19年一本勝負さん参加録
サンタクロースの正体
しまった。
日付はとっくに二十五日。
瞼を開けたら、おはようの挨拶を優しくかけてくる。まぶしく輝く彼の笑顔。
本来なら、その目覚めがどんなに幸せなことだろう。だが、今日だけは決してそうなってほしくなかった。
玲は叫んだ。
「しまったー!」
「ど、どうした突然!」
驚いた彼にはっとして、玲は何でもないと必死でごまかした。
だって、ばれる訳にはいかないのだ。
クリスマスが始まる前に玲は彼に贈り物を用意していた。
コバルトブルーを目指したインク。
彼が万年筆を愛用していることから贈るのはインクにしようと決めていた。
調べてみると、都心に出れば専門店もあり、そこでは自分で色を調合してオリジナルのインクを作ることが出来ると知った。
これだ、と真史は思った。どうしても再現したい青色があったのだ。
店の人にも協力してもらい、なんとか調合できたそのインクは包装もばっちりスタンバイ・オーケイ。
ディナーの後、呆れ顔の彼を無視して、無理やりベッドの横に靴下もセットしておいた。
全ての準備は整った。
それなのに。
一体、どうして寝てしまったんだ! 俺は!
玲は心の中で自分をボコボコに殴りつぶしてしまいたい気分だった。
本来の計画では、彼が眠ったのを見計らって、こっそりとプレゼントを空っぽの靴下の中に入れる。朝、彼と共に起きる。靴下の中身に何か入っていると彼が驚く。そして、サプラーイズ!
そんな夢の行動プランが、自分の睡魔によって全てぶち壊しになってしまったのだ。
情けない自分に涙が出てくる。
「あれ? おかしいな」
彼が飾っておいた靴下を見て素っ頓狂な声を出した。
「どうした?」
「なんか変じゃない?」
「変?」
言われてみれば、靴下の底の部分が膨らんでいるような。
慌てて玲はそれをひったくった。足を入れる口に手を突っ込むと、何かに触れた。
掴んだまま手を引き抜けば、それが姿を現す。
「わっ、何それ! もしかしてプレゼント!?」
彼が声をあげた。
玲は驚きで言葉を失った。
自分が靴下に入れ忘れたものがそこに入っていたのだった。
「すげえ、なんだか分かんないけれど、すげぇ! 超すげえ! よかったな、誠!」
「えっ」
驚きが去ったのちに玲を襲ったのは歓喜だった。そのまま彼に抱き着くと彼は困ったような表情をしたが、そのまま玲の背中に手をまわしてくれる。
「これ、誠へのプレゼントだよ! すっげえな!」
「あはは、そうかな。すっごいね。とりあえず、朝食にしよう。ホットココアも、もう出来ているから。その後この包みは開けてみようね」
「らじゃ!」
玲が身体を離すと、彼は食事の準備の為にキッチンに向かった。ぽつりと玲に聞こえないような独り言を零しながら。
「まったくもう。あいつ、隠すの下手くそ」
第342回 2019.12.22 2h
お題:サンタクロースの正体/ホットココア/「隠すの下手くそ」
しまった。
日付はとっくに二十五日。
瞼を開けたら、おはようの挨拶を優しくかけてくる。まぶしく輝く彼の笑顔。
本来なら、その目覚めがどんなに幸せなことだろう。だが、今日だけは決してそうなってほしくなかった。
玲は叫んだ。
「しまったー!」
「ど、どうした突然!」
驚いた彼にはっとして、玲は何でもないと必死でごまかした。
だって、ばれる訳にはいかないのだ。
クリスマスが始まる前に玲は彼に贈り物を用意していた。
コバルトブルーを目指したインク。
彼が万年筆を愛用していることから贈るのはインクにしようと決めていた。
調べてみると、都心に出れば専門店もあり、そこでは自分で色を調合してオリジナルのインクを作ることが出来ると知った。
これだ、と真史は思った。どうしても再現したい青色があったのだ。
店の人にも協力してもらい、なんとか調合できたそのインクは包装もばっちりスタンバイ・オーケイ。
ディナーの後、呆れ顔の彼を無視して、無理やりベッドの横に靴下もセットしておいた。
全ての準備は整った。
それなのに。
一体、どうして寝てしまったんだ! 俺は!
玲は心の中で自分をボコボコに殴りつぶしてしまいたい気分だった。
本来の計画では、彼が眠ったのを見計らって、こっそりとプレゼントを空っぽの靴下の中に入れる。朝、彼と共に起きる。靴下の中身に何か入っていると彼が驚く。そして、サプラーイズ!
そんな夢の行動プランが、自分の睡魔によって全てぶち壊しになってしまったのだ。
情けない自分に涙が出てくる。
「あれ? おかしいな」
彼が飾っておいた靴下を見て素っ頓狂な声を出した。
「どうした?」
「なんか変じゃない?」
「変?」
言われてみれば、靴下の底の部分が膨らんでいるような。
慌てて玲はそれをひったくった。足を入れる口に手を突っ込むと、何かに触れた。
掴んだまま手を引き抜けば、それが姿を現す。
「わっ、何それ! もしかしてプレゼント!?」
彼が声をあげた。
玲は驚きで言葉を失った。
自分が靴下に入れ忘れたものがそこに入っていたのだった。
「すげえ、なんだか分かんないけれど、すげぇ! 超すげえ! よかったな、誠!」
「えっ」
驚きが去ったのちに玲を襲ったのは歓喜だった。そのまま彼に抱き着くと彼は困ったような表情をしたが、そのまま玲の背中に手をまわしてくれる。
「これ、誠へのプレゼントだよ! すっげえな!」
「あはは、そうかな。すっごいね。とりあえず、朝食にしよう。ホットココアも、もう出来ているから。その後この包みは開けてみようね」
「らじゃ!」
玲が身体を離すと、彼は食事の準備の為にキッチンに向かった。ぽつりと玲に聞こえないような独り言を零しながら。
「まったくもう。あいつ、隠すの下手くそ」
第342回 2019.12.22 2h
お題:サンタクロースの正体/ホットココア/「隠すの下手くそ」