★中等部★
[雪 ■助言]
分不相応な学園は、平凡よりもさらに下に位置する僕には、かなり辛いものがある。
それでも人間とは順応性に優れた生き物なわけで、1ヶ月も経てばそれなりにやっていく自信もついた。
見ざる言わざる聞かざる、ついでに関わらずに徹していれば、それなりに平和で、かなり贅沢な場所だと気づいたのだ。
「不細工なくせに、あの方たちを君呼ばわりするなんて、許せないっ」
ある日の放課後、突然大勢の人たちに囲まれてそう言われた。
まだ中学生なだけに小柄で声変わりしてない子が多い中、女の子みたいに可愛い顔の人たちもいたけど、着てるものは僕と同じ制服だった。
つまり、全員この学園の生徒で、男なわけだ。
何を言われたのか理解できずにポカンとしていた僕のために、女生徒みたいな男子生徒たちが一斉に教えてくれた。
掻い摘んで言うと、知り合うつもりもなく知り合った彼ら――同室者の継埜将史(つぐやまさし)君に、役員候補と言われる東峰晃人(とうみねあきと)君、葛西洸夜(かさいこうや)君、藤村穂高(ふじむらほだか)君のことを、○○君と呼ぶ僕が気に触ったらしい。
ついでに、親しくしているのがもっとも気に入らない、とも説明してくれた。
すべてがすべて同室者の友人であり、その関係で知り合っただけで、たいして親しくしていないと釈明し、今後は"さん"づけで呼ぶことを約束すれば、
「そう、約束してくれるんならいいんだ。今回は、忠告だけだから」
と、少し不穏な台詞を残し消え去った。
言いたいことはいっぱいあった。
僕からすれば、冤罪だと首を傾げたくなる訴えは、だけど、どことなく納得もいく。
だから反論なんてせずに、あちらのおっしゃるとおりだと丸呑みしたのだ。
この学園で知ったこと。
それは、上流階級だなんて呼ばれるものが、実在していたってこと。
まさかツチノコみたいに、その存在を疑っていたわけじゃない。頭では分かっているんだ。
この世を動かす天上の存在ともいうべき人たちが居るってことは。
だけど、僕にとっての雲の上というのは、せいぜい中小企業の社長さんクラスで、なのに、さらに、さらにさらにさらに上が居るだなんてこと、貧弱な想像力では理解すらできない。
でも、出会ってしまった……らしい。
全部同室者のせいなんだけど、知らぬ間に天上の人たちを垣間見た者としては、どうせ卒業すれば終わるのだと早々に夢から醒めるほうがいいと気付かされた。
もし社会に出てから出会う機会があったとしても、彼らのことを○○君だなどと気軽に呼べるわけがない。
よくて○○さん、下手すれば○○様だ。
いや、名を呼ぶことすら許されないかもしれない。
そんな未来が見えているから、この助言?は有難いとも言えた。
分不相応な学園は、平凡よりもさらに下に位置する僕には、かなり辛いものがある。
それでも人間とは順応性に優れた生き物なわけで、1ヶ月も経てばそれなりにやっていく自信もついた。
見ざる言わざる聞かざる、ついでに関わらずに徹していれば、それなりに平和で、かなり贅沢な場所だと気づいたのだ。
「不細工なくせに、あの方たちを君呼ばわりするなんて、許せないっ」
ある日の放課後、突然大勢の人たちに囲まれてそう言われた。
まだ中学生なだけに小柄で声変わりしてない子が多い中、女の子みたいに可愛い顔の人たちもいたけど、着てるものは僕と同じ制服だった。
つまり、全員この学園の生徒で、男なわけだ。
何を言われたのか理解できずにポカンとしていた僕のために、女生徒みたいな男子生徒たちが一斉に教えてくれた。
掻い摘んで言うと、知り合うつもりもなく知り合った彼ら――同室者の継埜将史(つぐやまさし)君に、役員候補と言われる東峰晃人(とうみねあきと)君、葛西洸夜(かさいこうや)君、藤村穂高(ふじむらほだか)君のことを、○○君と呼ぶ僕が気に触ったらしい。
ついでに、親しくしているのがもっとも気に入らない、とも説明してくれた。
すべてがすべて同室者の友人であり、その関係で知り合っただけで、たいして親しくしていないと釈明し、今後は"さん"づけで呼ぶことを約束すれば、
「そう、約束してくれるんならいいんだ。今回は、忠告だけだから」
と、少し不穏な台詞を残し消え去った。
言いたいことはいっぱいあった。
僕からすれば、冤罪だと首を傾げたくなる訴えは、だけど、どことなく納得もいく。
だから反論なんてせずに、あちらのおっしゃるとおりだと丸呑みしたのだ。
この学園で知ったこと。
それは、上流階級だなんて呼ばれるものが、実在していたってこと。
まさかツチノコみたいに、その存在を疑っていたわけじゃない。頭では分かっているんだ。
この世を動かす天上の存在ともいうべき人たちが居るってことは。
だけど、僕にとっての雲の上というのは、せいぜい中小企業の社長さんクラスで、なのに、さらに、さらにさらにさらに上が居るだなんてこと、貧弱な想像力では理解すらできない。
でも、出会ってしまった……らしい。
全部同室者のせいなんだけど、知らぬ間に天上の人たちを垣間見た者としては、どうせ卒業すれば終わるのだと早々に夢から醒めるほうがいいと気付かされた。
もし社会に出てから出会う機会があったとしても、彼らのことを○○君だなどと気軽に呼べるわけがない。
よくて○○さん、下手すれば○○様だ。
いや、名を呼ぶことすら許されないかもしれない。
そんな未来が見えているから、この助言?は有難いとも言えた。