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★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★

[■ラストまでのあらすじ後■]


なんだかんだでアーちゃんは守人となり、またもや皆さん召集です。
新東西たちは新たな守人に驚愕です。同じく守人も、東西の正体を知って愕然。
世間とは、狭いものだ。
さて、今回はこれで終わりません。
東西となった代償を、総代に願い出るのです。
葛西は、保留としました。
東峰は……「総代」を願い出ます。
半ば予想通りの答えに、アーちゃんの不快感MAX。
しかしながら、叶えられる願いは叶えねばなりません。
アキラは約束します。
「ではこの瞬間より、東が死ぬまでの間、私は貴様のものである」
「それは、死ねば終りということでしょうか?」
「死が二人を別つまで、実によく聞く文言であろう」
ここでアーちゃんが、東の前に進み出ます。
手には、膳。膳の上には透明な液体で満たされたグラスが一つ。
東峰は悟ります。
つまり、今この場で死ねということか、と。
アーちゃんは言います。
「まだ引き返せる」
葛西も言います。
「これは総代のいつもの戯れだ。こんな茶番に付き合う必要はない。家族のことを考えろ」
珍しくアッキーも口を挟みます。
「貴様には、大切なものがいくつもあるはずだ。よく考えろ」
東峰には、大切な家族がいます。
弟はまだ幼く、東峰にそれはもう懐いております。
家族の誰もが東峰を愛し、東峰も同じだけの愛情を持っているのです。

東峰は考えました。(たっぷり5秒くらい)
アーちゃんに尋ねます。
「それが効くまでの時間は?」
それとは、グラスに入った液体のことでしょう。
中身はおそらく、毒薬です。
「さて、一分か一日か…」
「またいいかげんな物を用意したものだ」
「即刻効く、という物ではない。時間は相当にあると見ていい」
「それは、良かった」
透明な液体が、東峰の喉を潤します。
見た目はまんま水でしたので、かなり油断していたのでしょう。
一気飲みです。それはもう豪快な一気飲み。
すぐに美しいお顔が歪みます。もう手遅れです。
「うげっ、な、な、ま、まず、うえっ!!」
その、あまりの不味さ臭さに悶絶するも、東峰は気力だけで立ち上がり、高座で鎮座するアキラのもとへと急ぎました。
「これで、俺のものだ」
アキラを抱きかかえ、開けられた観音開きの扉から、奥院へと消えゆきました。

一分でも一秒でも、その間自分のものになるならば、たとえ家族が悲しもうとも関係ない。
そう決断した東峰に、アキラもとうとう観念いたしました。
もとより、東峰のことが大好き大好きで仕方なかったのですがね。

こうして奥院のとある一室において、それはもう淫靡で激しいプレイが始まることとなりました。
「あわ、あわわ、ぼ、僕はしょ、処女なのです。生娘なのです。あ、これは言葉の綾であり、女性でも娘でもありませんが、とにかく初めてなのですー」
「うるせぇっ、大人しくしてろ! こっちは時間がねぇんだっ」
なんだかんだでたっぷりの愛撫を施され、アキラはメロンメロンのぐっちゃぐちゃ。
アキラの様子に東峰の鼻息は、荒い荒い。
でも扱いは丁寧です。そこは、ほれ、慣れてますしおすし。
優しく解した窄まりに、でっかい凶器をスムースイン……これにて二人は目出度く結ばれましたとさ。

何時間も責められて、アキラは息も絶え絶えです。
ここで東峰は、死を覚悟します。
そろそろ時間切れになっても、おかしくはないのですから。
室内にはアキラと東峰の二人だけ。
アキラに見守れながらの死は、悪くはない……、ふと、魔が差してしまいました。
アキラもろともに……。
そんな誘惑を振り切る意気地は、もうありません。
喉元にかかる圧力に、さすがのアキラも覚醒します。
「ダ、ダメです……こんな、こと、しては、ダメ……」
既に呼吸はほとんどできず、このままではアキラの命は……。

突如としてアーちゃんが、乗り込んできました。
まるで東峰の愚行を見ていたかのようなタイミングです。
迷うことなく東峰を蹴り上げ、アキラを救出します。
殺気の篭る目で睨みつけるアーちゃんは、今にも東峰を食い殺さんが勢い。
アキラは苦しい息のもと、必死で言います。
「手、手出しは、…」
「分かってるっ」
アーちゃんは実に悔しそうでした。
が、そんなやり取りなど、東峰には見えておりません。
大切なモノを奪われた怒りに、ただただ支配されるだけです。
「触るな! そいつは俺のもんだ! 死ぬまでは俺のものだと約束したはずだ!!」 
大事な宝物を扱うように、アキラを抱き上げるアーちゃんに、東峰の怒りが爆発。
そしてアッキーにのされる(二度目)。チーン。

約5分ほどの気絶タイムが終了し、目覚めた東峰の前には、アッキーと奥院に仕える侍女たちがおりました。
いまいち状況が掴みきれません。
「まずは湯浴み。その後、飯だ」
アッキーが冷たく言い放ちます。
視線の先には、○液でドロドロになった東峰のチン○、いえ裸体があります。
アッキーが入浴を勧めるのは、当然の成行ですね。
ここで嫌な、いえ、幸運? どちらにしろ予感めいたものが、東峰の脳内を揺さぶります。
「毒じゃ…ねぇのか……」
「毒は毒だ。即刻、命に関わらないというだけのこと」
「雪客は、嘘は言わないと思ってたんだがな」
「嘘ではない。蓄積され続ければ、いずれは不備も出るだろう」
「それは、度を越したら、という意味か?」
「ああ」
そんなもの、お菓子だってお酒だって、なんだってそうです。
「一日かそこらで、死ぬはずじゃなかったのか?」
「誰がそんなことを言った?」
「守人が……くそっ、断言してねぇな」
「そういうことだ。そもそも雪客は、飲めば死に至るとも、命を奪うとも言ってはいない」
「嵌められたのか」
「おそらく試されたが正解だろう」
「……雪客は、約束を違わない。俺が生きてる限り、俺のものってことだな」
「そうだな」

こうしては東峰は、アキラを手に入れたわけですが、自らの命と家族をあっさりと捨てたことに、両親は拗ねに拗ねまくります。
アキラは可愛い嫁ではあるが、それとこれとは別なのです。
両親は、東峰への地味で小さな嫌がらせをしつづけることとなるでしょう。

とにもかくにもこれにて大団円、とはもちろんなりません。

荒淫で汚れた体を清め、食事(なぜか赤飯だった)をし、ゆっくりと眠った後で、アキラと東峰は改めて話し合います。
アキラが恐れているのは、自分の寿命と気質です。
死は必ず訪れるもの、しかも自分のほうが早い可能性がある。というか、確実に先に死ぬでしょう。
その後の東峰のことを考えると、悲しくて悔しくて堪らなくなるのです。
「死は無であるはず。だというのに、おかしなことを言っています。それでも考えてしまうのです。
僕の死に嘆き悲しみ、必死で立ち直ったあなたが、僕との思い出に涙しながら、それでもまた誰かと巡り会い恋に落ちる。
想像するだけで腹が立ちます。僕のいない場所で幸せになるあなたが許せない。実に我儘で勝手です。
でも、あなたに幸せになってほしいなどと、そんな綺麗事は口が裂けても言えません」
これが、アキラの本音なのです。
己が死した後、アーちゃんたちには最大限幸せになってほしいのです。生涯を笑って過ごしてほしいのです。
それが本心からの望みだと、声を大にして言えるというのに、伴侶にはそれができないのです。
なんと傲慢で自分勝手で、恐ろしい男なのでしょう。

東峰は笑います。それはもう愛しげに、アキラだけを見詰め笑うのです。
こうして東峰とアキラは、また約束を交わすことになりました。
それは東峰雅人を慕う人間に、悲しみを齎す約束です。
それでも問題ありません。
東峰には、アキラ以外どうでもいいのですから。
「ただし、やるべきことは、きちんとやりましょうね」
「わかってる」
東峰は、将来偉い人になるのです。最低限のお務めはしないといけません。
二人は他にもいくつかの約束を交わし、ようやく学園に戻ると決めました。

二人の交わした約束は、アーちゃんにも告げられました。
それを知ったとき、絶望にも似た悲憤が、アーちゃんを襲います。
自分が許されないだろうことを、東峰は許された。いえ、求められたのですから。
ここではっきりと、東峰への憎しみを意識します。

守人となったその日、アーちゃんはほんのちょっぴり壊れてしまいました。
要らぬという主人に対し、捨てるなと取り縋った結果です。
アーちゃんの内に、いくつもの矛盾が生まれてしまったのです。
高橋昭でいるという約束も、その一つです。
でもきっと大丈夫だったはず、この時点までは。
アーちゃんは、東峰に憎しみを抱きました。
守人である自分が、主人の伴侶を憎むのです。
本格的に壊れはじめたようです。

さて、アーちゃん、東峰、アキラの三人が、何日ぶりかで寮に帰ってきました。
先に車から降りたのはアーちゃんです。続いて東峰とアキラが降りてきます。
アーちゃんが見守るなか、二人は手を取り合って東峰の部屋に向かいます。
これからまた、いちゃいちゃするつもりなのでしょう。
アーちゃんは呆れ返りながらも、黙って見送ります。
不意に東峰だけが振り返りました。
一瞬だけ、互いの視線がぶつかります。
その瞬間、激しい怒りの感情がアーちゃんを飲み込みました。
東峰への憎しみは壮大になり、はっきりと殺意が芽生えたのです。

東峰は気付いていたのです。
アーちゃんが自覚しきれなかった想いを、とうに知っていたのです。
東峰とアーちゃんは、同じ者を同じ温度で見詰め続けていました。
その上で、アキラを手に入れたのは東峰だったのです。
東峰からすれば、フライングにも似た行為。運良く先んじることができただけに思えていました。
だからこそ東峰は、アーちゃんを憐れに思ったのです。
自身の恋情に気付かぬ内に奪い取られた彼に、深く同情したのです。
そうです。
東峰が、一瞬だけアーちゃんに傾けた情、それは憐憫でした。
アーちゃんにとっては、屈辱以外のなにものでもなかったのです。
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