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★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★

[アーちゃん■行かないで]


< > ロシア語だと思ってね

「ぶへーっくしょいぃぃっ!」

誰か俺の噂でもしてんのかよ、おやじ臭いくしゃみしちまったじゃねーか。

ここは「静かに」が基本の図書室。
今のくしゃみはかなり迷惑かけちまったよな、失敬失敬。
あ、本にもかなり唾が飛んじまったな、これまた失敬。

最近凝ってるロシア文学……の原文。
まさか、こんな物が揃ってるとは、本当に良い学校だね。
さてさて、じっくり読みましょうか。

悲しいかな、こんな人気のない本は、図書室のかなり隅に追いやられている。
そのかわりっつーのも変だが、棚に凭れてゆっくりと読ませていただきましょ、なんせ、この棚の周辺に人なんかいないしね。

できるだけ人目に付かないよう一応の気を使って、もう一つ奥にある棚に移動した。
ここなら一番奥だから、誰にも見つからないでしょう。

さてさて……あら、先客がいらっしゃる。
しかも、じーっとこっちを見ておられますよ。

そこにいたのは、なんとも美しい容姿をした、プラチナちゃん。
あの書記だ。
転寝でもしてたのか、髪は少々乱れていて、瞳も若干虚ろ。
しかし、こっちを黙って見ている訳は……あー、なるほど、俺のくしゃみで起きちまったか。
なら謝っとかないとね。

「あはは、невежливость、невежливость(失敬、失敬)」

おっと、今の俺のイチオシ、ロシア語を使っちまった。
ま、いっか、いや、よくねぇよな。

「あはは、失敬……」

はぁ? なんだこいつ。
ただでさえ、でっかい目を、ものすごいいきおいで見開いたぞ。
なに、俺、怒らせた?

「……русский?(ロシア語)」

<は? なに、あんたも話せんの?>

見た目からしてあっちの人だと思ってたけど、どうやら北の大国のお人のようだ。
こりゃ、ネイティブ覚えるいい機会かな。

<やっぱ、あっちの人なわけ?>

ん、なんだ、こいつ。
こっち見るばっかで、いっこもしゃべりやがらねぇ。

「え、違う? やっぱ通じない?」

うんとも、すんとも言いやがらねぇぞ。
そのくせ目だけは、こっちを捕らえて放さねー
なんか、ムカツクな。

「えっと、お邪魔しちゃったようで……」

こりゃ、さっさと退散するほうがいいね。
でないと、俺がキレそう。

「……Не уходи(行かないで)」

おっと、しゃべれるんじゃねーか。
しかも、想像通り、なんとも流暢なお言葉。
って、向こうの人っぽいもんな、当然か。

「Ну, я могу сидеть здесь?(じゃ、ここ座っていい?)」

「……да(Yes)」
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