか私も彼も壊れてしまう気がする。
陽菜「大丈夫だよ、カナ。
ちゃんと戻ってくるって約束するから。カナが心配するようなことは起こさないって誓うから。」
ユーリ「ヒナ………」
陽菜「………だから、行ってきます。ガルシアお兄ちゃん」
精一杯の笑顔を、心からのハグを彼に贈る。私の片割れで、私を一番に考えてくれるたった一人の理解者。
今まで会いに来れなかったのも、離ればなれになってしまった理由も、知りたいことはたくさんあるけれど彼の口からは聞かない。
話せば話すほど、聞けば聞くほど、彼に悲しくて辛い思いをさせたくないから。
ガルシア「おまえには敵わないな。
………ヒナ、もし、ある男に出会ったらすぐさま逃げろ。」
陽菜「?、ある男………?」
ガルシア「………銀色の髪に眼帯をつけた隻眼の男だ。名前は“ゼノ”。
俺達の力を………特にヒナ、お前を狙っている。」
陽菜・ユーリ「!?」
ぎゅっと私を抱き締める力がこもる。
彼が過剰なまでに私を守ろうとしたのは、幼い頃からずっと狙われ続けていたから。
人間を恨んでいるのも、殺されかけていた日々が続いたせいで、人間不信になってしまったのだと思う。
陽菜「……………わかった。気を付ける」
ガルシア「………本当に、ちゃんと帰ってくるんだな?」
陽菜「うん、約束する。
あー………でも、私がもしつまずきそうなことがあったら、助けを求めに戻っちゃうかも」
ガルシア「………ははっ、それはいいな。その時は、俺もヒナと共に行きたいよ」
陽菜「私もだよ、カナと旅が出来るのを心待ちにしてるから」
寂しそうな顔をして私達を見送る彼に、大きく手を振りながら館を後にする。
どうして彼はあそこから出られないのか、色々疑問は残るけれど、今は彼が教えてくれた場所に行って、少しでもこの力や私達の出生なんかを知るために、前に進むしかない。
もしかしたら、あの人が言っていた“大切なもの”というのも、そこにヒントがあるのかも知れないから。
陽菜「助けに来てくれてありがとね、ユーリ」
「リッキーも、ラピードもありがと」と言うと2匹は嬉しそうにすり寄ってきた。
館の外に出た私達だったけど、真っ暗な森の中だったもんだから、とにかく、何も見えやしない。
ユーリ「ま。仲間として、当然の事をしたまでだしな」
陽菜「ふふ、本当にありがとね。いつまでも、あんなところに閉じ込められると、嫌なこと思い出しそうだったんだよね」
ユーリ「……………そっか」
聞きたいことは山ほどあるのに、なにも聞かないでいてくれるユーリに、私は心から感謝すると共に何も言えない申し訳なさに苦笑いをするしかなかった。
陽菜「そんなことよりも、よくわかったね?私がここにいるって………」
「ていうか、怪我とかは大丈夫だったの?」と聞くと「大丈夫って訳でもなかったけどな」と言う声が聞こえてきた。
陽菜「え?ちょっと診せて」
ユーリ「大丈夫だって。そんなに大したことじゃ………」
陽菜「絶対に大丈夫じゃないでしょ、ほら………ちゃんと診せて。リッキー達も」
そう言って私は、ユーリ達の傷を癒してあげる。
陽菜〈聖なる力よ、癒しを授け!ラ・ティアラ!!〉
キラン
治癒術で治すと、ユーリ達は思いっきり腕などを回し始めた。
ユーリ「サンキュ、ヒナ」
陽菜「どういたしまして。んで、さっきの話だけど」
ユーリは「ああ」と言って、リッキーに視線を送る。
ユーリ「なんつーか、いきなりリッキーの声が聞こえてさ。鈴の音が、あの館から聞こえるっていうもんだから実際に行ってみたら、ビンゴだったって訳だ。」
陽菜「………鈴の音が………?」
ユーリ「ああ。………さて、さっさと帰るか」
陽菜「うん。エステル達に心配かけちゃったしね」
*
陽菜達と別れたあと、ガルシアは館の中で外の景色をただ一人、見つめていた。彼女が笑ったその顔を刻むようにゆっくり目を閉じてから、誰もいないはずの部屋に振り返ることもなく、言葉を吐き捨てた。
ガルシア「………いつまで、アンタはそこにいるつもりだ。滞在する許可を出した覚えはないんだが?」
ガルシアの後ろから歩いてくる男が不敵に笑い出す。
仮面を顔半分につけた男は、彼の側へ行き、窓から見下ろすと興味深そうに浮かべた笑みを更に深める。
?「あの少女が、貴方様の妹君であり、あの『夕星の子』ですか」
ガルシア「………俺は今でもアンタ達を信用しないし、あの子は誰にも渡しはしない。
もし、あの子に何か良からぬ事をしようとするならば、俺が容赦しない」
?「ご安心を、そのようなことは一切しませんよ………『明星の子』様?」
ギリ、と奥歯を噛み締めるガルシアを横目に、私達がいないところで、とんでもない計画があっただなんて、知るよしもなかった。