沖縄のある日の夕暮れ。
人々が少なくなった時間、海の音が響く中数人の中学生の会話が聞こえていた。

「はぁ〜今日も練習きつかったさ〜」

「やっさやー、全国大会も終わったことやし永四郎ーたまには練習緩めてほしいさ」

「なに言ってるんですか知念くん、俺は逆にさらに増やしてもいいくらいだと思ってますよ」

「あい！？それは勘弁さ〜腹が減ってぐてー入らんばーよ！」

全国大会は終了したが部長の木手と三年生メンバーは卒業まで三年生としての役割を全うすることと高校に上がってもテニスを続けるため練習を続けていた。
五人は練習を終え、いつもの道を歩き下校している途中、甲斐がふと海に目をやるとぽつんと人が立っているのが見えた。

「あい？この時期まだ冷たいのになにやってるんばー？あぬひゃー」

「どうしました甲斐くん」

「あそこ。あい人だよな？ずっと海の中に入って動かず立ってるみたいやさ」

近くまで行ってみようと海に近づき、よく見るとその人は髪型からして女性で、その女性は腰まで水につかっていた。

「あんなとぅくるでぬーしょーみあのイナグ」

平古場は呆れたような口ぶりでそう言ったが木手は別の感覚を覚え言葉を続けた。

「割と深いところまで行ってしまってるようですが…なんだか嫌な予感がしますね」

「やんやー声かけてみるば？」

甲斐が声をかけようとしたその時、女性はふと力が抜けたように海に倒れこんだ。

「くそっ、的中ですか！助けにいちゅんど！」

『はいでぇ！！！』

木手の声掛けで着ていた上着や靴を脱ぎ、女性のいた海に全員で助けに入った。
5人がかりで女性を浜辺へと運び、木手が意識を確認しようと声をかけ頬を叩くと息はしていたが返事はなかった。
そのかわりに頬に触れた際に海に入っていたのにもかかわらずその体は熱を帯びていたことに気がついた。

「一体何時間前からいたんだこの人は…」

「このいなぐ熱でもあるんば！？」

「ええ、多分ね。熱で倒れているだけでしょうから一旦俺の家へ運びます」

沖縄といっても濡れたままでは悪化させかねないと考え、部員は持っていたタオルで彼女の体を服の上から拭き、ジャージを羽織らせ、海から一番近い木手の家へと彼女を運んだ。



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