このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★

[東峰■一条みたいなのが]


「藤村はああ見えて仕事はできるし、人を見る目もある。チャラけてはいるが、誰とでも気さくに話すし、気も使える奴だから、良いムードメーカーだ」

まったく興味のない高橋の話を、意気揚々と語ってくれていた佐藤が、

「役員の皆様方は、どんな方たちなのですか?」

などと訊いてくるものだから、普段の仕事振りなんかを教えてやることにした。

あまり楽しい話題とも思えないが、それでも佐藤は瞳をキラキラさせて聞き入ってくれている。
くそっ、可愛いじゃねぇか!

「右京は、物腰も言葉使いも丁寧な上、あの笑顔だろ、だから人から信頼されやすい。藤村とは違う意味で、相手の警戒心を解かせるからな。交渉事は藤村と右京に任せればだいたい上手くいく」

「ふふ、会長様は、人の使い方をよく心得ていらっしゃる。あ、いい意味で、ですよ」

餌を食べ終わったのか、猫はとうにいなくなっていた。
しかし、今日の佐藤はすぐに戻ることはせず、こうやって俺の膝の上で大人しく話を聞いている。
時折、頭を撫でてやれば、もう縮むと騒ぐこともない。

「そういえば、書記様は日本名をお持ちですが、外見はあちらの方ですよね。書記という役に就いているなら、日本語の読み書きはできるということですよね」

佐藤の口から急に一条の話題が飛び出した。
まさか、一条に興味があるんじゃないだろうな。

「…会長様?」

「あ、いや、一条は、クォーターだからな」

「そうなのですか、では御祖父様か御祖母様があちらの方なのですね」

「祖母があっちの人だと聞いたことがある。暫く向こうにいたそうだが、こっちでの生活も長いし、日本語は完璧なはずだぞ…あまり会話はしねぇが」

「見た感じ、とても無口な方のようですね」

なぜ、一条の話にそれほど食いつくんだ?

「佐藤は……一条みたいなのが…」

「はい?」

きょとんとした表情で、佐藤が俺を仰ぎ見た。

俺は、今、何を聞こうとしたんだ!?
46/74ページ
スキ