第四章・忌まわしき血と力
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
楓「………………あなた、何者?」
長い沈黙から、やっと言葉にしたのがそれだった。
そんな私を見つめ、笛を咥えたまま…ゆっくりと近づいてくる。
ざわざわと栗泡立つその気配に押し潰されそうになりながらも、ギッと見据えながら、もう一度犬に問う。
楓「……見たところ、あなたは霊よね?
なら、私の言葉は理解できるでしょう?
答えて」
けれど、犬は何も答えない。いや、不思議そうにこちらを見ているだけ。
というか、人がいないからといって恥ずかしいことを言う自分が情けない。
頭がどうかしているのは自分ではないか。
楓「……なんて、犬がしゃべるわけないよね。ましてや、幽霊ならなおさら」
《くくっ、本当に面白い小娘だな、お前》
頭を抱えながら、部屋へと戻ろうとしたとき、頭の中で聞いたこともない声が響いてきた。
辺りを見渡しても、誰もいない。
ましてや、この夜中だ。見張りぐらいは起きていたとしても、気配ぐらいは感じられるはず。
それなのに、今ここにいるのは私と犬だけ。
………………犬だけ、なんだけど。
楓「……………、もしかして、今しゃべった……?」
《ああ、話しかけたとも。正確に言えば、お前の頭に直接、語りかけているようなものだが》
さらりと、とんでもないことを言ってのける彼に、本当に頭がどうかしてしまったのかと、悩ませざるえなかった。
楓(………。なら、これも聞こえるってことよね?)
それでも、そんなことに臨機応変に対応できてしまうのも、目まぐるしく動き出す日々の変化に、自身が慣れつつある……ということなのだろうか。
人間の順応能力というものは、本当に末恐ろしいものだ。
そんな私に、ニヤリと笑う彼は《物わかりの良いやつは好きだぜ》と言った。
楓(………あなた、一体……ッ)
体の奥底から首にかけて、ズキンッと鈍い痛みが走った。
《やつらは俺をお前に封じたと思っているのだろう?
馬鹿馬鹿しいのにもほどがある》
楓「……く………ぁ…」
先程よりも禍々しい邪気を漏らしながら睨み付けてくる彼を前に、私は得体の知れない何かに、もがき苦しむ。
一体何なのだ、この力は。
楓(なんか、前にも……)
同じようなことをされたことがあったような……。
だが、今はそんなことを考えている余裕はない。
何て言ったって、まさに今、首を絞め殺されかけているのだから。
ああ、駄目だ。目が霞んできた。
《くくくっ、あの忌々しい暁犬の血を引くお前を従服させれれば、この世など、取るにたらぬ》
霞む眼にうっすらと障子越しに映る満月が、暗闇から顔を出す。
微かに聞こえてきた言葉の中で、“暁犬”という言葉を拾うと、封印の儀を行ったことを思い出す。
楓「……させ……る、か……」
《……!》
首を絞める力が強まる前に、自身の指を思い切り噛みちぎると、皮が破れて血がじわりと溢れてくる。
楓「ノウマク サンマンダ バサラ ダン ゼンダ マカロシャダ ウンタラタカンマン……ッ!!」
《ぐォオ…ッ!?》
苦し紛れに詞 を紡ぐと、ナニかに弾かれるようにして、首を締め付けていたものが剥がれていった。
ナニかから解放された私は、ドサリと倒れ込みながら息を整えていると、先程の祝詞 に少なからず効き目があったのか、彼の気配がわずかに揺らめいた。
《まさか、───小娘ェ………ッ》
楓「げほ…っ……けほ…っ…(一か八かだったけど、効いたみたいね)」
今にも飛びかかろうとする彼に気づかれないよう、懐に忍ばせておいた小太刀に手を伸ばす。
暁犬の城で軟禁させられていた頃に、鬼灯と名乗る鬼女から手渡されたもので、百年以上前に作られた代物だそう。
犬神を封じる際に作られた妖刀であり、暁犬暁犬家の宝刀でもあるそれは、キラリと月光を反射する。
そんな微かな音を捉えたのか、恨みを憎しみをひしひしと感じられるほど、怒りを露にする彼は喉元を喰らい尽くそうと私に向かって駆け出す。
長い沈黙から、やっと言葉にしたのがそれだった。
そんな私を見つめ、笛を咥えたまま…ゆっくりと近づいてくる。
ざわざわと栗泡立つその気配に押し潰されそうになりながらも、ギッと見据えながら、もう一度犬に問う。
楓「……見たところ、あなたは霊よね?
なら、私の言葉は理解できるでしょう?
答えて」
けれど、犬は何も答えない。いや、不思議そうにこちらを見ているだけ。
というか、人がいないからといって恥ずかしいことを言う自分が情けない。
頭がどうかしているのは自分ではないか。
楓「……なんて、犬がしゃべるわけないよね。ましてや、幽霊ならなおさら」
《くくっ、本当に面白い小娘だな、お前》
頭を抱えながら、部屋へと戻ろうとしたとき、頭の中で聞いたこともない声が響いてきた。
辺りを見渡しても、誰もいない。
ましてや、この夜中だ。見張りぐらいは起きていたとしても、気配ぐらいは感じられるはず。
それなのに、今ここにいるのは私と犬だけ。
………………犬だけ、なんだけど。
楓「……………、もしかして、今しゃべった……?」
《ああ、話しかけたとも。正確に言えば、お前の頭に直接、語りかけているようなものだが》
さらりと、とんでもないことを言ってのける彼に、本当に頭がどうかしてしまったのかと、悩ませざるえなかった。
楓(………。なら、これも聞こえるってことよね?)
それでも、そんなことに臨機応変に対応できてしまうのも、目まぐるしく動き出す日々の変化に、自身が慣れつつある……ということなのだろうか。
人間の順応能力というものは、本当に末恐ろしいものだ。
そんな私に、ニヤリと笑う彼は《物わかりの良いやつは好きだぜ》と言った。
楓(………あなた、一体……ッ)
体の奥底から首にかけて、ズキンッと鈍い痛みが走った。
《やつらは俺をお前に封じたと思っているのだろう?
馬鹿馬鹿しいのにもほどがある》
楓「……く………ぁ…」
先程よりも禍々しい邪気を漏らしながら睨み付けてくる彼を前に、私は得体の知れない何かに、もがき苦しむ。
一体何なのだ、この力は。
楓(なんか、前にも……)
同じようなことをされたことがあったような……。
だが、今はそんなことを考えている余裕はない。
何て言ったって、まさに今、首を絞め殺されかけているのだから。
ああ、駄目だ。目が霞んできた。
《くくくっ、あの忌々しい暁犬の血を引くお前を従服させれれば、この世など、取るにたらぬ》
霞む眼にうっすらと障子越しに映る満月が、暗闇から顔を出す。
微かに聞こえてきた言葉の中で、“暁犬”という言葉を拾うと、封印の儀を行ったことを思い出す。
楓「……させ……る、か……」
《……!》
首を絞める力が強まる前に、自身の指を思い切り噛みちぎると、皮が破れて血がじわりと溢れてくる。
楓「ノウマク サンマンダ バサラ ダン ゼンダ マカロシャダ ウンタラタカンマン……ッ!!」
《ぐォオ…ッ!?》
苦し紛れに
ナニかから解放された私は、ドサリと倒れ込みながら息を整えていると、先程の
《まさか、───小娘ェ………ッ》
楓「げほ…っ……けほ…っ…(一か八かだったけど、効いたみたいね)」
今にも飛びかかろうとする彼に気づかれないよう、懐に忍ばせておいた小太刀に手を伸ばす。
暁犬の城で軟禁させられていた頃に、鬼灯と名乗る鬼女から手渡されたもので、百年以上前に作られた代物だそう。
犬神を封じる際に作られた妖刀であり、暁犬暁犬家の宝刀でもあるそれは、キラリと月光を反射する。
そんな微かな音を捉えたのか、恨みを憎しみをひしひしと感じられるほど、怒りを露にする彼は喉元を喰らい尽くそうと私に向かって駆け出す。