第四章・忌まわしき血と力
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沖田「………ふふ、いや?
それこそ、一くんに相手してもらったらどうかな?
彼から一本でもとれれば、土方さんも千鶴ちゃんの実力を認めて、僕達の見回りの同行を許可してくれるかもね」
千鶴「それって………!」
千鶴の顔が輝く。
外出許可さえとれれば、父を探しに外へ出られる。彼女にとって喉から手が出るほどにほしかったものだろう。
あくまでも可能性だから確率は低いが、それでも何もしないよりはいい。
千鶴「…………」
少しだけ冷静に考え始めた彼女に、斎藤さんは小さくため息づきながら「心配するな。加減はしてやる」と声をかける。
斎藤「どこからでも打ち込んでこい」
楓「……! 斎藤さん……」
沖田「ちょっと、楓ちゃん」
沖田さんに制され、私はもどかしく口を閉じると、彼の声が中庭で静かに響く。
斎藤「腰のものが飾りではないと証明して見せろ」
千鶴「………っ」
改めて千鶴は小太刀と、斎藤さんを交互に見た。その表情からは何も窺い知れない。
いざ、実践せよと言われたら確かに戸惑ってしまうかもしれない。
斎藤「どうした。その小太刀は、やはり単なる飾りなのか」
痺れを切らした彼はそう言う。
千鶴は助けを求めるように、私へ視線を向けてくるが、私はあえて無言を突き通した。
これは千鶴の問題であり、第三者の私が出る必要はない。彼女が自分でやらなくちゃいけない事だし、試練でもある。
それを、私が邪魔をするわけにはいかない。
千鶴「た、確かに護身術くらいなら近所の道場で習っていましたが………」
斎藤「ならば、」
千鶴「でも斬りかかるなんて出来ません!
刀で刺したら、人は死んじゃうんですよ!?」
その場にいた誰もが、瞠目 した。
当たり前なことを当たり前ではない、そう答える彼女に思わず顔が綻ぶ。
それだけの芯がしっかり根付いているのなら、なおさら相手してもらった方がいい。
そんなことを考えていると、あの子らしいその言葉に、一拍置いてから沖田さんが腹を抱えて笑いだした。
沖田「っ………あははっ!
一君相手に『斬っちゃうかも』って心配するなんて!最高!」
千鶴「わ、私だって勝てるとは思ってませんけど………!
でも、」
自覚はあるのか、千鶴も恥ずかしそうに俯く。しかし、彼女は彼女なりに、ただ単に人を傷付けるだけの行為はしたくないという意志があった。
斬られる心配をされた斎藤さんは、一瞬憮然とした顔をしたが、すぐにいつものように冷静さを取り戻した。
楓「千鶴。人の心配をするのはいいけれど、自分の実力を測るためだから、遠慮せずに堂々となさい」
千鶴「………アキさん」
斎藤「暁犬の言う通りだ。
どうしても刃を使いたくないと言うのなら、鞘を刀代わりに使うか、峰打ちで打ち込め」
彼女の意思を汲んで彼は指示を出す。そこまで言われて、何もしないわけには行かない。
千鶴「………よろしくお願いします」
前へと躍り出る彼女は刃を上にして小太刀を構える。しかし、刀の柄に手をかけたまま動かない彼に迷いはしたが、覚悟を決めて小太刀をぐっと握り締めた。
千鶴「行きます!」
やぁ、という掛け声と共に、真っ直ぐ峰打ちで攻め入る。
もう少しで当たる。そう思った瞬間、ギン、と重い金属音と共に、千鶴の首元へと刃が突き付けられていた。
一瞬遅れて、弾き飛ばされた彼女の小太刀が地に転がる。
沖田「………どう、今の?」
楓「どうって………」
急に話を振られ、思わず見とれてしまっていた私は言葉に詰まった。
振り返ると、沖田さんの視線は二人の方に向けられたままだった。
私も再び、彼らをみる。
楓「……………。見ての通り、素晴らしい居合いだったと思いますけど」
沖田「確かに、一君は居合いの達人なんだけど………そうじゃなくて」
千鶴ちゃんの方。
彼はそう言った。改めて私は彼女へ目を向ける。どうやら彼女はまだ、目の前の出来事から覚め切らぬようだった。
ぼぅっと放心したまま、首元の刀と斎藤さんを交互にを見上げている。
楓「彼女の、心根通りの太刀筋だと思いますよ。
………正直なところ、実践向きではないですけど」
ただただ、思ったことを口にする。
彼女の腕は上手い下手などと、わざわざ言葉にするまでも無い。
なんの駆け引きもしない、凡庸 な踏み込み。今は実力を測るためとはいえ、いざ実戦となれば、まず命は無いだろう。
けれど、その素直すぎる太刀筋と………しゃんと背を伸ばした構えは、彼女らしさを実直に表していた。
それこそ、一くんに相手してもらったらどうかな?
彼から一本でもとれれば、土方さんも千鶴ちゃんの実力を認めて、僕達の見回りの同行を許可してくれるかもね」
千鶴「それって………!」
千鶴の顔が輝く。
外出許可さえとれれば、父を探しに外へ出られる。彼女にとって喉から手が出るほどにほしかったものだろう。
あくまでも可能性だから確率は低いが、それでも何もしないよりはいい。
千鶴「…………」
少しだけ冷静に考え始めた彼女に、斎藤さんは小さくため息づきながら「心配するな。加減はしてやる」と声をかける。
斎藤「どこからでも打ち込んでこい」
楓「……! 斎藤さん……」
沖田「ちょっと、楓ちゃん」
沖田さんに制され、私はもどかしく口を閉じると、彼の声が中庭で静かに響く。
斎藤「腰のものが飾りではないと証明して見せろ」
千鶴「………っ」
改めて千鶴は小太刀と、斎藤さんを交互に見た。その表情からは何も窺い知れない。
いざ、実践せよと言われたら確かに戸惑ってしまうかもしれない。
斎藤「どうした。その小太刀は、やはり単なる飾りなのか」
痺れを切らした彼はそう言う。
千鶴は助けを求めるように、私へ視線を向けてくるが、私はあえて無言を突き通した。
これは千鶴の問題であり、第三者の私が出る必要はない。彼女が自分でやらなくちゃいけない事だし、試練でもある。
それを、私が邪魔をするわけにはいかない。
千鶴「た、確かに護身術くらいなら近所の道場で習っていましたが………」
斎藤「ならば、」
千鶴「でも斬りかかるなんて出来ません!
刀で刺したら、人は死んじゃうんですよ!?」
その場にいた誰もが、
当たり前なことを当たり前ではない、そう答える彼女に思わず顔が綻ぶ。
それだけの芯がしっかり根付いているのなら、なおさら相手してもらった方がいい。
そんなことを考えていると、あの子らしいその言葉に、一拍置いてから沖田さんが腹を抱えて笑いだした。
沖田「っ………あははっ!
一君相手に『斬っちゃうかも』って心配するなんて!最高!」
千鶴「わ、私だって勝てるとは思ってませんけど………!
でも、」
自覚はあるのか、千鶴も恥ずかしそうに俯く。しかし、彼女は彼女なりに、ただ単に人を傷付けるだけの行為はしたくないという意志があった。
斬られる心配をされた斎藤さんは、一瞬憮然とした顔をしたが、すぐにいつものように冷静さを取り戻した。
楓「千鶴。人の心配をするのはいいけれど、自分の実力を測るためだから、遠慮せずに堂々となさい」
千鶴「………アキさん」
斎藤「暁犬の言う通りだ。
どうしても刃を使いたくないと言うのなら、鞘を刀代わりに使うか、峰打ちで打ち込め」
彼女の意思を汲んで彼は指示を出す。そこまで言われて、何もしないわけには行かない。
千鶴「………よろしくお願いします」
前へと躍り出る彼女は刃を上にして小太刀を構える。しかし、刀の柄に手をかけたまま動かない彼に迷いはしたが、覚悟を決めて小太刀をぐっと握り締めた。
千鶴「行きます!」
やぁ、という掛け声と共に、真っ直ぐ峰打ちで攻め入る。
もう少しで当たる。そう思った瞬間、ギン、と重い金属音と共に、千鶴の首元へと刃が突き付けられていた。
一瞬遅れて、弾き飛ばされた彼女の小太刀が地に転がる。
沖田「………どう、今の?」
楓「どうって………」
急に話を振られ、思わず見とれてしまっていた私は言葉に詰まった。
振り返ると、沖田さんの視線は二人の方に向けられたままだった。
私も再び、彼らをみる。
楓「……………。見ての通り、素晴らしい居合いだったと思いますけど」
沖田「確かに、一君は居合いの達人なんだけど………そうじゃなくて」
千鶴ちゃんの方。
彼はそう言った。改めて私は彼女へ目を向ける。どうやら彼女はまだ、目の前の出来事から覚め切らぬようだった。
ぼぅっと放心したまま、首元の刀と斎藤さんを交互にを見上げている。
楓「彼女の、心根通りの太刀筋だと思いますよ。
………正直なところ、実践向きではないですけど」
ただただ、思ったことを口にする。
彼女の腕は上手い下手などと、わざわざ言葉にするまでも無い。
なんの駆け引きもしない、
けれど、その素直すぎる太刀筋と………しゃんと背を伸ばした構えは、彼女らしさを実直に表していた。