楓「私を……………ｯ、殺す……なんざ、十年早いっての………ッ！！」



後の奴等の急所を刺し終えたところで、さすがに眩暈がしてきた。
身体中の血が出てしまっているからか、貧血を起こしているんだと思うけど、そんな事しているうちに、誰かの足音が聞こえる。

……………そう、あの新選組（かれら）の足音が。



楓「ち、くしょ………」



ここで捕まれば自分はもちろん、あの子まで拘束され、この件で追求されたら………心の優しい子のことだ。
他人を庇って“何も知らない”とでも言うのだろう。
それはそれで悪いことではない。が、その嘘がかえって命取りになってしまう。
それだけは何がなんでも避けたいところだが、体が言うことを聞かない。



楓「ぐ………っ」



千鶴「っ！？
アキさん、アキさんッ！！」



刀を地面に突き刺し、倒れ込む私に彼女が駆け寄ると、背後でヒヤリと冷たい声が聞こえた。



？「あーらら。
全員斬ってくれるとは思ってもみなかったけど………」



？「あんたが遅いからだ」



千鶴「……………ッ！？」



千鶴ちゃんの身体が、がくがくと震えていた。
まるで、さっきの奴らとは別の何かに怯えているようで、意識を失いかけた私の中で何かが破裂した気がした。



？「え～？僕は遅くなんかないと思うけどなぁ。一君の方が早すぎるんじゃないの？」



楓「……………ｯ、か……………ｯ」



この、子を………怯えさせるたぁ……………ｯ、誰だか知んないけど、守んな………きゃ……………ｯ。



千鶴「！？、アキさんダメです、怪我が………ｯ」



千鶴ちゃんの声で、私に気づいた男達は目を細目ながら、私を見ていた。



？「……………へぇ、まだ動けるんだ？」



突き刺した刀に力をいれ、震える身体に鞭を打ちながら立ち上がる。
視界がぼやけつつも彼らを睨み付け、やめてくれとしがみつく彼女の手を振り払う。



楓「……………に、げろ………ガキ……………ｯ」



千鶴「嫌です！！アキさ────ｯﾂ！？」



彼女の制止を聞かず、一気に相手の懐に入り込む。
相手もそんなことを知っていたらしく、対処してきたが、自分の意識が朦朧としていて、何をしたのかわからなくなった。
ただ、聞こえてきたのは「ｯ……やるね………ｯ！！」という声だけ。
その声で自分は相手を押しているのだと錯覚をし、自分の中にいる何かが呼び覚まそうとしたその時。



楓「────がは……ｯ！！」



お腹に一発殴られ、口から血が飛び出てきた。
トドメとして、後頭部を殴られた私は、力無く地面に倒れ伏せた。



楓(守れ……なか……っ……………)



それから、千鶴ちゃんの叫び声と男3人くらいの声が聞こえたけど、そんな確認する気力も毛頭なく、そのまま意識を手放した。