第四章・忌まわしき血と力
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………まあ、尤 もな原因は、幹部全員が私達に心を赦しかけているのがいけないのと、事の発端を作った誰かさんの小さな小さな呟きのせいなのだが。
千鶴「山南さんは新選組の総長じゃないんですか?」
新八「あ、いや、」
平助「違う違う。新選組ってのは新しく選ぶ組って書くだろ?俺たちが言っているのは選の字を手辺にして────って、ぉわっ!?」
左之「平助!!───っ!?」
楓「やめなんし、こンの馬鹿共!!」
左之さんが平助と取っ組み合いを始めかける前に、クナイを投げ二人に向かって怒鳴る。
この一瞬の惨状に声をあげた千鶴に怪我をさせぬよう、私は体を張って彼女を背後でかばっていた。
唖然として畳に打ち付けられる平助をよそに、肩で息をするほど、頭に血が上っていた左之さんは、邪魔をするなとばかりに私を睨み付ける。
そんな睨みに私も睨み返す。怒りで我を忘れている奴なんかに怯むわけがない。
千鶴「ぁ……ッ……アキさん…」
楓「平助ッ、あんたは口が軽すぎる。幹部っつう自覚を持ちんさい!
左之さんも、左之さんだら。そいつ、どついたところで何の解決にもなりゃせんだろうがッ!!」
左之「………楓」
平助「ごめん」
楓「頭が冷めたんならそれで良し。私に謝るんじゃなしに、千鶴の事をもっとよく考えて行動しなさんす」
青筋をたてながら、信州弁で男二人に怒鳴り付ける楓を誰もが怖じ気づいていた。
中には流石にかわいそうになってきたらしく、自分達も悪いと言い出してきた。
新八「いや、これはこんな話をここでした俺たちもよくねえよ」
平助「………俺も悪かった。…けど、すぐ左之さんは手が出るんだもんなあ」
源さん「千鶴ちゃん。これが君達に聞かせられるギリギリのところだ。気になるだろうが、何も聞かないでほしい」
千鶴「でも!」
楓「千鶴……ッ」
沖田「平助の言う"しんせんぐみ"っていうのは、可愛そうな子たちのことだよ」
反論しようとする彼女を咎めるも、沖田さんが静かに彼女の質問に答える。
彼の解釈を反対するものは誰もおらず、皆……空を見つめて何かを思案していた。
重大な秘密の一部に踏み込んでしまったと、千鶴は身を強張らせていた。
刀は片腕で容易に扱えるものではない。……まあ、両利きであれば話は別だろうけども。
最悪、彼は二度と剣を振るえない。
数日中に戻ってくるだろう……、そう言い残して、源さんは近藤さんに報告するため、大広間から出て行った。
そして、再び訪れる沈黙。
私達は先程まで楽しく和気あいあいとしていたけれど、砂を食 むような気持ちで食事を済ませ、それぞれの自室に戻った。
楓(………今日は半月、かぁ)
誰もが寝静まった屯所で中天に浮かぶ、かまぼこ型の半月を独りで眺める。
夢見が悪くて起きてしまった、そう思いたかったが、ただ夕餉の話が頭をちらつかせて眠れなかっただけである。
私のせいだ、と。
もう少し強めに彼を塞き止めていたりさえすれば、腕を失わなかったかもしれない。
お守りでもなんでも手渡していればよかったかもしれない。
あんなことを言ったところで、何も変わらなくても、それでも何かできたのではないか。
そんな後悔が心を蝕んでいく。
ギリ、と奥歯を噛み締めながら恨めしそうに顔をあげたら、沖田さんの顔が目の前に映った。
楓「ッ!?」
沖田「しー、みんな起きるでしょ」
悪戯が成功したと嬉しそうな彼の笑みは月光に照らされているからか、とても妖艶で、一瞬………目を奪われていた。
楓「………何で、こんなところに?」
沖田「楓ちゃんこそ。そんな薄着でいると体冷やすよ?」
どかりと隣へ座り込む彼に、ただ月を観ていただけだと呟く。
小さくそうか。と相槌を打つ彼が、何だか優しく感じて、知らないうちにぽつりぽつりと言葉が溢れ出す。
楓「………思い出すんですよ、あの子が死んだ日も、こんな月だったから」
沖田「あの子って、幼なじみだって言ってた子?」
彼の問いに力なく笑う。
懐かしむように慈しむように、あの子の笑う姿が、脳裏に焼き付いて離れない。
楓「あの子は私の………唯一の支えだった。
お姫様のように、周りの大人も子供にも愛されて、大事にされて……輝く太陽な、笑顔が似合う子だった」
あの子が“光”であるなら、私は“影”となる。
あの子を守るためなら、あの子といれるのなら、何があっても平気だった。
あの事故がなければ。
楓「………私は疫病神なのかもしれませんね。大切にしていた人も守れない。存在するだけで、誰かを傷つける」
沖田「そうかな。
もしキミがすべて諦めて、願いを放り出すつもりなら僕がキミを殺してあげるよ。
本当に疫病神なんなら、僕が斬ってあげようか?」
スッと目を細めながら彼は私の顔を覗く。
その薄緑色の瞳には何の感情も読み取れない、冗談であろうがそうでなかろうが、彼の言葉から何故か、優しさが感じられた。
軽く鼻で笑い飛ばしながら、皓皓 と私達を見下ろしている月を再び眺める。
千鶴「山南さんは新選組の総長じゃないんですか?」
新八「あ、いや、」
平助「違う違う。新選組ってのは新しく選ぶ組って書くだろ?俺たちが言っているのは選の字を手辺にして────って、ぉわっ!?」
左之「平助!!───っ!?」
楓「やめなんし、こンの馬鹿共!!」
左之さんが平助と取っ組み合いを始めかける前に、クナイを投げ二人に向かって怒鳴る。
この一瞬の惨状に声をあげた千鶴に怪我をさせぬよう、私は体を張って彼女を背後でかばっていた。
唖然として畳に打ち付けられる平助をよそに、肩で息をするほど、頭に血が上っていた左之さんは、邪魔をするなとばかりに私を睨み付ける。
そんな睨みに私も睨み返す。怒りで我を忘れている奴なんかに怯むわけがない。
千鶴「ぁ……ッ……アキさん…」
楓「平助ッ、あんたは口が軽すぎる。幹部っつう自覚を持ちんさい!
左之さんも、左之さんだら。そいつ、どついたところで何の解決にもなりゃせんだろうがッ!!」
左之「………楓」
平助「ごめん」
楓「頭が冷めたんならそれで良し。私に謝るんじゃなしに、千鶴の事をもっとよく考えて行動しなさんす」
青筋をたてながら、信州弁で男二人に怒鳴り付ける楓を誰もが怖じ気づいていた。
中には流石にかわいそうになってきたらしく、自分達も悪いと言い出してきた。
新八「いや、これはこんな話をここでした俺たちもよくねえよ」
平助「………俺も悪かった。…けど、すぐ左之さんは手が出るんだもんなあ」
源さん「千鶴ちゃん。これが君達に聞かせられるギリギリのところだ。気になるだろうが、何も聞かないでほしい」
千鶴「でも!」
楓「千鶴……ッ」
沖田「平助の言う"しんせんぐみ"っていうのは、可愛そうな子たちのことだよ」
反論しようとする彼女を咎めるも、沖田さんが静かに彼女の質問に答える。
彼の解釈を反対するものは誰もおらず、皆……空を見つめて何かを思案していた。
重大な秘密の一部に踏み込んでしまったと、千鶴は身を強張らせていた。
刀は片腕で容易に扱えるものではない。……まあ、両利きであれば話は別だろうけども。
最悪、彼は二度と剣を振るえない。
数日中に戻ってくるだろう……、そう言い残して、源さんは近藤さんに報告するため、大広間から出て行った。
そして、再び訪れる沈黙。
私達は先程まで楽しく和気あいあいとしていたけれど、砂を
楓(………今日は半月、かぁ)
誰もが寝静まった屯所で中天に浮かぶ、かまぼこ型の半月を独りで眺める。
夢見が悪くて起きてしまった、そう思いたかったが、ただ夕餉の話が頭をちらつかせて眠れなかっただけである。
私のせいだ、と。
もう少し強めに彼を塞き止めていたりさえすれば、腕を失わなかったかもしれない。
お守りでもなんでも手渡していればよかったかもしれない。
あんなことを言ったところで、何も変わらなくても、それでも何かできたのではないか。
そんな後悔が心を蝕んでいく。
ギリ、と奥歯を噛み締めながら恨めしそうに顔をあげたら、沖田さんの顔が目の前に映った。
楓「ッ!?」
沖田「しー、みんな起きるでしょ」
悪戯が成功したと嬉しそうな彼の笑みは月光に照らされているからか、とても妖艶で、一瞬………目を奪われていた。
楓「………何で、こんなところに?」
沖田「楓ちゃんこそ。そんな薄着でいると体冷やすよ?」
どかりと隣へ座り込む彼に、ただ月を観ていただけだと呟く。
小さくそうか。と相槌を打つ彼が、何だか優しく感じて、知らないうちにぽつりぽつりと言葉が溢れ出す。
楓「………思い出すんですよ、あの子が死んだ日も、こんな月だったから」
沖田「あの子って、幼なじみだって言ってた子?」
彼の問いに力なく笑う。
懐かしむように慈しむように、あの子の笑う姿が、脳裏に焼き付いて離れない。
楓「あの子は私の………唯一の支えだった。
お姫様のように、周りの大人も子供にも愛されて、大事にされて……輝く太陽な、笑顔が似合う子だった」
あの子が“光”であるなら、私は“影”となる。
あの子を守るためなら、あの子といれるのなら、何があっても平気だった。
あの事故がなければ。
楓「………私は疫病神なのかもしれませんね。大切にしていた人も守れない。存在するだけで、誰かを傷つける」
沖田「そうかな。
もしキミがすべて諦めて、願いを放り出すつもりなら僕がキミを殺してあげるよ。
本当に疫病神なんなら、僕が斬ってあげようか?」
スッと目を細めながら彼は私の顔を覗く。
その薄緑色の瞳には何の感情も読み取れない、冗談であろうがそうでなかろうが、彼の言葉から何故か、優しさが感じられた。
軽く鼻で笑い飛ばしながら、