第3章 ハルルの樹
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ユーリに迫られた街の人達は「あ、あくまでおとぎ話だぞ?」と口を濁していた。
村長「………その話なら、私も知っております。」
ユーリ「話してくれ」
村長が言うには、大昔に神ノ島と呼ばれる神秘の島があったそうだ。名前の通り、どこにあるかもわからず未開拓の土地だったこともあって、多くの冒険者やハンター達がこぞってその島を探し求めたという。
その島には巫女と呼ばれる、それはそれは美しい娘がいた。ある日、娘に玉のような可愛らしい双子の赤子が生まれたが、娘は帰らぬ人となった。
彼女の忘れ形見である赤子を、民達は大切に育て上げた。娘と同じ白い髪色と赤い瞳を持つ赤子は空に瞬く一番星「明星の子」。
栗色の髪を持ち、夜空のような紫色の瞳を持つ赤子は明星と対を成す「夕星の子」と呼ばれるようになった。
赤子は民達からの愛情をもらってすくすくと大きく育っていく。その頃から、不思議な力を彼らは宿していた。
兄である「明星の子」は、母である娘の力も受け継いだのか、“予知能力”と“結界と封印の術式”を。
妹である「夕星の子」は、“潜在能力を底上げ”と“魔物を従わせる力”を持っていた。
妹は無意識ながらに魔物達を引き寄せてしまうため、幽閉せざるをおえなかったという。
陽菜「……………っ」
エステル「ヒナ………」
ユーリ「……………」
言いたい気持ちをグッと抑えながら、村長さんに話の続きをしてもらう。
このおとぎ話がもし本当の事なら、今の私にその妹と同じ力があるのなら、ハルルの樹を救い出すことができるかもしれない。
今、公私混同なんかしちゃ駄目だ。今の問題が解決してから、それから泣きわめいたっていいはずだもの。
村長「………長い間、ずっと一人幽閉されてしまった妹のそばを兄は離れず、いつの日か同じ空の下で遊べることを願っていました。
ある日の晩、兄はこっそり妹を連れ出して、あるプレゼントを贈りました。
それからというものの、兄妹仲良く暮らした。………ここで、物語は終わりです」
陽菜「……………。村長さん、ありがとうございました。
それで、その兄妹の特徴って、不思議な力と容姿だけですか?」
住人「ああいや、その双子には生まれつき火傷のような痕をどちらか片方ずつの足にあったって書いてあったような………」
住人「そうそう。それで、こう………赤子の手のような痣もあったって」
彼らから聞いたその言葉にビクリと肩を震わす。
私はただ、力の使い方とかを知りたかっただけなのだが、思いもよらぬものを聞いてしまった。
再び黙り出す私を心配してか、エステルやカロルがおろおろと落ち着かないようすだ。とりあえず二人を安心させようと笑みを作りながら、靴を脱ぎ、左足に巻いていた包帯を取り除く。
包帯の下から見えたのは火傷の痕と赤子の手にも見える紅葉の痣があった。
カロル「こ、これって………!」
陽菜「………よし。じゃあそろそろ始めよっか。これで私が本当に夕星の子ってことは、治癒力を何十倍にも増幅できるってことだよね?
というわけで、エステル、ちょっと力を貸してくれる?」
私の足を見て周囲がどよめくなか、気丈に振る舞いながら、少し大きめに声を張り上げる。
私に声をかけられて慌てふためく彼女に、申し訳なさそうに再三お願いをする。
理由としては、さっきの話を聞いていた時間でちょっとタイムリミットが迫ってきてしまったみたいなので、早急に始めないと手遅れになってしまう。
聞きたいと言ったそばからのことだったので、説明するよりもまず先に事を進めないと間に合わない。
少し強引ではあるが、エステルの手を掴んで二人してリッキーに跨がり、ハルルの樹の根本へ向かう。
彼から降りて、足を引きずりながら樹の側にいけば、エステルが困惑ぎみに私に向かって言う。
エステル「で、でも私………何をしていいのか………」
陽菜「あはは、ごめんね?
………でも、私も初めてだからどうしたらいいかわからない。けど、やるしかないんだ。
エステルはただ………願うだけでいいと思う。」
エステル「“願う”、です………?」
陽菜「そう。ハルルの樹がまた綺麗に咲きますように、とか。病気が早く治りますように、とかね。
大丈夫、私がエステルの治癒力を最大限に引き出してあげるから」
エステル「……………樹が………また、綺麗に……………」
小さく呟きながら、彼女は両手を握り祈るように目をつむる。それを合図に、私は樹に手をおいて目をつむる。
陽菜「………お願い、私に夕星の子の力があるのなら、私達に力を貸して」
ふわり、と心地いい黄緑色の光が優しく私を包み込む。それとほぼ同時に、エステルからも光が溢れ始めた。
ただ無我夢中に祈る私たちには、周囲が息を呑む様子を知らない。ただただ、綺麗に咲いてほしい。助けてあげたい。それだけだから。
エステル「……………お願い」
私達の願いに呼応するように、包み込む光はどんどんと溢れてくる。
固唾をのみながら、街の皆もユーリ達も静かに見守る。
ユーリ「エステル、ヒナ………」
エステル・陽菜「「咲いて」」
私達の言葉と共に、ハルルの樹が白く輝き始め、光の粒子が舞い上がる。先程のパナシーアボトルの比ではないくらい眩しいほどの光が樹全体を包み込んだ。
それどころか、枯れかけていたハルルの樹の花が徐々に開花していく。ちょうど夜中だったこともあり、それはまるで、夜空にライトアップされた満開の桜が見上げる私たちを優しく微笑んでいるようにも見えた。
幹から手を放した私も、光り輝くハルルの樹を見上げる。圧巻とも言えるほどの大迫力に、たったの一言しか言葉がでなかった。
陽菜「………綺麗………」
カロル「す、すごい………」
村長「こ、こんなことが………」
住人「これは、夢なのか?」
住人「ありえない………でも………」
そんな騒ぎの中で、エステル達の元に子供達が何か笑顔でお礼を言っていたのを遠くながらに、私は見ていた。
街の人達が私やエステルの力に驚きを隠せずにいる中で、私はエステルの元へと駆け寄る。
といっても、左足を引き摺ってだけどね。
陽菜「……………って、うわぁっ!?」
エステル「!?、ヒナ!?」
人々が歓喜をあげる中、私だけが宙へと浮いていたのだ。え、なに?なんで私浮いてるの??
陽菜「えっ……………?」
宙に浮く私は、ハルルの樹の一番上まで来ていた。真上から見下ろすそれは、暗闇の中で光輝く薄桃色の絨毯が広がっている。
───── ありがとう………夕星の子……… ─────
ふと聞こえるハルルの樹の声。さっきまで苦しそうなノイズのかかった声ではなく、慈愛に満ちた、優しくて心地よい声色だった。
陽菜(どういたしまして………)
ハルルの樹にそう心の中で呟く。本当は私だけの力じゃない。エステルの力を引き出しただけにすぎないけれど、街の人達の大切なもの………これで、守れたといってもいいのだろうか。
陽菜「……………え?」
そんな風に考えていたら、突然左足に違和感を覚える。火傷や痣になんら変わりはない。変わりはないのだが、今までなにも感じなかった感覚が、足に血が通っているかのような、暖かい感覚があった。
陽菜(なに?………足、痛くない………?)
村長「………その話なら、私も知っております。」
ユーリ「話してくれ」
村長が言うには、大昔に神ノ島と呼ばれる神秘の島があったそうだ。名前の通り、どこにあるかもわからず未開拓の土地だったこともあって、多くの冒険者やハンター達がこぞってその島を探し求めたという。
その島には巫女と呼ばれる、それはそれは美しい娘がいた。ある日、娘に玉のような可愛らしい双子の赤子が生まれたが、娘は帰らぬ人となった。
彼女の忘れ形見である赤子を、民達は大切に育て上げた。娘と同じ白い髪色と赤い瞳を持つ赤子は空に瞬く一番星「明星の子」。
栗色の髪を持ち、夜空のような紫色の瞳を持つ赤子は明星と対を成す「夕星の子」と呼ばれるようになった。
赤子は民達からの愛情をもらってすくすくと大きく育っていく。その頃から、不思議な力を彼らは宿していた。
兄である「明星の子」は、母である娘の力も受け継いだのか、“予知能力”と“結界と封印の術式”を。
妹である「夕星の子」は、“潜在能力を底上げ”と“魔物を従わせる力”を持っていた。
妹は無意識ながらに魔物達を引き寄せてしまうため、幽閉せざるをおえなかったという。
陽菜「……………っ」
エステル「ヒナ………」
ユーリ「……………」
言いたい気持ちをグッと抑えながら、村長さんに話の続きをしてもらう。
このおとぎ話がもし本当の事なら、今の私にその妹と同じ力があるのなら、ハルルの樹を救い出すことができるかもしれない。
今、公私混同なんかしちゃ駄目だ。今の問題が解決してから、それから泣きわめいたっていいはずだもの。
村長「………長い間、ずっと一人幽閉されてしまった妹のそばを兄は離れず、いつの日か同じ空の下で遊べることを願っていました。
ある日の晩、兄はこっそり妹を連れ出して、あるプレゼントを贈りました。
それからというものの、兄妹仲良く暮らした。………ここで、物語は終わりです」
陽菜「……………。村長さん、ありがとうございました。
それで、その兄妹の特徴って、不思議な力と容姿だけですか?」
住人「ああいや、その双子には生まれつき火傷のような痕をどちらか片方ずつの足にあったって書いてあったような………」
住人「そうそう。それで、こう………赤子の手のような痣もあったって」
彼らから聞いたその言葉にビクリと肩を震わす。
私はただ、力の使い方とかを知りたかっただけなのだが、思いもよらぬものを聞いてしまった。
再び黙り出す私を心配してか、エステルやカロルがおろおろと落ち着かないようすだ。とりあえず二人を安心させようと笑みを作りながら、靴を脱ぎ、左足に巻いていた包帯を取り除く。
包帯の下から見えたのは火傷の痕と赤子の手にも見える紅葉の痣があった。
カロル「こ、これって………!」
陽菜「………よし。じゃあそろそろ始めよっか。これで私が本当に夕星の子ってことは、治癒力を何十倍にも増幅できるってことだよね?
というわけで、エステル、ちょっと力を貸してくれる?」
私の足を見て周囲がどよめくなか、気丈に振る舞いながら、少し大きめに声を張り上げる。
私に声をかけられて慌てふためく彼女に、申し訳なさそうに再三お願いをする。
理由としては、さっきの話を聞いていた時間でちょっとタイムリミットが迫ってきてしまったみたいなので、早急に始めないと手遅れになってしまう。
聞きたいと言ったそばからのことだったので、説明するよりもまず先に事を進めないと間に合わない。
少し強引ではあるが、エステルの手を掴んで二人してリッキーに跨がり、ハルルの樹の根本へ向かう。
彼から降りて、足を引きずりながら樹の側にいけば、エステルが困惑ぎみに私に向かって言う。
エステル「で、でも私………何をしていいのか………」
陽菜「あはは、ごめんね?
………でも、私も初めてだからどうしたらいいかわからない。けど、やるしかないんだ。
エステルはただ………願うだけでいいと思う。」
エステル「“願う”、です………?」
陽菜「そう。ハルルの樹がまた綺麗に咲きますように、とか。病気が早く治りますように、とかね。
大丈夫、私がエステルの治癒力を最大限に引き出してあげるから」
エステル「……………樹が………また、綺麗に……………」
小さく呟きながら、彼女は両手を握り祈るように目をつむる。それを合図に、私は樹に手をおいて目をつむる。
陽菜「………お願い、私に夕星の子の力があるのなら、私達に力を貸して」
ふわり、と心地いい黄緑色の光が優しく私を包み込む。それとほぼ同時に、エステルからも光が溢れ始めた。
ただ無我夢中に祈る私たちには、周囲が息を呑む様子を知らない。ただただ、綺麗に咲いてほしい。助けてあげたい。それだけだから。
エステル「……………お願い」
私達の願いに呼応するように、包み込む光はどんどんと溢れてくる。
固唾をのみながら、街の皆もユーリ達も静かに見守る。
ユーリ「エステル、ヒナ………」
エステル・陽菜「「咲いて」」
私達の言葉と共に、ハルルの樹が白く輝き始め、光の粒子が舞い上がる。先程のパナシーアボトルの比ではないくらい眩しいほどの光が樹全体を包み込んだ。
それどころか、枯れかけていたハルルの樹の花が徐々に開花していく。ちょうど夜中だったこともあり、それはまるで、夜空にライトアップされた満開の桜が見上げる私たちを優しく微笑んでいるようにも見えた。
幹から手を放した私も、光り輝くハルルの樹を見上げる。圧巻とも言えるほどの大迫力に、たったの一言しか言葉がでなかった。
陽菜「………綺麗………」
カロル「す、すごい………」
村長「こ、こんなことが………」
住人「これは、夢なのか?」
住人「ありえない………でも………」
そんな騒ぎの中で、エステル達の元に子供達が何か笑顔でお礼を言っていたのを遠くながらに、私は見ていた。
街の人達が私やエステルの力に驚きを隠せずにいる中で、私はエステルの元へと駆け寄る。
といっても、左足を引き摺ってだけどね。
陽菜「……………って、うわぁっ!?」
エステル「!?、ヒナ!?」
人々が歓喜をあげる中、私だけが宙へと浮いていたのだ。え、なに?なんで私浮いてるの??
陽菜「えっ……………?」
宙に浮く私は、ハルルの樹の一番上まで来ていた。真上から見下ろすそれは、暗闇の中で光輝く薄桃色の絨毯が広がっている。
───── ありがとう………夕星の子……… ─────
ふと聞こえるハルルの樹の声。さっきまで苦しそうなノイズのかかった声ではなく、慈愛に満ちた、優しくて心地よい声色だった。
陽菜(どういたしまして………)
ハルルの樹にそう心の中で呟く。本当は私だけの力じゃない。エステルの力を引き出しただけにすぎないけれど、街の人達の大切なもの………これで、守れたといってもいいのだろうか。
陽菜「……………え?」
そんな風に考えていたら、突然左足に違和感を覚える。火傷や痣になんら変わりはない。変わりはないのだが、今までなにも感じなかった感覚が、足に血が通っているかのような、暖かい感覚があった。
陽菜(なに?………足、痛くない………?)