第参章・時を渡る者
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楓「………………」
千代「たとえ、あの場所を拒んでも………私達の屋敷が、楓の帰る場所だからッ!!」
ぴくりと動きを止め、静かに聞いていた彼女は、その場から動かず憤怒に満ちた眼差しを千代ちゃんに向ける。
楓「黙れ」
千代「っ!!」
楓「一体、何がわかる?この怒りを憎しみを恨みを、悲しみを……お前らに理解できるか?
これ以上、俺を化け物にしないでくれッ!!
お前ら一族のせいで、こうなったんだ!!
お前らが追い込んだから、あいつが、死んだッ。
あのまま関わらずにいればよかったのに、俺のせいで、お前らのせいで、死んだんだ…ッ。
………返せ………。
返せよ。
あの子を、
咲桜を返せよ
……俺の、ねえ、さんを…か…ッは…ッは…ッ」
千代ちゃんの言葉を全て否定するかのように、自分に言い聞かせるかのように、楓ちゃんは彼女を睨み付けていた。
胸を押さえながら、肩で荒い息を繰り返すその様子を見た山崎くんが「いけません」と慌て始めた。
山崎「誰か、彼女を落ち着かせてください!」
沖田「……ごめんね」
楓「…ッは……ぁ…ッ」
平助をどかし、咄嗟に彼女の背後をとって手刀を落とす。
気を失った彼女を抱き抱えたとたん、この間よりも異様に軽く感じた。
体つきも、たった3日しか経っていない筈なのに、更に痩せこけている気がする。
沖田「……………」
平助「………わ、悪い。総司………」
平助が青ざめた顔で僕に謝ってくる。
なんで平助が謝るのかが分からないけど、お腹の底からドロッとしたものが込み上げてくるのは感じたから、もしかしたらそれが顔に出ているのかもしれない。
千代「……………ッ!!」
沖田「なに見てるの。早く帰りなよ」
びくびくと怯えながら僕らをみる彼女はなにかを言おうとしたけど、なにも言えず、凪くんが彼女の腕を引く。
凪「千代様…。もう…………」
千代「……っ、………………わかった」
ごめんなさい。その一言を遺し、彼女達は信濃へと帰っていった。
それからと言うものの、気絶させた楓ちゃんを部屋へと連れていくことにした。
山崎くんによれば、過剰な精神への負荷で過呼吸を引き起こしているらしく、近藤さんも土方さんも、しばらく休ませた方がいいとの判断だった。
それも牢屋送りではなく、僕が監視するという条件付きで、だ。
………まあ、意識が戻ったら、尋問することになるけど。
沖田(…………まったく。余計な仕事を増やしてくれるんだから)
軽くうなされている彼女の額に、冷たく濡らした手拭いをのせてやる。
その際に、小さな声で幼馴染みだという子の名前が頻りに出てくる。
彼女の後悔というか……そういったのは、両親と彼女自身によるものだと思ってた。
沖田「………それがまさか、一族全員だったとはね」
ここまで根深い恨みを抱く人間を見たのは、たぶん、初めてかもしれない。
さらりと柔らかい髪を撫で鋤 く。
あの時“殺してくれ”と言ったのは………『本当に化け物となってしまう自分を、ちゃんと殺してくれる』と確信していたから。
なんの同情も慈愛もなく、ただ確実に。
沖田(楓ちゃんは、僕らを殺し屋かなにかと勘違いしてるんじゃないの?)
だいたい、僕ら新選組は無闇に民を傷つけるようなことはしない。
そういう規則があるから。
浪士とか怪しい奴らがいたら捕り物となるけどさ。
…………まあ、僕が“殺しちゃいましょうよ”………なんて、よく言うからかもしれないけど。
沖田(………まだ、君には聞きたいことがあるんだから………)
死なれると困る。
個人としてじゃない。
組織として、重要人物なんだから、聞き出せないまま死なれないようにする為。
ただそれだけ。
その為に生かしているにすぎない。
それなのに、なんでこんなに胸がズキリと痛むんだろう。
沖田「………………ほんと、めんどくさい」
穏やかに眠る彼女を、じっと眺めていたらいつの間にか僕も横になって寝転がっていた。
今日は非番だし、稽古もないから一日中ゆっくりできるのに、一人だとつまらない。
かといって、土方さんの愛読しているやつで悪戯をする気分でもない。
沖田(早く……起きないかな……)
早く起きて、隣を見たら………彼女はどんな顔をするんだろう。
そんなことを考えながら、変わらず髪を撫でているうちに、僕も一緒になって眠りについていた。
千代「たとえ、あの場所を拒んでも………私達の屋敷が、楓の帰る場所だからッ!!」
ぴくりと動きを止め、静かに聞いていた彼女は、その場から動かず憤怒に満ちた眼差しを千代ちゃんに向ける。
楓「黙れ」
千代「っ!!」
楓「一体、何がわかる?この怒りを憎しみを恨みを、悲しみを……お前らに理解できるか?
これ以上、俺を化け物にしないでくれッ!!
お前ら一族のせいで、こうなったんだ!!
お前らが追い込んだから、あいつが、死んだッ。
あのまま関わらずにいればよかったのに、俺のせいで、お前らのせいで、死んだんだ…ッ。
………返せ………。
返せよ。
あの子を、
咲桜を返せよ
……俺の、ねえ、さんを…か…ッは…ッは…ッ」
千代ちゃんの言葉を全て否定するかのように、自分に言い聞かせるかのように、楓ちゃんは彼女を睨み付けていた。
胸を押さえながら、肩で荒い息を繰り返すその様子を見た山崎くんが「いけません」と慌て始めた。
山崎「誰か、彼女を落ち着かせてください!」
沖田「……ごめんね」
楓「…ッは……ぁ…ッ」
平助をどかし、咄嗟に彼女の背後をとって手刀を落とす。
気を失った彼女を抱き抱えたとたん、この間よりも異様に軽く感じた。
体つきも、たった3日しか経っていない筈なのに、更に痩せこけている気がする。
沖田「……………」
平助「………わ、悪い。総司………」
平助が青ざめた顔で僕に謝ってくる。
なんで平助が謝るのかが分からないけど、お腹の底からドロッとしたものが込み上げてくるのは感じたから、もしかしたらそれが顔に出ているのかもしれない。
千代「……………ッ!!」
沖田「なに見てるの。早く帰りなよ」
びくびくと怯えながら僕らをみる彼女はなにかを言おうとしたけど、なにも言えず、凪くんが彼女の腕を引く。
凪「千代様…。もう…………」
千代「……っ、………………わかった」
ごめんなさい。その一言を遺し、彼女達は信濃へと帰っていった。
それからと言うものの、気絶させた楓ちゃんを部屋へと連れていくことにした。
山崎くんによれば、過剰な精神への負荷で過呼吸を引き起こしているらしく、近藤さんも土方さんも、しばらく休ませた方がいいとの判断だった。
それも牢屋送りではなく、僕が監視するという条件付きで、だ。
………まあ、意識が戻ったら、尋問することになるけど。
沖田(…………まったく。余計な仕事を増やしてくれるんだから)
軽くうなされている彼女の額に、冷たく濡らした手拭いをのせてやる。
その際に、小さな声で幼馴染みだという子の名前が頻りに出てくる。
彼女の後悔というか……そういったのは、両親と彼女自身によるものだと思ってた。
沖田「………それがまさか、一族全員だったとはね」
ここまで根深い恨みを抱く人間を見たのは、たぶん、初めてかもしれない。
さらりと柔らかい髪を撫で
あの時“殺してくれ”と言ったのは………『本当に化け物となってしまう自分を、ちゃんと殺してくれる』と確信していたから。
なんの同情も慈愛もなく、ただ確実に。
沖田(楓ちゃんは、僕らを殺し屋かなにかと勘違いしてるんじゃないの?)
だいたい、僕ら新選組は無闇に民を傷つけるようなことはしない。
そういう規則があるから。
浪士とか怪しい奴らがいたら捕り物となるけどさ。
…………まあ、僕が“殺しちゃいましょうよ”………なんて、よく言うからかもしれないけど。
沖田(………まだ、君には聞きたいことがあるんだから………)
死なれると困る。
個人としてじゃない。
組織として、重要人物なんだから、聞き出せないまま死なれないようにする為。
ただそれだけ。
その為に生かしているにすぎない。
それなのに、なんでこんなに胸がズキリと痛むんだろう。
沖田「………………ほんと、めんどくさい」
穏やかに眠る彼女を、じっと眺めていたらいつの間にか僕も横になって寝転がっていた。
今日は非番だし、稽古もないから一日中ゆっくりできるのに、一人だとつまらない。
かといって、土方さんの愛読しているやつで悪戯をする気分でもない。
沖田(早く……起きないかな……)
早く起きて、隣を見たら………彼女はどんな顔をするんだろう。
そんなことを考えながら、変わらず髪を撫でているうちに、僕も一緒になって眠りについていた。