第四章・忌まわしき血と力
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楓「………。大丈夫……、大丈夫……。私は…影だ。咲桜の、影だから………」
影。彼女がいない今、私は何のために生きていくのだろう。
そんな自問に深く溜め息づく。何を望んだところで、生きる希望も理由もない。
ただ時間がゆっくり過ぎるのを待てばそれだけでいい。
………………そう、思っていたのだけれど。
楓(………。ここに来てから、そうもいかなくなってしまった。)
ここの時代の人達は優しく暖かい。
そんな温もりを一切感じてこなかった私にとって、初めは居心地が悪かった。
こんなにも賑やかで、楽しそうな人達の眼差しで目が眩むほど、怖かった。
周りの音につれられ、いきなり暗闇から外に出てこさせられた、ある『神様』みたいに苦しかった。
独りになりたくても、誰もが話しかけてくれる。寂しくならないように、笑える日を迎えられるように、無理を強いたげないように、ゆっくりと……少しずつ………。
お陰で肉つきもよくなり、独りの時と違った景色が見えてきたような気がした。
一人はいたずらをしながらも、ちゃんと気に掛けてくれているようだし、あの子もあの子で妹のようにかわいく思えた。
本当に、幸せすぎるほどに………彼らから何もかも貰っている。
恩返し、とまではいかないが、夜毎 に少しずつこの屯所に漂う邪気などを祓ってはみているが、日に日に増すばかりで余り効果があるようにはみえない。
小物から大物まで数多く居着く霊は、早急に祓いきってしまわないと、生活に支障きたすだけでなく人体にも悪影響を及ぼす。
それが、今回………山南さんが負った怪我だ。
楓「……………、………。」
数日中とはいえ、今頃怪我での熱にうなされている頃だろう。
楓(………やっぱり、探したいよねぇ。
形見である、鈴のついた笛と……巫女衣装は)
巫女衣装は多分、呉服屋さんに行けば買えるんだろうけど、鈴だけはそうにもいかない。
あれだけは………あれだけは無くしてはいけなかったのに。
楓(………ごめん、ごめんね。咲桜……)
懐にしまっておいた寂れた鈴を取り出せば、カランコロンと鈍い音を鳴らす。
元々二つで一つだったこの鈴は、私が火に炙られたあの日を境に、離れ離れになってしまった。
その鈴はお守りのように笛に着けて、肌身離さずに持っていた、16歳の頃に死んだ咲桜の形見。
彼女はとても優しくて、しっかり者で、唯一……私の拠り所だった。
親はもちろんの事、誰もから愛されていた彼女とは違い、私は見向きもされなかったのに、彼女だけ声をかけてくれた。
……私を庇って、車に轢かれるまでは。
楓(………あの日も……)
死を覚悟した私を、この時代へと飛ばしたのは、あの子だったのかと頭に過らせたがすぐさま振り払う。彼女は奴らのせいで生け贄として死んでしまったのだ。
私を助ける、ということも彼女の意思もすべて足蹴にして。
すべてが偶然で必然だった。彼女の意思がどうこうと言うよりも、非現実的で、そんな弱音なことを言っている場合ではない。
と言いたいが、事実、私が別の時代へ飛ばされたことも非現実な事なので、常識とは一体何なのかと頭をひどく悩ませる。
────父様を探しにいきたいのです!────
ふと、千鶴が言った言葉が頭をちらつかせる。
楓(あの時、“別に”とは言ったけど………)
笛と巫女装束を探すならば、必然的にも外へ出なければならない。
彼女の言う通り、ここでじっとしていれば、いつまで経っても、外へ出ることは叶わず、何もできずにただ時間が過ぎ行くばかりだ。
明日にでも探しにいこう。
それでもって、千鶴のためにも情報を集めてみよう。
少しぐらい、巫女としての力を乱用してもいいだろうと考えていると、ぶるりと体を震わす。
楓「………っ、さむ…っ」
夜風に当たりすぎて冷えてしまった体を暖め、準備をしようと動き出したとたん、チリン、と澄んだ音色が寝静まった夜に響く。
楓「──────え………?」
耳を疑うほど、聴いたことのある鈴の音に、心臓がどくどくと早鐘を打つ。
もう一度、チリン、という音が聴こえ、とっさに振り返れば、一匹の白い犬が、何かを咥えていた。
楓「………っ、それ、はっ……!!」
見覚えがあるそれは、ずっと私が探していたものだった。
何でこの犬が持っているのだろう、どこで見つけたのだろう。
なぜ、無くした本人だと……この犬はわかったのだろう。
まだまだたくさん聞きたいことは山のようにある。
けれど、突然の事で気が動転したせいか、頭の中が真っ白になってその場から動けなかった。
影。彼女がいない今、私は何のために生きていくのだろう。
そんな自問に深く溜め息づく。何を望んだところで、生きる希望も理由もない。
ただ時間がゆっくり過ぎるのを待てばそれだけでいい。
………………そう、思っていたのだけれど。
楓(………。ここに来てから、そうもいかなくなってしまった。)
ここの時代の人達は優しく暖かい。
そんな温もりを一切感じてこなかった私にとって、初めは居心地が悪かった。
こんなにも賑やかで、楽しそうな人達の眼差しで目が眩むほど、怖かった。
周りの音につれられ、いきなり暗闇から外に出てこさせられた、ある『神様』みたいに苦しかった。
独りになりたくても、誰もが話しかけてくれる。寂しくならないように、笑える日を迎えられるように、無理を強いたげないように、ゆっくりと……少しずつ………。
お陰で肉つきもよくなり、独りの時と違った景色が見えてきたような気がした。
一人はいたずらをしながらも、ちゃんと気に掛けてくれているようだし、あの子もあの子で妹のようにかわいく思えた。
本当に、幸せすぎるほどに………彼らから何もかも貰っている。
恩返し、とまではいかないが、夜
小物から大物まで数多く居着く霊は、早急に祓いきってしまわないと、生活に支障きたすだけでなく人体にも悪影響を及ぼす。
それが、今回………山南さんが負った怪我だ。
楓「……………、………。」
数日中とはいえ、今頃怪我での熱にうなされている頃だろう。
楓(………やっぱり、探したいよねぇ。
形見である、鈴のついた笛と……巫女衣装は)
巫女衣装は多分、呉服屋さんに行けば買えるんだろうけど、鈴だけはそうにもいかない。
あれだけは………あれだけは無くしてはいけなかったのに。
楓(………ごめん、ごめんね。咲桜……)
懐にしまっておいた寂れた鈴を取り出せば、カランコロンと鈍い音を鳴らす。
元々二つで一つだったこの鈴は、私が火に炙られたあの日を境に、離れ離れになってしまった。
その鈴はお守りのように笛に着けて、肌身離さずに持っていた、16歳の頃に死んだ咲桜の形見。
彼女はとても優しくて、しっかり者で、唯一……私の拠り所だった。
親はもちろんの事、誰もから愛されていた彼女とは違い、私は見向きもされなかったのに、彼女だけ声をかけてくれた。
……私を庇って、車に轢かれるまでは。
楓(………あの日も……)
死を覚悟した私を、この時代へと飛ばしたのは、あの子だったのかと頭に過らせたがすぐさま振り払う。彼女は奴らのせいで生け贄として死んでしまったのだ。
私を助ける、ということも彼女の意思もすべて足蹴にして。
すべてが偶然で必然だった。彼女の意思がどうこうと言うよりも、非現実的で、そんな弱音なことを言っている場合ではない。
と言いたいが、事実、私が別の時代へ飛ばされたことも非現実な事なので、常識とは一体何なのかと頭をひどく悩ませる。
────父様を探しにいきたいのです!────
ふと、千鶴が言った言葉が頭をちらつかせる。
楓(あの時、“別に”とは言ったけど………)
笛と巫女装束を探すならば、必然的にも外へ出なければならない。
彼女の言う通り、ここでじっとしていれば、いつまで経っても、外へ出ることは叶わず、何もできずにただ時間が過ぎ行くばかりだ。
明日にでも探しにいこう。
それでもって、千鶴のためにも情報を集めてみよう。
少しぐらい、巫女としての力を乱用してもいいだろうと考えていると、ぶるりと体を震わす。
楓「………っ、さむ…っ」
夜風に当たりすぎて冷えてしまった体を暖め、準備をしようと動き出したとたん、チリン、と澄んだ音色が寝静まった夜に響く。
楓「──────え………?」
耳を疑うほど、聴いたことのある鈴の音に、心臓がどくどくと早鐘を打つ。
もう一度、チリン、という音が聴こえ、とっさに振り返れば、一匹の白い犬が、何かを咥えていた。
楓「………っ、それ、はっ……!!」
見覚えがあるそれは、ずっと私が探していたものだった。
何でこの犬が持っているのだろう、どこで見つけたのだろう。
なぜ、無くした本人だと……この犬はわかったのだろう。
まだまだたくさん聞きたいことは山のようにある。
けれど、突然の事で気が動転したせいか、頭の中が真っ白になってその場から動けなかった。