彼・沖田から見た楓に対する印象というものは、簡素に一言で言えば………まぁ、同情、みたいなものだろう。

痩せ細って生きてくことすら困難な、捨て猫を拾ったような感じに近かった。



沖田(………でも、なんか気になるんだよねー･･･あの言葉が………)



気になるというか、心底驚いていたのが本音だけど。
だって普通はあんな事言わないよ？僕なんかに憧れてたー………だなんてさ。



沖田(………憧れの対象にはならないと思うんだけどなー？)



いまいち、あの子の言葉の意味がよく分からない。
だって人を殺している奴なんか、畏怖したりするとか、そういったものじゃない？
なのに、あの子は………楓ちゃんは、僕に対して恐れを抱くどころか。むしろ、会えて喜んでいるようだったし。



沖田(………未来から来た子って、みんなそうなのかな………)



もしそうだとしたら、考えただけでも身震いする。ある意味、変人でしょ、考えてみれば。
そんな事を考えてたら、ガラリと何かの音が聞こえた。



沖田(………あ、彼女達、上がったんだ)



どうやら二人は、湯船から上がって、今着替えているところだろう。



沖田(………もう暫くすれば、出てくるかな)



千鶴「あの………」



そう思っていた時、案の定………千鶴ちゃんが戸を開けて出てきた。



千鶴「お風呂上がりました」



沖田「ああ、うん。………じゃあ、部屋に戻って楓ちゃんの怪我の手当てしようか。
手当てとかは君に任せるから。
………それぐらい、出来るよね？」



千鶴「は………はい」



それを聞いた僕は満足げに笑ってから、楓ちゃんの方を見る。



沖田(………ん？)



彼女の首に、何かの模様みたいなのを見つけた僕は、目を細めてじっと彼女の首を見ていた。



沖田(………あれって、紅葉………だよね………？)



湯船に浸かったせいなのか、火照った首の右側辺りに、丁度赤子の拳ぐらいの大きさがあるような紅葉の痣みたいなのが浮き出ていた。
僕がじっと見ていたのに気付いたのかはよく分からないけど、彼女がそっぽを向きながら「………ありがと」と小さかったけど、そう呟いていた。