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★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★

[東峰■叩かれる]


「問題を起こしたら、尻を叩かれてしまうのです・・・」

なぜ泣くのかと聞いたら、その理由を話してくれた。

「尻・・・」

「はい、それは恐ろしい形相で、尻を叩くのです。そして、延々説教をされるのです。あぁ、思い出すだけで、涙が出そうです・・・」

今時の中学生が、尻を叩かれ説教ときたか。
叩かれたことを思い出し、尻を両手で押さえもじもじしている様が、やけに可愛いく見える。
しかし、こいつの両親は確か・・・

「確かお前の親は・・・」

ちっ、しまった。
佐藤に関する資料には目を通していたが、これは口にすべきじゃなかった。
しかし、既に言葉にしてしまったものを取り消すこもできやしねぇ。

「はい、両親は亡くなっております。ですが、保護者がいます。それはそれは恐ろしいおじさんが、僕の面倒を見てくれてます」

恐ろしいと言いながらも、どこか懐かしそうに、そして誇らしげに語る佐藤。
そのおじさんという人物は、なかなかできた人のようだ。
この年で尻を叩くというのはどうかと思うが、きちんと叱ることのできる人間は尊敬に値する、と俺は思っている。

「お前はそのおじさんのことが好きなんだな」

不思議な物でも見るかのように、大きく瞳を見開いて佐藤が俺を見た。
何かおかしなことを言っただろうか?

「はい、大好きです」

そして、邪気のない笑み。
はは、可愛いじゃねぇか。
先ほどの大人びた佐藤も良いが、こうやって年相応の表情を見せる佐藤もかなり良い。

気がつけば、猫は既に消えていた。
佐藤が、残された缶を回収し、それを袋に入れる。
そして、猫缶が空になっていたことに、安堵する俺がいた。

「俺も気が向いたら餌でもやりにくるか」

「ふふ、それは会長のご自由に」

自分に余裕がなければ、他者に気を回すなんてできやしない。
己で精一杯になれば、他を助ける気になんてならない。
そんなこと、あの猫のほうが良く分かっているかもな。

だから、気が向いたときでいいんだ。
己に負担をかけるだけの行為など、俺にはできやしねぇからな。
そんなきまぐれな行為でも、生き延びるためなら許してくれるかもしれねぇな。

「おっと、覚えてるとは思うが、明日は講堂での説明だぞ」

「はい、了解しております」

そういえば、明日には制服が届くはずだ。
佐藤の身体のサイズに見合った制服。
俺が買った制服に身を包む佐藤を想像すると、気分が昂揚してくる・・・昂揚・・・?

なぜ、そんなことで気分を良くしないといけねぇんだっ!?
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