千鶴「………女の一人旅は危険だと言われたので、男装してて………そしたら、昨日。
たまたま………」



ふむ、と話を聞いていた私は、もしかしたらと何かを思いついたことを述べる。



楓「それを話したら、千鶴。あんた、助かるかもしれないよ？」



千鶴「え？」



千鶴は驚いたように、私を見た。
確か、彼らは私達のことを坊主（・・）と呼んでいた。
可能性としてはまだ低いだろうけど、でも、ほんの少しなりと希望は見えた気がする。



千鶴「ほ、本当ですか！？」



楓「多分だけどね。
奴ら、特にあの三人組は千鶴を男だと思っているかもしれないし。
女と分かれば、恐らく有利にはなるはず」



「あの近藤さんだって、話せばきっと分かってくれる人だと思うし」と言うと「で、でもっ」と千鶴はまた目に涙を浮かべていた。



千鶴「それじゃ、アキさんはどうするんですか！？」


　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
楓「私は別にいいんだよ、生きたいとは思わないし。それに言ったでしょ？死ねなかった（・・・・・・）って」



そう言って千鶴の頭を撫でてやるけど、またポロポロと泣きながら、私の手を掴んだ。
………まったく、本当に泣き虫なんだから。
小さくしゃくりあげる彼女の頭を優しく撫でてやる。



千鶴「でもっ………！！アキさんがここに来たのは………っ、私と出逢えたのは………っ、何か意味があると思います！！」



「わ、私は、そう思いましたっ」としっかりと私を見ながら泣いている彼女に、「……………意味、かぁ……………」と小さく苦笑する。



楓「私には………生きる資格も生きる意味も、もう無いよ、千鶴。
それに、私は嫌われ者だから」



千鶴「それは前の時代での話でしょう！？
お願いです………アキさん………生きてください………………ぅ………っう、」



楓「え、ちょ、ちづ────」



千鶴「うわぁぁぁん！！！」



嫌な予感がした私は、泣き喚きながら抱きついてきた千鶴に、ほんっと翻弄されっぱなしだった。



楓「わ、わかった。………もう、わかったから、ほら泣き止んでってば、千鶴………っ」



千鶴「アキさぁん………っ、お願いです～っ！！」



？「………なんだ、この状況は」



子供をあやすように、悪戦苦闘していると、スッと障子が開く音が聞こえ、先ほど利いた人の声が頭上からしてきた。