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★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★

[アーちゃん■続きを言えっ]


< > ロシア語だと思ってね

「ぶへーっくしょいぃぃっ!」

あー、畜生、またか!
誰だよ、俺の噂してんのは!?

ふっ、しかし今日の俺はちょっと違うぞ。
なんせここは、図書室じゃねーからな、くしゃみくらい、いくらしても平気なのだ。

昨日図書室で借りた本を手にして、俺は寮の外を散歩中。
どっかに読書に良い場所はないかと、あちこち彷徨っているところだ。
え、なんで部屋で読まないかって?
部屋に居たらゲームしたくなるっしょ、だからPCない所じゃないと駄目なの。
ゲームも読書も同じくらい好きなんだけどね、今は完ストに近いから、間違いなくゲームを取っちまう。
しかし、借りた本も読みたいし、ついでに日向ぼっこもしたいわけだ。
蒼雷が完ストしたら、落ち着くと思うんだけどね。

そして見つけた人気のない場所。
ちょいと日当たりは悪いけど、ちゃんとベンチもある。
遠くに花壇なんかも見えるけど、周りには木々もあるからあまり人目につかない感じ。

「それでは、ゆっくり読ませていただきます」

膝に置いた本に、合掌。
では、皆さん、暫くさようなら……。



あー嫌だ嫌だ。
なに、これ?

<俺……>

おい、続きは?

皆さんのご想像通り、俺が座るベンチには、あの書記。
俺の隣りにでっかい体で座ってるくせに、なんとも存在感の薄い奴だ。

<俺の続きはー?>

<あ、俺…話、す……>

また止まりました。

静かに本を読み進んでいたときに、人の気配がしたと思ったら、このでっかい置物がいやがった。
嫌がらせのために、俺を探してたのかと一瞬焦ったが、向こうもかなり動揺してたから、これは偶然なのだと分かった。
そこで、こいつがどっか行きゃよかったのに、なぜかオドオドと隣りいい? なんて聞くもんだから、こっちもどうぞなんて返しちまって、今に至るのだ。

<俺にー、なんか言いたくて隣り座ったんでしょー。だったら早く言ってー>

目線も合わせず、ずっと俯いて、「俺」から話が進まない奴に、こっちはかなりイラついてるんだよ。

「はぁぁぁぁ」

思いっきり溜息吐いたら、ビクッて体を強張らせやがった。

<はは、うけるー。なにそれ、あんたのこと取って食ったりしねーよ>

<あ、…>

お、またもや情けない表情でこっち見たね。

<あのさぁ、なんで怖いのか知んないけど、話すのは嫌いじゃないわけ?>

肯定の意味か、大きく首を縦に振った。

<そういえば、あんた書記だよな。じゃ、日本語の読み書きできんの?>

また頷いた。

<日本語は話せんの?>

またまたコックリ。
なんか、こんな人形ありそうだよな。

<じゃさ、なんで他の人としゃべんないわけ?>

3回くらいしかお目にかかったことないけど、俺が見た限りじゃ、こいつは誰とも会話なんてしてなかった。
むしろ、誰とも目線を合わせず、近寄らせないオーラを発してたよな。
最初は日本語が話せないから避けてるのかと思ったのよ、だからロシア語のできる俺と話たいのかなーって。

<誰も……>

お、「俺」以外の単語が出ましたよ。
少し話す気になったようですね、だったら、ちょっとくらい待ってやりましょう。
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