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★キラキラ 蘖(ひこばえ)の章★

[アーちゃん■置物]


「お帰りなさい。今日は遅かったのですね。本に夢中になっちゃいましたか?」

イライラしながら部屋に戻れば、アキラがいつものようにソファに座っていた。

「うん、ちょっとね、あんま聞かないよーに」

「はい、では聞きません」

最初こそこの変人、なんて思ってたけど、アキラは意外に付き合いやすい人間なのだ。
触れて欲しくない部分には触れてこない、ちゃんと伝えれば、分かるやつなのである。
ま、変わり者には違いねーんだけど。

「今日の夕食は何時頃に行きますか?」

「んー、もう少ししたら行こか」

書記のおかげでイラついたけど、アキラの顔見たらそれもぶっ飛んだ。
役にたつねー、アキラさん。

俺たちは、いつも早めに夕食をとっている。
アキラは人混みが苦手だし、俺が早く飯食ってゲームをしたいからだ。
しかし、今日は俺の戻りが遅かったせいで、いつもより遅い時間に食堂に行くはめになっちまった。

やけに人が多い中、椅子に座ってさぁ食べようなんて箸を持った途端、すんげえ嬌声が周囲からあがりまくる。
朝も昼も夕食も、上手くズレていたお陰で、今までは静かに飯が食えたのに、とうとう体験するんですね。

「わわ、すごいですね。これが例のアレなんですね」

「はは、だねー」

ここって男子中学生しかいないはずだよな。
まだ声変わりを迎えていない奴が多いせいか、女の悲鳴のようだ。
男が男に、キャーなんて叫びながら、お素敵ですー、ぐらいまでなら許してやろう。

「抱いてくださーい」

いや、それはどうよ!?
男同士に偏見はねーけど、それってどうなの!?
そんな歓声の沸きあがる中、我らが生徒会役員様がやって参りましたよ。

会長と副会長が並び、その後ろには会計と……書記。

会長は、無愛想って訳ではないが、特別愛想も振り撒いていない。
例えるなら、スーパーモデルが舞台歩いてますってかんじー。

副会長は穏やかに微笑み、だからと言って、特別皆に愛想はしてない。
こちらも王子様モデルが闊歩してますってかんじー。

会計は、にこやかにしているが、その目は周りを物色してるように見える。
例えるなら、今夜の相手は誰にしようかなんて、街を徘徊してるイケメンモデルってかんじー。

書記は……どこ見てるかわかんねー、無表情。
例えるなら、置物。
やけに綺麗な置物だ!

「隅の席にして、よかったですね」

「うんうん、だよねー」

役員席からも、出入口からも遠く離れた場所の俺たち。
周りにFCっぽいのはいないから、比較的マシではある。

そんなこんなで、役員どもは2階へと移動して、2階に上がる階段をFCと思しきやつらが取り囲んだ。
SPですか?

「初めて見ましたが、すごい人気なのですね」

「はは、だね……ちょっと呆れちゃう」

「まぁまぁ、こんな山奥で、皆さんも退屈なのですよ。何か夢中になれるものがないと、不安になる年頃なんでしょうね」

「そういうもんかね……」

つか、あなた、おいくつなんですか?
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